これは【GGO】であって、【MGS】ではない。   作:駆巡 艤宗

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Episode66 畏怖 〜awe〜

「ああっ……!!」

 

そう、アスナは不覚にも声を漏らしてしまった。

 

その理由は、ついさっきまで拮抗していた戦局が、一気に変わったのを察したから。

そしてその変化が、「キリトが不利」の方に傾いたと、嫌でも認識したからである。

 

「……!!」

 

キリトの体が、ほんの一瞬、ふわりと浮き上がる。

それと同時に、妖精達のどよめきの音量も上がる。

 

翅を使った訳では無い。

キリトの背中には、見慣れた漆黒の羽根は現れてないからだ。

 

「……!?」

 

だが確実に、キリトの体は、少なくとも彼の足は、地面から離れていた。

 

「な、なにが……」

 

リズが呟きかけて止める。

その声音は、本当に、心の底から分からない、と言わんばかりの疑問と驚愕に充ちていた。

 

それもそのはず。

状況的には、タスクが右袈裟斬りを放っただけなのだ。

 

今までも、タスクは何度も右袈裟斬りをキリトに放っているし、キリトもキリトで、その右袈裟斬りを何度も防いだり、躱したりして、決してそんな、()()()()()()()なんて事はなかったのだ。

 

だが、現実はそうではない。

 

確かにキリトは、宙に浮いているのだ。

剣を左に置き、タスクの右袈裟斬りを剣で防ぐ構えのまま、真横……正確には左に、吹っ飛ばされている。

 

現実では1秒にも満たない時間だが、妖精達には何倍も長く、その光景が目に映し出されていた。

 

「あっ……!」

バゴォ!!

 

そしてキリトは、飛ばされた先にあった、大きな樹木に激突する。

 

それに伴い、痛々しい音と共に、土煙が舞った。

妖精達の目は、土煙で覆われ、すっかり見えなくなったキリトを探す故か、そこに釘付けになる。

 

対してキリトは、その後しばらくしたあと、その土煙の中からゆっくりとまた立ち上がると、ギラリとタスクを睨み、こう言い放った。

 

「くそ……!!そういう事かよ……!!」

「……え!?」

 

そのキリトの呟きと、あまりにも強烈なその視線に釣られ、妖精達の視線は、キリトの視線の先……タスクへと移り変わる。

 

……するとそこには、想像を絶する体勢をしたタスクがいた。

 

「な……ぁっ!?」

 

妖精達の中の誰かが、ありえない、と言わんばかりに声を漏らす。

 

その姿は、いわゆる「蹴り」の姿勢。

誰が見ても綺麗な、見事な空手などでよくみる、「回し蹴り」の構えであった。

 

左手は握って拳にし、肘をたたんで左頬についている。

右手は刀を持ったまま、いつのまにか下に降りていた。

 

代わりに出ていたのが、「脚」である。

左脚を軸に、美しく右脚が伸びていた。

 

「ま、まさか……!!」

 

それを見たアスナが、あの時何が起こったのか、薄々悟る。

 

タスクはおそらく、右に薙ぎ払う斬撃と同時に、キリトの剣ごと蹴り飛ばしたのだ。

 

そんなことが可能なのか、と、疑問に思わなくもない。

そんなことをしようものなら、並外れた体重移動に加え、相手を圧倒的に凌駕する反応速度、そしてなにより、剣術・格闘技の両方に精通した知識が要求されるからだ。

 

そんなこと、到底できるものではない。

アスナでさえ、そんなことは無理だと自覚しきってしまう。

 

ただ、というより、むしろだからこそ、彼……タスクの強さをひしひしと感じ取れた。

「ただ者じゃない」なんて今更じみた感嘆符が、心の中で浮かび上がってくる。

 

「……!!」

 

すると、長らく脚を蹴りの体勢のまま上げていたタスクが、ゆっくりと脚を折りたたんで下へ降ろす。

したがって、足に隠れていた顔も、だんだんアスナ達に見えるようになる。

 

その顔は、今まで対峙して来たどんなプレイヤー、どんなモンスターよりも勝る、獰猛かつ凶悪な、まるで悪魔を想像させる()()をたたえていた。

 

「う、うわぁ……!!」

 

妖精達の中から、あからさまに畏怖する声が聞こえてくる。

 

アスナの隣に立つシリカも、いつの間にかアスナの後ろに少し隠れ気味に立っていた。

 

「……!!」

 

実際、アスナもアスナで、全く怯んでない訳では無い。

 

本当なら、最愛の人のそばにいきたい。

だが、その最愛の人はむしろ、その元凶と対峙している。

 

「っ……!!」

 

アスナが半ば睨むように見ているタスクの目が、また一段と殺気を帯びた気がした。




いつもありがとうございます。
駆巡 艤宗です。

いやあ、寒いですね。
手がかじかんで文字が打ちにくいです(笑)

まあ、そんなことは置いておいて、本題に入りましょう。(早い)

最近ね、ふと思ったんです。
あれ?この章案外長くなるぞ?と。
GGOSJやユウキ、オーディナル・スケールにアリシゼーションなど、まだまだ書きたいところがあるのに、全然まだまだだぞ?と。

……で、僕は考えました。
いっその事、1話辺りの文字数を増やしてみたらどうかと。(笑)

どうでしょうか?
皆様のご意見をお聞かせください(笑)

よろしくお願いします。
_(⌒(_๑´ω`)_パタム

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