これは【GGO】であって、【MGS】ではない。   作:駆巡 艤宗

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Episode2 眼帯マスクスナイパー 〜Eye band and mask sniper〜

シノンがタスクとエンカウントした次の日。

とあるガンショップに来ていたシノンは、後ろの男2人組の話し声に耳を傾けていた。

 

「なあなあ聞いたか?」

「いきなりなんだよ、聞いたって……?何をだよ」

「あの、噂の眼帯マスクスナイパーの話!」

「眼帯……?ああ、それか」

「そう!それが、このまえ8人スコードロンをヘッドショットだけで壊滅させたんだと!」

「8人のをか!?そりゃ大したもんだなぁ」

「だろ!?すごいよなぁ、眼帯はともかく、そいつのマスクをとった顔を見たものは誰もいないんだと」

「へぇ、でも、眼帯とか正直命中率落ちないか?」

「だよな、でもそいつは頭を一発でぶち抜くらしいぜ?」

「ひゃ〜おっかねぇ奴もいるもんだなぁ。武器とかわかってんの?」

「それがね……なーんも分かんないのよ」

「謎に満ちてんな……会いたくないもんだ!」

 

そう言って、その男2人は笑い合う。

シノンは、商品を見るふりをして考えていた。

 

《眼帯、それにマスク……あのスナイパーと一致している。彼も、戦場で笑えるだけの強さを持ってた。それにあの笑み……あの時私は、結局トリガーを引けなかった。引いたとしても、当たったかどうか……》

 

シノンは、あの時に出会った、あのスナイパーのことを考える。

彼女はまだタスクの名前を知らない。でも、くっきりとあの光景を覚えていた。

あの時の弾の正確さ、撤退する時の笑み……

どれをとっても、シノンから見てみたら強いことに変わりない。

 

《いつかまた戦いたい。そして勝ってみたい!》

 

いつの間にかシノンは、手をぎゅっと握りしめていた。

 

 

「〜♪弾っ弾〜タマタマさんを買わなくちゃ〜♪」

 

一方、タスクは、そろそろ切らしてきたスナイパーライフルの弾を買いに、これまたとあるガンショップに来ていた。

 

いつも通っているガンショップ。ここの店主はおまけしてくれる事が多く、お金を後払いに先に商品をくれることもあるいいお店だ。

 

例えば、前に一度、仕事する前に弾を切らしてしまい、先に弾を貰って仕事の報酬で支払った事がある。

 

そんなハイリスクな事を、この店主は平然とやってくれたのだ。

タスクは、そんな店主さんが大好きだった。

 

……それに、数少ないタスクの正体を知る人物の1人でもある。

 

「こーんにちわ!」

「おーう、いらっしゃい!」

 

タスクは、扉を勢いよく開ける。

店主は、いつもの気前良い返事を返してくれた。

実はこの店主、本人自身プレイヤーで、たまに狩りに出たりする。

それ故に、融通がとってもききやすく、タスクのみならずやってくるプレイヤー達皆に好かれていた。

 

その店主が、タスクを見てにこやかに話しかける。

 

「おっ!来たねぇ、タスク君!お仕事はどうよ!」

「順調です!店主さんのおかげで、この前もぱぱっと終わりました!」

「お、そりゃあ良かったな!ちなみに……何人だい?」

「あはは……あまり言えないのですが、8人です」

 

タスクと店主がここまで話した時、店の中にいた一人のプレイヤーが、反応した。

 

何を隠そう、シノンである。

 

シノンは、即座に振り向いてしまう。

だが、そんな動きなど全く気にとめず、店主とタスクは話を続けた。

 

「おお、そりゃまたすげえ事すんな!どれ、なにかサービスしたろうか」

「ええー?いいですよ店主さん。それはまた今度、僕が困ったときに!」

「……ふふ、タスク君。よく言った!」

「店主さんが毎回やるからです!」

 

そう言って、タスクと店主が笑い合う。

傍から見れば、ただの仲が良いプレイヤー同士の談笑だろう。

 

だが、タスクはきちんと見抜いていた。

この店の中に、つい昨日エンカウントした同業者(スナイパー)がいる事に。

 

それもそのはず。あんな目立つ髪の色のプレイヤーだ。忘れるわけがない。

 

故にタスクはシノンをチラりと見る。

……が、すぐに店主へと視線を戻した。

 

店主は、何気ない優しい顔で、タスクを見る。

だが同時に、店主も見抜いていた。

タスクとシノンが昨日、エンカウントしている事に。

 

さっきも言ったが、この店主は融通がききやすく、皆に好かれている。

それはつまり、皆から雑談を交えて様々な情報を得られるという事だ。

様々なプレイヤーから聞く「眼帯マスクスナイパー」の噂。

そして、その話に対するシノンの反応と、今さっきのタスクの目の動き。

それに加え、タスクが来る前にシノン自身が相談してくれた、その「眼帯マスクスナイパー」に関しての話。

実際のプレイヤーである店主からして見れば、上記の事から推測してこの2人が昨日、エンカウントしている事は明白だ。

 

だがもちろん、タスクの秘密はバラさない。店主自身も、タスクの事が大好きだからだ。

 

だからあえて、たわいのない話を続ける。

 

「はは、すまんすまん。タスク君がかわいいからさ、ついやりたくなっちゃうんだよ!」

「か、かわいいって!?僕男ですよ!?」

「関係ない!僕みたいなオッサンは、お前みたいな小さい子を可愛いと感じてしまうんだよ!」

「え、ええ!?」

「こっちに来い!」

 

そう言って、タスクの頭をわしゃわしゃと撫でる。

タスクは「やめろー!」と抵抗する素振りを見せつつも、すんなりと店主の腕の中に収まった。

 

それをずっと見ていたシノンが、ため息をつき、後ろを向く。

そしてポツリと、自分に言い聞かせるように呟いた。

 

「まさか彼な訳……ないよね」

 

と。

確かに、さっき聞いた噂と彼らの話の内容は一致しているし、あの時見たスナイパーの髪の色は、タスクの髪の色に似ている。

 

……だが、身長があまりにも小さいのだ。

目が合ったあの時、寝そべっていたために体は見えなかった。

だが、第一、そんな低身長プレイヤーが、あんな大きなスナイパーライフルを担げるわけが無い。

 

あの時、目が合って、あのスナイパーがスナイパーライフルを()()()としたのは見えた。だが、彼のにやけた顔を見たとき、すぐにスコープから目をそらしてしまい、担げていたのかどうか定かではない。

 

故に、シノンはタスクが噂のスナイパーである可能性を頭から消した。

いくら何でも、不確定要素が多すぎるからだ。

 

それに、例え確定要素だらけでも、あの大きなスナイパーライフルをあの小さな体でどう持ち運んだのかを問えば、一発でその説が否定されてしまう。

やはりこの説は違う。そうシノンは結論づけた。

 

そう頭の中で区切りをつけて、店を出るシノン。

 

そんな後ろ姿を、タスクと店主は見ていた。

そして、そこから視線を逸らさず、唐突にタスクが口を開く。

 

「店主さん?気づいてるんでしょ。あの話」

「うっ!やっぱり分かった?」

「分かりますよ。店主さん、癖が出てましたから」

「癖?どんな癖だい?」

「言ったら対策されてしまいますので、言いません」

「ちぇー、かわいくない子だな」

「さっきと言ってる事が真逆なのですが?」

「これはこれ!それはそれ!」

 

そう言って、また店主とタスクの掛け合いが始まった。




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