これは【GGO】であって、【MGS】ではない。 作:駆巡 艤宗
バキン!バキン!ガッ!
「……!!」
ALOのフィールドの一区画に、鋭い金属音が響きわたる。
戦局は、互いの実力が拮抗し、お互いがお互いを均等に削りあっている状況。
タスクが素早い二連、三連の斬撃を繰り出したかと思えば、キリトはそれを剣で受け止め、もう片方の剣で重たい一撃を返す。
「す、すげぇ……こんなの、見た事ねぇぞ」
男性陣に交じり、風林火山のメンバーと並んで見ていたクラインが、ふとそう呟く。
それもそのはず。
実際、空中に表示されている二人のHPバーは、恐ろしい程均等に削れているからだ。
「『実力の拮抗』って、まさにこういうことを言うんだなぁ……」
驚き、というよりは、唖然として、つまりポカーンとして、クラインはまた呟く。
その呟きは、まさにその場にいる妖精達全員の気持ちの代弁であった。
《……いや、そうじゃ……ない》
……だが、その場にいる妖精達の中で、1人だけ、そんな気持ちを持っていない妖精がいる。
「くそっ……!」
ガキィ!!
他の誰でもない、キリトであった。
✣
『なにかがまだある』
彼……キリトは、直感的にそう悟っていた。
今、目の前で刀片手に踊るこのケットシーには、まだ、いわゆる「隠し球」がある……と。
ヒュン!ヒュン!
「くっ!」
刀がほんの目の先を2回も掠めていく。
《なんだ……?》
すると、
実は彼……キリトが、相対するケットシー……つまりタスクの、「隠し球」の存在を何故か悟るのは、この奇妙な違和感によるものだった。
確信している訳ではなく、そこまで至るほどの納得感はない。
ただなぜか、そう悟れるのだ。
ただただ単純に、おそらくそうだろうな……と。
間違いなくタスクは、キリトが今まで戦ってきた戦士の中でトップの強さを誇るのは紛れもない事実である。
……が、どこか、その強さ故か、その彼のどこからか、今までの戦いでは全くもって感じ得なかった奇妙な違和感があるのだ。
それも一回だけでなく、何回も。
「……なんだ?」
バキン……!!
キリトは、相変わらず鋭いタスクの斬撃を捌きつつ、思考をグルグルと巡らせる。
決して、ダメージを受けているとか、状態異常だとか、そういう話ではないのだ。
何か一つでも見逃せば、それが後々命取りに充分なり得るので、キリトはSAO時代からずっと、そういう類の警戒を怠ったことはない。
だから、特に重要な今回も、確認を怠ってはいないし、実際、微小なりともダメージだとか、自分の体の動き、感覚だとかは、なんら問題ない。
その違和感は、あくまでタスクから。
タスク
でもだからといって、タスクの動きや、表示されているステータスにも何も異変はない。
極々稀に、「チート」と呼ばれる事をする輩がいる。
そういう連中だと、相対した際、ゲームのデータ処理に異常をきたすため、アバターやその場の空間が歪むことがあり、それが違和感となって正常なプレイヤーに伝わることがある。
……だが、今回のこの違和感は、そういう類のものでもない。
これは、彼の仮想世界に対する適性と、膨大な知識、そして才能がそう語っているのだ。
そもそも、タスクや店主らが、そんなことをする人達だとは到底思ってないし、思えない。
ならば、考えられることはあと一つしかなかった。
「キリトの想像を絶するようななにかが、タスクはまだ隠し持っている」という、これ一点のみだ。
これならば、まだありえる。
彼の並外れた戦闘勘が、その何かを、「隠し球」を、察知していると考えられるからだ。
……では、その「隠し球」とは、実際なんなのか?
そう問われると、彼は答えられない。
だから、確信するには至れなかったのだ。
……するとその時だった。
「っ……!!??」
今までより何倍にも増した違和感が、キリトを襲った。
その違和感は、違和感を超えて恐怖に変わり、寒気となって体に反応を引き起こす。
まるで「蛇」に巻き付かれたような、尋常じゃなくゾワゾワする気味の悪い感覚。
「なんだ……?なんなんだ……!?」
キリトは、その恐怖からか、疑問符を声に出してしまう。
すると次の瞬間。
「ああっ……!!」
遠巻きに聞こえるアスナの叫びと共に、
ドゴォ!!
「がはっ……!?」
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