これは【GGO】であって、【MGS】ではない。   作:駆巡 艤宗

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Episode84 異質な2人

「レンちゃん、今日はもう落ちるのー?」

「え、いや、あの……実は……」

「ん?」

 

そんな仲睦まじい女性同士の会話が、殺伐としたGGOの世界に響く。

 

ここは、SBCグロッケン。

ご存知、GGOの中心とも言える、プレイヤーなら一度は足を踏み入れたことがある、巨大な宇宙船である。

 

と言っても、今はもう残骸らしく、そこに人々が都市を形成した……という設定、なので、宇宙船というよりは、もはや都市、なのだが。

 

「私さ、新しい……実弾銃を探しててさ」

「ほほう……さては「軍拡」、だね?」

「そ、そんな大それたことじゃないよ……!!」

 

その宇宙船……もとい都市の、大きなメインストリート。

ネオンやらでやたらケバケバしい装飾が施された建物たちに挟まれた幅広の歩道で、その女性達は会話していた。

 

右に歩いているのが、もはや水着と言っても過言ではないほど攻めるに攻めた服装の、長身で黒髪の女性。

頬に大きなタトゥーが入っており、女性ながらになかなかGGOの世界観に溶け込んでいて、彼女が相当なヘヴィープレイヤーなことは誰が見てもわかる。

 

対して、その隣。

左に歩いているのが、まさに右の人とは対照的な、全身ポンチョの低身長な女性。

上から下まで全部カーキ色のポンチョに包まれており、それ以外の情報といえば、GGOでは珍しい、「低身長」なことくらい。

 

そんな、どちらも別方面で「異質」な2人は、周りの男達の視線など目もくれず、会話しながらスタスタと道を歩いていた。

 

「う〜ん、私のかわいいかわいい実弾銃はあげられないしなぁ」

「い、い、いやピトさん、そんな……!!」

「あぁ!! そーだレンちゃん!!」

「んぇ?」

 

するとその時。

ピトさん、と呼ばれた黒髪長身のプレイヤー、ピトフーイが突然、レンの肩を叩く。

そしてレンちゃん、と呼ばれた全身ポンチョの低身長プレイヤー、レンがビクりと体を強ばらせた。

 

「せっかくだからさ、いいお店、教えたげるよ」

「いい……おみ、せ?」

「そ、プレイヤーが開いてる、いわゆる「プレイヤーショップ」。NPCショップと違って、お店によって価格も性能も全然違うからね」

「へ、へぇ〜」

「レンちゃんには、私のとっておきのお店を教えたげる!! いわゆるまいしょっぷ!!」

 

ばちこーん、と効果音がつきそうなウインクをぶちかまし、稚拙な発音で話すピトフーイ。

 

レンは、マイショップというと、言うべき立場は経営者じゃないの? あでも、広い意味では合ってる……のかなぁ、なんてことを考えながら、やたらはしゃぐピトフーイを眺めている。

 

ついこの間知り合ったばかりなのに、このはしゃぎ様。

実を言うと、レンは半ば面食らっていた。

 

でも、いい風に捉えれば、これは人付き合いが上手くいっているとも言える。

今までここまでうちとけた人といえば、親友の()()()くらいだけだった。

 

VRMMOって、確かに自分の世界を広げるなぁ。

いつか見ていた、ドキュメンタリー番組の謳い文句を思い出す。

 

「ささ、いこー!!」

「う、うん!」

 

ただ、ピトフーイはそんな事などつゆ知らず、レンを置いて走り出す。

レンは、その背中を追いかけていった。

 

 

「ここ?」

「そ!」

 

それから、少しした後。

 

ピトフーイら一行は、とあるプレイヤーショップ『ガン・マリア』に来ていた。

 

「はぇ〜、キレイだね」

「お、やっぱそう思う?」

「それに、こんな大きなお店、建てれるん……だね」

「それなぁ〜!!」

 

お店の外観を見て、思わず言葉を漏らしてしまうレン。

ピトフーイは、その言葉を聞いて、少し嬉しそうにはにかんだ。

 

今までレンの行ってきたお店と言えば、どデカいマーケットか、路地裏の暗くて汚い、こじんまりとしたプレイヤーショップばかり。

こんな大きくて、綺麗なプレイヤーショップは初めて見た。

 

汚くて暗い路地裏ではなく、割と人通りのある歩道に面している上、この世界ではもはや珍しい、()()()()()がお店の看板を照らしている。

 

それに加えて、ショーケースの下には観葉植物も据えられていて、遠目から見たらもはやカフェにしか見えないかもしれない。

 

「私の知る限り、この世界で一番のお店だよ。品揃えはもちろん、カスタムの腕もなにもかも、ここに勝てるお店はない。それに噂じゃ、()()まで各地に出てるんだって」

「そ、そんなに!?」

「割とマジらしいよ? ほんとすっごいんだから!!」

「へ、へぇ〜……」

「それに……ね」

「ん?」

 

すると、意気揚々と話していたピトフーイの声のトーンが、心做しか下がる。

レンはそのトーンに合わせたつもりか、体勢を低くして耳を傾ける。

 

「このお店にはね……!」

「う、うん……!」

 

ピトフーイが神妙な顔をして、ゆっくりと、言葉を紡ぐ。

レンは、いつのまにか、今か今かと言葉を待ち構えている。

 

 

 

 

 

 

 

 

()()()()()()()()()()()()がいるんだって」




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