これは【GGO】であって、【MGS】ではない。   作:駆巡 艤宗

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Episode143 僕の全て 〜All of me〜

「どうしてもここに……来たかったんですよ」

 

そう言ってしゃがむタスクをぼんやり眺めつつ、シノンは心臓の高鳴りを何とかして収めんとしていた。

 

「……シノンさん?」

「えぇっ……ああ、うん」

 

すると、あまりに緊迫した顔をしていたのか、タスクが振り返って少し笑いかけてくる。

 

シノンは、そんな彼にむりやり笑顔を返しつつ、拳を握りしめて鼓動の高鳴りが収まるのを待った。

 

「どっ……どうして……ここ……に」

「……?」

 

すると、シノンが震えた声でタスクにそう問いかける。

それに対しタスクは、より一層微笑んでそんな彼女に振り返った。

 

「そ、そんなに緊張しなくても」

「そそっ、そうなんだけど。なんか……」

 

タスクのあっけらかんとした顔に、シノンは焦りを隠せない。

するとタスクも逆に諦めたのか、またふふふと笑ってシノンを見た。

 

「明日」

「……!!」

「ユウキさんと戦う以前に、店(・)主(・)さ(・)ん(・)と(・)戦(・)う(・)こ(・)と(・)に(・)な(・)り(・)ま(・)す(・)よね」

「ええ……そっ、そうね……」

 

タスクの真っ直ぐな瞳に、なおさら緊張して声が震えるシノン。

しかしタスクは、すぐにまた剣へ目線を戻した。

 

「おそらくその時」

「……!!」

 

そして次の瞬間。

雰囲気が少し重たく変わるのを、シノンは機敏に察する。

 

タスクはそうして一言。

 

 

 

 

 

「裏(・)血(・)盟(・)騎(・)士(・)団(・)の(・)す(・)べ(・)て(・)を、出さないといけなくなる気がするんです」

 

 

 

 

 

「す、すべ……て」

 

そう言って笑ったタスクは、少しだけ声が震えていた。

 

「店主……、いや、タモンさん。あの人もまた、獣(・)を(・)持(・)つ(・)人(・)です」

「あ……!!」

「タチ悪いですよね。極端に悪くいえば、僕がユウキくんのために全力を出さなきゃいけない所に、わざわざ滑りこんできたんですよ」

「……!!」

「わかるんですよ。彼(・)の(・)狙(・)い(・)は(・)僕(・)で(・)す(・)。……まあ、その先にいるユウキさんも狙ってはいるでしょうが」

「ね、狙って……!!」

 

タスクの少し沈んだ笑顔に、シノンは戦慄を覚える。

 

獣は、戦いを欲し、強きを求め、強者を破る。

そしてそれに最高の欲求を示す、文字通りケダモノ。

 

店主の中にもそんな獣がいるんだとしたら。

 

タスクが全力でやらざるを得ない状況があるなら、そこに飛び込むのは最早必然ともとれる。

 

「彼は……強いです。普段はあんなんですが……いや、だからこそなんですよ」

「……!!」

 

タスクは、俯いて少し震えている。

シノンは、そんな彼を意外と思い、思わず見つめてしまう。

 

「普段があんなんだから、現(・)状(・)の(・)彼(・)が(・)分(・)か(・)ら(・)な(・)い(・)んです。それこそ、奥(・)義(・)や禁(・)忌(・)と(・)さ(・)れ(・)た(・)技(・)を使わないと勝てないくらい……!!」

「奥(・)義(・)……?それに、禁(・)忌(・)と(・)さ(・)れ(・)た(・)技(・)……!?」

「……!!」

 

聞き慣れない、というより。

聞いたことがない単語がポンポン出てきて、シノンは思わず聞き返す。

 

タスクはそれに、そのままだと言わんばかりに頷いて返した。

 

「なんなら店主さんは……もう既に1つ出してます」

「あ……は、はっ……えーと……」

「発勁です」

「そ、そうそれ……!! あれも……?」

「ええ。あれは店主さんが編み出して、店主さんしか使えない……。裏血盟騎士団の奥義です」

「なっ……!?」

 

そんな代物だったのか、あれは。

シノンはそう言わんばかりに、目を見開いてタスクを見る。

 

「あれを……店主さんは、あの奥義を、あんな大衆の前で、しかも番狂わせで使ったんです。あれはもはや、宣言に他ならないですよ」

「宣言……」

「ええ。『僕は君に、技を惜しまず使うよ』、とまあ、こんな感じの……」

「っ……!!」

 

そう言って、また剣に向き直るタスク。

そんな彼の言わんとしていることは、シノンに容易に理解できた。

 

同時に、何(・)故(・)こ(・)こ(・)に(・)来(・)た(・)の(・)か(・)、も。

 

「姉さん……僕は明日」

「……!!」

 

タスクがしゃがんで、剣を撫でる。

そして目が鋭くなったその時。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「僕(・)の(・)全(・)て(・)を、出すよ」

 

そう言って、その剣の柄を強く握りしめた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

まるで……罪悪感に苛まれているようだ。

シノンはそんな感想を、心の内に抱いていた。




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