これは【GGO】であって、【MGS】ではない。   作:駆巡 艤宗

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Episode142 興味 〜Interest〜

「「………」」

 

タスクとシノンが、お互い黙って飛んでいる。

 

ここは、ALOの上空に浮かぶフィールド、「浮遊城アインクラッド」。

そう、かのSAOの舞台となった、色んな意味で因縁の場所である。

 

《少し……行きたい場所が。行っても?》

 

そう言って微笑んだタスクの顔は、少し悲しげだったな。

そんな感想がシノンの脳裏に現れる。

 

「もうすぐですよ」

「……?」

 

すると、前を飛ぶタスクがそう言って、少し高度を落とした。

シノンもそれに習い、高度を下げる。

 

厚い雲の中に入り、視界が真っ白になる。

かろうじてタスクの足が見えており、シノンはそれについて行く。

 

「……ついた」

「……!!」

 

そして、雲が一気に開けた時。

シノンは思わず目を見開いた。

 

 

 

眼下に広がる一面の()()()

キラキラと煌めく霧。

 

 

 

「え……こ、ここは……?」

 

シノンは思わずタスクに問う。

……すると。

 

「ふふ」

「……?」

 

タスクは振り返り、そして微笑んだ。

シノンはそんな彼に首を傾げる。

 

そうして2人は地面に降り立った。

なるべく白百合を踏まないように……。

 

「……ここは」

「!!」

 

そしてゆっくりと、タスクが口を開く。

 

その時だった。

シノンは初めて、()()()()を認識する。

 

タスクが話し始めて、体を反転させた時に見えたそれ。

それは、地面に突き刺さった、()()()()

 

「えと……僕の、姉……のですね」

「えっ……」

 

タスクの言わんとすることを、自ずと察してしまうシノン。

心臓がドクンドクンと波打ち始める。

 

 

 

 

 

 

()()()()()()()()()()()()()の、()()()()……です」

 

 

 

 

 

 

「っ……」

 

察してはいたが、彼女の体は凍りついた。

 

 

「……逃がしませんよ」

「げっ」

 

一方その頃。

 

ログアウトすべく、宿屋に向かわんとする店主を、アスナ一行が捕獲していた。

 

「や、やあ……アスナさん」

「…………」

 

苦し紛れに笑顔を作る店主だが……。

アスナは微笑みを保ったまま、店主にずい、と体を押し出す。

 

「え、えと…………」

「…………」

 

無言の圧力に、店主がどんどん小さくなっていく。

キリトらはそれを後ろから眺めていた。

 

……しかし。

それを止めたのは意外にもユウキである。

 

「ア、アスナ、その辺で……ね?」

「だ、だって……!」

 

明らかに物言いたげだったアスナも、ユウキが出てきたとあらば下がるしかない。

 

そうして、代わりにずずいと出てきたユウキに、店主はまた苦笑いした。

 

「こ、は、はじめまして……」

「こんにちは!! ユウキでーす!!」

 

そう言って手を差し出すユウキに、答えて握手する店主。

相変わらず元気なやつ、とキリトが呆れている。

 

「あなた……すごいね、あのユージーンをまさか格闘で倒すなんてさ」

「あ……はは、どうも」

 

ユウキの屈託のない笑顔に、店主は目を丸くする。

 

「……明日」

「!!」

「どうするん……ですか?」

 

すると、不意にアスナがそう口にした。

その場が少し静かになる。

 

視線は明らかに店主に注がれている。

しかし、当の店主の目は泳ぎがちだ。

 

だがやはりここでも出てきたのがユウキであった。

 

「もっちろん、全力で戦うよね!?」

「ユウキ!?」

「っ!?」

 

アスナと店主が、ユウキを見て驚く。

 

「そりゃそうでしょ。僕とて()()()()()()()()()()

「!!」

「シノンさんが言ってたんだ。()()()()()()()()()()()って」

「そ、それは……!!」

「あなたの戦い方を見てれば分かる。タスク君と普通以上に関わりがあるよね。しかも対等に。雰囲気が似てるもん!!」

「ふ、雰囲気……かい」

「そ!! ってことはだ。あなたの中にも()()()()()()()、ってことなんでしょ?」

「……!!」

 

店主の驚いた顔に、ユウキはにひひーと笑ってみせる。

 

リーファ対タスクの戦いの最中、シノンが漏らしたあの言葉。

 

『戦いを欲し、強き者を倒すことに楽しみを覚える』。

そして、そんな者の中にいるという、『獣』。

 

そして極めつけは、ついさっきのユージーン戦でのタスクの言葉。

『獣を持たざる者は、獣を持つ者には勝てない。絶対に。』

 

ユウキは、それらの言葉を聞いて以来、その『獣』とやらにただならぬ興味を抱いていた。

 

「自分でもよくわかんないけどさ。その『獣』とやらにすっごく惹かれるんだよね」

「……!!」

「僕の中に『獣』がいるかどうかはさておいて、僕めっちゃ気になるんだよ」

 

すると、そう言って言葉を切ったユウキの、純粋無垢な笑顔が、少し含めた笑みに変わった。

 

 

 

 

 

「『獣』と『獣』がぶつかったら、どうなるんだろう……ってさ」

 

 

 

 

 

ユウキの意外な饒舌ぶりに、店主を含め一同絶句する。

 

それに、よくよく考えればユウキはこの2人の『獣』のうち、どちらか一方と戦う羽目になるのだ。

 

そんな中でこの言いっぷりである。

よくもまあ、と言ったような、感嘆の意もその沈黙の中には漂っていた。

 

……すると。

 

「っ……はは」

「?」

 

そんなユウキを見て、店主が笑って笑みを返す。

 

そして一言。

 

 

 

 

 

 

「うん……よく出来たお嬢さんだ」

 

そう言って、少しだけ目を細めた。




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