これは【GGO】であって、【MGS】ではない。 作:駆巡 艤宗
タスクの刀が、キリトの左剣めがけて地面と並行に飛んでくる。
キリトはそれを防ぐため、あえて刀と垂直に剣を刀に叩きつける。
バギン、と、ある意味気持ちの良い音が響き、火花が散る。
するとその瞬間、タスクの動きが止まった。
その隙を見逃さず、キリトは右剣でタスクの胴へ横斬りを放つ。
当然、タスクはそれを察知し、瞬時に飛び上がった。
キリトの腰よりも高い位置にタスクの極限まで折り曲げた足が浮かび上がり、その真下スレスレを、キリトの右剣が掠めていく。
するとタスクはその瞬間、空中で体勢を転換し、キリトの側頭部へ右足の蹴りを放った。
ゴッ
「がっ……!」
鈍い音がして、キリトが少しよろめく。
そうすると、体勢変換の力の作用点だった刀が、キリトの左剣から離れ、タスクは自由落下を始める。
ただ、そこは黒の剣士。
その隙を見逃さず、今度は左剣をタスクの落下運動先へ滑り込ませた。
完璧な軌道。
偏差も速度も角度も、最高の状態だ。
……だが。
タスクは、剣が飛んでくる直前に地面に一瞬、手をついて偏差をずらしたため、キリトの右剣が、またタスクの真下スレスレを掠めた。
そしてまた、タスクは右足で蹴りを放つ。
地面とほぼ並行な体から、キリトの左肩へ。
ガッ
「ぐぅ……!?」
その衝撃で、キリトはタスクから見て左へふらついた。
……と同時に、前回の刀のように作用点がないため、タスクも反作用で右へと少しズレる。
そうしてお互いがお互いに離れあったため、一旦攻防が止まった。
「はぁ……はぁ……」
「ふぅ…………」
キリトは荒くなった息を正そうとし、タスクは大きく息を吐く。
キリトもタスクも、周りの観衆の事など最早忘れていた。
というより、意識など出来なかった。
なぜなら、
「全ての意識、そして全ての力を注ぎ込まないと、相手には勝てない。」
そんな思いが、お互いにあったからである。
「おぁぁあ!!!」
「……!!」
そしてまた、今度はキリトから攻撃を仕掛け、戦いは続く。
脳天へと直下する大上段からの一閃。
もちろんタスクは体を直前にずらし、回避する。
そして剣が下へと完全に通り過ぎた後。
タスクは下に降りていたキリトの右剣を
「なっ……!?」
これにはキリトも意表を突かれ、咄嗟に剣を上にあげる。
するとタスクは、その勢いに乗じてキリトの頭より高く飛び上がった。
ただし、ダメージは全く入っていない。
なぜならタスクが踏みつけたのは、剣のいわゆる「平たい部分」だったからだ。
「くっ……!!」
キリトは、悠々と頭上を飛び越えていくタスクを睨みながら、自分も遅れまいと即座に体の向きを変える。
「……!?」
……だが、その体を向けた先には、タスクはいなかった。
一瞬、キリトは目を疑う。
ついさっき、後ろへ飛んで行ったはずなのに……と。
着地してから横にズレた?
いや、ありえない。
だとしたら、視界の隅に必ず捉えられているはずだ。
では、まだ上にいる?
それも、ありえない。
このゲームにおいて、空に浮かんでいられるのは羽を使った時のみ。
今回のこの決闘は、羽の使用は禁止、と事前に取り決めてあるのだ。
したがって、それもない。
では、一体どこにタスクはいるのか。
そんな思考を瞬時にしていたまさにその時。
グラッ……
「えっ……!?」
キリトの視界が、
そしてそれと同時に、キリトは今、何がどうなっているのかの全てを悟る。
おそらくタスクは、後ろに跳躍、着地した直後、その時になっていたであろう低い姿勢のまま、瞬時にキリトの股下へと滑り込んだのだ。
そしてその後、キリトの服を後ろからつかみ、今まさにキリトに「投げ技」を繰り出しているのである。
「うっ……そだろ!?」
「……いいえ?」
あまりに驚いたからか、キリトがつい漏らしたボヤキに、下にいるタスクが反応する。
そうしてキリトは、その答えを聞きながら、投げ飛ばされた。
ドカッ
「くっ……!!」
「はぁぁぁぁ!!!!」
腹や胸が地面に打ち付けられ、体全体に痛みが走る。
だが、そんなことなど構ってられなかった。
なぜなら、タスクがその直後に斬りかかってきたから。
ヴァッ……バキン!!
「ぐっ……!!」
一度刃先を下に落としてからの逆袈裟斬りという、フェイントまで噛ました鋭い一閃。
キリトは、何とかすぐに立ち上がると、即座に剣を刀との間に滑り込ませ、攻撃を防ぐ。
「ちぃ……!」
攻撃自体は防げたものの、衝撃までは防ぎきれない。
その衝撃でつい漏れたキリトの呟きに、タスクはニヤリと反応した。
……そしてまた、タスクは攻撃を繰り出す。
右上からの、袈裟斬りの構え。
「……!!」
するとその時、キリトの中で、
右上からの袈裟斬り。
そしてその刃の軌道のちょうど死角になる軌道で飛んできた脚。
見事にヒットを喰らい、吹っ飛ばされた、恐らくタスクにしか出来ないであろう、あの技。
間違いない。
キリトは、瞬時にそう察した。
「おぁぁっ!!」
そしてすぐさま、その勘を頼りに、防御体勢に入る。
「くっ……!!」
見えない。
タスクの右足が、本当にそこにあるようには見えない。
恐るべき速度で迫る刀の後ろに、間違いなくいるであろうその足は、いつどのタイミングで視界に入ってくるかわからない。
だが、だからといってそのタイミングを捉えた瞬間から防御を始めても、絶対に間に合わない。
だから何としてでも、今この瞬間から、防御をしていなければならない。
例え、自分がその防御部位以外が手薄になってでも。
ガッ!
「ぐっ!」
そしてついに、タスクの右足が、キリトのあらかじめ出していた左剣に当たる。
刃は、もちろんタスクの足の方には向けない。
勢い負けすれば、自分の体へと傷を入れかねないからだ。
ただ、キリトはその瞬間、ニヤリと笑った。
防いだ、いや、防いでやった。
最初はまんまとやられたあの技を、たった2度目にして防いでやった。
あの痛みを受ける事に、2度目はない。
確かな満足感が、キリトの中で芽生える。
……だが。
ゴッ
「がっ……! はっ……?」
最近、週一投稿が出来てるような気がします……
今年中には、せめて決闘は終わらせられる……かなぁ(笑)
今後ともよろしくお願いします。
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