これは【GGO】であって、【MGS】ではない。 作:駆巡 艤宗
「あーっ……てて、派手に飛んだね、僕」
「ちょっと黙ってろ……まったく」
時は、レックスやライト、ギフトがドンパチしている真っ只中。
それに背中を任せ、直近の建物に滑りこんだプルームらである。
「ライフは……8割損失か、まあまあだね」
「0距離で受けてこれくらいなら、十分だな」
そんな会話をしながら、プルームがタウイの胸元へ治療キットを乱雑に突き刺す。
タウイは、爆発によって左腕と右足を、それぞれ根元から吹き飛ばされていた。
「残り2割だけど……どこまで増やしとこうかなぁ」
「全部使うのは勿体ないと思う……が、指揮系統がそうそうに死なれても困る」
「はは……プルームは真面目だね……」
気の抜けたタウイのボヤキに、呆れたようにまた治療キットを乱雑に突き刺すプルーム。
そんな彼らのいる建物の窓際。
スキャンの時には見当たらなかったが、一応……ということで、ベネットがドンパチの範囲外を見ていた。
「……」
ただその顔は……少し、険しそうである。
「クソ……」
なんというミスを……そう言いたげに、一層シワを寄せる。
ベネットは、自責の念に駆られていた。
自分が、もっと良く考えていたら……そんな後悔が。
スキャンという名の
スキャンはシステム上、リーダーの位置しか示さない。
そしてそこに、チーム名を表示する。
だが、そこに
「別働隊……充分考えうるものだったじゃないか……」
「……?」
つい、そう呟くベネット。
後ろにいるプルームとタウイがさっ、とベネットの方を向く。
ベネットは、GGO歴の長さと、その確かな実力から、色々なスコードロンに助っ人参戦してきたプレイヤーだ。
その中で、様々な作戦に出会い、実行し、時には実行されてきた。
別働隊。
名の通ったプレイヤーがいるスコードロンがよく取る作戦だ。
あえて敵に姿を晒し、交戦することで、名の通ったプレイヤーを仕留めようと躍起にさせ、スコードロンから別働隊として数人を側面や背面に回り込ませ、挟み撃ちにして仕留める。
何度も嵌められ、また、何度もその作戦を崩してきたベネットにとって、まさかこんなことが起こるとは思ってもいなかった。
ようは、
名の通ったプレイヤーが、リーダーになっただけ。
ただそれだけなのに、その穴にまんまと嵌められて、結果こちらのリーダーに大損害を与えてしまった。
「……!!」
悔しさというか自らへの憤りというか、そんな感情が煮えくり返る。
銃のグリップを握りしめ、顔を更に歪めたその時だった。
ザッ
「ベネット」
「!」
隣に、プルームが座ってきた。
もちろんベネットは驚いて、チラリとプルームを見る。
「……何も、気にしなくていい」
「!?」
すると、プルームがそう言ってベネットの肩を上から叩いた。
「な、何も……って……!!」
「あのな、ベネット」
ベネットが少し苛立ち気味にプルームを見る。
だがプルームは、相変わらず外を見たまま、その言葉を遮った。
「お前は、俺たちを、お前の関わってきたスコードロンの有象無象と同じように見てるのか?」
「っ……!?」
「俺達のこの戦いの目的は何だ? 勝つこと? 違う、
「……!!」
「そこらのスコードロンのような、仲良しグループじゃない」
「っ……!?」
「正真正銘の、チームとして、動き、機能すること。そしてそれが、可能であることを示すこと。それが俺たちの目的だろう」
「そ、そう……だな」
「だったら気にしなくていい。現状、このチームはきちんと、寸分の狂いもなく機能している」
「……!!」
圧倒的な気迫と正論に、ベネットは続く言葉が出てこない。
何もかもが見透かされている気がして、下手に何かを言えない。
すると、不意に後ろから一転して柔らかい声が聞こえてきた。
「はは、プルーム? 言ってる事は正しいが、それじゃ少々……お堅いよ」
「ま、まあ……」
「あのねベネット。別にプルームは、怒ってる訳じゃぁ、ないんだよ」
「は、はぁ……」
もちろんその声の主は、タウイである。
「ただ僕らは……彼の言う通り、単なる仲良しグループ、スコードロンじゃなくてね……」
「……?」
「僕らには
「!!」
「店主さんは、その個性をお互いに噛み合せて、チームとして機能するかを見てるんだ」
「……!!」
そう言えば、なんてことは言えないが、確かに忘れていた。
それに、確か似たような事をカチューシャにも言われていたのを思い出す。
「個性は、突出させればさせるほど、その分だけ対極の弱点が露出する。それを他の人が……ま、極端に言えばその弱点が逆に個性の人が、カバーする。これが、チームとして機能する、ということ」
「……!!」
「店主さんがベネットに『固有ガジェット』を作れって言ったのも、それじゃないかなと思う。ベネットさんは、色んなスコードロンを回る中で、自らの長所に割くべき時間を、短所を埋める時間に当ててしまった」
「た、確かに……」
「『固有ガジェット』は、誰でも自分が好きなものを作りたいよね。それを作らせて、あなたの『好き』を、ようは、『個性』を引き出そうとしたんだと思う」
「……!!」
いつしかベネットは、自分への憤りや、タウイに対する申し訳なさなどは全て消え去って、タウイヤプルームの言葉に一心に聞き入っていた。
「今回の場合、君だけじゃないけど、爆発に対する防御力の低さという弱点を、僕がカバーした」
「あっ……!!」
「圧倒的な防御力、という個性でね」
するとタウイが、そう言ってにっ、と笑う。
ベネットは、その顔を見て、少しばかりの笑顔を返した。
「十人十色、各々色んな個性、色があっていいんだよ。だって僕らは……」
「『VRF』、『バーチャル・レインボー・フォース』だからな」
「あーっ!! 最後だけとりやがった!!」
「いいじゃないかそれくらい……」
プルームが横槍を入れ、タウイががたっ、と立ち上がる。
いつの間にか、手足も回復しているようであった。
【作者Twitter】
https://mobile.twitter.com/P6LWBtQYS9EOJbl
作者との交流、次話投稿の通知、ちょっとした裏話などはこちら!!
【作者 公式LINE】
https://lin.ee/wGANpn2
公式LINE限定セリフ、各章あらすじ、素早い作中情報検索はこちら!!
【今作紹介動画】
https://youtu.be/elqnCcV7R_0
この動画にしかない物語の鍵があります……。
【感想】
下のボタンをタップ!!