これは【GGO】であって、【MGS】ではない。   作:駆巡 艤宗

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Episode154 目は覚めた 〜She woke up〜

ここはALOの闘技場付属の酒場。

 

「いやはや、負けちゃったなぁ〜!!」

 

そこへ能天気な声を上げて帰ってきたのは、もちろん店主である。

それも、屋台で売られている謎の肉塊の串刺しを大量に手に持って。

 

「え、あ、あれが、タモ……ン? ですか?」

「……のようだな。」

 

周りの戸惑いはそれはすごかった。

同席していたサクヤの側近が、思わずサクヤに尋ねた程だ。

 

「お、お疲れ様でした?」

 

キリトがハテナを頭に浮かべそうな顔でとりあえず声をかける。

 

「ん?んぁ、きぎどぐん、あいあどう!」

「はは……」

 

もぐもぐしつつ、串を口から生やしつつ、店主はキリトと会話する。

 

「ゴクン、はい、これあげるー。」

「ど、どうも。」

 

すると、やっとこさ飲みこんだ店主は、手に持つ串の1本をキリトに差し出した。

 

「これ美味いんだよ〜、GGOでも売ったらいけんじゃないかな。」

「……やれやれ。」

 

店主の能天気な声を聞いて、タスクが呆れた声を出す。

隣に座るシノンも目を伏せて呆れていた。

 

「ほい……楽しかった、ありがとね。」

「ん……僕もです。」

 

ただ、店主はタスクにも串を差し出した。

それに若干雰囲気が変わる。

 

タスクもその串と言葉を、微笑んでしかと受け取った。

 

「……」

「……」

 

もぐもぐと食べる2人のケットシー。

雰囲気が変わったが故に、沈黙している周り。

 

「……ん!」

 

しかし、さすが店主、また彼がその沈黙を変えた。

 

「やあやあ、こんにちは、だね。」

「!!」

 

今度はスリーピングナイツの面々の座る机に出向いたのだ。

 

「あ、こ、こんにちは?」

「こんちゃー!」

 

もちろん彼らは驚くが、ユウキだけは変わらず元気である。

 

「はーい、これあげるー。」

「え……」

「あ、ど、どうも。」

 

すると店主はまたもや串を各々に配った。

スリーピングナイツの面々は、それを恐る恐る受け取る。

 

それを見た店主はまた微笑んだ。

 

「はは、そんなビビらなくてもいいじゃないの。」

「え、いや……その……」

「ま気持ちは分かるけどさ。」

「……」

「で、ユウキさん。」

「!!」

 

すると店主は、また雰囲気を変える。

ユウキもキョトンとして店主を見つめる。

 

 

 

 

 

 

「どうだった、獣と獣のぶつかり合いは。」

 

 

 

 

 

「あ……!!」

 

その時、シウネーは思い出した。

 

確かあれは……ユージーン戦の後。

アスナが捕まえ、初めて店主と話した時。

 

ユウキが言っていた、あの言葉。

 

 

 

《『獣』と『獣』がぶつかったら、どうなるんだろう……ってさ。》

 

 

 

その言葉の結論を、店主は聞いているのである。

 

「う〜ん…………」

 

自然とユウキに注目が集まる中、彼女は少し考える素振りを見せる。

 

……が、ほどなくしてニコッと笑うと一言。

 

「う〜ん、その。」

「?」

 

 

 

 

()()()()()……よ。」

 

 

 

 

「……へぇ。」

 

店主はちらりとタスクを見る。

タスクは未だ串をもぐもぐし、シノンと話している。

 

 

 

 

 

 

 

「ん……ほんとに、よくできたお嬢さんだ。」

 

店主はまた微笑んだ。

 

 

「……やっぱり?」

「もちろん。」

 

その数十分後。

タスクとシノンは、選手入場口でその時を待っていた。

 

「彼女は剣士でしょ、剣で戦いますよ。」

「そ、それはそうだけど……」

「?」

 

言葉に少しつまるシノン。

タスクはそれをキョトンとして見返す。

 

「あの子は全力のタスクと戦いたいのよ、だとしたらと思っちゃうって。」

「……ああ、そゆこと。」

 

すると、タスクは妙に納得してストンと座った。

 

ベンチに座るシノンの目の前の床に座ったので、シノンを見上げる形になる。

さすがに首が痛いのか、あぐらをかいて後ろに手を着いて体を上に向けていた。

 

「ま、本音言うとですね。」

「……本音。」

「仮にウェポンズフリー……ようは店主さんと戦う時みたいに、なんでもかんでも使えるとしても。」

「うん……」

「僕は剣でやりますね、その方がいいし、そうしなきゃ勝てないと思う。」

「……!!」

 

あっけらかんにそう話すタスクに、シノンは思わず驚いた。

 

てっきり、刀しか使わないのは手加減というか、礼儀というか、そういう話かと思っていたからだ。

 

それがあからさまに顔に出ているシノンを見て、タスクが思わず笑う。

 

「んとね、シノンさん。」

「?」

「武器術が最も警戒するのは、()()()()()使()()()()なんですよ。」

「他の……武器。」

「そう。もっとわかりやすく言えば、()()()()()()()()()()()()()()()1()()()()()()()、そんな状態を欲するんです。」

「な、なるほど。」

 

シノンは一瞬戸惑うが、何とか飲み込んで理解する。

自分の使う武器が自分にとって一番使い易ければ、確かにそれがいい。

 

「武器というのは言い換えれば()()です、個性は突出した部分ですよね、何かに突出すれば?」

「じ、弱点が出る……」

「そう、だからそこを徹底的に潰している。武器術というのはそういうものです。」

 

そのうちシノンは、なるほど、確かになと思い始めた。

 

冷静に考えてみれば、プレイヤーたちがギルドやパーティを組むのはお互いの弱点を補うためだ。

 

それは次第に体系化され、()()と呼ばれたりもしている。

そしてその()()と使用する武器は、ある一定のイコールで結べる関係にあるのだ。

 

では、仲間がいない、単騎の戦いに挑まねばならないとしたら。

 

自分が最も使いやすい武器で戦い、かつ、仲間が補ってくれていた部分を徹底的に潰して置く他無いだろう。

 

「つ、つまり……?」

「……」

 

シノンが何とか理解し、結論を求める。

タスクはそんなシノンを面白そうに見て、目を伏せる。

 

そして少し試すような目を開けると。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あえて剣だけで挑みます。彼女が使いやすい剣の使い方しかさせない。本気を引き出して楽しむ。」

 

そう言ってニカッと笑った。




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