これは【GGO】であって、【MGS】ではない。   作:駆巡 艤宗

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Episode77 敬意 〜respect〜

「な……!?」

 

黒装束に身を包み、トンガリ屋根の上にしゃがむとある少年、大蛇(オロチ)は、とあるメッセージを前に、驚愕する。

 

なぜならば、ついさっき、任務を受けて、今やっと、目標(ターゲット)発見に至った所だったのに、この瞬間から、その任務を否が応でも放棄せねばならなくなったからだ。

 

「おいおいおいおい、まてまてまてまて……!!!!」

 

あからさまな焦りを口にし、大蛇(オロチ)は屋根を走り出す。

 

隙間を飛び越し、煙突を乗り越え、壁を蹴り登って、全速力で彼は急ぐ。

 

行き先は、メッセージの送り主がいる、とある場所。

 

 

 

 

 

 

……そう、それは、「カズ」の元である。

 

 

「へへ……ついに裏血盟も終わりだなぁ? ええ? カズさんよォ……」

 

あからさまに油断し、舐めるに舐めきった声が、薄暗い洞窟に響く。

 

それに対し、カズは……

 

「ふん……仕事中に気を抜くような連中に、僕らが負けるとでも?」

 

……と返し、その男を鼻で笑って軽蔑の眼差しをむける。

 

そこには、その男の他にもまだたくさん、男達がいた。

ただ全員、もれなく舐めた顔をしていて、視線は一点に集まっている。

 

その一点、それは、立てた棒に()()()()()()()()()カズであった。

 

「おーおー、こわいこわい。ただなぁ、そんな格好で言われても……なぁ?」

 

すると、その男達の中から、また別の声が聞こえてくる。

そしてその一言で、その場に笑い声が響いた。

 

「……ふん」

 

カズは、そんな男達を見て、また鼻で笑いつつ床を見る。

 

《正直……()()だな……》

 

そして一人で、考え事をし始めた。

 

《まさか……()()ではなく、こんな所に連れてこられるとは……》

 

カズの手に、自然と力が入っていく。

 

……が、その時だった。

 

ガッ

「ぐっ……!?」

 

カズの体に、衝撃と痛みが走る。

 

あまりの突然さに、カズが前を見ると……

 

「大人が話しているだろう?子供はちゃーんと聞いてなきゃぁ……」

「なん……だと……!?」

ゴッ

「ぐぅ……!」

 

そこには、先の舐め腐っていた男がいて、カズの横腹を殴っていた。

 

「大人に対する敬意ってもんが足らねぇなぁ?」

「そうだそうだー! やっちまぇー!!」

ガッ ゴッ バキィ!!

「がぁっ……!!」

 

その男の暴力は、周りの野次馬の声に乗せられ、どんどんヒートアップしていく。

 

そしてカズが、一言も発さなくなった時。

 

「へへ……どうだ?」

 

その男は、やっと暴力の手を緩める。

 

……だが、カズはまた、顔を上げた。

そして同時に、その男に唾を吐く。

 

「な……!!」

「敬意……だと?」

「っ……!!」

 

唾を吐かれたその男は、逆上してまたカズに拳を振りあげようとする。

 

……が、今度はできなかった。

なぜならそれは、カズの眼差しが大きく変わっていたからだ。

 

「……っ!?」

「敬意、というのは、あくまで自発的に行うからこそ、価値があるものだ。誰かに言われたから、やったほうがいいから、やるのが普通だから……と、行う敬意は、敬意ではない。それはもはや……」

「……!!!!」

「自分を守るために相手を騙す、単なる自己防衛でしかない。そしてそれは、敬意でもなんでもない。ただの嘘つき、詐欺師、ペテン師だ」

 

カズの今までとは違った眼差しと、それに比例して強く変わった口調での叙述に、その場の男達は、竦んで身動きが取れなくなる。

 

「……この餓鬼ィ!!」

 

すると次の瞬間、その男達の中から、一人の男が拳を振り上げて殴りかかって来た。

 

カズは、防御ができないが故、目を閉じてぐっと歯を食いしばり衝撃に備える。

 

……だが。

 

グシャッ

「がっ……!?」

 

その男は、その拳を振り下ろすことは無かった。

 

それどころか、カズの目の前で立ち尽くし、動かなくなる。

カズはその男を恐る恐る見上げ……

 

そしてにっ、と微笑んだ。

 

「なっ……!!」

 

そして今更になって、周りの男達が、その男の異変に気づく。

 

その男は、()()()()()()()()()()()いた。

それも……刀という、湾曲した刃物を。

 

「あ……が……!!」

 

その男は、悶絶しながら2〜3歩後ずさる。

そしてそのまま立ち尽くすと、光の粒子になって消えた。

 

「……!!!???」

 

あまりの光景に、周りの男達は目を疑う。

 

……だが、視線は自然とカズに集まり。

そしてそのカズが見る先へと集まった。

 

するとそこには……

 

 

 

 

 

 

「待たせたな」

 

黒装束に青のライン。

何かを投げた後のような姿勢で、洞窟の外の光を背に佇む……

 

 

 

 

 

大蛇(オロチ)が、いた。




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