これは【GGO】であって、【MGS】ではない。   作:駆巡 艤宗

96 / 188
Episode94 砂漠か街か 〜Desert or city〜

プレイヤー達が待機ルームへ転送され、10分の後、スクワッド・ジャムが始まった直後の大型酒場。

 

「始まりましたね、スクワッド・ジャム」

「そうだねぇ、楽しみだ」

 

タスクと店主が、2人カウンターに並んで腰掛け、観客としてディスプレイを眺めていた。

 

「割と……均等にって感じですね」

「BOBのシステム……なのかなぁ、流用したっぽいね」

 

各チームの初期リスポーン地点が、大きなメインディスプレイの隣の小型ディスプレイに、各チームの空撮に混じって表示されている。

 

森あり、街あり、砂漠ありの、大型としては典型的なフィールド。

そこに、各チーム一定の距離を保って配置されていた。

 

ただ、高低差がある所は、有利不利を考慮してか、少しズレたり、距離を伸ばし縮めしてある。

 

()()はどこですかね。ど真ん中じゃなきゃいいんですが」

「ふふ……あ、あそこだ」

 

そんなマップを眺め、タスクがずいと体を前に倒し楽しそうにディスプレイに見入る。

それに応じて、店主がディスプレイを見やり、すぐその()()を見つけた。

 

中央から右下。

砂漠と市街地の境界線辺り。

 

「うわぁ、これ、彼らどっち行きますかね」

「ん〜? ふふ、どうなんだろう」

 

あまりに極端な配置に、2人とも楽しそうになっていた。

 

街か、砂漠か。

どちらも危険な区域である。

 

至近距離か、超遠距離か。

どちらも恐ろしい死角である。

 

「まぁでも……チームメンツ的に」

「そうでしょう……ね」

「彼らが選ぶのは……」

 

……ただ、2人にはもはやお見通しのようであった。

彼らが選ぶのは、そう。

 

 

 

 

 

「『街』……だろうね」

 

 

 

「プルーム、ライト、頼むぞ」

「了解」

「はぁい!」

 

一方、こちらはSJフィールド。

裏世界プレイヤー達。

 

店主らの予想通り、彼らは、『街』へ入ることにした。

 

理由は簡単。

街なら、各チーム隠れ家を求めて集まってくるだろうし、せっかく近くに湧いたんだから、先手を取るのが定石だからだ。

 

「一応気をつけて。街のど真ん中にスポーンしてる連中がいるかも」

「わかった」

 

リーダーのタウイから、プルームの耳元の通信アイテムに淡々とした指示が飛んでくる。

 

プルームとてベテランだ。

ポイントマンとして死んだ数だけ経験がある。

 

「ブービーかかるか頭抜かれるか」

「それでも我らは逝かねばならぬ〜♪」

 

プルームの言葉に、その後ろのライトが鼻歌調子で付け足した。

 

「そうか……なら突撃は頼むぞ」

「ええ〜!?」

 

おちゃらけに乗じてやり返されたライトは、やられたと言わんばかりの声を上げていた。

 

 

「こちらに2名……近づいてくる敵影が」

「……?」

 

こちらは、とあるビルの高層階。

 

基本的な装備で固めた狙撃手が、リーダーと思しき男に声をかけていた。

 

「……あれはポイントマンだな。とすると、後ろに本隊がいるはずだ」

「んー……あ、いました、奥の建物。連中、割と大胆ですね」

「ふん……いくら強者とて、所詮はゲームか」

「……」

 

すると、リーダーと思しき男は狙撃手の言葉を聞いて、ふん、と鼻を鳴らす。

狙撃手の男も、少し笑ってスコープを覗いていた。

 

「現実世界じゃ、通用しないですよね」

「……この世界を訓練に使えとは。()()()も目が鈍ったか」

 

そう、彼らは本職の自衛官。

()()()()()に頼まれ、SJに来てみたのだが……

 

「こんな調子の連中ばかりなら、このゲームは我々がとったも同然だ」

「……ですね。どうします、下の別働隊に対応を?」

「そうするとしよう」

 

眼下のプレイヤーの動きを見て、なんだか気が抜けてしまったようであった。

 

ただ、彼らは分かっていなかった。

その()()()()()が何故、彼らに行くよう指示したのかを。

 

そしてそれが仇となって、

()()』を受けることになるのである。

 

 

数分後。

突如ブッパし始めた「全日本マシンガンラバーズ」を全滅せしめた後。

 

リーダーの淡々とした声が、通信アイテムに飛んできた。

 

「各員、よくやってくれた。至急街に戻り、ポイント4の2で待機」

「了解」

「現在、南からこちらに向かっているチームがある。そいつらを後ろから叩きたい」

「……待ち伏せ、ですか?」

「そうだ、よろしく頼む」

「了解」

 

そして、その無線を聞いた後、彼ら別働隊は、すぐさま方向転換し、街の中に消えていく。

 

そうして、その直後だった。

 

「各員、建物に待避!!」

「……!?」

バババババ!!!!!!

 

彼らのいる路地から見える少し前の大通りで、戦闘が始まった。

もちろん彼らはすぐさま最寄りの建物に飛び込む。

 

そしてそれと同時に、通信アイテムに声を飛ばした。

 

「リーダー!! なんですかこれは!?」

「スキャン完了するや否や、2チームが通りではちあったみたいだ」

「偵察は……!?」

「把握してはいたが、まさかお互い突撃するとは思わなんだ」

「はっ……所詮は、ですか」

「そう、ゲームなんだよ」

 

リーダーのもはや嘲笑に近い声が、別働隊全員の耳に入る。

それに乗じ、別働隊にもだんだん緩んだ空気が流れ始めた。

 

「……とにかく、彼らには損耗してもらう」

「了解」

「おそらく、南のチームが漁夫の利狙いでくるだろう。2階からグレネードでもお見舞してやれ」

「わかりました」

 

そうして、別働隊の返事を皮切りに、通信アイテムに声が届かなくなる。

別働隊は、そそくさとその建物の2階に上がり、その時を待つ事になったのであった。

 

 

「おおっと……こいつぁ、面白いことになりそうだ」

 

一方、少し時を戻して、タウイである。

 

プルーム達を少し先で待機させ、2回目のスキャンを眺めていた彼は、ついついそう呟いてしまった。

 

「何かあった? タウイ」

 

すると、タウイの背後を見ていたレックスがそう尋ねる。

対し、それに応えたタウイは、面白そうに地図を画面から大きなホログラムに変え、レックスに見せた。

 

「……!!」

「お、おお……!!」

 

プルーム達がいる所の少し先の交差点で左に曲がった通りに、2チームが並んでいる。

そして自分たちから見て斜め右、ちょうど大きなビルのど真ん中に、もう1チーム。

 

「漁夫の利いっちゃう?」

「グレネードの用意は出来てるよ」

「初戦闘が不意打ちかぁ……」

 

その場にいる誰もが、楽しそうにそう口々に呟いた。

 

「……よし、そうしよう。右のチームは恐らくビルの上だ。狙撃なぞ建物に隠れればどうってことない」

「そうと決まれば!!」

 

そして、その締めくくりのような形で、タウイが決定を下す。

それに合わせ、ギフトがグレネードを持ち、ベネットが銃を握り直した。

 

「プルーム、ライト。その先の交差点左に2チームがお互い至近距離にいる」

「……ほう?」

「恐らくもう間もなく戦闘するだろう。我々は漁夫の利狙いで突っ込みたい。本隊を待て、すぐに行く」

「……よし!!」

「あーあと追加で、右に曲がって斜め左にあるビルにもう1チームいる。恐らく狙撃手がいるだろうから、そちらにも注意を」

「了解した!」

 

通信アイテムからも、ライトとプルームの声が弾んで聞こえてくる。

そしてその声を聞き、本隊全員が立ち上がる。

 

 

 

 

 

 

 

……ただその時、()()()()()()のは、プレイヤーだけではなかった。




【作者Twitter】
https://mobile.twitter.com/P6LWBtQYS9EOJbl
作者との交流、次話投稿の通知、ちょっとした裏話などはこちら!!

【作者 公式LINE】
https://lin.ee/wGANpn2
公式LINE限定セリフ、各章あらすじ、素早い作中情報検索はこちら!!

【今作紹介動画】
https://youtu.be/elqnCcV7R_0
この動画にしかない物語の鍵があります……。

【感想】
下のボタンをタップ!!

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。