これは【GGO】であって、【MGS】ではない。   作:駆巡 艤宗

23 / 202
Episode22 現実 〜Reality〜

「店主さん……?店主さん……!ねえ!」

「……?」

「ほら起きて!精神世界で寝るとか、どうやったら出来るんですかねぇ!?店主さんがログアウトしたら、この店どうするんですか!?まだ営業時間内でしょう!」

「う〜ん……」

「シノンさんはどうなったんですか!店主さんはどうするつもりなんですか!ねえ起きて!」

「う〜ん、はっ!」

 

店主がいきなり飛び起きる。

シノンに声をかけて店の奥に入り、椅子に座ってから、居眠りしてしまっていたようだ。

質問の嵐を吹かせていたタスクも流石に驚く。

 

店主はそんな事などつゆ知らず、ごしごしと目をこすった。

タスクは不機嫌そうに、店主に質問を続ける。

店主はその質問に、ポツポツと答えていく。

 

「はぁ……で、店主さん。シノンさんの話、結局どうなったんです?」

「……?」

「だから、シノンさんはどうなったんですか?」

「……あ、ああ、その事ね。うん、大丈夫。きちんと話したよ」

 

そこまで話して、タスクはほっとする。

一応話せたのであれば、なにか進展があると期待できるからだ。

だが、その進展は思わぬ形で進んでいた。

 

「そうですか……で、結果は……?」

「うん……その事なんだけど、タスクくん。ごめんね」

「……?」

「君の過去を、彼女に話した」

「な……!?」

「そしてその上で、もう一度考えてみて……と、時間を与えた」

「……」

「彼女も僕らと似た過去の持ち主だったんだ。それも、リアルでの……ね」

「……というと?」

「ふふ、それはタスクくん自身が直接聞いてみるといいよ。シノンさんはきっと答えてくれる」

「……」

「でも、少しだけ、教えてあげられることがある」

「……?」

「彼女は、僕らよりずっと強いよ」

「……!?」

「彼女は、護りたいものを護るために人を殺した。でも僕らはそうじゃない。護りたいものも護れずに、その後で人を殺した。それも何人とね。……まあ、詳しくはシノンさんに聞いてみて」

 

タスクはすこし不満げながらも頷く。

 

彼女が自分と似た過去を……。

すこし嬉しい反面、不安な気持ちもあった。

これからどうなって、どんな風に話が進むのか分からないからだ。

 

あの時見た、仲間の死。

光の粒になって消えた、仲間の体。

そして何より、自分のミスで失われた、大切な命。

そしてその後自分が犯した、贖罪としての殺人。

でもそれは、決して許されるものではない。

 

「っ……!」

 

タスクは急に店主に背を向け、左手を動かし、ログアウトして消える。

その小さな背中を、店主はしかと見届けていた。

 

「わかるよ、その気持ち」

 

店主は静かに、もうそこにはいない一人の少年に声をかけた。

もちろんその声は、誰にも聞かれることのなく、空間に消える。

 

「……さてと」

 

そして店主は立ち上がり、店の奥に入って試射場を見る。

気配がないからなんとなく分かっていたが、ダイン達はもう既に帰っていた。

タスクからの報告がないのから考えて、恐らく正体を知らずに帰ったのだろう。

 

「……正しい判断だったかもね。ダインさん」

 

店主は何かを予感させるように、ポツリと呟く。

そしてふいっと試射場に背中を向けて、自らもログアウトボタンを押した。

 

店主が消えると同時に、店内の照明もすべて落ちる。

扉にかかった「closed」の看板の周りだけが、少しだけ明かりを放っていた。

 

✣

 

「……っ」

 

仮想世界から戻ってきたタスクが目をうっすらと開ける。

 

「はぁ……」

 

そしてそのリアルのタスク、内嶺 祐(うちみね たすく)は、がっと勢いよくフードつきのパーカーをとって着ると、スマホとイヤホン片手に走り出した。

 

どだだだと階段を降り、だだだーっと廊下を駆け抜ける。

そして玄関を靴を履きつつ蹴り開けると、真っ先に目的地へ走り出した。

 

「まぁたタスクったら……あれ?」

 

おたまを持ったタスクの母親が廊下を見た時には、もうそこにはいなかった。

 

✣

 

「はぁっ……はぁっ……!」

 

タスクが淡々と路地を走る。

 

今は夜の9時。それに天候は雨。

どう考えたってフードつきのパーカーだけで外出する状況じゃない。

 

だがタスクは、そんな事などどうでもよかった。

 

「……っ!」

 

タスクはひたすら走る。

そしていつの間にかついたのは、とある墓場の一角。

 

「……」

ドスッ

 

するとタスクはいきなり一つの墓の前で膝をついた。

雨で濡れた地面から、ズボンに水が登る。

そして下を向き……

 

涙を流した。

 

ビッグ・ボスという、も(・)う(・)一(・)人(・)の(・)自(・)分(・)で隠していた感情が、涙となって現れる。

 

「ごめん……!ごめんな……!」

 

そう、それは、「後悔」と「哀愁」。

あの時、敵を逃がさなければ。

あの時、光になって消えた、親友。

 

あの時、あの光景、あの時間、あの気持ち、あの場所。

 

すべてがくっきりと思い出せる。

そしてそれをしてしまう、自分だけが帰ってきてしまった現(・)実(・)の世界。

 

そしてその記憶は、頭に食いついて離れることは無かった。

 

バシャッ……バシャッ……

 

その時、後ろから足音が聞こえる。

タスクは、はっと後ろを見る。

 

そしてそこには、迷彩柄の長ズボンに黄土色の半袖シャツを着た男がいた。

 

……彼の名は待宮 多門(まちみや たもん)。

プレイヤーネーム、「リボル」。

二つ名は、「オセロット」、あるいは、

 

「店主」……だ。

 

「店……タモンさん……!」

「いると思ったよ、タスクくん」

 

そう呟く店主……もといタモン。

タスクはすぐに視線を墓石に戻した。

 

「アユムくん……もう1年だね」

「はい……」

 

そう呟いたタモンは、タスクの背中をさすり、同時に墓石にも手を添えた。

 

そして呟くのである。

 

「すまなかったね……」

 

と。




いつも読んでいただき、ありがとうございます。
駆巡 艤宗です。

やっと、彼らの本名を出すことが出来ました。
といっても、物凄いセンスのなさが露呈しているだけなのですが。

こうして報告してはいますが、気にしないでいただけると幸いです。

では。

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