これは【GGO】であって、【MGS】ではない。 作:駆巡 艤宗
空中に浮かぶ数字が、一定間隔で少なくなっていく。
数字を包む白線でできた円が、消えては現れ、消えてはまた現れを繰り返す。
そしてそれを見つめ、息を呑む者達。
アスナやリズ、シリカにリーファ。
そのお馴染みのメンツの後ろには、サクヤやアリシャとその取り巻き達。
そしてそのメンツの隣にはシノンがいて、そのまた隣には店主やクライン、エギル、そしてクリスハイトが、それぞれ立っていた。
そんな人達に囲まれて、相変わらずカウントを続ける数字とアニメーションに見下ろされながら、キリトとタスクは対峙している。
キリトは、初っ端から剣を2本引き抜き、SAO時代からお馴染みの、腰を落とし、右手の剣を後ろに構え、左手の剣を前に置いたたスタイル。
対してタスクは、体を真横にし、右手にもつ刀の刃先を前にある右足にそわせるように下げて、拳にした左手を頬の横に付ける、格闘技と剣術を混ぜたようなスタイル。
「すごい……独特な構えだなぁ……」
同じ刀使いだからか、クラインがそんな呟きを漏らした瞬間。
ビーッ!!
『START!』
電子ホイッスルのような甲高い音と一緒に、短いその単語が一際大きく表示された。
そしてその瞬間……
「動いた!」
タスクが、10mほどの距離を一気に詰めて斬りかかる。
右斜め上、袈裟斬りの構え。
店主が思わずなのか声を漏らすが、他の妖精達も必死に何かを堪えた。
キリトへと、タスクの強烈な一閃が迫っていく。
キリトは、未だ決闘開始時と同じ体制で硬直している。
……が。
「……な!! くっ……!!」
あと寸でのところで、キリトが反応した。
バキン、と、鉄が打ちつけられる音がする。
だが、タスクの一閃はそこでは止まらなかった。
バキン!バキン!キン!ガリッ!
「く……っそ!!」
鋭く鈍い音が二人の間で響く。
ただ、それはあくまでタスクが生じさせているもの。
キリトは防御で手一杯だった。
「キリ……ト……くん……!!」
アスナが、タスクの猛攻に耐えるキリトを見て、ぎゅっと手を握りしめる。
それは、彼女の何らかの決意の表れであった。
ガッ!ゴッ!キイ!
「ぐっ……!!」
だが、そんなことなど意にも介さず、タスクは恐るべき速度と強度でキリトへと剣を叩き込んでゆく。
「な、なんて剣技だ……!!」
不意に、サクヤが言葉を漏らす。
右上からの袈裟斬り、その後跳ね上がるように左下からの逆袈裟斬り。
そして一旦刀を宙に浮かせたかと思えば、また腕に力を入れて今度は右下から刀を跳ね上げる。
その動きは、全くブレも迷いもなかった。
「こ、これが……裏血盟……!!」
クリスハイトも驚いているのか、目を見開いて凝視する。
そんな各々の反応を見て、店主は少しばかり微笑んでしまった。
決して、自慢だとか、誇らしいだとか、そんな感情からではない。
ただただ純粋に、タスクの本気の戦いを久しぶりに見れたからだ。
長年彼を見てきた店主には……いや、
彼は今、内側で滾る闘争心を、全力でキリトに叩き込んでいるのだ……と。
人が全力で争う時、少なからず、その人は周りの人を引き寄せる何かを放つ。
それが、気迫なのか、それともただ目立つだけなのかは分からない。
でも、その
そして今、その
観客の目が釘付けになるのは、至極当たり前の事だった。
だが、そんな状況を改めて視界に収めてみると、どこか「再確認」したかのような、よく分からない気持ちにとらわれる。
店主はまさに今、その「よく分からない気持ち」にとらわれたのだ。
だから、いつものようにタスクを見守るだけで、自然と笑みがこぼれるのだった。
《いけ……もっといけ……君の力の限りを尽くした攻撃を、叩き込むんだ!》
そんな事を、店主は頭の中で呟く。
もちろん、その言葉はタスクには届かない。
でも、店主はどこかで、そんな言葉でさえ、タスクの背中を押している気がする。
「……ふふ」
店主は思わず、また微笑みを漏らした。
《同胞たちの為にも……ね。》
そんな、内心の思いと共に。
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