これは【GGO】であって、【MGS】ではない。   作:駆巡 艤宗

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Episode27 仕事 〜work〜

「仕事を、してもらうよ」

「な……!?」

 

重苦しかった死銃についての話。そしてその後いきなり言い渡された、初仕事。

もちろんの事、シノンは驚きを隠せなかった。

 

「え……ちょっ……ちょっと、待ってください!私はまだ……!」

「……まだ?」

「訓練してない……し、その……要領も分からないんですけど……」

 

シノンは慌てふためいて弁明する。

それもそのはず。シノンはまだ、ボスとの訓練も受けていないし、そもそも仕事の要領も分からないのだ。

 

そんな状況でどうしろと言うのか。

シノンの中には、膨れ上がった不安という不安と、少しの不満があった。

 

「その……」

「……」

 

未だ黙りこくっている店主に、シノンは必死に伝えようのない「不安」を伝えようとする。

 

だが、実際はそんな不安は不要だった。

 

「……ふふっ、あっはは、ごめんね。驚かせちゃったね」

「は、はい?」

「うん、分かるよ。その気持ち。最初は誰でも怖いよね。でも安心して?流石にいきなりボスがやるような仕事にはぶち込まないから」

「は、はあ……それなら……」

「うんうん、ごめんごめん」

 

シノンは一気に安心感を感じる。

そんなシノンを見て、店主もニコニコして笑っていた。

 

そしてすぐに、店主は話を戻す。

 

「で、仕事の内容だけど……」

「……」

「『BOB』に、出てほしいんだ」

「え……!?」

 

ーBOB。正式名称、「Bullet・of・Bullets(バレット・オブ・バレッツ)

この大会は、今回で3回目を迎える、GGOの中での、いわゆる「最強プレイヤー決定戦」だ。

いくつかの予選ブロックで1対1の戦闘をいくつも勝ち抜き、最後の決勝戦で30名での総当たり戦を行うこの大会。

 

まあ、シノンはもともとこの大会に出るつもりだったし、優勝も狙っていたので、むしろ願ったりの仕事である。

そして、一番気になるのが「理由」だが……

 

「ま、シノンさんは強いし、何回も出てるしね。でもそれは、「表世界」の話だけど」

「うっ……」

「ふふ、ごめんごめん。で、なんで出てもらうのかというと……」

「……」

「死銃と、向こうから送られてくるプレイヤーとの接触。これが目的だ」

「接触……?」

「そう。実際に会話を交わしてもいいし、横目で見つつ存在を確認してるだけでもいい」

「は、はあ」

「まあ、実際は送られてくるプレイヤーがどんな人かは分からないから、それを探し出してほしい……っていう部分もあるけどね。きっと彼は、死銃の目をこちらに向けさせるために、何かとんでもないことを誰にでも見られる場所でやるはずだ」

「あ……なるほど」

「……ふふ、もう分かったかな?」

「はい……その、「誰にでも見られる場所」が、BOBなんですね?」

「そう……!その通り。この時期にやってくるなら、誰だってそうするのが手っ取り早いだろう?まあ、実力があれば……の話だけど、なんせ向こうからの送り人だ。充分あると考えるのが適当だろう?予選の参加人数は恐ろしいほどいるから、バレる可能性も0に等しいし……」

「確かに……」

「さて……この仕事、やってくれるかな?シノンさん」

「……」

 

シノンは一旦考える。

 

このGGOでの表世界では、「シノン」は、BOB予選を勝ち抜く強者として知られているから、「今回もシノンはBOBに出る」というように思われている。

それはシノン自身、分かっていた。

 

もともと、普段の自分は、そのBOBで勝つことが目的でこのゲームに来て訓練していたから、BOBにでること自体は何ら問題は無いのだが……実際のところ、考えが変わりつつあった。

 

理由としては、今の自分の立場上、ボスやその周りの人達に迷惑を掛けないか不安だったのが、一番の理由である。

 

もし、無断でBOBに出て、ビッグ・ボスやその周りの人に影響が及んだら……。

それのせいで、自分と似た、あるいはそれ以上の過去を持つ彼らを、さらに貶めるようなことになったら……と思うと、気が気でなかった。

 

彼らの辛さはよく分かるし、むしろ自分より辛いかもしれない。

なのに今、彼らは堂々と、怯え続ける自分よりはるかに強く生きている。

だからこそ、行動を共にさせてもらうことで、自らも何か得ようと、ここにいさせてもらっている。

 

それを、自ら潰すわけには行かなかった。

 

……でも、あちらから出ろと言われれば、文字通り「願ったり」である。

 

シノンは、そんな思いを言葉に乗せた。

 

「……分かりました。出させてもらいます」

「え……?ふふ、やっぱり、出るの躊躇ってたんだねぇ?」

「な……なぜそれを……!?」

「だって、こちらからお願いしているのに「出させてもらう」なんて、普通言わないじゃないか」

「あ……!」

「シノンさんは日本語を間違えるような人じゃないし……ふふ、案外、かわいいね、シノンさん」

「〜!」

 

ニタニタしながらシノンのミスを指摘する店主。

真っ赤になりながら、自分のミスを呪うシノン。

それを、好奇な目で見つめるラクスとカチューシャ……

 

ラクス達から見れば何をやってるんだろう…というような状態だったが、それはもう、彼らにとって日常になりつつあった。

 

 

シノンの初仕事、Bullet・of・Bullets(バレット・オブ・バレッツ)が始まるまで、残された時間ははあと少しである。




いつも読んでいただき、ありがとうございます。
駆巡 艤宗です。

度々すいません。
告知!『新キャラだします!』(またかよ)

またかよ、と思われた方、その通りです。
ごめんなさい!

えーと、予定としては、前回と同じ、「虹6S」(変に隠すのも放棄した模様)のキャラを数人かけあわせたようなものです。(またかよ)

少しだけヒントを出しますと、「感想欄を読んでみてください!」

あ、ちなみに、時期は決まってません。
キャラの形が出来上がり、登場を決定しましたので、報告させていただいた次第です。

乞うご期待!

では。

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