これは【GGO】であって、【MGS】ではない。   作:駆巡 艤宗

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Episode79 選択 〜Choice〜

「カズ!!」

 

大蛇(オロチ)の悲痛な叫び声がこだまする。

それと同時に、カズがその場に崩れ落ちた。

 

「だ……大丈夫だよ……投げナイフを……食らっただけだ……」

「だ、だけって……!!」

 

そう言って、カズは後ろ腰に刺さっているナイフを引き抜く。

 

「ライフは!? 大丈夫なのか!?」

「大丈夫……だから。それより早く、大蛇(オロチ)()()()を追って……!!」

()()()……?」

 

そして、カズは少し前の茂みを指差してそう言った。

 

するとその時、大蛇(オロチ)の目に、その茂みから少し行った木の陰に、人影が隠れたのが映る。

 

大蛇(オロチ)はその瞬間、カズの言わんとしていることを理解した。

 

「僕なら大丈夫、だから君は早くあいつを追うんだ。運が良ければ奴らのアジトの場所が……!!」

「……っ!!」

「早く!! 逃げられたら、元も子もないよ……!!」

 

大蛇(オロチ)の中で、カズの叫び声が響く。

 

確かに、これは千載一遇の好機だ。

これを逃せば、もうアジトを特定する機会など、到底恵まれないだろう。

 

それに、カズは一見、大丈夫そうである。

後ろ腰に一刺しされただけだし、ライフもそこまで削れてはいないはずだ。

 

「わかっ……た……」

 

そう思い至り、大蛇(オロチ)はコクリと頷く。

すると、それを聞いたカズが、ふ、と微笑んで大蛇(オロチ)を送り出す。

 

そして一言……

 

 

 

「うん、頼んだよ……()()()

 

 

 

そう、呟いた。

 

ただもうその声は……大蛇(オロチ)、もといタスクには、聞こえていなかった。

 

 

「くそ……待ってろよ……カズ!!」

 

一方、こちらは大蛇(オロチ)

 

なんとか、視界に入る程には追いついたあの影を追いつつ、カズを気にかけてもやもやしていた。

 

「はやくアジトを特定して……戻らないと……回復薬があるとはいえ、何が起こるか分からないしな……」

 

そう独り言を呟きつつ、やたら早く進み続ける影を追う。

 

林を抜け、丘を越え、まだまだ進んでいくその影。

大蛇(オロチ)は、その影を追いつづけ、林や丘を進んでいく。

 

……だが、途中からだんだん、違和感を覚えてきた。

 

「……?」

 

それとなく……その影が、()()()()しているように感じてきたのだ。

 

もちろん、その意図があからさまに出ているわけではない。

 

同じところなど一切通過しないし、風景は目まぐるしく変わっていく。

 

だが、どうしてか、()()()()()()()()()のだ。

 

「……いやいや。そんなわけない」

 

すると、大蛇(オロチ)はそんな迷いを断ち切ろうと、首を振ってそう呟く。

 

ただでさえ、邪念を振り払い、集中せねばならない局面なのだ。

いらぬ心配で任務を、そして最大の好機を逃す訳にはいかない。

 

「くっ……!!」

 

大蛇(オロチ)は、より一層気を引き締めてその影を追い続けた。

 

 

「ここ……か!!」

 

小声で、でもしっかりと、大蛇(オロチ)は呟いて確信する。

 

眼前には、見覚えのある顔から、そうでない顔まで、皆見事に揃ったタトゥーを入れた男達がたむろしていた。

 

「連中、こんな所に……そりゃぁ見つからんわけか……」

 

大蛇(オロチ)はそう呟いて、顔をぐっと強ばらせる。

 

そう、彼は今、その影を長々と追った末、ついに目的のアジトらしき所にやってきていた。

 

……正確に言えば、そのアジトから少し離れた、岩の後ろにいるのだが。

 

「とりあえず……位置情報っと」

 

大蛇(オロチ)は、そそくさとウィンドウを開き、とあるプレイヤーへのメッセージ欄に、ひょいひょいと情報を打ち込んでいく。

 

現在位置や、装備・食糧の貯蓄、敵の推定保有戦力まで。

 

「……なかなか大きい……な。まあ仮にも、大々的に設立宣言なんてことをした連中だし、当たり前っちゃ当たりま……っ!!」

 

手馴れた手つきで、かつ迅速に、ウィンドウに打ち込んでいた、その時だった。

 

大蛇(オロチ)の心臓が、バクりと跳ね上がる。

 

直後、きゅぅ……と胸と頭が締め付けられ、ゾワゾワと鳥肌が立ってくる。

 

「ま……まさか……まずいっ……!!」

 

彼はボソボソとそう呟きながら、肩で呼吸をし始めた。

変な汗が出てきてやまず、鳥肌が体自体を揺らし始める。

 

そんな大蛇(オロチ)の視線は、いつの間にか虚ろになっていた。

その先には、たった今、彼が追いかけていた()()()がいる。

 

「くっ……!!」

 

途端、大蛇(オロチ)は走りだした。

 

まだ文章は書き途中のままだが、そんな事はお構いなしに、ウィンドウの《送信》ボタンを押して直ぐに消す。

 

 

そしてその直後、彼の追いかけていた()()()は、親しい仲間に呼ばれて振り返った。

 

その影の正体は……

 

 

 

 

 

 

 

 

「ジョニー・ブラック」だった。




光と影編、残りあと【3】話。
新章情報、近日公開。

お楽しみに……!!

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