これは【GGO】であって、【MGS】ではない。 作:駆巡 艤宗
プレイヤー達が待機ルームへ転送され、10分の後、スクワッド・ジャムが始まった直後の大型酒場。
「始まりましたね、スクワッド・ジャム」
「そうだねぇ、楽しみだ」
タスクと店主が、2人カウンターに並んで腰掛け、観客としてディスプレイを眺めていた。
「割と……均等にって感じですね」
「BOBのシステム……なのかなぁ、流用したっぽいね」
各チームの初期リスポーン地点が、大きなメインディスプレイの隣の小型ディスプレイに、各チームの空撮に混じって表示されている。
森あり、街あり、砂漠ありの、大型としては典型的なフィールド。
そこに、各チーム一定の距離を保って配置されていた。
ただ、高低差がある所は、有利不利を考慮してか、少しズレたり、距離を伸ばし縮めしてある。
「
「ふふ……あ、あそこだ」
そんなマップを眺め、タスクがずいと体を前に倒し楽しそうにディスプレイに見入る。
それに応じて、店主がディスプレイを見やり、すぐその
中央から右下。
砂漠と市街地の境界線辺り。
「うわぁ、これ、彼らどっち行きますかね」
「ん〜? ふふ、どうなんだろう」
あまりに極端な配置に、2人とも楽しそうになっていた。
街か、砂漠か。
どちらも危険な区域である。
至近距離か、超遠距離か。
どちらも恐ろしい死角である。
「まぁでも……チームメンツ的に」
「そうでしょう……ね」
「彼らが選ぶのは……」
……ただ、2人にはもはやお見通しのようであった。
彼らが選ぶのは、そう。
「『街』……だろうね」
✣
「プルーム、ライト、頼むぞ」
「了解」
「はぁい!」
一方、こちらはSJフィールド。
裏世界プレイヤー達。
店主らの予想通り、彼らは、『街』へ入ることにした。
理由は簡単。
街なら、各チーム隠れ家を求めて集まってくるだろうし、せっかく近くに湧いたんだから、先手を取るのが定石だからだ。
「一応気をつけて。街のど真ん中にスポーンしてる連中がいるかも」
「わかった」
リーダーのタウイから、プルームの耳元の通信アイテムに淡々とした指示が飛んでくる。
プルームとてベテランだ。
ポイントマンとして死んだ数だけ経験がある。
「ブービーかかるか頭抜かれるか」
「それでも我らは逝かねばならぬ〜♪」
プルームの言葉に、その後ろのライトが鼻歌調子で付け足した。
「そうか……なら突撃は頼むぞ」
「ええ〜!?」
おちゃらけに乗じてやり返されたライトは、やられたと言わんばかりの声を上げていた。
✣
「こちらに2名……近づいてくる敵影が」
「……?」
こちらは、とあるビルの高層階。
基本的な装備で固めた狙撃手が、リーダーと思しき男に声をかけていた。
「……あれはポイントマンだな。とすると、後ろに本隊がいるはずだ」
「んー……あ、いました、奥の建物。連中、割と大胆ですね」
「ふん……いくら強者とて、所詮はゲームか」
「……」
すると、リーダーと思しき男は狙撃手の言葉を聞いて、ふん、と鼻を鳴らす。
狙撃手の男も、少し笑ってスコープを覗いていた。
「現実世界じゃ、通用しないですよね」
「……この世界を訓練に使えとは。
そう、彼らは本職の自衛官。
「こんな調子の連中ばかりなら、このゲームは我々がとったも同然だ」
「……ですね。どうします、下の別働隊に対応を?」
「そうするとしよう」
眼下のプレイヤーの動きを見て、なんだか気が抜けてしまったようであった。
ただ、彼らは分かっていなかった。
その
そしてそれが仇となって、
『
✣
数分後。
突如ブッパし始めた「全日本マシンガンラバーズ」を全滅せしめた後。
リーダーの淡々とした声が、通信アイテムに飛んできた。
「各員、よくやってくれた。至急街に戻り、ポイント4の2で待機」
「了解」
「現在、南からこちらに向かっているチームがある。そいつらを後ろから叩きたい」
「……待ち伏せ、ですか?」
「そうだ、よろしく頼む」
「了解」
そして、その無線を聞いた後、彼ら別働隊は、すぐさま方向転換し、街の中に消えていく。
そうして、その直後だった。
「各員、建物に待避!!」
「……!?」
バババババ!!!!!!
彼らのいる路地から見える少し前の大通りで、戦闘が始まった。
もちろん彼らはすぐさま最寄りの建物に飛び込む。
そしてそれと同時に、通信アイテムに声を飛ばした。
「リーダー!! なんですかこれは!?」
「スキャン完了するや否や、2チームが通りではちあったみたいだ」
「偵察は……!?」
「把握してはいたが、まさかお互い突撃するとは思わなんだ」
「はっ……所詮は、ですか」
「そう、ゲームなんだよ」
リーダーのもはや嘲笑に近い声が、別働隊全員の耳に入る。
それに乗じ、別働隊にもだんだん緩んだ空気が流れ始めた。
「……とにかく、彼らには損耗してもらう」
「了解」
「おそらく、南のチームが漁夫の利狙いでくるだろう。2階からグレネードでもお見舞してやれ」
「わかりました」
そうして、別働隊の返事を皮切りに、通信アイテムに声が届かなくなる。
別働隊は、そそくさとその建物の2階に上がり、その時を待つ事になったのであった。
✣
「おおっと……こいつぁ、面白いことになりそうだ」
一方、少し時を戻して、タウイである。
プルーム達を少し先で待機させ、2回目のスキャンを眺めていた彼は、ついついそう呟いてしまった。
「何かあった? タウイ」
すると、タウイの背後を見ていたレックスがそう尋ねる。
対し、それに応えたタウイは、面白そうに地図を画面から大きなホログラムに変え、レックスに見せた。
「……!!」
「お、おお……!!」
プルーム達がいる所の少し先の交差点で左に曲がった通りに、2チームが並んでいる。
そして自分たちから見て斜め右、ちょうど大きなビルのど真ん中に、もう1チーム。
「漁夫の利いっちゃう?」
「グレネードの用意は出来てるよ」
「初戦闘が不意打ちかぁ……」
その場にいる誰もが、楽しそうにそう口々に呟いた。
「……よし、そうしよう。右のチームは恐らくビルの上だ。狙撃なぞ建物に隠れればどうってことない」
「そうと決まれば!!」
そして、その締めくくりのような形で、タウイが決定を下す。
それに合わせ、ギフトがグレネードを持ち、ベネットが銃を握り直した。
「プルーム、ライト。その先の交差点左に2チームがお互い至近距離にいる」
「……ほう?」
「恐らくもう間もなく戦闘するだろう。我々は漁夫の利狙いで突っ込みたい。本隊を待て、すぐに行く」
「……よし!!」
「あーあと追加で、右に曲がって斜め左にあるビルにもう1チームいる。恐らく狙撃手がいるだろうから、そちらにも注意を」
「了解した!」
通信アイテムからも、ライトとプルームの声が弾んで聞こえてくる。
そしてその声を聞き、本隊全員が立ち上がる。
……ただその時、
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