これは【GGO】であって、【MGS】ではない。   作:駆巡 艤宗

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Episode74 大罪 〜Great deal〜

「え、永遠?」

「そう。永遠に、です」

 

夜風が背筋を撫でたのか、シノンはゾクリと寒気を感じる。

 

タスクの旧友、アユムの話。

殺伐としたSAO時代に、確かに存在した熱い友情。

 

今まで聞いてきた話は、シノンのSAOへのイメージを変えるほど、意外な……そしてとても良い話だった。

 

そしてそれを語るタスクも……無意識なのか、墓石を見ながら懐かしそうに微笑んでいたのだ。

 

……が、今となっては打って変わって、タスクの話すトーンはガクンと落ち込み……

 

どちらかと言うと、シノンの想像していたような、いわゆる冷たいSAOの感触へと変わっていた。

 

「で、でも、一体どうして……!!」

「いやぁ、簡単なことですよ」

 

シノンのボヤキに、タスクは今度は悲しげな笑みで答える。

 

「はは、まあつまりは、()()()鹿()()()()()()()ってことですよ」

「ば、馬鹿?」

「そう。恐らく、相手も気づいてたんでしょうね」

「……?」

「戦闘の勝率の上昇と共に、()()()()()()()()()のを」

「あっ……!!」

 

するとその時。

シノンの中に、一気に()()()()が巣食う。

 

結果は分かる。

タスクが、懐かしそうに眺めている墓石を見れば。

 

……ただ、そう分かっていても、胸の中がチクチクするようなこの予感は、シノンにはどうしても拭いきれなかった。

 

そして、()()()()は、的中する。

 

「当時、僕らは、『裏血盟騎士団』というギルドで、活動していました」

「……」

「元々、『血盟騎士団』というそれはもう……強く大きなギルドが母体となっている、言わば子会社みたいなやつです」

「……!!」

「設立された理由は、いわゆる「汚れ仕事(ウェットワーク)」をこなすため」

汚れ(ウェット)……仕事(ワーク)?」

「そうです。当時、血盟騎士団は、おそらくは最強だった。するとですね、そんな彼らを、止めようとする連中も出てくるんですよ」

「な、なんで……」

「はは、それはですね……」

 

するとその時、タスクは言葉を一旦切る。

そうして、しばらく時を置いた後、こう言葉を続けた。

 

()()()()()()()()、です」

「な、な……!?」

 

シノンは、嫌な予感なぞとうに通り越して、恐怖を感じる。

 

なぜならばそれは、現実世界へ帰る、それが全員の目標ではないのか、そう疑問に思っていた矢先、とんでもない言葉がすっ飛んできたからだ。

 

「人を……こ、こ、殺したい?」

「ええ……そうです。あの連中はね」

 

シノンが、恐る恐る、タスクの言葉を復唱する。

対してタスクは、さらりと言葉を返した。

 

……が、タスクもあまりにも簡単にし過ぎかと思ったのか、説明を付け足す。

 

「まあその……つまりですね」

「え……ええ」

「あの世界では、人殺しをした時、なかなかその実感が湧きにくいんですよ」

「……!!」

「あの世界だけじゃない。今僕らが戦っている世界でだって、相手を殺す、という実感はあまりないはずです」

「……!!」

「たとえ剣で首を落としても、体を切り刻んでも、出てくるのはポリゴン片のみ」

「あ……!!」

「ふふ、分かりました?」

 

シノンは、タスクの言わんとしていることを嫌でも理解する。

 

ただ純粋に、人殺しをしたい。

並大抵の覚悟では到底できないような()()を、犯してみたい。

 

だが、それは簡単にはできない。

なぜならば、そこに悲惨な光景が現れることが、目に見えているから。

 

実際、シノンはその()()()()()を見ているから、尚更理解出来る。

 

……ただ、もし、その()()()()()が、現れなければ。

確かに人が死んでいる。それも、自分の手で。

だがそこに、人殺しをした、という明確な証拠が残らなければ。

 

シノンの()()()()の時、もしそうなら、今どうなっていたか。

 

答えは簡単だ。

確かに罪悪感は残る。

だが、それを上回る正義感が、シノンを支配していたはずだ。

PTSDなど、もちろん発症しなかっただろう。

 

「っ……!!」

 

シノンの心拍が、警鐘となって体中に響き渡る。

それと同時に、思考が先程のタスクとの会話につながってくる。

 

そう……つまりそのラフコフという連中は……

 

「人を殺したい……っていう、よ、欲望のために……」

「そうです。実感は湧かない、でも確実に死んでいる。そう分かっているから、人を惨殺し、自己肯定感を得ていたんです」

「な、なんてこと……!!」

「そしてそれを、今にも終わらせようと、動いている人達がいる」

「あ……!!」

 

その時、シノンの中で、タスクの難解な言葉の意味が、自然と現れてくる。

 

攻略組を、そしてその最大勢力、血盟騎士団を、ラフコフらレッドプレイヤーが、止めようとした理由。

 

それは……

 

「つまり彼らは……」

「自分たちの欲求を満たしたいがために、世界の終わりを阻止しようとした……そういう事?」

「そういう事です」

「……!!」

 

するとタスクが、そこまで言って、懐かしくも悲しそうな目を引っ込め、どこか怒りの感情が含まれた目を地面にむける。

 

「……」

「……」

 

そしてその後、しばらくの沈黙の後。

 

どこか……その怒りを抑えているような、必死に息を押し殺した声で、こう……話を続けた。

 

「それでそのうち……彼らはその欲望を暴走させるようになります」

「……」

「そしてそれを止めるべく、僕らが組織されて……」

「……!」

「するとだんだんと、その欲望の矛先が、僕らに向いてきて……」

「……!!」

「僕ら裏血盟騎士団を、()()()()、壊そうとした」

「あっ……!!」

「とてつもなく残虐に、そして永遠に……」

 

するとその時、シノンの中で、全ての話が繋がる。

 

裏血盟騎士団の()()

つまりそれは……いわゆる「()」のこと。

 

「彼ら……いや、連中は……」

「……!!」

 

 

 

 

「アユムを誘拐、監禁したんです」




いつになったらこの章が終わるのかって?

え、SJ編のプロットができてからです!
ヽ(゚ω。)ノ≡ヽ(。ω゚)ノウヒャヒャヒャ

すみません(笑)

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