これは【GGO】であって、【MGS】ではない。   作:駆巡 艤宗

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Episode141 冷や汗 〜cold sweat〜

体全身が揺さぶられ、視界も揺れて、手が痺れるような感触に包まれる。

 

「っ……!?!?!?」

 

今まで経験したことがない、奇妙な感覚と共に、ゆっくりと衝撃らしきものが伝わってくる。

 

そして。

 

ドゴォ!!

「がはっ……!?」

 

気づけば、青空を見ていた。

 

剣腹を叩き、トドメを無理矢理外し、腕を掴んだ挙句、吹っ飛ぶほどの謎の打撃。

 

一体何なのだこいつは。

そんな感情が、ユージーンに込み上げる。

 

……がしかし、慌てて立ち上がって剣を構え直した。

 

「くっ…………!?」

 

ユージーンは、霞む目を何とか凝らして、向かってきているであろうタモンを捉える。

 

だがそこにいたタモンは。

 

「はぁ……はぁ……」

「……!?」

 

ユージーンと同じく息を荒らげ、()()()()()()()()()()()状態で突っ立っているだけであった。

 

霞む目が治ってなお、やはり右手全体がダメージエフェクトに包まれているのは確かに見える。

ユージーンは未だかつて、こんな状態を見たことがなかった。

 

「な、き、貴様、なんだその手……は……!?」

「……ああ、これ?」

 

そう問われたタモンは、右手を一瞥するとはは、と笑って首を傾ける。

右手に力が入らないらしく、代わりに肩を上げてユージーンに見せた。

 

「あの技、久々にやったんだよね。ちょっとヘマしちゃった」

「あの……技……!!」

「まどっちにせよ真っ赤にはなるんだけど……参ったね、骨までやらかした判定くらったよ」

「……!!」

 

そう言って、またあっけらかんに笑うタモンに、ユージーンは少しだけ微笑を見せる。

 

「認めよう、貴様はなかなかのやり手だ。だが……」

「……お」

 

すると、そう言ってユージーンは剣を真っ直ぐタモンに向けた。

対するタモンは、面白そうにその剣先を見る。

 

「ダメージ計算だけは、怠ったようだな」

「……」

「終わりだ!!」

 

そして次の瞬間。

ユージーンが羽を使って急加速し、斬りかかった。

 

そこまでダメージを食らうなら、あの技はいわゆる『()()()』。

これで戦いを終わらせるつもりであったに違いなかろう。

 

ユージーンはそう考えて、ほくそ笑んだのである。

対し、タモンは変わらずユージーンを見て佇んでいる。

 

右上段。

タモンから見たら、左からの攻撃。

 

左からなので、避けた際に必然的に右手側が前に出る。

 

今右手は使えないはず。

勝機、ここにあり。

 

そう思い、ユージーンは笑って剣を振り下ろした。

 

……が。

 

ゴキ!!

「がっ……!?」

 

振り下ろされたユージーンの右手首に、タモンの右足の蹴りが入った。

左から来る剣に、向き合うように体を回転させたタモンは、そのまま足を上げて蹴りを入れたのだ。

 

ユージーンの剣がまた上へ跳ね上がる。

しかしやはり離しはしない。

 

「くそがぁぁぁぁ!!!!」

 

そしてユージーンは激昂した。

 

もう勝てないとわかっているだろう。

なぜ辞めないんだ。

 

そんな気持ちの表れである。

 

……が、次の瞬間。

 

「もう……分かってるでしょ」

「!!」

 

タモンがそう言って、()()()()()()()()()

 

「あ、あれは……!!」

「かけ蹴りだ!!」

 

ここはさすが、見たことがある皆と、そして実際にタスクに受けたキリトが反応する。

 

一旦脚を出した後、その方向と反対に脚を戻す蹴り方。

その様子は、当時の驚きと共にしかと脳裏に刻まれている。

 

そして。

 

バキィッ

「……!?」

 

ユージーンの首に、戻ってきた脚の踵が入る。

その踵は骨を砕き、ユージーンの頭を支える機能を奪う。

 

がくん。

まさにそんな効果音がなりそうな様子で、ユージーンは下に()()()

 

膝をつき、手を下に垂れ下げ、背中も曲がっている。

首が筋肉と皮だけで繋がっているが故、顔は俯くより深く下を見つめていた。

 

「これが……」

「ええ」

 

アスナが何かを言いかけてやめる。

タスクはそれを察し、少し笑ってそれを肯定する。

 

 

 

 

()()()()()、です」

 

 

 

 

アスナは、久しぶりにあのゾクリとする感覚を覚えた。

 

 

観客は熱狂していた。

とんだどんでん返し、恐るべきダークホースの登場に。

 

……しかし、対してキリトら御一行は沈黙を貫いていた。

なぜならそれは、タスクが()()()()()()()()()から。

 

「……タスク、くん?」

 

ユウキがそんな彼に恐る恐る声をかける。

するとタスクは笑みを保ちつつ汗に濡れた顔で一言。

 

 

 

 

 

 

「明日の相手、やっぱり……僕じゃないかもしれません」




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