これは【GGO】であって、【MGS】ではない。 作:駆巡 艤宗
「おかえりなさい」
その声を聞いた時。
思わず店主は驚いてしまった。
その言葉がまさか自分に飛んでくるとは思っていなかったからだ。
「……店主さん」
「……?」
しかし不思議である。
シノンは必ずタスクの元に行くはずだ。
何故って……それはともかく。
とすると、今自分の隣に立ち、太陽の光で真っ黒にしか見えない……せめて分かってもこの女性は一体誰なのか。
「き、きみ……は?」
「……帰りますよ、タスクさんとシノンさんは歩き始めてます」
「え……は……?」
訳も分からぬまま肩を貸され、立ち上がる。
首が折れているため、下しか向けない。
ゆえに未だ誰かわからない。
……が。
「ああ……君か」
「……」
足腰の服装を見て分かった。
「リーファ……さんだね」
「そうです」
淡々と言葉を返し、店主をもはや引きずる状態で運ぶリーファ。
その姿には、拍手が送られている。
店主は問う。
「どうしてまた……君が……きてくれたんだい? リーファさん」
「……リーファでいいです」
「……おや」
リーファの意外な言動に驚く店主。
しかし、店主はなんとなく、その理由を察していた。
「……はは、あの兄に君ありか」
「!!」
「わかるさ。
「……」
リーファは何も答えない。
でもそれは。
まごうことなき肯定を意味していた。
✣
「ね……タスク」
「……はい?」
一方、前を歩くタスクとシノン。
こちらも同じく、シノンがタスクを半ば引きづって歩いていた。
シノンの小声にタスクは少し遅れて答える。
すると、シノンは少し楽しそうにタスクを見た。
「また新しい顔が入るわよ……!!」
「新しい……かお?」
シノンの言葉に、分からないと言わんばかりの顔で返すタスク。
しかし、後ろを一瞥すると少し笑って察した。
「……また」
「私、相談されちゃったわ」
「へ?」
「どうしたら、あの人の元で学べますかってさ」
「あの人……ねぇ。やっぱり」
タスクが、シノンの呆れたような言葉になぜか納得する。
シノンは、そんな彼を不思議そうに見つめた。
「いや、ね」
「?」
「彼女、僕との試合前に、何かがあったと思うんですよね」
「なに……か」
「そう、
「……」
シノンは深追いして聞いたりはしなかった。
ただそれは、聞く必要がないから……でもあった。
タスクとタモンが戦う最中、いつになく真剣に話していたリーファが、ふとシノンの脳裏に浮かぶ。
『私も……見てみたいと思ったんです』
『……何を?』
『シノンさんやタスクさん達の世界を。ひいては、お兄ちゃんが求めているものを』
『……何故』
『な、何故って……まぁ、
そう言って、少し恥ずかしそうにくしゃりと笑ったリーファの顔は、とても輝いて見えた。
シノンはその顔を、きっとこの先も忘れられないだろうな、なんて思ったりしたのだ。
彼女も、間違いなく獣を住まわす戦士。
それも、シノンのみたく大人しめのものではなく、れっきとした暴れん坊。
しかも。
それでいて気配を感じない。
「シノンさんもわかるでしょ」
「……まぁ、ええ」
不意にタスクがそう言って笑う。
「面白くなりそう、だ」
次回!!
ついにユウキ VS タスク スタート!!
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