これは【GGO】であって、【MGS】ではない。 作:駆巡 艤宗
「ゆ、誘拐?」
「そう」
「それに……監禁って……!」
「そのまんまさ」
キリトが、目を見開いて店主の言葉に食いつく。
店主は今、ラフコフの欲望がだんだん裏血盟騎士団に向いてきた、と言った。
人殺しに快楽を求めるあの連中を止めようとして、逆にその矛先を向けられた……と。
ならば、次にくるのは「殺害」やら「暗殺」やら、いわゆる「命を落とす」系列の言葉……だと、思っていたのだが。
実際はそうではなく、やってきたのは「誘拐」と「監禁」という、今までの過激さと比べればどこかヤワそうな単語。
「ふふ……なんで、と言わんばかりな顔をしてるね」
「……!!」
その時、店主がポカーンとするキリトを見て微笑んだ。
キリトは、その顔をあえて見返して説明を求める。
すると店主は、キリトが言わんとしていることを自ずと察し、話し出した。
「確かに、彼らは人殺しに快楽を見出す集団。それは、間違いない事実だ」
「……」
「でもね、彼らとて人間だ。いずれ
「……!?」
「人間は、
「……!!」
「彼らはね、殺しのレパートリーを増やしたんだ」
「レ……レパートリー?」
「そう……レパートリー。ま、言っちゃえば種類、だね。そのひとつが、今まさにこの状況さ。誰かの大切な人を攫って、その誰かが助けに来たところで、目の前でその大切な人を殺す」
「なっ……!?」
「その後、その誰かも殺す。殺す側はそれだけで2人も殺せるし、何より大切な人を殺されたその誰かの絶望した顔も見れる」
「っ……!?」
「まあ、こう言っちゃあなんだけど、殺す側にしてみたら楽しいことこの上ないだろうね」
「な、なぁっ……!!??」
そう話しつつ店主は、どこか怖い笑みを浮かべ始める。
そしてキリトの顔は、それに比例して、あからさまな引き顔へと変わっていった。
「……で、その状況がまさに裏血盟騎士団な訳さ」
「あっ……!!」
「当時、『知のアユム・武のタスク』なんて言われるくらい、彼らは猛威を奮っていた」
「……!!」
「そんな2人、同い歳なこともあって、仲がいい。そしてその歳も、14、5とまだまだ若い」
「う、うわ……!!」
「もう、彼らにとっちゃぁこの上ない状況だよね。これが成功した暁には、なかなかない子供の殺害が2人もできる上、敵対勢力の
「……!!」
キリトはいつの間にか、机を見つめて顔を歪めていた。
心無しか、店主の顔が見れなくなったのだ。
それはただ単純に怖くなったのか、それとも何かまた別の理由があるのか。
分からない、だが分からないが故に、尚更怖い。
「……ふふ、怖くなっちゃった?」
「いっ……いえ……」
「はは、声が震えてるよ」
「っ……!!」
店主のあっけらかんな声が前から聞こえてくる。
キリトはそんな声での指摘に言葉を返せず、結局黙り込んでしまう。
……そして、店主はついに、こう切り出した。
「……でまあ、かくして、ついに『アユム事件』が起こっちゃったわけさ」
✣
「手順は至って簡単でした」
「……」
一方、こちらはタスクとシノン。
タスクはあぐら、シノンはしゃがんで、墓へ斜めに向いて、半ば3人で丸く座っているような感じで、話は続いていた。
「当時、裏血盟騎士団の最大の敵はラフコフ。という事はつまり、
「え、ええ……」
「ですから、その……そうですね、「比率」で考えてみてください」
「……?」
「戦力、つまり人は、無限にはありません。どこかへ多くの戦力を、そして人員を投入すれば、必然的に他の所の戦力は低下します」
「そ、そうね……」
「とすれば、それを逆に捉えて、
「……!!」
「ラフコフのリーダーは、その加減がすごくうまかった。僕らがそうせざるを得なくなる状況まで、その……ラフコフへの特段の警戒心も利用されて、あっという間に持っていかれてしまったんです」
そう話すタスクの顔は、微笑みを保ちつつもどこか暗く沈んでいた。
シノンはその顔を伺いつつも黙ってその話を聞いている。
「ただ、僕らも自覚がなかった訳ではないんです」
「……?」
「嫌な予感はしていたし、なんならアユムは、もしかしたらわかっていたのかもしれません」
「でも……」
「ええ……そうなんです。
そう言って、タスクは大きく息を吐く。
シノンは、相変わらずその様子を見つめ、黙り込んでいた。
そうして、しばしの沈黙が訪れ……
「……で、じゃあ具体的に一体どうなってしまったかと言うとですね」
「……!!」
……たのだが、タスクがその沈黙を破るようにまた話し始めた。
シノンはシノンで、そんなタスクの話に素直にまた、耳を傾ける。
そしてまた……タスクの、そして今は亡きアユムの、凄惨な過去の断片が語られていった。
いつもありがとうございます。
駆巡 艤宗です。
いやぁ、長いですね(笑)
『光と影』編、想定よりだいぶ長くなりそうで、申し訳なさ半分、こんな長々とした作品を読んでくださる嬉しさ半分、とっても微妙な気持ちです(笑)
……で、ですね。
なかなか終わりが見えてこないこの章に、流石の読者さんも「例のアレ」が気になってしょうがなくなっているのではないか?と思い至りましてですね。
Twitterでのアンケートを経て……
『キャンペーンキャラの名前、一言セリフの設定集追加』
を決定しました!!
非常にお待たせしておりますので、半ば緊急措置のような形になります。
本当に申し訳ないです(笑)
今後とも、この長々とした物語をよろしくお願いします。
では……
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