これは【GGO】であって、【MGS】ではない。   作:駆巡 艤宗

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Episode3 赤い血より赤い薔薇を 〜A red rose than red blood〜

「……と、いう訳さ」

「なるほど」

 

GGO内の、とあるガンショップ。

そのショップの裏部屋で、タスクと店主が話をしていた。

内容は、シノンが店主にした相談の話と、どうやって店主がそのシノンの標的がタスクである事に気づいたかについてだ。

 

概要は実に簡単だ。

シノンは、タスクが来る前に店主に「とあるプレイヤーをどうしても倒したい」と相談を受け、そのプレイヤーの特徴からタスクを連想する。

そしてタスクが来た時、タスクの視線や意識の動きで確信を得て、タスクに話を持ちかけた……

 

という訳だ。

 

タスクは正直、話が早くて助かっていた。

なぜなら、いずれシノンと勝負をするのは分かりきっている事だし、その時にはちゃっかりこのお店のサポートを受けるつもりだったからだ。

そこで、いちいちこの店主に説明するのは流石に面倒くさい。

かくして、タスクはほんの少しだけ、店主の詮索に感謝していた。

 

と言っても、今店主にこの事を知られたとして、シノンとの勝負が勃発するのがいつか分からない。

つまりどういう事か。それは、今この瞬間から、シノンとの勝負時のサポートを弱みに、何をされるのか、どんな恐ろしい依頼をされるのか分からないという事だ。

タスクはこの店主のズルがしこさに、正直嫌悪感を覚える。

 

そんな思惑が顔に出たのだろう。店主が、ガッチリとタスクの手を抑えながら、ニコニコしてタスクを見た。

タスクは、ここまでかと息を呑む。

そして店主がゆっくりと口を開いた。

……が、その開いた口から出てきた言葉は、とてつもなく意外なものだった。

 

「で、こうやって俺が勘づいた瞬間、匿名プレイヤーからシノンのPK依頼が来た」

「NA・N・DE ☆」

「という訳でよろしく」

「終わった……」

 

とん、と肩に憎たらしいクソ店主の汚らわしい手が置かれる。

タスクは、恨みがましそうに店主を見上げた。

 

なぜって、よりにもよってこのタイミングだからだ。

シノンがあのスナイパー、もといタスクに対して報復心全開の時である。

こんな時に姿を見られてしまえば、間違いなく激しい殴り合い(正確には撃ち合い)のはじまりはじまりである。

タスクとしては、しばらく様子を見て、シノンの報復心が薄れたところを頭一発ぶち抜いてやろう。そう考えていた。

そうすれば無駄に追撃される事も無く、だんだんと時間が経つにつれて決着が付く。

それが、一番望ましい勝ち方だ。

タスクは、マスクの奥のこの幼い顔を見られるわけには行かないのだ。

 

だが、この憎たらしいクソ店主によって、そんな野望は撃ち砕かれた。

 

そして、彼にとって一大仕事、「シノン暗殺」が、タスクに(()()()()()()()()()())受諾された。

 

 

「はぁ……あの店主め、なんで僕に……?」

 

場所が変わって、時間も少し進んで暗くなりかけている今。

タスクは、仕事のためにシノンが良くPKしている荒野の真ん中に、一人寝そべっていた。

もちろん、鼻と口だけのガスマスクに、左目の眼帯をつけている。

そして今回は、激しい戦闘を見越して「バトルドレス」と呼ばれる、黄土色の防弾鉄鋼が至る所に装着され、至る所に露出した、とっても重たいスーツを着ていた。

これを着るとすこし大きく見え、遠目で見ればガタイがよく見える。

 

それになりより、かっこいいのだ。これを着てスナイパーライフルやランチャー類を背負うと、とても様になる。

そう、まるで、【MGS】の、スネ〇クのように。

 

そんな話はさておき、タスクの左には、自分愛用のスナイパーライフル、「バレット M82A3」、別名「M107」があった。

 

このライフルは、アメリカ合衆国のバレット・ファイアーアームズ社が開発した、アンチマテリアルライフルだ。

 

アンチマテリアルライフルは別名、対物ライフル。

普通の対人ライフルより、威力と射程が大幅に向上されている。

それ故に、その希少性も高く、このアンチマテリアルライフルはこの世界に十丁程度しかないと言われており、同時にこの武装を持ったものは相当の実力者という事になる。

 

タスクも、必死になって手に入れたから、このM82A3は彼にとって誇りの様なものでもあるのだ。

なら、

 

そんな恐ろしい武装を持ったからには、もう敵なし!

 

……と、いう訳にも行かないのである。

 

実は、今回の目標(ターゲット)であるシノンも、アンチマテリアルライフルの使い手なのだ。

シノンが使うのは、「ウルティマラティオ ヘカートII」。

タスクのM82A3と同等の性能を持った、スナイパーライフルだ。

 

そんなライフル持ちがお互いに1体1で戦うという事はつまり、実力が拮抗し、長期戦に発展する事を意味していた。

別にそれ自体はタスクは気にしないのだ。こんな長期戦など、あの店主によって仕事をこなしてきたタスクにとって、短いようなものだからだ。

 

主にタスクの仕事は、店主が仲介して行われる。

どういう事かと言うと、まず依頼主が店主のあの店に行き、店主に依頼する。

そして店主は、その依頼に一番適性があるプレイヤー(傭兵)に、依頼を勧め、遂行させる。

そして成功した時に出る依頼主からの報酬の約1割が、店主の元に「仲介料」として入り、その依頼を遂行したプレイヤーに9割が入るのだ。

 

タスクは、そんな店主が仲介した実に様々な依頼を、仕事として淡々とこなしてきた。

暗殺・潜入・回収・破壊など。偵察もこなした。

そうやってどんどん場数をこなし、仕事を成功させていくと、あちら側の業界、いわゆる「裏業界」で、有名になっていく。

スパイ映画とかでよく見る、一般人には知られていないような世界だ。

そうなってくると、やはり一部の人達から狙われる。そこで、タスクはステルス性を重視し、マスクをつけ、アンチマテリアルライフルを入手し、なるべくステルスで任務をこなすようになったのだ。

 

当然、ステルスとなれば「隠れ蓑(マザー)」や「拠点(ベース)」も必要である。

そこで、 贔屓してくれることも多く、仕事も手に入りやすいあの店が、現状タスクの「隠れ蓑兼拠点(マザー・ベース)」となっていた。

店主もそのことはよく承知しており、「スパイの本部みたいな?かっこいい〜!」などとほざいていたが、やるときはしっかりとやってくれる。

 

かくしてタスクは、今のスタイルを確立させた。

といっても、このスタイルは単なる傭兵とあまり変わりない。そこで、あまりの成功率の高さと、身を隠しながらの戦闘スタイルから、裏業界で二つ名が付けられてしまった。

伝説の傭兵、GGOでの「ビッグ・ボス」と。

 

「はぁ……まあ、勝てないことは無いし、別にいいんだけど……」

 

そしてその「ビッグ・ボス」は今、完全に暗くなった荒野に、ボッチで寝そべって、悲しいかな、一人でつぶやきを漏らしていた。

内容は、タスクの悩みについてだ。

 

「どうしても、引き金は引きたくないんだよなぁ。なんというか……傭兵の名が廃るような気がして。」

 

そう言って、タスクは息を深く吐く。

こんな言葉がある。「女性には、血の赤より、薔薇の赤を見せよ。」

と。

この世界に身を置いている人とはいえ、女性は女性だ。

 

 

 

 

そう。タスクは、女性に対して決して引き金は引きたくないのだ。




こんにちは。
最近、感想を4件も貰えて嬉しすぎる、駆巡 艤宗です。

皆さん!ありがとうございます!たった2話でお気に入り約20件!
感謝の限りです!本当にありがとうございます!
感想で、「〇〇待ってます」などとご要望までいただきました。
なるべく叶えようと思っているので、よろしくお願いします。

まだお気に入りされてない方も、よろしければよろしくお願いします。

では。

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