これは【GGO】であって、【MGS】ではない。 作:駆巡 艤宗
確かあれは、SAOから帰ってきた直後ぐらいだった。
菊岡とかいう男の事情聴取の後、もう一人、話を聞きに来た男がいたのだ。
名前は、「三村光」。
覚えが正しければ、この男は「サイバー対策課」という部所に属する、警視庁に務める立派ないち警察官だった気がする。
「どうしてあなたがここに……?」
「いやぁ、とんだご縁がありましてね」
その男……三村は、そう言ってはにかむ。
そしてそのまま、菊岡の隣に座った。
菊岡と三村はどちらともスーツで、対してタモンは普段着のような感じの服装。
なんだか居心地が悪くなってきたな、とタモンは苦笑する。
すると、三村が早速、と言わんばかりに鞄をあさり出し、そしてそれを見た菊岡が、満を辞したかのようにこう、話し出した。
「まずは……
「
「こちらです」
菊岡の言葉に首を傾げたタモンに、三村がわざわざ両手で
タモンはそれを受け取り、上から順に目を通す。
……そして。
「これは……!!」
「
「……!!」
「悪くない話だろう? タモン」
驚きの顔をしたタモンに、光の反射で目が隠れた菊岡がそう、切り出した。
その言葉を聞いて、タモンはすぐに我に帰ると、また疑いの眼差しで書面を見つめる。
少しの間を置いて二人を見つつ、眉間にシワをよせため息をつく。
そんな彼を見て、菊岡は言葉を捕捉的なニュアンスで割り込ませてきた。
「その計画は、
「……!!」
「それと同時に、僕ら警察にも来たみたいで……」
「ふむ……ということはだ、菊岡」
「ん?」
「お前のいう、我々って……」
「そう、
「はぁ……」
一段と深い息をつくタモン。
それを見てにっ、と微笑む菊岡。
「協力……してくれるよな?」
「僕からも是非、お願いします」
まるでトドメのような言葉。
タモンは思わず書面から目を離し、背もたれによりかかって身を引いた。
この書面は、確かに我々にはまたとないチャンスだ。
ただ同時に、この書面の計画に乗っかれば、それ即ち菊岡の
それはなかなか許容しがたい事だった。
だいたい、それ以前にだ。
「……」
「どうしたタモン、何か迷うことでもあるのか?」
黙り込んでしまったタモンに、菊岡が白々しく疑問符をかけてくる。
するとタモンは、その言葉を聞いて、何かが切れた気がした。
同時に、ぎらりと菊岡を睨む。
菊岡は思わず身を引く。
「だいたい、それ以前にだ、菊岡」
「っ……!?」
「この話、きちんと
「……!!」
すると菊岡は、タモンがそう問うた瞬間、しまった、というより、バレた、といったような顔をした。
それを見たタモンは、書面をぺっ、と机に投げる。
「そもそも彼に話が通っていないのなら、この話には我々は乗らない。我々のボスは彼だ。彼が我々の動きを決める」
「だ、だがなタモン、彼はまだ
「それ以前に、彼が僕らの
「ど、どうして君はいつもそうやって……!!」
「呆れるなら呆れればいいさ、僕は僕のボスに従っているだけだ、自衛官としてそれくらいは分かるだろ」
「ぐ……!!」
明らかに焦っている菊岡に、いつになく怒ったタモンは毅然と言い返す。
何度も彼……タモンと話してきた菊岡は知っている。
こうなってしまった彼はもう、なだめすかす事は不可能なのだと。
こちらが譲歩しなければ、そもそもこの計画自体が頓挫してしまう。
仮に失敗した時、依頼した団体が「
でも……彼らはそれでも頼む価値があるのだ。
ここはこちらが折れるべきだ、菊岡はそう悟った。
「わ、わかったよタモン、今から電話でいいかな、電話越しに彼と話させてくれ」
「…………」
タモンはそれでも納得いっていなかったようだが、黙々と携帯を取りだし、彼……タスクに電話をかけた。
✣
「……で、あの電話でこちら側に編入を希望してきたプレイヤーが、あの人ですか」
数日後。
GGOの店主の店、『ガン・マリア』にて。
カウンターに座ったタスクは、奥に立つ店主にそう、問うていた。
「そ、名前はコルト、コードネームは、ベネットだよ」
「ふーん……」
店主のその囁きを聞き、タスクは頷きながら丸椅子を回転させ、スタッと飛び降りて立つ。
そしてそのまま、てこてこと奥のテーブル席に座る男……コルトの前まで行くと……
「こんにちは、コルトさん。これからよろしくお願いします」
「えっ……あっ、ああ」
「僕の名前はタスクです。コードネームは……」
「……?」
「
「!?」
コルトが驚いて目を見張ったのは、言うまでもないだろう。
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