はじまりのあの日   作:代打の代打

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『克服』した神威の手によって

この日から始まった『甘味の祭典』


バレンタインとチョコ祭り

甘党の向けに、チョコレートスティックを籠の中に盛っておく。ついでに、ホワイトの、クランキータイプのモノも。チョコか。11歳。NYから帰った二月後。始めてお小遣いで買って、彼に送ったあの日。記憶の部屋、いつの間にか、入り込む―

 

「がっくん、バレンタイ~ン」

 

夕刻。家(マンション)のリビングに顔を出す彼。腕には、なにやら袋を下げ、両手持の大きな箱。バレンタインは明日だけど、本日はメンバーの都合が合いやすい。だからみんなで盛り上がろうという、めー姉の提案だった。メンバー同士のチョコレート交換も、この日から始まった

 

「お、ありがとうリン。こんなことに、わざわざお小遣い使わなくても良かったのに」

「えへへ、バレンタイン。みんなへの感謝を示す日なんだって。ルカ姉が言ってた~。その袋持ってあげる~」

「そっか。ありがとう、嬉しい。お利口さん」

 

一度箱を適当な台に置き、かがんで撫でてくれる彼。彼に贈ったのは、板チョコながら、少し高級なホワイトチョコレート。わたしに袋を預けてくれる。その中から、一つ、包みをとる。白の袋でラッピングされ、黄色のリボンがついている

 

「そんなリンに、はい、チョコレート。作ってみた。中に、生キャラメルが入ってる」

「ええっ。ありがと~がっくん。うっわ~聞いただけでおいしそ~う」

 

市販のチョコレートなど、遙かにしのぐ、彼のチョコ。手に持って、暖炉、ソファのスペースを抜け、大テーブルの間へいたる

 

「あ、待ってたよ殿」

「がく兄、今日は料理、おれらにお任せって事だったから」

 

朝から、腕をふるっていたカイ兄。わたしとレンも手伝った。午前中は仕事だっためー姉、キヨテル先生。さっきチョコを手に帰って来た、めぐ姉、リリ姉は午後仕事。ミク姉、ルカ姉は一日仕事。夕方には帰ると言っていたが、まだ戻っていない。どうやら、押しているらしく、先に食事をしていてと連絡が入る

 

「おお、ありがとな。美味しそうじゃない」

 

テーブルの上、湯気を立てるホワイトシチュー。カニのフライに麻婆春雨。スープに浮かぶワンタンと、定番の野菜サラダ。紫の彼がカイ兄に直伝した、ふろふき大根

 

「ぽ兄ちゃん」

「おにぃ」

「あにさま」

「「「はい、チョコレート。だ~いすき」」」

 

妹達に飛びつかれる紫の彼。めぐ姉たちもそれぞれに、わたしたちとチョコレート交換をしてくれた。ただ、リリ姉は、キヨテル先生だけに少し高めのチョコを渡していた

 

「っと~、待てまて、妹よ。落としそうだったじゃない。デザートに、これ、作ってみた」

 

テーブルに置かれる箱。開かれる。出てきたのは、大きなツヤツヤのチョコレートケーキ。感嘆の声が上がる

 

「すっご~い殿。もしかして、料理オレ達に振ったのって」

「がく兄これケーキなの~」

「そ、これ作るため。ザッハトルテ。オーストリアの、伝統的なチョコレートケーキ。カイトの誕生日も近いじゃない。バースデーケーキも兼ねてってトコロかな」

「え、ホント、殿。うっわ嬉しい、ありがとう」

 

子供のように喜ぶカイ兄

 

「わわわ~、ぽ兄ちゃん。おいしそ~」

「本格的~神威君。チョコレート苦手だったのうそみたいね」

「これは芳しい(かぐわしい)ですね、神威さん。甘党のわたしには堪え(こたえ)られませんません。このルックス」

「だよねセンセ。すっげ~おにぃ、こんなの作れんだぁ」

「リンのおかげ。克服できたじゃない」

 

撫でてくれる彼。そのての感触が、ひたすら心地良い

 

「それから、みんなにチョコ作った」

「え、作ったの、殿」

「マジ、ウチのもあんの、おにぃ」

「決まってんじゃない。はい、リリ。中に蜂蜜入ってる」

「ありがとーおにぃだ~いすき」

 

飛びつくリリ姉。彼が、どんなチョコをくれるか、もはやみんな、心待ち。一同、彼の前に整列

 

「メイコにはブランデー入り。カイトは中にバニラクリーム。レンはバナナのペースト。めぐはいちご、煮詰めてクリームと混ぜた。カルはマシュマロをチョコでコーティング。テルには、コーヒークリーム。ああ、ケーキ冷蔵庫にしまって、カイト」

「了解。殿、チョコレートもケーキも嬉しいよ。ありがとう」

 

チョコを受け取って、ケーキをしまいに向かうカイ兄

 

「ミクとルカは後からだな」

「ありがとね神威君。わ~うっれしい~」

「よし、まず乾杯しちゃおうじゃない」

 

始まった、バレンタインのご飯会。でもあの日、主役だったのはごはんよりも、彼の作ってくれたザッハトルテ。そしてチョコ。途中から全員、気にかかってしょうがない。自分たちで作った料理は、早々に撤収。また明日以降、食べれば良い

 

「さ~あ、神威君。食べさせて頂戴なっ」

「あんま期待しないでほしい。初めて作ったモンだ、まずかったらイヤじゃない」

「がく兄、あの見た目でマズかったら、ウソだから」

 

冷蔵庫より、彼が持って来たる未知の洋菓子。大理石のように輝くチョコレートのザッハトルテ。そのケーキが、テーブルに鎮座したとき玄関ホールの呼び鈴が鳴る。モニターを確認し、迎えにでるキヨテル先生。姉達の外灯を手に戻ってくる

 

「たっだいま~。うう、寒かった~」

「戻りました。あら、とても良い香り」

 

ナイフを入れるまでには間に合った、ミク姉、ルカ姉。手を洗って、リビングにやって来る

 

「お帰り、ミク、ルカ。ごはんはどうする~」

 

カイ兄の心遣い。答える二人の姉

 

「いえ、一応食事は済ませて来ましたので」

「塩っ辛いだけだったよ~あのロケ弁。お水~、あれ」

「なんだか、こちらでは、初めて見るものがありますわ。神威さん、もしやこれは」

「何これ~。すっごく甘いにおい~」

 

高まる気持ちを、隠すこと無く話す二人の姉

 

「ぽ兄ちゃんが作ってくれたの~。ザッハトルテってケーキなんだって」

「これから切り分けるから。食べるか、ミク、ルカも」

「もっちろん、がくさんっ。わあ~おいしそうぅ~」

「やっぱり。頂きますわ、神威さん。留学先のお宅で頂いた以来ですわぁ」

 

ルカ姉は食べたことがあったらしい。それでも、ミク姉同様、目が輝いていた

 

「あ、その前にみんな~わたし達から」

「チョコレート。受け取ってください」

 

二人も、買ってきたチョコレートを銘々に配る。和やかに華やか。そして彼

 

「俺からも二人に。はい、チョコ」

 

彼もチョコレートを二人の姉に手渡す

 

「殿が作ったんだって。中身がそれぞれ違うらしいよ~」

「ミクには、メロンのペースト。ルカは桃を煮詰めたやつ」

「ええっ。メロン~。わ~楽しみ」

「ありがとう神威さん。食べるのが楽しみですわ」

 

花が咲いたように喜ぶ二人。それぞれにお礼を言う

 

「さ~、ケーキ食べましょ。カイト、切り分けて~」

「おっけ~め~ちゃん」

「では、私もコーヒーを煎れましょう。紅茶もいいですね。オレンジペコが残っていたはず」

「センセ、ウチも手伝う~」

「ああ、メイコ。今日ここまで、ほとんど飲んでないだろ。これ、一緒に飲もうじゃない」

 

切り分けを、兄に命ずるめー姉。各種お茶を煎れに向かう先生とリリ姉。そこで彼が差し出す、瓶。中身は琥珀色の液体で満たされている

 

「ん、神威君、何。アイスコーヒーか何か」

「いや、コーヒーウォッカ。コーヒー豆をウォッカでつけ込んだヤツ。スイーツとも、相性いいんじゃない。飲み過ぎ注意」

「わ、神威君ありがとう。も~最高じゃないの」

 

瓶を置き、ショットグラスを取りに行く彼。真剣に切り分けてゆくカイ兄。それぞれにケーキが行き渡る頃、湯気たつ和、洋、英国。各種お茶と戻ってくる先生と紫様

 

「さ、切り分けた。一切れが大きいよ~」

 

パン皿に、いっぱいイッパイのザッハトルテ。子供のわたしにとっては夢見心地

 

「すっご~い。塩辛ロケ弁の舌が癒されそ~う」

「ブレンドも入りました。紅茶も。砂糖は不要かと思います。ミルクはお持ちしました」

「センセ~って、お茶の煎れかた上手いよな~」

「お配りいたしますわ。氷山さん、リリィさん。本当に美味しそうなザッハトルテですわぁ」

 

そうして始まる、スイーツパーティー。カイ兄が切り分けた、紫の彼作の美味しそうなザッハトルテ。銘々好みの飲み物。これで気分が高揚しないほうがどうかしている

 

「さ、始めようじゃない。第二次会」

「わたし達にとっては一次会開幕だよ~がくさん」

「そっか。ま、どんなものか、みんな、食べてみてくれ」

「いただきま~す、ぽ兄ちゃん」

「あにさま、ありがと」

 

口を付けるわたし達。ちょうど良い甘さ。おいしい。すごく美味しい。ほろ苦のチョココーティング。しっとり甘めのスポンジ部分。そこにサンドされたジャム。絶妙と言う他ない

 

「素晴らしいお仕事ですわ、神威さん。あちらでも、これほどのモノは食べたことありません~」

「おいし~がく兄。これ、ジャムはなに」

「杏の缶詰を煮詰めただけ。簡単でおいしい定番じゃない」

 

一口食べ、ウォッカを含む彼

 

「合うわ~ウォッカ。抜群じゃない、神威君」

「こんなに大きなチョコレートケーキ。おいし~し、夢みたい~。ありがとがっくん」

「夢は言い過ぎじゃない、リン。でも、いいな、確かに。変なモンにはならなくて良かった。ウォッカと合うじゃない。カイト、コーヒーリキュールもあるけど飲む」

 

夢中で食べているカイ兄に聞く紫の彼

 

「いやもう完璧だよ殿。こんな美味しいの始めて。最高の組み合わせ。リキュールもいただきま~す」

「神威さん、私にもウォッカいただけますか。コーヒー豆をつけ込んだと伺いました。牛乳で割って飲んでみたいです」

「お、テル。それもおいしそうじゃな~い」

「あはっ、センセチョコついてる。カワイイな~もう」

 

キヨテル先生の口の端、ついたチョコを指で拭うリリ姉。ぬぐった指を舐める

 

「素晴らしい画をありがとう、ふたり~」

「って、なにしてるんですっ、ミクさん」

「おまえ、撮影してんじゃね~よ」

 

この辺りから、ミク姉が変なものに目覚めたんだっけ。彼が来て、またも新たに加わった。二月中盤の甘味祭り。ただし、体重管理は大切なので、この前一週間。この後、冬休みまでの一週間。徹底的に糖質制限、カロリー制限をする。これも、メンバーの掟になったっけ。TVの糖質制限の文字を見て、意識が今へと帰ってくる。今日は、甘味祭りではないので、用意するものはおかず祭りだなと思う―

 




テトが出てきません。その理由はまたいずれ

嫌いだったチョコレート、克服して甘味祭り
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