これは【GGO】であって、【MGS】ではない。   作:駆巡 艤宗

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Episode23 決断とダンボール 〜Decision and Running box〜

「っ……!」

 

あの日から数日後。

シノンは今日、ついに覚悟を決めて、店主の店にやってきた。

 

「強くなりたい……今までの私とは、違う!」

 

そういって、シノンは扉を開ける。

するとそこには、いつも通りの光景が広がっていた。

 

「やあ、シノンさん。いらっしゃい」

「……」

 

店主がいつも通り迎えてくれる。

だがその目は、いつもとは違った。

 

「……ついに、決めたんだね?」

「はい」

「どうするんだい?」

「私は……」

 

シノンは、ゴクリと唾を飲んだ。

同時に、店主を再度見直す。そして……

 

「覚悟ができました、店主さん。是非、私にも協力させてください。私とて、人の命が奪われるのはもう見たくない」

「その為に、自分の命が奪われても……かい?」

「……!」

「何かをするには、必ず代償がいる。命を守るために、命を差し出す。この覚悟まで、あなたは出来てるかい?」

 

シノンは一瞬、ぐっ……と考える。

だがその答えは、もう決まっていた。

 

「ええ。もちろん」

「よし!合格!」

ジャキッ

「な……!」

 

そうして、シノンが答えを出した瞬間、店主が叫んでSAAを取り出した。

 

もちろんシノンは後ずさる。だがその銃口は、斜めに下に、つまり床に向いていた。

 

そして1発だけ、発砲する。

 

ズダン!

キンキンキン!

 

その後すぐ床と壁、そして天井に弾丸が反射する音がして……

 

ドサッ

 

と、シノンの()()()何かが落ちる音がした。

とっさにシノンが振り向く。

 

するとそこには、緑色の、人が入れそうなくらい大きなダンボール箱があった。

 

「え……?」

 

もちろんシノンは訳が分からず首を傾げる。

すると店主が、その答えを出した。

 

「それは、僕からのプレゼントさ。受け取ってね」

「……!?ほんとに?あ……ありがとう」

 

シノンは恐る恐る、ダンボールに近づく。

そして蓋をゆっくり開けると、そこには……

 

ヘカートII用のサイレンサーと、G18用のサイレンサー、それに、消音(ステルス)化するためのカスタムキットが入っていた。

 

シノンは箱の中を覗き、箱に対してプレゼント類が小さすぎることに疑問を持つ。

 

別にシノンは、プレゼントに対して不満がある訳では無い。

むしろ嬉しいぐらいだ。

 

サイレンサーとは、その名の通り、銃の音を消す(サイレント)するための追加バレルの事で、見た目に反して意外に高い。

それも、学生プレイヤーが手を出せないレベルにだ。

ちなみにその見た目から、別名「ちくわ」とよばれているが、それは黙っておこう。

 

しかもそれに追加して、カスタムキットまでついている。

これは、このGGOにある「剣銃作成スキル」を持つ人たちによって商品化された、プレイヤーのプレイヤーによるプレイヤーのためのアイテムだ。

実銃のように、消音化するための様々な追加・交換パーツが入っている。

リロードやコッキング時の音を軽減するためのものや、消音化によって壊れやすくなるのをカバーするための強化スライドなど。

ただし、ゲームシステムの扱い的には単なるプレイヤーが作った「加工物」なので、アイテム名が「加工物」になっているのが残念だ。

 

まあでも、シノンからしてみればこれ以上ないプレゼントだ。

 

シノンは早速中に手を伸ばす。するとその時。

 

「よいしょ」

「うわっ!」

ドサッ

 

誰かから背中を押され、シノンがダンボールの中に入ってしまった。

そしてそのまま、蓋を閉められる。

 

「ちょっと!何よ!」

「店主!ガムテープ!」

「はいはーい!」

 

外からビック・ボスの声が聞こえる。

なるほど、あいつか。と、シノンが納得し、怒りに任せてダンボールを突き開けようとした時。

 

もう既に時は遅かった。

 

びびーっとガムテープが蓋に被せられ、閉められる。

そしてシノンは、ダンボールの中に閉じ込められた。

 

シノン本人は、店主がわざわざ人の入るくらいの大きさのダンボールを用意した理由を知り、怒りの絶頂である。

 

だが実際は、これはビッグ・ボス、つまりタスクの考えた、とある「計画」だった。

 

「シノン!見えるか?」

 

ビッグ・ボスが、ダンボールの隙間から中を除く。

シノンはその目を、きっ!と睨みつけた。

 

「ちょっと!何するのよ!」

「まあまあ、これは儀式だ」

「はぁ!?」

「ごめんねーシノンさん。ボスがどうしてもしたいって言うから……」

「何の話よ!」

「なあシノン、ダンボールの蓋は、下にもあるだろ?」

「……?ええ、まあ」

「そこから足を伸ばして、歩いてみてくれよ。」

「何?どういうこと?」

「まあ、いいからさ、ほら!」

「嫌よ!何でやらなきゃいけな……」

「やらないとここから出してやらないぞ?」

「……!」

「ほらほら〜♪」

「ボス……はしゃぎすぎだよ……」

「いいだろう、こんな時ぐらい!」

「まあね」

「まあねじゃないわよ!」

「お、ダンボールの住人がなんか言ってら」

「………!!!!」

 

さすがのシノンも、ビッグ・ボスのとぼけ様に呆れたようだ。

大人しく、指示に従う事にする。

 

ガサガサ……

ひょこっ

 

「ぷっ……」

「んぐっ……」

 

シノンが足を出し、たった瞬間、ビッグ・ボスと店主が吹きそうになる。

もちろん、必死にこらえる。だが、この世には我慢したくてもできないものがあるのだ。

 

結果ビッグ・ボスと店主は、大笑いしてしまった。

 

「だははははははははははははは!」

「あははははははははははははは!」

 

もちろんシノンは、大激怒である。

ダンボールを投げ捨てて、(もちろんプレゼントは回収して)二人へ殴りかかってきた。

 

だが、そこは彼ら。

あっさりと避けて、また笑い転げる。

 

 

そしてその後1時間は、シノンが追いかけ回し、笑い転げるビッグ・ボスと、店主が逃げ回るというなんとも滑稽な戦いが、店内で繰り広げられた。

 

そしてその日、このGGOに、新たな生物が誕生したのであった。

 

「ガンゲイルビジョハシリバコ」

 

それがその名である。




いつも読んで頂き、ありがとうございます。
駆巡 艤宗です。

お待たせしました。
感想欄の中で、一番「Good」が多かった、「ガンゲイルビジョハシリバコ」。
やっと出すことが出来ました。
長々とお待たせして、すみませんでした。

少し余談しますと、今回はタイトルに少し工夫がしてあります。
見てみてくださいね!

他のご意見も、積極的に取り入れていこうと思ってますので、もう少しお待ちください。
(エロイモアや松明、サンタ迷彩やワニキャップでの儀式、Mk22やM1911A1などなど…お待たせしております!すみません!)

今後も、よろしくお願いします。

では。

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