これは【GGO】であって、【MGS】ではない。   作:駆巡 艤宗

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Episode44 現状 ~Current status~

「お久しぶり……?会ったことある?」

「わ、私は分からないです……」

 

クリスハイトとの対談中に、いきなり入ってきたタスクと店主。

そんな彼らの内の一人、タスクが発した言葉。

 

ー「お久しぶりです」

 

この言葉に、彼ら妖精たちは、困惑する。

「このケットシーと会ったことあるっけ?」

「そもそも、名前すら知らないし、誰だろう」

そんな考えが、頭の中を駆け回っていた。

 

「クリスハイト。あなたのお連れさん?」

 

そんな中、アスナがクリスハイトを見る。

すると、

 

「あ……!ああ、彼らは、僕の連れさ。紹介しよう」

「え、ええ」

 

ぼーっとしていたところに、いきなり呼ばれたかのように、クリスハイトが反応する。

そしてそのままクリスハイトは、続けてタスク達の紹介を始めた。

 

「彼らは、僕がGGOに送り込んでいるプレイヤーさんだ。名前は、こっちからタスクと、リボル。リボルさんに関しては、店主、と呼んだ方がいいかもね。」

「店主?」

「ああ、僕は向こうで店を開いているんだ。」

 

店主が、補足するように話をつけ足す。

するとその時、アスナが店主の方を向いて、なにか思い出したように話し出した。

 

「店って……キリトくんがいったって言ってたあのお店?」

「そう!確かに彼は僕のお店に来てくれたよ」

「……!じゃ、じゃあ、あの……教えてくれませんか?今、あそこでは、どんな状況なのか」

「……!」

 

クリスハイトに聞くより、現場にいる人間の方がいいと思ったのか、それともただ単に、やはり埒が明かないと思ったのか、店主が肯定した瞬間、アスナは店主へと詰め寄る。

 

「……はは。これまた大胆に来たね。アスナさん」

「……!」

「大丈夫。()()が責任をもって、今のあの世界の状況を説明しよう。同時に、君たちの大事な()()、キリトくんの安全も保障する」

「!」

 

すると店主は、あっさりとOKしてしまった。

前に出てきたアスナの背後に立つクリスハイトが、店主を心配そうな目をして見ている。

 

……が、「その心配はいらない」とばかりに店主はクリスハイトのそんな目を見返した。

少しの微笑みと共に。

 

そして、黙々と説明を始める。

 

「まず、クラインさん。これは殺人事件ではありませんよ」

「な、なに?」

「現在、世界で流通しているアミュスフィアでは、どんないかなる手段を用いたとしても、装着している人間には全く傷をつけることはできない。ましてや、機械と直接リンクしていない心臓を止めるなど、不可能だ」

「……!」

 

今まで食ってかかっていたクラインが、う、と言葉を詰まらせる。

 

「クリスハイトさんも、何もわからずにキリトくんを送り込むなどと、そこまで無謀なことはしないはずです。……ですよね?クリスハイトさん」

「あ……ああ。僕とキリトくんは、先週リアルで議論し、最終的にそう結論づけた。ゲーム内からの銃撃……いや、それ以外でも、なんらかの干渉で、現実の肉体を殺す術はないと……ね」

「お、おう……!」

 

クラインは、店主の反論とクリスハイトの補足により、大人しく引き下がった。

クリスハイトはともかく、店主の話なら聞く気になったのかもしれない。

そんなことを感じ取った店主は、まだまだ言葉を続ける。

 

「……ただそれは、あくまでクリスハイトさんたちの仮説でしかない。現状は傷をつけられないと思っていても、なんらかの方法で、出来るかもしれない」

「な……!?」

「そうだな、例えば……アミュスフィアの電子系統に、強大な負荷をかけて暴発させるとかすれば、少しは苦しむかもね」

「そ、それって……!」

「いやいやいや、でもよく考えてみて?さっきそこのユイちゃんが説明してくれたとおり、この事件は「変死事件」なんだ。あのアミュスフィアが暴発したところで、かっちり心臓だけを止めることは出来ない」

「そ、そっか……」

「そう。だから、問題はアミュスフィアではない。僕らは、その事を()()()()()したから、信じてほしい」

()()()()()……!?」

「そう。実際にアミュスフィアに色んなことを試してみて、暴発させられるか、検証してみたんだ。死銃の、ゲーム内からの銃撃との関係も考慮してね」

「……!」

「おいおい……それは僕も初耳だよ?」

 

店主からサラリと出てきた言葉に、驚きを隠せない妖精たち。

クリスハイトは、まったく……と言わんばかりに後頭部を掻いていた。

 

今店主が言った、「実際に検証した」とはつまり、なんらかの方法でアミュスフィアの電子系統を暴走させようとしたことがある、という事だ。

 

本当にそんなこと……と思わない訳でもないが、先程から発せられている「謎の自信」によって、それを言うのもはばかられた。

つまり、信用せざるを得なかった。

 

そんなことなど知りもせず、店主はまた、淡々と言葉を綴っていく。

 

「その検証の結果、結局は、可能性は限りなく0に近いことが分かった」

「そ、そっか……」

「でもね、それは同時に、まだ犯行の手口を探す手がかりすら見つけられなかったことにもなる」

「……!」

「だから、僕らはあのBOBの待機会場に2人、本戦に1人、プレイヤーを送り込んでいる。それに、リアルのキリトくんも、菊岡さんが用意した設備によって、厳重に監視されている。だから、安心してね」

「は、はい……!!」

 

どこか安心したせいか、ふっと表情が明るくなる妖精たち。

それを見て、呆れたように笑うクリスハイト。

 

「これが、事件の現状と、キリトくんの安全の保障です。……満足しましたか?クリスハイトさん」

「はは……全くかなわないな、店主さんには」

「クリスハイトさんがこうしろと頼んでんでしょう?」

 

そして、キリトの安全と、事件の現状の説明を店主から受け、納得した妖精たちの話の照準は、またクリスハイトへと戻っていく。

 

「クリスハイト」

「?」

 

アスナが、またクリスハイトへと向き直る。

クリスハイトは、また何か言われるのか、と身構える。

だが、次の瞬間に彼女の口から出てきた言葉は、驚きのものだった。

 

「死銃は、私たちと同じ、SAO 生還者(サバイバー)よ」

「な!?」

「しかも、史上最悪と言われたあのギルド、『ラフィンコフィン』の、元メンバーだわ」

「ほ、本当かいそれは…!?」

 

クリスハイトは、いきなり言われたその事の、信憑性を問うかのように、声を絞り出す。

だが、その答えはまた、店主の横槍によって返された。

 

「本当ですよ。それ」

「なっ……!?」

 

そして、店主は話し出す。

驚愕に満ちた、クリスハイトや妖精たちを差し置いて。

さらに驚きの、そして謎に自信に満ちた、その言葉を。

 

「もっと言えば、僕らはもう検討は付いてますけどね」

「「「……!!」」」

 

 

「死銃の正体、犯行の手口」

 

 

「な……!?」

 

クリスハイトはもちろん、その場にいた全員ですら、彼の言葉に、また驚いたのは、言うまでもないだろう。




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