これは【GGO】であって、【MGS】ではない。 作:駆巡 艤宗
体全身が揺さぶられ、視界も揺れて、手が痺れるような感触に包まれる。
「っ……!?!?!?」
今まで経験したことがない、奇妙な感覚と共に、ゆっくりと衝撃らしきものが伝わってくる。
そして。
ドゴォ!!
「がはっ……!?」
気づけば、青空を見ていた。
剣腹を叩き、トドメを無理矢理外し、腕を掴んだ挙句、吹っ飛ぶほどの謎の打撃。
一体何なのだこいつは。
そんな感情が、ユージーンに込み上げる。
……がしかし、慌てて立ち上がって剣を構え直した。
「くっ…………!?」
ユージーンは、霞む目を何とか凝らして、向かってきているであろうタモンを捉える。
だがそこにいたタモンは。
「はぁ……はぁ……」
「……!?」
ユージーンと同じく息を荒らげ、
霞む目が治ってなお、やはり右手全体がダメージエフェクトに包まれているのは確かに見える。
ユージーンは未だかつて、こんな状態を見たことがなかった。
「な、き、貴様、なんだその手……は……!?」
「……ああ、これ?」
そう問われたタモンは、右手を一瞥するとはは、と笑って首を傾ける。
右手に力が入らないらしく、代わりに肩を上げてユージーンに見せた。
「あの技、久々にやったんだよね。ちょっとヘマしちゃった」
「あの……技……!!」
「まどっちにせよ真っ赤にはなるんだけど……参ったね、骨までやらかした判定くらったよ」
「……!!」
そう言って、またあっけらかんに笑うタモンに、ユージーンは少しだけ微笑を見せる。
「認めよう、貴様はなかなかのやり手だ。だが……」
「……お」
すると、そう言ってユージーンは剣を真っ直ぐタモンに向けた。
対するタモンは、面白そうにその剣先を見る。
「ダメージ計算だけは、怠ったようだな」
「……」
「終わりだ!!」
そして次の瞬間。
ユージーンが羽を使って急加速し、斬りかかった。
そこまでダメージを食らうなら、あの技はいわゆる『
これで戦いを終わらせるつもりであったに違いなかろう。
ユージーンはそう考えて、ほくそ笑んだのである。
対し、タモンは変わらずユージーンを見て佇んでいる。
右上段。
タモンから見たら、左からの攻撃。
左からなので、避けた際に必然的に右手側が前に出る。
今右手は使えないはず。
勝機、ここにあり。
そう思い、ユージーンは笑って剣を振り下ろした。
……が。
ゴキ!!
「がっ……!?」
振り下ろされたユージーンの右手首に、タモンの右足の蹴りが入った。
左から来る剣に、向き合うように体を回転させたタモンは、そのまま足を上げて蹴りを入れたのだ。
ユージーンの剣がまた上へ跳ね上がる。
しかしやはり離しはしない。
「くそがぁぁぁぁ!!!!」
そしてユージーンは激昂した。
もう勝てないとわかっているだろう。
なぜ辞めないんだ。
そんな気持ちの表れである。
……が、次の瞬間。
「もう……分かってるでしょ」
「!!」
タモンがそう言って、
「あ、あれは……!!」
「かけ蹴りだ!!」
ここはさすが、見たことがある皆と、そして実際にタスクに受けたキリトが反応する。
一旦脚を出した後、その方向と反対に脚を戻す蹴り方。
その様子は、当時の驚きと共にしかと脳裏に刻まれている。
そして。
バキィッ
「……!?」
ユージーンの首に、戻ってきた脚の踵が入る。
その踵は骨を砕き、ユージーンの頭を支える機能を奪う。
がくん。
まさにそんな効果音がなりそうな様子で、ユージーンは下に
膝をつき、手を下に垂れ下げ、背中も曲がっている。
首が筋肉と皮だけで繋がっているが故、顔は俯くより深く下を見つめていた。
「これが……」
「ええ」
アスナが何かを言いかけてやめる。
タスクはそれを察し、少し笑ってそれを肯定する。
「
アスナは、久しぶりにあのゾクリとする感覚を覚えた。
✣
観客は熱狂していた。
とんだどんでん返し、恐るべきダークホースの登場に。
……しかし、対してキリトら御一行は沈黙を貫いていた。
なぜならそれは、タスクが
「……タスク、くん?」
ユウキがそんな彼に恐る恐る声をかける。
するとタスクは笑みを保ちつつ汗に濡れた顔で一言。
「明日の相手、やっぱり……僕じゃないかもしれません」
【作者Twitter】
https://mobile.twitter.com/P6LWBtQYS9EOJbl
作者との交流、次話投稿の通知、ちょっとした裏話などはこちら!!
【作者 公式LINE】
https://lin.ee/wGANpn2
公式LINE限定セリフ、各章あらすじ、素早い作中情報検索はこちら!!
【今作紹介動画】
https://youtu.be/elqnCcV7R_0
この動画にしかない物語の鍵があります……。
【感想】
下のボタンをタップ!!