これは【GGO】であって、【MGS】ではない。 作:駆巡 艤宗
「あ、あの、すいません!ちょっと道を……」
「……」
「あっ……!」
「何?」
彼がシノンに声をかけてきたのは、BOBエントリー最終日。
ビッグ・ボスとの訓練を終え、SBCグロッケンに帰ってきた直後だった。
いかにも「THE 初心者」な、初期の白服に黒く長い髪をした、一見女性のプレイヤーが、そこにいる。
シノンは、一旦「彼」を見たあと、服装や表情から、警戒を解く。
いつも話しかけてくる面倒くさい男プレイヤーではなく、初心者の女性プレイヤーと勘違いしたからだ。
「このゲーム……初めて?」
「あ……!」
そう、シノンが話を続ける。
だが「彼」は、固まっていた顔を少し動かすも、返事をしなかった。
シノンは、そんな彼の表情を見て、ふっと顔から冷たさを消し、笑顔を見せて、質問を変えた。
「どこに行きたいの?」
「ええっと……」
「ん……?」
「その……」
不明瞭な答えに、シノンが耳を傾ける。
だが、その後すぐに、ハッキリとした答えが返ってきた。
「はい。初めてなんです……。どこか、安い武器屋さんと、あと、総督府っていうところにいきたいんですが」
「うん……いいよ。案内してあげる」
シノンは一度考えた後、快く承諾する。
いくら裏世界に入ったとはいえ、これくらいなら別に問題は無いだろうし、もしこれがタスクなら、きっと彼もするだろう。
ボスがやるかと言われれば……微妙なところだが。
まあ、ついでに言えば、シノンが今からやろうと思っていたBOBのエントリーも総督府でやるし、一石二鳥だ。
そう考えて、シノンはまずは……と総督府へ歩き出す。
《あの子には悪いけど、しばらく誤解したままでいてもらおう……》
背後についてくる「彼」の、そんな思惑は、シノンはもちろん知る由がなかった。
✣
歩き出してから、シノンは彼の事を沢山聞いた。
彼も、BOBに出るために総督府へ行くという事。
このキャラクターは、前までやっていたファンタジー系のゲームのコンバートである事。
銃の戦闘に、前から興味があるという事。
色々なことを聞くうちに、シノンはある名案を思いついた。
「……じゃあ」
「はい?」
「じゃあ、色々揃ってるとあるお店にいこうか。大きいマーケットでもいいけど、こっちの方が安いかもしれないし。それに……」
「……それに?」
「それに、あのお店ならあなたにピッタリの武器をくれるはず」
「へえ、そんなところが……!」
「そう、あるのよ。さ、こっち」
「はい!」
シノンはくるりと方向転換し、
「彼」はその背中に素直について行った。
✣
「ここ」
「へえ……」
方向転換して歩くこと2〜3分。
シノンら一行は、
「彼」はその店の外見を見て、感嘆する。
「キレイですね……なんか、GGOのような汚れがない」
「まあここの店主さんキレイ好きだしね……さ、入って入って」
「は、はい!」
ガチャリ……
「彼」が、恐る恐る扉を開けて、中を覗きつつ入っていく。
すると、奥からあの優しい声が聞こえてきた。
「いらっしゃいませ〜……お、新人さんかな?よく来てくれたねえ」
「あ、ど、どうも……」
「ん?背後にいるのは……シノンさんじゃないか!ふふ、お友達かな?」
「あ……いや、歩いてたら声をかけてきたので案内を……」
「あら、そういうこと。なるほどね、通りでシノンさんの目がやさしいのか」
「え……?」
「「え……?」って……まさか自覚なし?」
「自覚?なんのです?」
「シノンさん、いつも怖い目をしてるじゃない?」
「しっ……!してません!」
「はは、冗談だよ」
店主とシノンの会話から、「彼」は、二人がよく会う仲だと推測する。
そんな思惑が顔に出たのか、いつしか「彼」は黙って彼らを眺めていた。
それを見つけた店主が、慌てて話を戻す。
「あ、ごめんごめん。さ、ここに座って?シノンさんは……どうする?」
「う〜ん……。店の中を見てます。この後、その子と総督府に行かなければならないので」
「OK。それじゃ、まかせて!」
「よろしくお願いします」
シノンはそう話して、3人の列から外れる。
残った店主と「彼」は、店主の案内で店の奥のカウンターに行き、そして、いつもの構図に収まった。
誰かがカウンターに座り、その机を挟んだ目の前に店主が立つ、この構図に。
明らかに緊張している「彼」に、店主は自分も椅子を持ってきて座り、向かい合って話し出した。
「改めて……と。ようこそ、僕の店へ」
「ど、どうも……」
「あっはは、そんなに緊張しなくても大丈夫だよ。リラックスして?」
「は、はあ……」
「ふふ、そうそう、リラックスしてね……」
前に座る「彼」が、大きく息を吐く。
店主はそんな「彼」の行動を、優しい目で見守っていた。
そして、一旦落ち着いた所で、話を再開する。
「よしじゃあ、まず落ち着いた所で……名前から教えてくれるかな?」
「名前……!あ、あの、えっと……」
「ん……?」
笑顔の店主の前で、たじろぐ「彼」。
そんな「彼」から次の瞬間、店主も聞き覚えのある、いやむしろ聞いたことがない訳が無いあの名前が、彼の口から出てきた。
「キリト……です」
「ああ……!」
店主が内心で、彼の思考が全てが繋がったのは、言うまでもないだろう。
「そういうことね……」
いつも読んでいただき、ありがとうございます!
駆巡 艤宗です。
まず、更新遅れてごめんなさい!
最近何かと忙しく……はい、すみません。
で、次に、今回駄文感すごい気がします!ご指摘よろしくお願いします!
人に頼るな?はい、すみません。
……よし、やっと本題です。
今回は、とある事の報告とお礼をさせていただきます!
【お気に入り登録数、400達成!】
ありがとうございます!
書き始めた時は、ここまで伸びると思ってませんでした!
本当にありがとうございます!
まだ出せていない新キャラとご要望、どんどん登場させるつもりですので、どうぞお付き合いよろしくお願いします!
では。
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