これは【GGO】であって、【MGS】ではない。 作:駆巡 艤宗
「ふう……おまたせ。ごめんね、意外と時間かかっちゃった」
「はは……、別に構いませんけど、なんで飛んでこなかったんですか?」
「で、できなかったんです……」
「……ふふっ」
「あっ!ねぇ!今笑ったでしょ!」
「わ、笑ってません!」
「笑ったなぁー!?」
そんな仲の良い会話が、抜けるような青空に、色彩鮮やかな自然あふれる世界で繰り広げられる。
そこには、二人の
一人は青緑の髪をした小柄な体型のキャラクター。
そしてもう一人は、砂漠のような黄土色の髪をした大柄なキャラクターだ。
そして二人とも、ケモ耳とかわいいしっぽを持っていた。
もうお分かりだろう、タスクと店主である。
彼ら二人は今、GGOからコンバートしてきたのだ。
そう、つまりここは、菊岡にタスクがリアル世界での封筒を通して示された場所が存在する世界。
通称「ALO」だ。
この世界では、プレイヤーは合計9つの種族の「エルフ」に分かれ、お互いに争いあいながら、世界の中心である「世界樹」の上にある「空中都市」を目指して冒険する。
このゲームは、異種族間の戦闘はむしろ推奨され、一度フィールドに出れば、そこかしこで戦闘が行われているのだ。
とはいうものの、この世界にもちゃんと中立的な区域があり、いくら異種族同士でも、そこでは一切の攻撃行動ができなくなっている。
さらにぶっちゃけて話してしまえば、各プレイヤー達の敵はもっぱらモンスターであり、異種族同士でパーティーを組んで戦いに行くことも多いらしい。
結局、自分の好きな種族になって、気の合う友達妖精と自由に空を飛び回り、時に剣や魔法を交えて敵と戦い、ファンタジー世界で生活する。
そんなゲームが、この「ALO」なのだ。
ちなみに、タスクと店主は、二人とも「ケットシー」という、動物に似た種族である。
「なんでまたこんな世界に菊岡さんは……?」
「さあねぇ。菊岡さん、割とこういう世界がお好きなのかな?」
そんな世界にやってきて、ケモ耳としっぽつきのかわいい姿となったタスクと店主は、周りを見回しながらそんな推測を立てたりする。
彼らは暇さえあればGGOにいるような人間だ。
こんな彩り豊かな世界に来たのはSAO以来だった。
「で、僕は座標情報を持ってますけど、店主さんは時間を知ってるんですよね?」
「うん。まあそのほかにも色々と細かい情報はあるよ」
「というと?」
「なんかね、その場所には、とあるプレイヤーが来るらしい」
「ほうほう……」
「背が高くて、眼鏡をしているそうだ。髪の毛は水色だと」
「なるほど」
そんな世界なのにもかかわらず、早速、「仕事」をこなそうと動き出す二人。
彼らは今でも「仕事中」。ささっと動くに限るのだ。
タスクは菊岡に、リアルで座標を教えられた。
対して店主は菊岡に、リアルでその座標に来て欲しい時間を教えられたらしい。
また、その他にも店主は、現にそこにプレイヤーが来るだのなんだのと、細かい情報が教えられていた。
タスクが菊岡に言われた、「詳しくはタモンに」とはこの事だった。
とはいうものの、最も重要な「座標」だけは、タスクだけに渡されたのである。
菊岡曰く機密保護のためらしいが、二人はその行動に、「二人で来い」という、彼のメッセージを感じた。
結果、二人はシノンをBOBに送り出した後、すぐコンバート。
「なんでBOB本戦当日に……」という不満がないわけではないが、むしろ今日だからこそ、この呼び出しは死銃事件と関わりがあるという事を想像できた。
「ふぅ……お店はラクスさんに任せたし、シノンさんも緊張の解けたいい気持ちで臨ませる事ができたから、とりあえずは心配はないけど……」
「不足の事態が、一番怖いですね」
「……そう、その通りだ」
店主はポツリ、と不安を漏らす。
大体の仕事が計画通りいかないのは、二人もラクス達もシノンもわかっている。
だが、今回に関しては人の命がかかっているのだ。
だからこそどうしても、不安が残ってしまう。
「まぁ、シノンさんを信じましょう、彼女ならきっとうまくやってくれるはずです」
「……そうだね、ボス」
「ボス?」
店主がポツリと漏らした言葉に、タスクがすぐさま反応する。
今は二人とも表世界用の状態。お互いを「タスク君」と「店主さん」と呼び合う状況だ。
まだシノンのような新入りなら分かる。
コードネームとキャラネーム、下手すれば本名を、状況によって即座に使い分けるのはなかなかの慣れが必要だからだ。
だが、今ミスをしたのはあの「店主」だ。
普段から様々な面で表と裏の使い分けをこなしているはずの店主が、間違えたのである。
「………あっ!」
店主が、やっと自分のミスに気づく。
そして、はは…と呟きながら後頭部を掻いた。
そして、言い訳じみた原因を話し出す。
「い、いやね、こんな色鮮やかな世界で、仕事だと思うと、なんだかSAO時代を思い出してしまってね……ついつい言ってしまったよ」
「ああ、そういうことですか」
タスクはすぐに納得し、苦笑いを返す。
そう。彼らがこんな色鮮やかな世界に来たは実質SAO以来。
そんななかで仕事をするとなると、どうしてもその時の癖が出てしまうのだ。
「懐かしいね……SAO」
「……はい。かれこれ何年でしたっけ?」
「え……と、わかんないや!」
「店主さんもボケですかね……」
「ま、まだそんな歳じゃ無いから!ねぇ!」
「はぁ……時が過ぎるのは早いものですね……」
「ねぇちょっと!それどういう事!ねぇ!」
タスクのしみじみとした呟きに、異常な敏感さで反応する店主。
そして、それを横目に更にため息混じりで続けるタスク。
そんな仲の良い二人は、かれこれ歩き続け、いつの間にか、あの座標の位置へと、辿り着いていた。
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そろそろ新キャラを表に出さないと…(焦り)
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