これは【GGO】であって、【MGS】ではない。 作:駆巡 艤宗
今回、繋げるところで繋げたら長くなってしまいました。
そして、作者は絶賛スランプ中です。
いつもより駄文がすぎると思われますが、どうぞよろしくお願いします。
「今の僕がいるのは、全て、彼がいたからなんです」
そう言って、タスクはしゃがんだ。
「僕は本来、
「っ……!!」
そして、そんな少し丸くなった背中から聞こえてくる呟きに、シノンはぐっと、なにか締め付けられたような感触を感じる。
「僕が……僕が臆病者だったから……僕は、彼を守ることが出来なかった。彼は……死ぬことになったんです」
「……!!」
だが、そんなシノンを差し置いて、タスクはただただ懐かしそうに、そしてどこか悲しそうに、その墓石を撫でた。
「シノンさん……いえ、詩乃さん」
「っ!?」
するとその時。
タスクが、こちらに振り返ることなく、シノン……ではなく、詩乃、と、急に呼びかけてきた。
詩乃は、言わずもがな、びくりと驚く。
だがタスクは、そんな詩乃の驚きなどつゆ知らず、未だなお、墓石に向かったまま、こう、問いかけた。
「今から話す事……
「……!!」
「これは、今まで誰にも打ち明けていないことです」
「だ、誰に……も……!!」
「そうです……でも、今日僕は……いや、少なくとも
「……!!」
「他の誰でもない、僕のパートナー……に」
「!?」
その時、詩乃は、頭の中が真っ白になる。
いつのまにかタスクは、しゃがんだままこちらを向き、シノンを見上げている。
その顔を見ると、尚更頭がぐるぐるとかき混ぜられたような感覚に陥る。
……のだが、答えは既に、決まっているも同然だった。
「あの事件」から、もうすぐ2年。
それまでの間、誰にも打ち明けてない過去を打ち明けるという事は、彼の中でも、何かしらの心の動きがあったのだろう。
私には、その彼のきっと辛かったであろう心の動きを、拒絶する権利はない。
きっとその逆……きちんと受け止めて、なんなら一緒に背負う……
そう、詩乃は思い至る。
……というより、思い至っていた。
タスクに、ここに連れてこられるまでに。
だから詩乃は、ふらふらする頭を何とか保って、しっかりと、タスクの問いかけに答えた。
「ええ……もちろん。約束する」
「……!!」
すると、今度はタスクが、詩乃を見上げる目を丸くする。
……だが、すぐにその視線を墓石に戻すと、ゆっくりとこう、切り出した。
「あれは……そう、SAOが始まってから、ちょうど1年が過ぎた辺りでした」
✣
「彼にはね、唯一無二の親友がいたんだ」
「親友……ですか」
一方、こちらは店主とキリト。
店主が急に、昔話をしてもいいか……と話し始めて、少したった頃である。
「そう、親友。それもね、SAOに囚われるずっと前からの、リアルの親友さ」
「……!!」
「なんでも、幼稚園辺りからずっと一緒だったらしい」
「そ、それは……」
「うん……実際すごく仲がよかった。彼のプレイヤーネームは、アユム」
「アユム……くん」
「本名は、
「……」
「コードネームは、苗字からとって、「カズ」さ」
そう言って、店主はふっと微笑んだ。
キリトは、瞬時にその笑みの中に悲しみの感情が含まれているのを察する。
「彼はね……とてもいい子だった」
「……!!」
すると、キリトの予想通り、次に店主が発した言葉には、どこか悲しげな感情が含まれていた。
「頭がよく回って、大人しくて……」
「……」
「そしてきっと、ラフコフみたいな連中に対して、一番敵対心というか……その、正義感が強かった」
「……」
そう言って、店主は体勢を変え、机に肘をついて、コーヒーをついてきたスプーンでかき混ぜ始める。
キリトはその手元を、店主が何を言わんとしているのか、どこかうずうずしながら見つめた。
しばしの沈黙が、その場に訪れる。
……が、キリトの視線に促されたのか、店主はすぐにまた話し始めた。
「でもね、彼はなぜか、戦闘だけは、向いてなかったんだ」
「え……!?」
「はは、やっぱり驚くよね」
「い、いやだって……」
「まあ……ね、言いたいことは分かるけど……でも本当なんだよ。彼はそれこそ、まるで
「な……!!」
「あらゆる武器、あらゆる戦闘スタイルを試してみたけど、全くダメ。当時、熱心に教えてあげてたタスクくんの努力虚しく……ね」
「……!!」
「はは、手は尽くしたんだけどね。でも……やっぱりダメだった」
「は、はあ……!?」
「よくタスク君と二人で頭を抱えたものさ。あの頃は楽しかったなぁ……」
そう言うと店主は、ははは、と笑い始めた。
キリトは驚愕し、ついポカーンとしてしまう。
確かに、向き不向きというものは存在する。
だが、店主にここまで言わせる程のものがどれほどのものなのか、全くもって想像できないし、そもそもそんな、言ってしまえば
……だが、やはりと言うべきか、すぐに店主はその笑みをひっこめた。
「……でね、そのうちだんだん、僕らは気づき始めたんだ」
「……!?」
「向いていないことをただひたすらできるようにするより、元々持っている
「良さ……ですか」
「そう。ほら、さっき僕さ、「よく頭が回る子だった」って言ったじゃない?」
「あ……ま、まあ……」
「僕らはね、まさにそこを伸ばそうとしたんだ。つまり……言っちゃえば「
「……!!」
するとその時、キリトは、どこかモヤモヤが一気に晴れたような感覚を覚える。
確かにそうだ。
戦闘と言っても、ただ戦うだけではダメなのだ。
相手の行動を読み、それに合わせて動かないと、戦闘では勝ち目がない。
しかもそれが、生身の人間が相手だと尚更、それ加え団体と団体の衝突なら、さらにだ。
店主は、そんな納得をするキリトを見て、ふふ、と微笑む。
「ふふ……納得した?」
「……!!」
「で、そう気づいて以来、彼は途端に才能を発揮し出してね」
「才能……!!」
「そう……才能。もうね、それはそれは見てて面白いくらいさ」
「……」
「彼はね、作戦や戦略はもちろん、戦闘の仕方、そのものに革命を起こした……と言っても、過言じゃない」
「か、革命……?」
いきなりすごい単語が出てきたな、と言わんばかりにキリトは聞き返す。
すると店主は、未だその微笑みを消さぬまま、言葉を続けた。
「そう……革命」
「……!!」
「いい例がタスクくんだね。キリトくんさ、タスクくんの戦い方を見て、どう思った?」
「あっ……!!」
その時、キリトの脳裏に、まるでフラッシュバックするかのようにあの時の光景が浮かび上がってくる。
あの……剣術と格闘技を組み合わせたような、異様な戦闘スタイル。
まさかあれは……と、キリトは驚きに満ちた目で店主を見た。
「ま、まさか……!!」
「……ふふ、びっくりしたでしょ、あれ」
すると、店主はその目を見て微笑む。
そして答えと言わんばかりに言葉を続けた。
「そう、あの戦闘スタイルは、アユムくんがタスクくん向けに……と、考え出したものさ」
「……!!」
「当時、逆に戦闘だけは秀でていたタスクくんに、アユムくんは様々なアイデアをくれたんだよ。そしてそれを、タスクくんは寸分たがわぬ精度で具現化した」
「ア、アイデア……ですか?」
「そう、アイデア。例えばさ、ほら、決闘の終盤に出した、ソードスキル発動中のキリトくんの剣を弾き飛ばしたやつ、あったじゃない?」
「あ、ああ……」
確かにそんなのあったな、と、キリトは思い返す。
勝った、なんていう、今思えば早とちりがすぎる確信の元、突き出した剣が、何故か自分の手から離れ、宙に舞った
「あれはね、
「な……!!??」
「原理はよくわかんないけど……なんかね、アユムくん曰く、システムがなんだとか、力点作用点がなんだとか言って、
「……!!」
するとその時。
キリトは、内心で衝撃に身を揺さぶられていた。
なぜならそれは、
彼はSAO時代、
理由としては、相手を無力化するには相手の武器を壊してしまえばいい、なんていう至極単純な思考に至ったから。
……だが、流石のキリトも、武器はおろか、
まさに、「一段上」な発想だ。
だからキリトは、衝撃に駆られているのである。
「他にも沢山あるよ。もう一個例を出そうか」
「!」
「んーとね、あまりこういうとあれかもしれないけどさ」
「……?」
「決闘の時、君に……その、トドメをさしたソードスキルがあったじゃない?」
「は、はい」
「あれはね、元々アユム君が編み出した技……ま、言っちゃえばシステム外ソードスキルなんだ」
「……!!」
「まあ、タスクくんはいつの間にかOSSとしてALOに落とし込んでたみたいだけどね。ちなみにあれの名前は、『
「『
「そ。その
「……」
「その鋭い光のように……刀で敵の弱点を穿つ。それも1回じゃなくて、確かあれは……3箇所、かな。つまりは、あの一瞬の間に3連撃してるのさ」
「……!!!!」
キリトが、目を丸くしてポカーンとする。
店主はそんな彼を見て、ふふ、とまた微笑む。
「まあ、つまりはさ、アユムくんが理論を構築して、タスクくんがその理論を実用化する……って言ったら分かる?」
「……!!」
「彼らはまさに、仲間として最高の関係……」
「……」
「まさに「
「……」
「
その言葉が、キリトの心にグサリと突き刺さる。
実はキリトには、薄々感じていることがあった。
それは、「
話し始めた時から違和感があったのだ。
やたら過去形を使うのも然り、どこか悲しそうな目をするのも然り。
まだ話は中盤辺りだ。
それかもしかしたら、まだ序盤なのかもしれない。
だから聞かなかった。
と言うより、「で、そのアユムくんは、今どこに?」とは、むしろ
……だが、その予想は次の瞬間、確信に変わったのだった。
「……でもね」
「……っ!!」
その時、店主の話すトーンが、一段と下がった。
キリトは、そのトーンの変化に、やっぱり、と言わんばかりの納得感を覚える。
そしてついに……その時がやって来た。
「そんないい関係は……」
「……!!」
「いや、そんないい関係
「っ……!!」
「ある日突然、永遠に断ち切られてしまったんだ」
キリトは、無意識に眉間にしわを寄せ、ぐっと体が強ばる。
そしてまた、そう言った店主の手は、強く握りしめられて震えていた。
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