これは【GGO】であって、【MGS】ではない。 作:駆巡 艤宗
「カズ!!」
それと同時に、カズがその場に崩れ落ちた。
「だ……大丈夫だよ……投げナイフを……食らっただけだ……」
「だ、だけって……!!」
そう言って、カズは後ろ腰に刺さっているナイフを引き抜く。
「ライフは!? 大丈夫なのか!?」
「大丈夫……だから。それより早く、
「
そして、カズは少し前の茂みを指差してそう言った。
するとその時、
「僕なら大丈夫、だから君は早くあいつを追うんだ。運が良ければ奴らのアジトの場所が……!!」
「……っ!!」
「早く!! 逃げられたら、元も子もないよ……!!」
確かに、これは千載一遇の好機だ。
これを逃せば、もうアジトを特定する機会など、到底恵まれないだろう。
それに、カズは一見、大丈夫そうである。
後ろ腰に一刺しされただけだし、ライフもそこまで削れてはいないはずだ。
「わかっ……た……」
そう思い至り、
すると、それを聞いたカズが、ふ、と微笑んで
そして一言……
「うん、頼んだよ……
そう、呟いた。
ただもうその声は……
✣
「くそ……待ってろよ……カズ!!」
一方、こちらは
なんとか、視界に入る程には追いついたあの影を追いつつ、カズを気にかけてもやもやしていた。
「はやくアジトを特定して……戻らないと……回復薬があるとはいえ、何が起こるか分からないしな……」
そう独り言を呟きつつ、やたら早く進み続ける影を追う。
林を抜け、丘を越え、まだまだ進んでいくその影。
……だが、途中からだんだん、違和感を覚えてきた。
「……?」
それとなく……その影が、
もちろん、その意図があからさまに出ているわけではない。
同じところなど一切通過しないし、風景は目まぐるしく変わっていく。
だが、どうしてか、
「……いやいや。そんなわけない」
すると、
ただでさえ、邪念を振り払い、集中せねばならない局面なのだ。
いらぬ心配で任務を、そして最大の好機を逃す訳にはいかない。
「くっ……!!」
✣
「ここ……か!!」
小声で、でもしっかりと、
眼前には、見覚えのある顔から、そうでない顔まで、皆見事に揃ったタトゥーを入れた男達がたむろしていた。
「連中、こんな所に……そりゃぁ見つからんわけか……」
そう、彼は今、その影を長々と追った末、ついに目的のアジトらしき所にやってきていた。
……正確に言えば、そのアジトから少し離れた、岩の後ろにいるのだが。
「とりあえず……位置情報っと」
現在位置や、装備・食糧の貯蓄、敵の推定保有戦力まで。
「……なかなか大きい……な。まあ仮にも、大々的に設立宣言なんてことをした連中だし、当たり前っちゃ当たりま……っ!!」
手馴れた手つきで、かつ迅速に、ウィンドウに打ち込んでいた、その時だった。
直後、きゅぅ……と胸と頭が締め付けられ、ゾワゾワと鳥肌が立ってくる。
「ま……まさか……まずいっ……!!」
彼はボソボソとそう呟きながら、肩で呼吸をし始めた。
変な汗が出てきてやまず、鳥肌が体自体を揺らし始める。
そんな
その先には、たった今、彼が追いかけていた
「くっ……!!」
途端、
まだ文章は書き途中のままだが、そんな事はお構いなしに、ウィンドウの《送信》ボタンを押して直ぐに消す。
✣
そしてその直後、彼の追いかけていた
その影の正体は……
「ジョニー・ブラック」だった。
光と影編、残りあと【3】話。
新章情報、近日公開。
お楽しみに……!!
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