これは【GGO】であって、【MGS】ではない。   作:駆巡 艤宗

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Episode28 「彼」 〜"He"〜

「あ、あの、すいません!ちょっと道を……」

「……」

「あっ……!」

「何?」

 

彼がシノンに声をかけてきたのは、BOBエントリー最終日。

ビッグ・ボスとの訓練を終え、SBCグロッケンに帰ってきた直後だった。

 

いかにも「THE 初心者」な、初期の白服に黒く長い髪をした、一見女性のプレイヤーが、そこにいる。

 

シノンは、一旦「彼」を見たあと、服装や表情から、警戒を解く。

いつも話しかけてくる面倒くさい男プレイヤーではなく、初心者の女性プレイヤーと勘違いしたからだ。

 

「このゲーム……初めて?」

「あ……!」

 

そう、シノンが話を続ける。

だが「彼」は、固まっていた顔を少し動かすも、返事をしなかった。

 

シノンは、そんな彼の表情を見て、ふっと顔から冷たさを消し、笑顔を見せて、質問を変えた。

 

「どこに行きたいの?」

「ええっと……」

「ん……?」

「その……」

 

不明瞭な答えに、シノンが耳を傾ける。

だが、その後すぐに、ハッキリとした答えが返ってきた。

 

「はい。初めてなんです……。どこか、安い武器屋さんと、あと、総督府っていうところにいきたいんですが」

「うん……いいよ。案内してあげる」

 

シノンは一度考えた後、快く承諾する。

 

いくら裏世界に入ったとはいえ、これくらいなら別に問題は無いだろうし、もしこれがタスクなら、きっと彼もするだろう。

ボスがやるかと言われれば……微妙なところだが。

まあ、ついでに言えば、シノンが今からやろうと思っていたBOBのエントリーも総督府でやるし、一石二鳥だ。

 

そう考えて、シノンはまずは……と総督府へ歩き出す。

 

 

《あの子には悪いけど、しばらく誤解したままでいてもらおう……》

 

 

背後についてくる「彼」の、そんな思惑は、シノンはもちろん知る由がなかった。

 

 

歩き出してから、シノンは彼の事を沢山聞いた。

 

彼も、BOBに出るために総督府へ行くという事。

このキャラクターは、前までやっていたファンタジー系のゲームのコンバートである事。

銃の戦闘に、前から興味があるという事。

 

色々なことを聞くうちに、シノンはある名案を思いついた。

 

「……じゃあ」

「はい?」

「じゃあ、色々揃ってるとあるお店にいこうか。大きいマーケットでもいいけど、こっちの方が安いかもしれないし。それに……」

「……それに?」

「それに、あのお店ならあなたにピッタリの武器をくれるはず」

「へえ、そんなところが……!」

「そう、あるのよ。さ、こっち」

「はい!」

 

シノンはくるりと方向転換し、()()()へと歩き出す。

「彼」はその背中に素直について行った。

 

 

「ここ」

「へえ……」

 

方向転換して歩くこと2〜3分。

シノンら一行は、()()()……店主の店の前に着いた。

「彼」はその店の外見を見て、感嘆する。

 

「キレイですね……なんか、GGOのような汚れがない」

「まあここの店主さんキレイ好きだしね……さ、入って入って」

「は、はい!」

ガチャリ……

 

「彼」が、恐る恐る扉を開けて、中を覗きつつ入っていく。

すると、奥からあの優しい声が聞こえてきた。

 

「いらっしゃいませ〜……お、新人さんかな?よく来てくれたねえ」

「あ、ど、どうも……」

「ん?背後にいるのは……シノンさんじゃないか!ふふ、お友達かな?」

「あ……いや、歩いてたら声をかけてきたので案内を……」

「あら、そういうこと。なるほどね、通りでシノンさんの目がやさしいのか」

「え……?」

「「え……?」って……まさか自覚なし?」

「自覚?なんのです?」

「シノンさん、いつも怖い目をしてるじゃない?」

「しっ……!してません!」

「はは、冗談だよ」

 

店主とシノンの会話から、「彼」は、二人がよく会う仲だと推測する。

そんな思惑が顔に出たのか、いつしか「彼」は黙って彼らを眺めていた。

それを見つけた店主が、慌てて話を戻す。

 

「あ、ごめんごめん。さ、ここに座って?シノンさんは……どうする?」

「う〜ん……。店の中を見てます。この後、その子と総督府に行かなければならないので」

「OK。それじゃ、まかせて!」

「よろしくお願いします」

 

シノンはそう話して、3人の列から外れる。

残った店主と「彼」は、店主の案内で店の奥のカウンターに行き、そして、いつもの構図に収まった。

誰かがカウンターに座り、その机を挟んだ目の前に店主が立つ、この構図に。

 

明らかに緊張している「彼」に、店主は自分も椅子を持ってきて座り、向かい合って話し出した。

 

「改めて……と。ようこそ、僕の店へ」

「ど、どうも……」

「あっはは、そんなに緊張しなくても大丈夫だよ。リラックスして?」

「は、はあ……」

「ふふ、そうそう、リラックスしてね……」

 

前に座る「彼」が、大きく息を吐く。

店主はそんな「彼」の行動を、優しい目で見守っていた。

 

そして、一旦落ち着いた所で、話を再開する。

 

「よしじゃあ、まず落ち着いた所で……名前から教えてくれるかな?」

「名前……!あ、あの、えっと……」

「ん……?」

 

笑顔の店主の前で、たじろぐ「彼」。

そんな「彼」から次の瞬間、店主も聞き覚えのある、いやむしろ聞いたことがない訳が無いあの名前が、彼の口から出てきた。

 

 

「キリト……です」

 

 

「ああ……!」

 

店主が内心で、彼の思考が全てが繋がったのは、言うまでもないだろう。

 

「そういうことね……」




いつも読んでいただき、ありがとうございます!
駆巡 艤宗です。

まず、更新遅れてごめんなさい!
最近何かと忙しく……はい、すみません。

で、次に、今回駄文感すごい気がします!ご指摘よろしくお願いします!
人に頼るな?はい、すみません。

……よし、やっと本題です。

今回は、とある事の報告とお礼をさせていただきます!

【お気に入り登録数、400達成!】

ありがとうございます!

書き始めた時は、ここまで伸びると思ってませんでした!
本当にありがとうございます!

まだ出せていない新キャラとご要望、どんどん登場させるつもりですので、どうぞお付き合いよろしくお願いします!

では。

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