これは【GGO】であって、【MGS】ではない。 作:駆巡 艤宗
Episode24 事件 〜Incident〜
「タスク君!」
「ん?」
バタン!
シノンが正式に仲間に、ガンゲイルビジョハシリバ……ゲフン。になってから数日後。
今日は土日の休日だからと、開店の一足先に、しかも店主よりもはやく店主の店に来ていたタスクは、慌てて飛び込んできた店主に目を丸くしていた。
飛び込んできた本人である店主は、大慌てである。
「なんです!?どうしたんです!?店主さん!」
「……タスク君!慌てないで聞いてほしい。まだ不確定だ、不確定だけど……!」
「聞く!?不確定!?何の話ですか!」
「だから、不確定な話だけど、落ち着いて聞いてほしい」
「わ……分かりましたから、まず店主さんが落ち着いて下さい!」
「あ、そ、そうだね、ふ、ふううう……」
タスクになだめられ、店主がゆっくり息を吐く。
タスクが店主を自分の隣の席に座らせ、そしてきちんと落ち着いたところで、タスクから話を切り出した。
「よし、ならまず、何の話ですか?」
「うん……あのさ、タスク君は、ゼクシードってプレイヤー、知ってるかい?」
「ゼクシード?あの情報工作で成り上がった彼ですか?」
「そうそう。彼についてなんだけど、この音声を聞いてほしい」
「……?」
そういって、店主は音声のみの再生用のウィンドウを開く。
そしてその再生ボタンを押した。
するとそこから、機械によって変音された音声が聞こえてきた。
『ゼクシード!偽りの勝利者よ。今こそ真なる力による裁きを受けるがいい!』
ズダァン!
そしてその短いセリフの後に聞こえてくる一発の発砲音。
そこで音声は消えていた。
店主はそのウィンドウを閉まって、再びタスクに向き合う。
そしてまた、話し出した。
「まず、この音声の録音日から、ゼクシードはこのゲームにログインしてない」
「え……?」
「この音声の録音場所は、とあるGGO内の酒場。ここでとあるプレイヤーが、その時やっていた生放送のネット番組に出演中のゼクシードに対して発砲した」
「対して……?ディスプレイにですか?」
「そう。そして、この銃の発砲音。この発砲音の主は、自らを
「……」
「何か不穏な感じがしない?」
「確かに。発砲音からして、銃は恐らくトカレフTT-33でしょう。ハッキング……によるものではないですね。トカレフはデータ的にもそんなもんに使うようなものじゃない」
「……だとしたら?」
「事件……ですかね」
「やっぱりタスク君もそう思う?」
「……はい」
「だよね……まだ正確なのはあれだけど、彼は撃たれた直後、苦しみながら倒れた。」
「苦しみながら?」
「そう。普通じゃありえないよね」
「……」
そう。この世界では、意外に苦しむという概念がない。
と言っても、一概にないとは言えないが、大体はHPバーが全損した時にはすぐに光の粒子になって消えるから、ほんの一瞬の話だ。
たとえナイフで斬られても、しびれのような痛みがあるだけ。
その痛みだって、ずっと続くわけではなく、それも一瞬の話だ。
だとすれば、どういう事か。
ゼクシードは、
そしてそれを裏付けるかのように、その後作動したアミュスフィアの安全装置。
そしてその後に一切されない、GGOへのログイン。
どう考えてもおかしい。
だから店主は、不確定ながらも、タスクに、そして関節的にだがビッグ・ボスに報告したのだ。
「……ついに来たね。タスク君」
「……はい」
二人は、覚悟を決めたような目をして机を睨む。
だが、二人はすぐにその視線を元に戻した。
「さて、その前にまず、普通の仕事だよ。まだ本当にそうなのか決まったわけじゃないからね」
そう言って、店主は店を開く準備を始める。
だが、彼らにはもう、既にわかっていた。
これから、彼らは彼らの「本当の仕事」を、しなければならないということに。
そしてそれは、少しだけ形を変えて、的中することになる。
とある、一通のメッセージによって。
✣
開店してから約10分と言ったところだろうか。
今は早朝。やはり最初はお客が来ないため、しん……と静まり返った店内で、二人が佇んでいた時。
いきなり、一通のメッセージがやって来た。
その差出人の名前には、「仮想課 菊岡」と書いてある。
二人は顔を見合わせた。
なぜならその「菊岡」という仮想課の人物こそ、二人をこの世界に送り込んだ本人だからである。
想像には難くなかった。ゼクシードの件についてだろう。
そう考えて、二人は揃いも揃って顔を戻し、ウィンドウの「開く」ボタンを押す。
するとそこには、こう書かれていた。
『やあ!二人とも、お元気ですか?タスクくんはもちろんのこと、タモンさんもね!急に申し訳ないが、二人に通達することがあって連絡したんだ。心して読んでおくように』
二人の目が、文の上から下へと写ってゆく。
『君たちは知っているかも知れないが、今、とある事件が発生している。概要は……、トッププレイヤー、ゼクシードの死亡事件』
「死亡……!」「これは……!」
タスクと店主がそろって息を呑む。
まさかとは思っていたが、そのまさかが的中した瞬間だからだ。
これはますます、自分たちの出番かと、意気込む。
だがまだ、文章は続いていた。
『君らはまだ犯行手口も犯人の手がかりも、何も掴めてないと思う。僕ら仮想課も、まだ掴めてないのが現状だ。そもそも犯行なのかもわからない。だから今、解決に向けて努力しているところなんだけど……、一つ、お願いがあるんだ』
「「……!」」
ついに来る、と二人は覚悟する。
そしてその文面は、衝撃的な言葉が並べられていた。
『この事件に、君たちからは手を出さないでほしい』
「何……!?」「え……!?」
タスクと店主は揃って疑問を口にした。
こういう事態のために、自分たちはここにいるんじゃないのか、と疑問がよぎる。
だが文章は、その下に続いていた。
『ただし、だからと言って、一切この事件に関わるなとは言わないよ。実は、もうすぐそちらに一人、こちらからプレイヤーを送り込む。彼には、君たちに会いたければ会え、と言っておく。もし接触したら、手助けするかどうかの判断は君たちに委ねるつもりだ』
「意味がわからない」と言わんばかりに二人の眉間にシワがよる。
そしてその文章は、まだまだ続いていく。
『これは君たちのための措置なんだ。彼は最近見つけた、偶然解決に当たってくれそうなプレイヤーさ。実力もある。まぁ、君たちほどでは……無いけどね。そのお陰で、君たちの力を借りなくて済んでいる。本来なら君たちの仕事だが、この事件の解決後が困るだろう?だから、ご理解願いたい。
……ただし、もう一度書いておくが、彼には君たちの事をほんの少しだけ、話してある。彼がもし、君たちの所にやって来たら、その時は協力してもらって構わないよ。もちろん、断ってもね。
でも、くれぐれも言っておくが、「これから」の事を考えて行動してほしい。
……それともし、こういうのはあまりよろしく無いかもしれんが、この事件解決のために君たちが、あるいは君たちの仲間の命が失われたら、元も子もないんだ。辛いと思うが、耐えてくれ。
幸運を、タスクくん。タモンさん』
ぐっ……と、タスクと店主が衝動を堪える。
そして文章は、ここで終わっていた。
確かに、この文章に書いてあることは間違いではない。
なぜなら、この二人の仕事はこの事件が終わった後でも続くからだ。
それを見越して考えた場合、ここで命を張って表に出るのは危険すぎる。
だがそんな事言ったら、彼らがここにいる意味が無いのではないかと思うだろう。
なんてったって人の命が既に一つ失われているのだ。
特に彼ら二人に関しては、このことは、はいそうですかと黙っているわけにはいかない。
だが、この世界に彼らがいるかいないかで、仮想課にとっては、その先の解決の対応がガラリと変わるのだ。
確かに、
でも、その後のことを考えた時、代わりにやってくれる人がいれば、そちらに任せるのが道理だった。
ー「
そんな言葉のせいか、やはり彼らの中にはモヤモヤが残るのは、当然だった。
「っ……!」
タスクはその文章を読み終わると、左手のウィンドウを操作し、メインウェポンであるM82A1とサブウェポンのデザートイーグル+サイレンサーだけ取り出して、すぐにかけ出して、射撃場に入っていった。
その小さな背中に、店主はポツリと声をかける。
「……辛いよなぁ」
と。
でもその呟きは、やはり、空間に消えてなくなった。
いつも読んでいただき、ありがとうございます。
駆巡 艤宗です。
今回は、二つ、予告させていただきます。
一つ目は、〔次回、新キャラを出します!〕
このキャラは、MGSのものでも、GGOのものでもありません。
かと言って、オリジナルでもありません(なんやねん)
イメージとしては、今流行りのFPSゲーム、「虹〇S」のキャラ数人を掛け合わせたようなキャラにする予定です。
二つ目は、〔設定集を出します!〕
こちらは、本当にぱっと思いついたことです。時期は、まだ未定です。
ここから、(恐らく)話が複雑化してきますし、新キャラもちょくちょく出てきます。
そんな中で、読者の皆様の脳内混乱を防ぐための措置として、勝手に出させていただきます。
ご理解をよろしくお願いします。
乞うご期待!(と言っていいのか!?怖い…カタ:(ˊ◦ω◦ˋ):カタ)
では。
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