これは【GGO】であって、【MGS】ではない。   作:駆巡 艤宗

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Episode93 僕らの良さ 〜Our goodness〜

2026年 2月1日。

遂にこの日がやってきた。

 

記念すべき第一回『スクワッド・ジャム』、開催当日である。

 

この日、実に多くのプレイヤーが、SBCグロッケンの一角、大通りに面した大型酒場に集まっていた。

 

ただ大型酒場といっても、それはあくまで母体の話。

テナント、という扱いなのかはわからないが、喫茶店やらレストランやらが入ってるし、なんなら隣のショッピングモールと繋がってさえいる。

 

言わずと知れた、人気スポット。

初心者から上級者、誰もがたまには訪れたくなる、殺伐とした世界観から切り離された、娯楽の場所であった。

 

「いやぁ~、楽しみですな」

「ま、チーム戦なんてなかったからなぁ」

 

今日、そんな人気スポットは、史上最高レベルの大盛況を誇っていた。

なぜなら、ここが『スクワッド・ジャム』の大会本部だから。

 

参加者は転送開始時間までにここに集い、その時を待つことになっている。

それに加え、このイベントはここでしか中継されないため、観客も自然とここに集う訳だ。

 

「でかいスクリーンはどこだ!?」

「あ、あれとかどうだ!!」

「よしみんな、あそこの最前列を……!!」

 

したがって、そんな争いもあちこちで起きている。

 

現在時刻、13時40分。

『スクワッド・ジャム』開始まで、あと10分。

 

 

「あと10分切りましたね」

「りょーかい!」

パシン‼︎

 

大型酒場の一角。

ゲームコーナーにて。

 

6人の男達が、2つ並んだ的に3人ずつ別れ、ダーツに勤しんでいた。

身長はみんなバラバラ、でも体格はみんなガッチリしている。

 

「実体化はともかく、アイテム欄の確認ぐらいはしておくか……」

「そうだな、俺も不安だ」

 

自分以外の人がダーツを投げている間、他の男達は、左手のウィンドウを凝視する。

 

注意深く、念入りに。

戦闘時、「あれがない!?」なんて間抜けなことにだけはなりたくないようだ。

 

そして……もう、おわかりであろう。

そう彼らは、()()()()()()()()()、6人である。

 

「ん〜……まあでも、ここに来る前に確認したしなぁ」

「万が一なくても、ショッピングモールが真隣にありますしね」

 

その6人のうちの2人……ギフトとベネットがそう言って、退屈そうにウィンドウを閉じる。

 

すると、ダーツを投げ終えた別の2人、レックスとライトが戻ってきた。

 

「はい、次はベネットさんですよ!!」

「「……」」

 

ニカッと笑ってダーツを差し出すライトを見上げ、ソファーに座ったベネットと、ついでにギフトは、笑いつつもため息をつく。

 

「緊張……とかないんですか」

「てかあと数分後だし……」

「ええ〜?」

 

それに対し、ライトは相変わらずの笑顔で首を傾げて見せた。

 

「ええ〜、別にそんな、心配する要素ないじゃないですか!!」

「うんうん、ライトの言う通り。楽しんだもん勝ちだよ、こういうのは。なー、コー君!!」

ギィー

 

すると、ライトの言葉に乗じて、次の番であるプルームにダーツを渡し終えたレックスが、タイムモンスターのコー君、もといスコーンを肩に載せながら近づいてきた。

 

「うわぁ!! こ、怖い〜!!」

「はは、ほれコー君。行っといで〜!!」

「ちょっ、待っ……ああ〜!!」

 

元々動物が苦手らしかったギフトが、コー君を見るや否や体を引いて怯える。

 

するとレックスは、それを面白がり、肩からコー君を飛び出させ、そのままギフトの胸元へと()()()()()

 

ギィー!! ギィー!!

「ひいい〜!!」

「あっはは!!」

 

コー君も面白いのか、ギフトの太ももの上で、グルグル歩き回っては鳴いている。

それを面白がり、レックスは腹を抱えて笑っていた。

 

 

「ギフトのやつ、やたら楽しそうだな」

「ま、これが()()()()()だよ」

 

一方、ダーツに向かうプルームと、タウイである。

 

彼らは、銀龍と戯れて笑い転げる4人を遠目で見つつ、迫るスタート時間を待っていた。

 

「まあそうだが……大丈夫かなぁ、あんなんで」

「はは、緊張しすぎだよプルーム」

「!!」

 

すると、タウイの一言にプルームの動きが止まる。

 

「大丈夫。確かに、気を抜きすぎも良くないけど、あんなことやっててもちゃんと強い人たちさ。なんたって彼らは……」

「裏世界プレイヤー……か」

パシン!!

 

そしてその後、タウイの視線を受け、プルームは、続きの言葉を口にした。

それと同時に、気持ちのいい音を立て、プルームは的のど真ん中を見事にダーツで撃ち抜く。

 

 

 

 

 

 

「今日は頼むぜ、旗艦(リーダー)

「この艦隊(スクワッド)に勝利を」

 

そしてプルームがそう呟いて、それに反応しタウイがグラスを掲げた直後。

 

 

 

 

 

『スクワッド・ジャム』開始のファンファーレが、鳴り響いた。




次回、『スクワッド・ジャム』開始。

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