これは【GGO】であって、【MGS】ではない。 作:駆巡 艤宗
「い、いいのか?」
「ええ」
暗い部屋の中、とある2人が、ロウソクの火を挟んで話し合っている。
1人は、30代後半辺りのような顔つきをした、それでもどこか、威厳を湛えている女性。
そしてもう1人は、まだ顔に幼さが残りつつも、明確な意思を目に宿らせた、少し身長の低めな少年。
「……
「構いません」
「あ……あのな……考え直せ、カズ」
「……決めたことです」
「だがな、お前がそれこそ……
「命に価値の差などありません」
「っ……!!」
カズ、と呼ばれたその少年の一言に、女性は言葉を詰まらせる。
なぜならそれは、その少年……カズが、言わんとしていることを見抜いていた事を悟ったからだ。
「……僕一人の命をとるか、その他大勢の命をとるか」
「……!」
「それに僕は、
「……!!」
「
「く……!!」
女性の顔が、みるみるうちに焦りと恐怖に染まっていく。
すると、そんな顔を見て、カズはふふ、と微笑んだ。
「それにね」
「……!?」
「僕が死ぬ、と決まったわけではないんですから」
「……!!」
「彼を信じましょう」
「彼……
その瞬間、2人が目の視線がお互いに合わさる。
そしてカズが、
「
……と呟き、微笑んだ。
それにつられて、相対する女性も少し笑みを浮かばせる。
ただ……その女性は見抜いていた。
カズの顔には、いつになくどこか、「悲壮」の感情が浮かんでいる事を。
✣
時は、2024年。
SAOという名のデスゲームが始まって1年と少しが経った頃。
とある層の小さな街の薄暗い路地で、
「……」
地べたに腰を下ろし、足を投げ出し、後頭部を壁につけて、何の言葉も発さず、何の身動きもとらず、まるで銅像かのように、その少年はただひたすら、空を眺め続けている。
その少年の服装は、布を何重にも巻き付けたような、でもどこか様になっていて整っている、まるで中世の
配色は、黒色を下地に、青色のラインのみ。
現状、最強とまで謳われる「血盟騎士団」の制服の、
ピピピ……ピピピ……
「……んおっ」
するとその時。
何かを知らせるアラーム音と共に、彼の視界に、《Gift box for Kazu》という長細いウィンドウが表示される。
その少年は、迷わずそのウィンドウをタップした。
そしてその後、次にそこに現れた正八面体のオブジェクトを手に取ると、だらしない体勢をやめ、膝を立ててしゃがむ。
……と同時に、その正八面体のオブジェクト……時限式録音クリスタルから、予め録音されていた音声が流れ出した。
そうして彼は、目を伏せてその音声に耳を傾けた。
『おはよう
『……というわけだ。君も知っているだろうけど、先の《ラフコフ設立宣言》のお陰で、裏血盟騎士団全体がごった返している。よって君が捕えられ、もしくは殺されても、こちら側は一切感知できない。幸運を』
そしてその内、そのメッセージは終わりを迎える。
すると
「……層、……で、……を……する……了解。」
今一度、任務内容を小声で呟き、ようやく顔を上げる。
そして彼は、路地の壁を交互に蹴り、屋根に上がると、走り出して消えた。
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