これは【GGO】であって、【MGS】ではない。   作:駆巡 艤宗

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Episode47 目的 〜The purpose〜

「なぜそんなことが言えるの?」

 

アスナの言葉で、その場の雰囲気がまたピリッと張り詰める。

 

彼女が追求しているのは、たった今、店主が口にした不確定要素について。

 

妖精たちが最も心配していた「キリトの身の安全」の答えを、店主がバシッと言い切ったからだ。

 

「……ふふ。それはね、アスナさん」

 

しばらくの沈黙と微笑みをもって、店主が言葉を返し始める。

 

「よく考えてごらん?」

「?」

「あれを見て」

 

そう言って店主が指差したのは、先程からずっとBOBの中継映像を流し続けているディスプレイ。

 

「えっ……!?」

 

それを見た妖精たちは、呆気にとられた。

 

「キ……キリトくん!!!!!」

 

その中で特に、アスナは呆気を通り越して恐怖が滲み出る。

 

なぜなら、そのディスプレイの中で、()()()()()()()()()していたからだ。

 

周りに朽ち果てたビルが数本突き刺さっているだけのだだっ広い砂漠に、二人が向かいあっている。

 

明確な意思を灯した目のキリトと、妖しく赤く光る目をキリトに向ける死銃が、それぞれ光剣(フォトンソード)刺剣(エストック)を持って、じりじりと対峙していた。

 

「な……!!いつの間に……!!」

 

これには、菊岡も驚く。

 

それもそのはず、ここにいる妖精たちは皆、キリトへの心配感からか、今までいろいろと情報を握っている店主達に完全に気を取られ、全くもってBOBの方へ目が向かなかったからだ。

 

そしていつのまにか、その()()()が、問題の()()と向かい合って、「剣」で決闘している。

 

「キ……キリト……くんっ……!!」

 

大切な人を失うかもしれない、という、今までなんとか押し込めてきた感情が、一気に押し上げてきたせいか、目を強く瞑り、まるで祈るかのように呟くアスナ。

 

するとその時。

 

「アスナさん!よく見て!」

「えっ……!!」

 

いきなり、背後の店主から声が飛んできた。

そんな声に突き動かされるかのように、反射的に顔を上げるアスナ。

 

「……?」

 

が、その視界には、やはり未だ対峙するキリトと死銃が映るディスプレイのみ。

 

結局アスナは、店主が「よく見て」と言った意味を理解出来ずに、ただただその視界を眺めるしかない。

 

そんなアスナを見て、店主がゆっくり言葉をつけたした。

 

「よく見て……?なにか、わからないかい?」

「?」

 

何の話だ、と言わんばかりに、アスナはもちろん、妖精たちも店主を見る。

 

しばらくの沈黙の後、店主は、呆れたように息をつき、妖精たちに求めていた答えを自ら話し出した。

 

「はぁ……わかったよ」

「……?」

「よく見て、と言ったのは、とあることに気づいてほしいからさ。」

「とあること……?」

「そう。」

 

そしてまた、妖精たちの関心が店主に移る。

 

「よくよく考えてみてほしい。死銃ってさ、元々なんのためにBOBにいると思う?」

「……なんのため?」

「そう。いわば目的だね。人間がなにか行動する時には、必ず「目的」があるじゃない?」

「まあ……」

「その原則を、死銃に当てはめてみて。なぜだと思う?」

 

微笑みつつ、疑問を投げかける店主に、考える間もなく答えが返ってくる。

 

「そりゃあ……死銃は、その、「人を殺すため」に、BOBにいるんでしょう?」

「そうだね。でもじゃあさ、なんでわざわざ、BOBのような、目立つところでそんなことをすると思う?」

「……!」

「ただ人を殺すだけなら、そんなことはしなくていい。影で、黙々と殺していく方が、確実だよね」

「た、確かに……」

「じゃあなぜ、そんな、馬鹿みたいに、居場所を晒してやっているんだと思う?」

「……」

 

うーん、と考え出す妖精達。

そんな妖精たちを微笑んで見守る店主は、ふとクリスハイトと目が合った。

 

すると店主はまるで「大丈夫」と言わんばかりにこくこくと頷くジェスチャーをクリスハイトに見せる。

クリスハイトは何かを察したのか、そのジェスチャーに軽い会釈で答えて、ソファーに座った。

 

しばらくすると、次第に妖精たちから答えが出てくる。

 

「死銃は……その……「自分は人を殺せるんだぞ」みたいな、力を示すために?」

「そう!そういうこと!てことはさ、その目的に沿うならば、今、キリトくんとやってる決闘って、する意味がなくない?」

「あっ……!!」

「居場所を晒して、危険極まりない状態で、することじゃないよね」

「た、確かに……」

「だから、死銃はキリトくんを殺す標的にはしていない。仮に標的だとしたら、とっくに殺しているだろうし……」

「……!!」

「ね?キリトくんが標的なら、今の状況はどう考えたって無駄だし、不自然なんだ」

「……」

 

妖精たちの顔が、どこか明るくなる。

キリトの安全を証明しきったからなのか、だんだん、クリスハイトの顔も変わってくる。

 

店主は、それを横目で確認しつつも、話を続けた。

 

「それでね?そう考えた時、もう一つ、疑問が浮かばないかい?」

「疑問?」

「そう。さっき僕さ、「今の状況はどう考えたって無駄だし、不自然なんだよ。」って言ったじゃん?」

「ええ……」

「ということはさ、死銃は、他に「目的」があると思わない?」

「……!」

「確かに、キリトくんは標的じゃない。今の決闘だって、()()()()()()()()()()、ただ無駄なだけ。でも、キリトくんと今、決闘をすることだって、なにかの別の意味があると思わないかい?」

「た、確かに……」

「たしかに無駄だよ?でも、無駄だなだけなことをやるはずがないよね。必ず目的があるはずだ。じゃあその目的……なんだと思う?」

 

さっきも聞かれた、キーワードのような質問。

妖精たちはもちろん、今度はクリスハイトも考え出す。

 

店主はそんな、()()を見て、微笑みながら声をかける。

 

「そんなに深く考えなくてもわかるはず」

「……?」

「死銃が、BOBのあんな場所でキリトくんと決闘するってことは、B()O()B()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()キリトくんを倒さないといけないってことだ」

「……」

「ということは、もちろん標的となり得るのはBOBの参加プレイヤーの中であって、その中で誰かがキリトくんと()()()()()()()()()()()()ってことだよね?」

「あっ……!」

「ふふ……もうわかったでしょ」

 

どこか思わせぶりな、店主の言葉にはっと息を呑む妖精たち。

そして、

 

「まさか……」

「ふふ……そうだよ」

「あの……?」

「そうさ」

「あの……スナイパーを、狙ってるってこと?」

 

ディスプレイに振り返りながら、恐る恐る口にする。

 

「そう。そういうこと。彼女を殺すには、キリトくんが邪魔だからね」

「……!!」

 

驚きを隠せない妖精たち。

流石に意表を突かれたのか、唖然とするクリスハイト。

微笑みをたたえたままの店主と、相変わらず真顔でディスプレイを眺めるタスク。

 

そんな彼らの視線は全て、ディスプレイに映った1人のプレイヤー。

 

 

 

 

そう、「シノン」である。




こんにちは!お待たせいたしました!
駆巡 艤宗です!

改めて、本当にすみません!
随分と、お待たせいたしました!

というのも、Twitterと活動報告にてお知らせはしたのですが、作者のリアルの関係上、約1ヶ月、おやすみさせていただいておりました。

本当にごめんなさい!

またここから、1ヶ月2〜3話ペースで投稿していけると思いますので、今後ともよろしくお願いします。

では。

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この動画にしかない物語の鍵があります……。

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