彼の先導で観光とお土産巡り
戻った浜辺、楽しい食事会
そして
バーベキュー禁止のエリアで、行う不逞の輩。TVに写し出され、逆ギレ。ヘリクツをこねている。あの日、わたしたちがした、野外の食事会。不法な場所などではなかった。マナーを守れば楽しいものを。規則を遵守すれば快適なものを。なぜ、この程度のルールを守れないのだろう。ちゃんと守ったわたし達。閻魔様からのご褒美だったのかな。いや、お地蔵様からの贈り物なのかもしれない。楽しかった、浜辺での晩餐会。さて、行ってきましょう、記憶の部屋へ。彼と見た夕日、ほんとに綺麗だった。その後の線香花火。嬉しかった、彼の素敵なお気遣いが―
「おはよ~う、がっくん、みんな~」
「おはよ、リン。今日も良い天気じゃない」
「リン、朝からテンション高いな~」
待ち合わせたホール。みんなに、彼に、挨拶をする。朝が弱い片割れから、そんな返事が返ってくる。花火大会翌朝、朝食会場へと向かうため集合する。館内では、寝間着浴衣の移動が許されているため、みんな浴衣のまま
「今日も楽しみ~がっくんのふるさと~」
「まあ、暮らしてたのは別の街だけどな。どっちかって言うと、お膝元って感じじゃな~い」
わたしの頭に、手を乗せてくれる彼
「でも、でも~。よく遊びに来たよね、ぽ兄ちゃん」
「あにさまのお弁当もってお花見」
「海水浴にも来たよな~」
めぐ姉達が、思い出を語ってくれる
「花見や花火大会なんて、地元でもやるのにな。でも、楽しかったじゃない、めぐリリカルとこの街に来てさ。な~んにもない街だけどな」
「ぽ兄ちゃん、そんなこと言ったら失礼だよ~。わたし達の街だって、コレと言ってないんだから、特色」
めぐ姉、可笑しそうな顔で
「でも、観光案内してくれるってことは、観るところあるんだよね、がくさん」
「楽しみだよ~神威のに~さん。ただ、ぉなか空いてきた~」
「おれも~IA姉。メー姉、まだ起きないのかな~」
「後はメイコ殿と、ルカ殿だけでゴザルナ」
紫様の背中ににのしかかるミク姉。こういう甘え方は珍しい。あの日はまだ『嫉妬』をすることはなかった。何となく気にはなったけど。IA姉も、彼の胸にのし掛かる
「まあ、それなりにな。考えてはいるじゃない。てゆ~か、熱い」
苦笑いで二人を引きはがそうとする。すると、めぐ姉やカル姉も加わって、紫様にのしかかる。もちろんわたしも。しまいには、カイ兄やレンまでふざけて。最終的には、たまりかねた彼が、レンを抱き上げ、脇の下をくすぐりまくって、レン撃沈。花火の後も、しこたま飲んでいためー姉。ルカ姉に肩を借り、やって来たのは、その五分後のこと
「は~おは~」
「案の定だが、メイコ。二日酔いだろう」
「その通りですわ、神威さん。中々起きてくださらなくて」
「ふっふ~。いいじゃな~い、オフの時くらい~」
「まったく、め~ちゃんは。さて、行こっか殿」
朝食会場へ歩きだす。温浴施設に、漂う美味しそうな香り。用意されていたのは米所、越後の白飯。お味噌汁、アジの干物。卵焼きに青菜のおひたし、小さいながらも納豆。海苔の佃煮に、お漬け物まで付いた朝ご飯。たいそう豪勢。少し以前のわたしなら、文句をつけただろう、純和食。紫の彼が来て、作ってくれた和食のおかげ。いまではすっかり、お米の虜。いただきますの大合唱。手を合わせて感謝を捧ぐ
「ういひ~ね、かっくん(おいしいねがっくん)」
「頬張るリス状態じゃない。たくさん食べろ、リン、レンも。勇馬、食べてるか~」
「食ってすっ。めっちゃ美味ぇっす」
干物で思い切り白飯を口に。頬に付いたご飯粒を取ってくれ、自分の口に入れる。対面はじの勇馬兄、言ってからこちらも盛大に白飯を頬張る
「よしよし、イイコだ。が勇馬『食う』とか言うな。俺達は命を頂いてるんだ」
「ふ、ふぁ~へん(っす、サ~セン)」
腕白な弟に言うようなやり取り。笑っている彼、笑い合う面々
「こ~いうのが嬉しいわ~。二日酔いにてっきめ~ん」
「だから、め~ちゃん、飲み過ぎだってば~」
味噌汁を含むめー姉。苦笑するカイ兄
「おいしいですわ~あおさのお味噌汁。磯の香りですわね」
「海苔のツクダニ、逸品でゴザルナ。拙者、おかわり行くでゴザル」
「海がすぐ側、お魚うまうま。神威のに~さん達が羨ましい」
ルカ姉は、どちらかと言えば洋食派だった。大間産は別として。わたし達の故郷も、食文化は土地に特化したものがある。和洋混交、西洋と大和の食事が入り交じった感じ。だから、洋食好きの人も多いのだ。ところが、彼の作ってくれる、絶品和食。これのおかげで好き嫌いが無くなった。アル兄、IA姉は初めから虜に。海がない土地に暮らすわたし達。魚の鮮度は、やはり叶わない。みんなで、海の恵みに舌鼓
「「「「「「「「「「ごちそうさまでした~」」」」」」」」」」
楽しくて、賑やかな朝食を済ませ、ホテルを引き払う。午前中にスタッフ、プロデューサーは帰還。わたしたちは、三泊四日。オフが与えられた。朝食を終え、着替えのため、一度部屋に戻る。この辺りからだったよね
「あはっ、リンちゃん今日もか~わい~い」
「ありがとぅ~。めぐ姉だってかわいい~」
女性、男性、別れてお揃いのコスチューム。この辺りからだったな、お揃いあわせの私服、よく着るようになったの。わたしとお揃いデザインのワンピースドレス、着ているめぐ姉。スカートの丈だけが違う。わたしはミニ。セミロングのめぐ姉は、なんだか幼く見えてしまう。着替えを済ませ、私物をまとめる。宿を引き払うためだ。海水浴シーズンだけに、宿が混み合っている。日ごとに泊まる宿が違ったことも楽しかった
「よし、忘れ物ないね、リンちゃん」
「うん、洗面所も見てきた~。大丈夫だよ、めぐ姉」
荷物を手に、玄関ロビーへ。続々集まるメンバー。私物を、車のトランクへ運んでくれる男性陣
「お、そのネックレス付けてくれたんだ。今日のワンピースにも映えてるじゃない」
積み込みを終え、戻って来た紫様が気付いてくれた。嬉しさが込み上げる
「そ~、がっくんが買ってくれたヤツ~。普段はできないからさ、ちょっとだけオシャレしてみた」
「わ~かわいいネックレス~。あ、ソレなんだね、リンちゃん。神威のに~さんがNYで選んでくれたの~」
「うん、IA姉、すっごく気に入ってるんだ」
IA姉が顔を寄せてくる
「ああ、そのネックレス、NYで購入したものですね、リンさん。すると、レンさんのブレスレットも」
「あ、うん、先生。リンと考えがカブったのは偶然だけどさ。おれもたまにはカッコつけたくて」
片割れの腕、輝く碧水晶の数珠ブレス。本日のコスチューム、女性陣は白のフリルワンピ。白の麦わら。腰リボンの色や、スカート丈が違うだけ。男性陣は、白のYシャツ。薄いグレーのパンツに、メッシュのボギーハット。結んでいる、ネクタイの色形や、ハット、靴の色が違うだけ
「あらあら、大人びたわね~、二人とも。あの日はまだ、精一杯『背伸び』してる感じがあったのにね」
「似合う年頃に成ったってことかな。二人とも」
めー姉、カイ兄、それぞれの言葉。NY、あの場面を見たメンバーは、割合もう『古参組』だ。そろったところで出発。彼の地元の観光を開始する。まずは市内の博物館を見学
「すっげぇ。がく兄、これマンモスでしょ」
「いや、ナウマン象。この、牙だけだけは本物の化石。あとは作り物。だけど、すごいじゃない」
「オウ、ナウマン。Japanにもおり申したでゴザルナ」
ナウマン象の化石や、プラネタリウムを観た。その後は、すぐそばの公園でピクニック。コンビニのサンドイッチやお菓子、飲み物を楽しむ。車で移動して、参拝したのは
「ああ、ルカ、みんなも。お賽銭、五円玉投げるんじゃないぞ~」
五円玉を投げようとするわたし達を制止する紫の彼
「あら、神威さん。神様との『ご縁』がありますようにって―」
「はは、ルカ、ここがお祭りしているのは『閻魔大王様』神様じゃあない。五円玉投げて『ご縁』があったら、こんな世界に落ちちゃうんじゃな~い」
閻魔様が祭られるお堂。彼が指し示すその先、観た地獄絵図。メンバー、恐怖におののく
「うわ~こわいよぅがっくん」
「絶対に行きたくありませんわ、神威さん」
即座に、五円玉を引っ込めるルカ姉
「だから遠縁になるよう『十円(とおえん)』投げようじゃない。語呂あわせだけどな。でも、イイコにしてれば大丈夫。閻魔様はお地蔵様となって、子供達を護ってくださるじゃない」
「閻魔さんとお地蔵さんって、同じ人なんすか」
「ははっ、勇馬、人じゃあない『菩薩様』だ」
笑って、勇馬兄の頭を撫でる。彼に、閻魔様とお地蔵様が同じ菩薩様だと教えて貰う。初めて知った
「う~ん。少しでも、清らかに生ないといけませんね、重音さん」
「そう思っていても、中々出来ないのが人間だぜ。先生たん」
「清らかたろうとする心がけじゃないの、アネキ」
改まるキヨテル先生。開き直るテト姉に、釘を刺すめー姉。さらに移動して、酒屋さんで、お土産用のお酒を買い込む。彼曰く、有名地酒よりマイナー地酒がおいしい。めー姉が一番喜んでいた。酒選びの間は退屈だろうと、地酒アイスを買ってくれた彼。カイ兄はじめ、みんな嬉しくなる。大漁の銘柄を発注。荷物で届くそうだ。さらに駅前へ移動
「ここの黒ようかんは絶品じゃない。テル、これ、滅多にない逸品。俺が、こよなく愛して止まない、至高の品~」
「っ―。これは、素晴らしいお仕事ですね、神威さん。この羊羹を知らなかったのは、痛恨の極みです」
「これも、土産けって~だなセンセっ」
お菓子屋さんへ入店。試食させていただいた黒ようかんの美味しさ。一同絶賛
「魚の形~。おいし~し、かわいいね~グミちゃ~ん」
「でしょ~、IAちゃん。このお煎餅も買っちゃお~」
試食中、わたし達が歌い手と気付くお客さん。プチ撮影会、サイン会に握手会が始まる。お店へのサインと記念写真にも応じる。その後も続く、お土産選び
「この魚おかきも、おつまみにぴったりよね~神威君」
「あ、時々食べさせてくれるおかきって、これなんだ、殿」
「がっくんのオヒザモト~。このお店で売ってるのだったんだ~」
増えるお土産。買い物を済ませ、昨日の海岸へ戻ってくる。本日の宿は、昨晩、シャワーを浴びたユースホステル
「さて、ひとっ風呂浴びて初めましょお~神威君」
「とっとと浴びてこようじゃな~い」
「うお~腹減ったっす~」
それぞれ、部屋に入って入浴、着替えを済ます。目指すはテラスでのバーベキュー。同室になっためぐ姉共々慌ただしく準備。浴衣に着替える
「は~い。リンちゃん、今日も可愛くできあがり~」
「ありがとめぐ姉~」
というか、着替えさせてもらう。そういえば、あの越後遠征中、ずっとめぐ姉と部屋が一緒だった。わたし、めぐ姉も大好きだから、楽しさ三割増しだった。部屋を出て、腕組みで、連れだってテラスに歩いて行く
「はやくはやく~。すっごく美味しそうだよ~」
「リンちゃ~ん、グミさ~ん、こっちこっち~」
大きく手を振るミク姉とIA姉。気持ちが急いで、めぐ姉と手をつないで駆けてゆく。用意されていた料理に驚く。たっぷりのお肉と夏野菜。ホタテやお魚、フランクフルト。イカ焼きに焼きそばまでついて。舟盛りのお刺身は全部で八種類、どれも肉厚。サザエも付いて船二艘(ふねにそう)鎮座している
「わ~すごいっ。豪華だねがっくん」
「みんなが揃ったら、まず乾杯しちゃおうじゃな~い。大人は刺身トカ、子供達はフランクなどなどで始めよう。肉や魚は、酒ヤリながら焼こうじゃない、カイト」
「だね、殿。めーちゃん、お酒オーダーしちゃっていいよ。オレも初めからポン酒にしよう。越後のお酒はホント美味しいよ、殿」
あまり『お酒派』でないカイ兄。初めから日本酒は珍しい。昨日飲んだお酒が、相当に気に入ったようだ
「めずらしいですわね、カイト兄様。ワタシはソフトドリンクをお願いします」
ルカ姉の声に、ホステルサイドがもてなしの品。特別に、と名産品、有名な洋梨の果汁100%ジュースが運ばれてくる。わざわざ用意してくださった逸品に、目の輝きが増すルカ姉
「アタシもカイトと、同じお酒をいただくわ~」
「ボクは米焼酎のロックを貰うぜ」
カイ兄のポン酒解禁令に喜ぶめー姉。テト姉も飲む気満々
「私は、この地元ワインを、白でいただけますか。飲まれない方には、地サイダーもお願いいたします」
「腹減った~、たくさん食べようぜセンセ。あ、ウチ蜂蜜アップルティーお願いしま~す」
甚平姿の彼、兄、キヨテル先生。言うリリ姉は、女性陣の中で、ただ一人甚平。先生の眼鏡に似たデザインの。銀縁だて眼鏡をかけている
「オ待たせモウシタ~。おお、ウマッソウでゴザルな」
「アル、あんたもお酒でしょ、何飲む~」
楽しげに訊くめー姉に、beer(ビール)と応えるアル兄。するとこちらにも、限定のビールが運ばれてくる
「にくにく、うおうお、もりだくさんさん」
「うっわ、たっまんね~、早く初めっす、みんな」
ぞくぞくと集まってくる。四時半には乾杯の火ぶたが切られた。色とりどりの声と飲み物、昨日の花火に負けじとあがる。紫の彼、刺し盛りを手に。カイ兄はフランクとイカ焼きを手に、焼き台へ向かう。瞬く間に、飲み物の蓋が開く。用意していただいた肉、野菜。彼と兄が調理してくれて。海鮮も、焼きそばも、焼き加減、味付け抜群。レア、ミデュアム、ウエルダン。どれもこれもフルコース。お刺身も、鮮度良く、油ものりノリ。大間に負けない中トロに、ルカ姉歓喜。総て絶妙で美味しかった。瞬く間に、宴は進み
「わあ~綺麗だね、がっくん」
「日本海に沈む夕日も綺麗じゃな~い」
ひとしきり食べて、飲んだ後。わたしは、〆の焼きそばを手に。彼はお酒を手に、見た夕日。海岸へ腰を下ろす。全方向、海の大パノラマ。少しだけ涼しくなった風、ほっぺたをくすぐる
「こんなシチュエーションも滅多にないわ~」
限定缶ビールを片手にめー姉ご機嫌。隣に座るカイ兄の肩に腕を回す。兄は、お米のアイスで上機嫌。メンバー、今度は海岸に集まり出す。薄暗くなっていく海岸線
「昨晩の大花火も素晴かったです。皆さん、今晩は、ささやかな花火もいかがですか」
「あ、い~じゃんっ。やろ~ぜ~センセッ」
「おお、コレも和のココロでゴザルな」
「先公が線香花火、っす」
線香花火を手に、やって来るキヨテル先生。ダジャレを言う勇馬兄。吹き出す先生とみんな
「勇~馬。面白いけどテルに謝れ。失礼だ、ぶっとばすぞ。謝ったら、飴ちゃんをくれてやろうじゃない」
「がくサン、自分でも思ったす。サーセン、テルサン」
素直に頭を下げる勇馬兄。先生は、気にしてませんと笑う。が、激怒したリリ姉が勇馬兄に跳び蹴りを見舞う。取っ組み合いになりそうな二人を、紫の彼がなだめる。二人共に飴を口に入れてあげる。線香花火大会の幕が上がる。浜辺にしゃがんで、着火用のろうそくを立てる。仄かな光。メンバーを照らす。さも、当然のように。彼の横に陣取って。線香花火に火を着ける。花火の閃光を見て、ふいに思った事を言う
「がっくんが来て、もう四年も経つんだね」
顔を、夜空に向けてあげる彼
「そうだな。もうそんなになるじゃない」
「四年か~。でも、それ以上に長い付き合いな気がするよ。殿」
「神威君が来て、ルカが帰ってきて。仕事、メンバー。増えたものねぇ」
とても感慨深げな、彼、カイ兄、めー姉。そう、年月以上に濃い時間を過ごしたと思う
「がっくん。これからもさ。こんな風に、みんなで食べたり飲んだり、歌ったり。花火したり。ずっとず~っと、一緒に仲良しでいよ~ね~」
一瞬、不思議そうな顔をした彼。でも、すぐに破顔して
「そうだな、リン。ありがとう。これからもよろしくな」
そう言った彼の顔は、少年のようだった。心拍が跳ねた。初めての感覚だった。と、二人同時に線香花火が落ちる
「あ、あ~何かやだなぁ、縁起悪ぅ~」
「ん、どしたリン」
「だってさぁ、ず~っと一緒に仲良くって言ったとたんにだよ。花火落ちちゃうんだも~ん」
「はは、気にすることないじゃない。でも、リンが気にするなら」
二本、線香花火を取って、一本を手渡してくれる。着火を促される。再び花火の柳がかかる
「これからも仲良くしようじゃない、リン」
言って、わたしの花火に、彼は自分の花火をくっつけてくれる。花火の珠がくっつく。合わせた線香花火から、二つの柳が跳ね落ちる
「こんな風に、さ。一緒にいようじゃない」
「がっくん。わ~、そうだね、ず~っと仲良しでいよ~ね」
素敵な彼の気遣い。たちどころに、気持ちが跳ね上がる
「あら、お暑い。なんだかんだで、リンは神威君がお気に入りよね~。神威君はどうなのかしら、ふふ、気になっちゃうわ」
「ゎ~、萌え萌え~。神威のに~さんとリンちゃん。ペア線香花火~」
「ん、気になるって何だ、メイコ。俺は俺で、気に入ってるぞ。リンもメイコ様も、このメンバー全員も~」
片手にお酒、片手に線香花火のめー姉に茶化される。IA姉が頬を染める。あの日は、その意味さえ考えなくて
「あ~、神威君、そ~じゃなくて~」
「うん、めー姉。わたしはがっくんお気に入り~」
少し困り顔の姉に、そう返したことを憶えている。あの辺からかな、みんなのカンジが変わったの。わたしと彼に、接する態度。向けられる視線の変化。そんなことに、あの越後では気付かなかったけど。その後は、色々な所で『花火合わせ』大会になったっけ。二度目、花火大会を告げるCMが始まる。意識が又、今へ戻ってくる。今年もまた、彼と花火合わせがしたい。そんな風に想って、ああ顔がにやけてしまう。一人の時で良かった―
夏の浜辺、彼と合わせた線香花火
彼と交わした、一つ目の『約束』