これは【GGO】であって、【MGS】ではない。   作:駆巡 艤宗

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Episode16 店 〜Shop〜

ガチャッ

 

ダインが、あの店主の店のドアを開ける。

スコードロンメンバー達は、息を呑んで入ってくる。

彼らは、あからさまに緊張していた。

ここまで案内してきたあのシノンまでもが、少しおぼつかない。

 

……だが、中は至って普通のショップだった。

新品の銃が白いキレイな壁に所狭しと肩を並べ、爆弾やら弾薬やらの物騒なものが木製の棚にきちんと整理されて押し込まれている。

 

「……あれ?」

 

あまりの平凡な雰囲気に、ダインが間抜けな声を上げてしまう。

でも、それはスコードロンメンバー全員の意思を声として表現していた。

 

それもそのはず。あんな恐ろしい人に呼び出されたお店が、こんなにも和やかで普通なんて、誰も考えていなかったからだ。

 

まあ、シノンは一度ここで彼を見たが、ここを詳しく知っているかと聞かれれば、決してそうとはいえない。

 

したがって、シノンを含むスコードロンメンバー全員が、呆気に取られているのだ。

あまりの平凡さに。シノンに関しては、あまりのいつも通りさに。

 

「……おい、奥に休憩スペースまであるぞ?」

 

メンバーの誰かが、店の奥を指さす。

全員の視線が、そこに集まった。

 

「ほんとだ……」

 

誰かが、いかにもそこに行きたそうにその休憩スペースを眺める。

その視線の先には、大きな向かい合えるソファーや、椅子と机、更にはレジカウンターに直角に繋がっているカウンター席まであった。

おそらく、店主がレジとカウンターでのもてなしを同時にやりやすくするためだろう。

 

「へぇ〜」

 

素直に驚く別のメンバー。

するとどこからから、同じスコードロンのまた別の一人が声を上げた。

 

「なあなあ見てみろよ!AK-47の派生型全部揃ってるぞ!?」

「マジで!?」

「こっちはM1911 ガバメント!うっひゃ、こっちにはFA-MASまで!しかもフランス軍様式!」

「FA-MAS!?そんなレアなのがあるのか!?」

 

すかさずメンバー全員が食いつく。

シノンだけは、スナイパーライフルのコーナーを眺めていたが。

 

「おいおい……!AN-94 アバカンまであるぜ……!?」

「うおおおお!」

 

スコードロンメンバー達がはしゃぐ。

やはり彼らもガンマニア。こんなにも銃があったら、彼ら血が騒がないわけが無いのだ。

 

「ん……?なんだこれ?」

「どした?」

 

するとその時、そんな彼らが、あまり見覚えのない銃を見つけ、考え込む。

 

「……んん?見たことないぞ?」

「なあ、これ知ってるか?」

 

そのメンバー達は、ダインに声をかける。

ダインは、そちらを見て彼もまた首をかしげた。

 

「え……?なんだこれ?」

 

気づけばスコードロンメンバー達全員が、揃ってたった一つの銃を眺め、同様に首をかしげていた。

 

その銃は、少し近未来的なデザインだった。

いかにも弱っちそうなストックが横に折りたためるのだろうか、ストックと本体のようなもののつなぎ目に強化プラスチック製の蝶番が見て取れる。

それに引けを取らぬような長細い折れそうなバレル。

明らかに銃本体から孤立していたが、不思議とバランスが取れていた。

 

「なんだろ。なんか……かっこいいのは確かだな」

「うん。それは間違いない!」

 

結局、どんな銃なのかもわからずに議論をまとめようとするスコードロンメンバー達。

だがその時、そんな彼らの背後から、いきなり別の声が、そしてその議論の答えが飛んできた。

 

「それは、クリス ヴェクター。アメリカのクリス社とアメリカ軍が開発中のサブマシンガンです。新しい反動吸収システム、クリス スーパーVを採用しているので、驚くほど低反動です。フルオート時のエイムコントロールも抜群ですよ」

「お、おお~」

 

リアルのことも交えて完璧に答える謎の声に、自ずと感嘆の声が上がる。

だが、彼らはすぐに我に返った。

 

「って、あんた誰だ!?」

「誰って、店主ですが?いらっしゃいませ!」

「あ……ああ、どうも」

 

にこやかに、一切動じず挨拶をする店主に、スコードロンメンバー達は狼狽えつつもぺこりと頭を下げる。

店主はそんなメンバー達を見て、またにこやかに話を続けた。

 

「もし気に入ったのがあれば、声をかけてください。弾薬はサービスで、試射ができますから」

「わ……分かりました」

「ふむ……で、今お気に召したものはありました?」

 

店主が、この店のサービスを説明し、メンバー達に尋ねる。

そしてメンバー達は、全く同じ答えを店主に示した。

 

「「「「これ」」」」

 

そう言って、指を指したのはクリス ヴェクター。

 

「……はは、やっぱり」

 

店主は、優しい笑顔に汗を滲ませつつ、ポツリと呟いた。

スコードロンメンバー達は、お互いをお互いの顔で見合う。

そして、

 

「「「「あ……」」」」

 

意見の重複を、今この瞬間にやっと理解した。

そして同時に、意地の張りあいが発生する…と思ったその矢先。

店主がまた、その場を収めた。

 

「お……俺が先だった……よな?」

「いや……それは俺が……」

「なにぃ!?」

「ああ、大丈夫です皆さん!皆さんの分、ありますから!」

「えっ」

「な、ならいいや」

 

そういって、呆気なく収まった。

そしてその収め主である店主が、スコードロンメンバー達を休憩スペースの奥にある扉に案内する。

 

「さ、射撃場は、こちらです」

 

そしてスコードロンメンバー達は、わいわいとその案内された扉に入っていった。

 

……シノンを、ただ一人残して。

 

 

入った先は、ものすごかった。

店の白い壁とは比べ物にならないくらいずらりと黒い壁に並べられた銃。

その中に、しっかりと人数分のクリス ヴェクターがあった。

 

「あったあった!これかあ、ベクター」

「違げえよ、()()()()()だよ!」

「あ、そうかぁ!」

 

スコードロンメンバー達が冗談を交えながら次々に壁から取っていく。

だが、クリス ヴェクターはまだ2〜3丁余っていた。

そして、またその奥にある扉に手を掛け、扉を開ける。

すると扉が開くにつれ、段々と射撃場の一番目のレンジが見えて来て……

 

「よお、遅かったな」

 

本来の目的であるあの彼が、射撃場の一番目のレンジでこちらを向いて待っていた。

一番目のレンジは、扉の目の前である。

先頭を歩いてきたダインは、驚きのあまり思いっきりのけぞった。

 

「うわぁぁ!?」




いつも読んでいただき、ありがとうございます。
駆巡 艤宗です。

まずは、お礼からさせてくだい。
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