これは【GGO】であって、【MGS】ではない。 作:駆巡 艤宗
「な……!?」
黒装束に身を包み、トンガリ屋根の上にしゃがむとある少年、
なぜならば、ついさっき、任務を受けて、今やっと、
「おいおいおいおい、まてまてまてまて……!!!!」
あからさまな焦りを口にし、
隙間を飛び越し、煙突を乗り越え、壁を蹴り登って、全速力で彼は急ぐ。
行き先は、メッセージの送り主がいる、とある場所。
……そう、それは、「カズ」の元である。
✣
「へへ……ついに裏血盟も終わりだなぁ? ええ? カズさんよォ……」
あからさまに油断し、舐めるに舐めきった声が、薄暗い洞窟に響く。
それに対し、カズは……
「ふん……仕事中に気を抜くような連中に、僕らが負けるとでも?」
……と返し、その男を鼻で笑って軽蔑の眼差しをむける。
そこには、その男の他にもまだたくさん、男達がいた。
ただ全員、もれなく舐めた顔をしていて、視線は一点に集まっている。
その一点、それは、立てた棒に
「おーおー、こわいこわい。ただなぁ、そんな格好で言われても……なぁ?」
すると、その男達の中から、また別の声が聞こえてくる。
そしてその一言で、その場に笑い声が響いた。
「……ふん」
カズは、そんな男達を見て、また鼻で笑いつつ床を見る。
《正直……
そして一人で、考え事をし始めた。
《まさか……
カズの手に、自然と力が入っていく。
……が、その時だった。
ガッ
「ぐっ……!?」
カズの体に、衝撃と痛みが走る。
あまりの突然さに、カズが前を見ると……
「大人が話しているだろう?子供はちゃーんと聞いてなきゃぁ……」
「なん……だと……!?」
ゴッ
「ぐぅ……!」
そこには、先の舐め腐っていた男がいて、カズの横腹を殴っていた。
「大人に対する敬意ってもんが足らねぇなぁ?」
「そうだそうだー! やっちまぇー!!」
ガッ ゴッ バキィ!!
「がぁっ……!!」
その男の暴力は、周りの野次馬の声に乗せられ、どんどんヒートアップしていく。
そしてカズが、一言も発さなくなった時。
「へへ……どうだ?」
その男は、やっと暴力の手を緩める。
……だが、カズはまた、顔を上げた。
そして同時に、その男に唾を吐く。
「な……!!」
「敬意……だと?」
「っ……!!」
唾を吐かれたその男は、逆上してまたカズに拳を振りあげようとする。
……が、今度はできなかった。
なぜならそれは、カズの眼差しが大きく変わっていたからだ。
「……っ!?」
「敬意、というのは、あくまで自発的に行うからこそ、価値があるものだ。誰かに言われたから、やったほうがいいから、やるのが普通だから……と、行う敬意は、敬意ではない。それはもはや……」
「……!!!!」
「自分を守るために相手を騙す、単なる自己防衛でしかない。そしてそれは、敬意でもなんでもない。ただの嘘つき、詐欺師、ペテン師だ」
カズの今までとは違った眼差しと、それに比例して強く変わった口調での叙述に、その場の男達は、竦んで身動きが取れなくなる。
「……この餓鬼ィ!!」
すると次の瞬間、その男達の中から、一人の男が拳を振り上げて殴りかかって来た。
カズは、防御ができないが故、目を閉じてぐっと歯を食いしばり衝撃に備える。
……だが。
グシャッ
「がっ……!?」
その男は、その拳を振り下ろすことは無かった。
それどころか、カズの目の前で立ち尽くし、動かなくなる。
カズはその男を恐る恐る見上げ……
そしてにっ、と微笑んだ。
「なっ……!!」
そして今更になって、周りの男達が、その男の異変に気づく。
その男は、
それも……刀という、湾曲した刃物を。
「あ……が……!!」
その男は、悶絶しながら2〜3歩後ずさる。
そしてそのまま立ち尽くすと、光の粒子になって消えた。
「……!!!???」
あまりの光景に、周りの男達は目を疑う。
……だが、視線は自然とカズに集まり。
そしてそのカズが見る先へと集まった。
するとそこには……
「待たせたな」
黒装束に青のライン。
何かを投げた後のような姿勢で、洞窟の外の光を背に佇む……
新元号、あけましておめでとうございます。
今元号も、よろしくお願い申し上げます。
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