はじまりのあの日   作:代打の代打

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増えゆくメンバー。過ぎゆく年月(としつき)

いつの間にか過ごしてきた日々、積み重ねてきた思い出

『豆粒みたいな黄色い双子』だった少年少女

いつの間にかそんな歳


加わる仲間 深まる縁

お人形店のコマーシャル。この会社のCMは年間通して流れている。今回はひな人形のCM。ひな祭りか。おひな様も、五月人形も。彼が来てから、飾るようになったんだよね。わたしと片割れの、健やかな成長を祈ってと。そんな、優しい彼の心配り(こころくばり)枝豆を茹でながら、意識があの日へ降りてゆく。今日は作業しながら、思い出が怒濤のように溢れるな―

 

「忙しくたって、年中行事、歓迎会。大事にしようじゃない」

「そういえば、神威君が来て、飾るようになったのよね。おひなさま」

「はじめは、マンションのリビングだったよね、がっくん」

「それはシュ~ルですね、神威のに~さん」

 

神威の家の中。居間、茶の間、奥の間。普段は、木製の引き戸で仕切られている空間。今日は戸が外され、広い和風空間。そこに、ひな人形を飾りながら。紫の彼、めー姉、わたしと、IA姉の会話。わたしとレンの身長が、IA姉を超えたあの日

 

「でも、ひな祭りってトキメキますよね~」

「今日はぴこぴこ、みきみきとおひな様」

「あは、似合ってるよ~ピコきゅ~ん」

 

オッドアイ、綺麗な目を耀かせながら『電子世界の囁き声(でんしせかいのささやきごえ)』新人の歌手音ピコ(うたたねぴこ)くん、14歳。某動画サイトにて、フリフリのゴスロリドレスで『歌ってみた』ところ、弾幕が凄かった。良い意味の反響という証。その姿を見た女性プロデューサーが、声と容姿に惚れ込みスカウトしてきた。PVの撮影で、レン共々『男の娘』になっている。レンの場合は嫌々なのだけど、ピコくんは自らノリノリで『男の娘』になる。そこが、どうやらカル姉のお気に入り。本日も振り袖男の娘。カル姉Mikiちゃんと色違い、お揃い。上は普通の振り袖だけど、下は、フリルのスカートタイプに花柄ニーソ

 

「三人とも似合ってるよ、Mikiちゃん」

「ふふ~。ありがとう、リンちゃん」

 

こちらも新人さん。歌うアンドロイド『歌愛す機械人(うたあいすきかいびと)』そんな無茶振りのコンセプトを、真剣にこなす。本名、遊馬ミキ(あすまみき)のMikiちゃん16歳。やって来たその日に『Miki姉』と呼んだ。すると

 

「ちゃんって呼んでよ、リン先輩」

 

と返ってきた。先輩の響きは魅力的だったが、そんな呼び方をずっとされては堪らない。歳もわたしより上なので

 

「じゃあ、Mikiちゃんも『リンちゃん』で~」

 

そんなやり取りをした。ところでなぜ『アンドロイド』などというコンセプトなのか。無茶振りでは、と聞いたところ、神威のプロデューサー曰く

 

「オーディションの時のマジ顔が、なんかサイボーグを連想させてよ。先輩(パイセン)と、おもしれぇぞって」

 

とのこと。カイ兄と組んでデビューした。PV撮影では、一切表情を変えるなと言われ、かなりきつい思いをしたという。以来、歌うときは、ことさらに笑顔を心がけている。そのピコ君とMikiちゃん。出会ったその日に

 

「なんだか似てるね、うちら。電子とアンドロイド。かわい~ね、ピコ君のしっぽプラグ」

「そうですね、Mikiちゃん。ユニフォームの感じとか、アホ毛も似ています~」

 

そう言って意気投合。Mikiちゃん、ピコ君のプラグを自分のベルトバックルに繋いだりしていた。確かに、新しく来た二人。頭のアホ毛や、ユニフォームの感じが似ている。カル姉は、その二人と居るのが好きらしい。三人お揃いの格好でいることが多い

 

「Japanの心、ワビとサビ。大切でゴザルナ」

 

着流しの懐に右手を入れ、左手を顎に当てアル兄。ヘタな日本人よりも、よっぽどのジャパニーズ。ウムウムと頷く

 

「世界に広がるクールジャパンじゃない。めぐ、作っといた桜餅と菱餅も出しとこう」

「は~い、ぽ兄ちゃん。おひな様にお供えするのだよね。あ、皆にも作ってくれたよ~」

「おれも手伝うす~、グミサン。がくサンの桜餅と菱餅なら、間違いないっすね。超~食いて~」

 

立ち上がるめぐ姉に続く勇馬兄。お菓子への期待感、満々

 

「手間を掛ければ、旨くなる。愛情込めれば美味しくなる。歌も料理も一緒じゃない。勇馬、食った言うな。行くならついでに煮物盛り合わせとがんもどき、持って来てくれ」

「ウスっ、サーセン」

 

めぐ姉を追って走ってゆく。次々と指令を出す彼、おひな様を飾りながら

 

「リリ、カル。メイコ様に白酒(しろざけ)をお持ちしろ。あと、アテの大葉みそ、辛きゅうり、豆腐の燻製もいこうじゃない」

「あいよっ、甘酒もだすよっ。おにぃの手製っ。一緒にのも~ぜ、センセ」

「あら神威君、ありがとう。白酒も造ってくれたの~」

「いつもすみません、神威さん」

 

呑む気満々のめー姉。でも、彼と共に、おひな様を飾り付ける。キヨテル先生は、空いた箱などを片付けてくれる

 

「はは、メイコ『酒』造ったらダメじゃない。白酒は越後のお取り寄せ~。甘酒は作ったけどさ」

「禁止されていますからね、お酒造りは」

 

苦笑いの紫様と先生。めー姉『冗談よ』と返す。お酒に詳しいだけのことはある

 

「ミキミキには、おまんじゅう。ピコピコのに、お赤飯」

「え、おまんじゅうまで作ってくれたの、神威のアニキ」

 

リリ姉に続く、カル姉の『作った』に驚くMikiちゃん。確かに、おまんじゅうまで手製というのは珍しいかもしれない。わたし達には、普通のことなんだけどね、紫様のお手製和菓子

 

「お赤飯炊いてくれたんですか、かむさん」

 

驚くよりは、喜びの表情のピコ君

 

「ああMiki、ま、俺が作った田舎まんじゅうだけどな。好きだって言ってたじゃない。お前達の歓迎会なんだから、おもてなし~。中身は粒餡、抹茶風味~。ピコも熱烈歓迎~。お多福豆で贅沢仕様にしてあるぞ。好物なんだろ、二人も行ってもっといで~」

「わ~い、ありがとうございます~」

「ありがとで~す。神威のアニキすっご~い」

 

アホ毛が、わんちゃんの尻尾みたいに振れるMikiちゃん。二度跳ねて、嬉しそうに取りに向かうピコくん。仕草が完全に女の子。いや『男の娘』と言った方が良いんだろうか。アホ毛も元気に跳ねる

 

「誰か、カレイのあんかけ、温め直して取ってきて~。おいなりさん、ちらし寿司も出しちゃおうじゃない」

「がっくん、わたしが取りに行く~」

 

雛飾りに、だいたいのメドがつく。ご機嫌で向かうわたし。ひな祭りに併せて、新人二人の歓迎会を行なおうとは、めー姉の提案。料理は、カイ兄と紫様が心を込めて

 

「よし、オレも家(マンション)のモノ。とって来ようかな」

 

ひな人形の飾り付けから、離れようとするカイ兄。すると、今まで手伝っていた

 

「あ、おれやるよカイ兄」

「ワタシも手伝いますわ、レン君」

「ま~か~せ~てっカイ兄」

 

弟、ルカ姉、ミク姉が立ち上がる。飾り付けは、兄や彼の指導がないと出来ないテイタラク

 

「それじゃ、お願いしようかな。レン、ルカ、ミク」

 

マンションへ、三人が談笑しつつ、イソイソ向かう

 

「デハ拙者、卓の用意をするでゴザル」

「私はグラス類を用意いたしましょう、神威さん」

「頼もうじゃない、アル、テル」

「じゃ、もう此処(神威家)に、準備しちゃおうか、殿」

 

アル兄、キヨテル先生も声が弾む。見るからに楽しげな兄。紫の彼もノリノリで

 

「はじめちゃ桜花(おうか)大宴会」

「「「「「「「「「「はじめちゃ謳歌(おうか)歓迎会」」」」」」」」」」

 

わたしと弟が13歳。卒業を迎えた、入学を控えた、春の一コマ。並べられた卓のうえ。並ぶご馳走。大きなカレイのあんかけ。甘鯛、イサキ、ブリのお造り。サワラは炙り刺し。ヒラメのマリネの海鮮軍団。エビチリ、エビマヨ、春巻き、餃子、かに玉の中華縛り。野菜のごま和え、大葉みそ、豆腐の燻製のおつまみづくし。里芋、大根、にんじん、厚揚げの煮物。がんもどき、じゃがいもの甘辛煮の煮物ゾーン。フランクフルト、アメリカンドッグの、腸詰めエリア。恵方巻き、おいなりさん、お赤飯にちらし寿司と〆まで完璧なうえに

 

「デザート。オレ作の焼きプリンとパンプキンパイ。チョコレートのミルフィーユに」

「俺がこさえた、田舎まんじゅう、菱餅、桜餅。好きなようにやろうじゃない」

「「「「「「「「「「あざ~す兄さんズ」」」」」」」」」」

 

加わった面々にとって、初めての歓迎会。手料理に、全員の気持ちが跳ね上がる

 

「わ~懐かし~。この桜餅~。あんまりこっちじゃ見かけないんだよね~」

「え、それ桜餅なの、IA。こっちじゃね、桜餅って」

 

薄い桜色のお餅、クレープのような形状のお菓子を指すIA姉。粒々お餅の丸形を指すリリ姉

 

「ああ関西、関東で違うんですよ、リリィさん。江戸期、ある店の店主が、桜の葉を塩漬けにして作った餅菓子。それを『桜餅』と名付け、あるお寺の門前にて売り始めた。それが、江戸で出来た桜餅の原点とされています」

 

銘々皿を配りながら、キヨテル先生が教えてくれる

 

「さすが博識のテルじゃない。そ、関東関西で違う。ま、今、全国的には関西桜餅が主流みたいだけどな。どっちも美味いじゃない。IA、昔、関東圏に住んでたって、言ってたから。関東は白餡、関西はこしあんにしてみた」

「そうなんだ~、わたしも初めて知った~、がっくん」

「いつもは、関西版ばっかり作ってたじゃない」

 

初めて知る面々。あの日、わたしも初めて知った

 

「そ~、神威のに~さん。8歳の時まで首都に住んでたの。お仕事の都合でね、パパの故郷、NYにお引っ越し~。わざわざありがとぅ~」

 

桜餅談義を皮切りに、歓迎会の幕が上がる。めー姉が声を出す

 

「じゃあ、始めちゃいましょ~か。ピコくん、Mikiちゃん、お疲れ様。改めて、いらっしゃい。これからも、一緒に歌って生きましょう。では、ひとことずつ~」

 

片手で促す。仲良く、ぺたんこ座りで並ぶピコ君、Mikiちゃん

 

「僕のこと受け入れてくれて、ありがとうございます。尊敬するみなさん、よろしくお願いします」

 

三つ指をついて、丁寧にお辞儀のピコ君

 

「うち、コンセプトが無茶振りで。どうしようかと思ったけど、みんなのおかげ。最近、ホントたのし~で~す」

 

楽しそうなMikiちゃん。喜んでいる二人の頭の上。アホ毛が、ロンドを踊る

 

「乾杯の発声は~先生~」

「ありがとうございます、メイコさん。それでは、皆々様。私も、このメンバー歌って生けますこと。大変にありがたく感じております。素晴らしい出会いと、皆様とのご縁を祝しまして、杯を献じましょう。では皆さん、献杯とご発声を」

「「「「「「「「「「せ~のっ、けんぱ~い」」」」」」」」」」

 

宴が進む、その途上。わたしと片割れは、数日前から企画していた。実行に移すため、こっそりと抜け出す。マンションに駆け入って。着替えを済ませて、再び神威の家へ

 

「みんな~見て見て~」

「別に、わざわざいいんじゃねって思ったんだけど」

「「「「「「「「「「おおおおお~」」」」」」」」」」

「そっか、二人もそんな歳なのね~」

 

めー姉が、微笑みながら涙を浮かべ

 

「可憐です、堂に入ってます、お二人とも。御入学、おめでとうございます」

 

キヨテル先生が褒めてくれる

 

「褒めてなんかあげねぇ。カッコウいいぜ、二人とも」

 

テト姉が、軽口を言い

 

「ユニフォームはセーラー服だったけど、リンはようやく本物だね。レン、ブレザー似合ってるよ。おめでとう、二人とも」

 

カイ兄、わたし達の肩を抱き

 

「感慨深すぎるじゃない。俺、二人に出会った時は、ほんと、豆粒みたいに小さいの。ひよこみたいな、可愛い双子。大きくなったな」

 

優しい彼が、わたし達をなで回す。白に近いグレー。濃い茶の襟とプリーツスカート。ワンポイント入りの黒のソックス。セーラー服のわたし。レンは、白に近いグレー。黒襟のブレザーと黒いスラックス。春から通う、学校の。制服を自慢したくって。彼に、見てほしくって。このひな祭りイベントでのお披露目を勝手に考えた

 

「そ~うだ。ちょっと待ってて」

「あ、私も少し外しますね」

 

と、カイ兄がマンションへ。キヨテル先生はシェアハウスへ帰って数分

 

「ああ、めぐ、悪い。取ってきてほしいじゃない」

「は~い、ぽ兄ちゃ~ん」

「ウチも行くよ、おねぇ」

 

彼が、めぐ姉に、命じて三分。銘々手に、包みを持って戻ってきた

 

「二人とも。春からは、必要になると思うからね。電波受信だから、時間はズレないよ」

「カイトとルカ、一緒に買いに行ったの。気に入ってくれると良いんだけどな。対ショック、耐水性防御完璧。ほぼ、永久時計よ」

「お姉様たちと一緒に選びましたの。使っていただければ、うれしいですわ」

 

ソーラー充電。スポーツタイプのスタイリッシュな腕時計。デザインはお揃いながら、赤と白(色違い)めー姉達が贈ってくれる

 

「ぽ兄ちゃんの提案で、選んでみたんだ」

「リンレンに。似合うヤツ~っておにぃと」

「気に入ればうれしい。りんりん、れんれん」

 

めぐ姉達が取り出したる、通学靴(ローファー)ツヤ良く光る白皮を基調に、黒のワンポイント。靴底も黒。銀のコイン飾りが付ている。滅多にない、凝ったデザイン。お揃いのローファー

 

「春から、必要なんじゃな~い。デザイン、イヤなら、履かなくてイイから」

「僭越(せんえつ)ながら、私もこちらを」

 

わたしにくれる、ワインレッドが基調。黒の装飾がおしゃれ。リュックにもなる、カジュアルな通学鞄。レンに送ってくれたものは、色が反転。黒が基調

 

「くれてやるぜ」

 

テト姉から放られたのは、おしゃれな定期入れ。薄桃色と薄水色。入れられている定期。バス通学のわたし達に、十二ヶ月間、つまり一年使える物

 

「わたしはこれ~」

 

ミク姉、隠し持ってたのは電子辞書。わたしにはパールホワイト、レンにはガンメタリック。みんなからの素晴らしい贈り物。わたしもレンも、喜んで、お礼を言って。贈って貰った靴を履く。時計を付けて、みんなに見せびらかす。畳が傷まないかなんて、考えもせずに。その、通学スタイル整ったわたし達を観て

 

「かっこわいい~よ~(かっこかわいい)二人とも~」

 

IA姉が身悶えし

 

「レン君、素敵。惚れなおしますわぁ。リンちゃんも可愛くて、しょうがありません」

「レン君、リンちゃんも素敵~」

 

ルカ姉、ミク姉が抱きしめてくる。頭の位置が、ちょうど胸。レンが挟まれ照れまくって、真っ赤っか。この辺りからか、弟が、二人の姉に振り回されるようになったのは

 

「ナルホド。コレガ、日本人(ジャパン)の思いやりの心(スピリッツ)今の御二人の姿同様、美しき文化でゴザル」

「わ~、本当に仲良し家族なんですね、皆さん。メンバーの結びつきを見ました~」

 

アル兄褒めてくれる。ピコ君は感動した様子

 

「へっへ~。カッコは一人前じゃん。ヒヨコさま~」

 

軽口勇馬兄。ちょっと、ムクレルわたし。隣の弟も不満げ。それをみた、優しい彼すかさず

 

「まずは貌(かたち)から。勇馬、お前未だ未だ半人前(ひよっこ)だ。リンレンのが、歌い手としても人間としても一人前」

「なんでッスか~。がくサンだって、ひよこみたいなって」

「いえ、神威さんの言葉に悪意は感じませんわ」

「うちも思う~。みたいにかわいいって神威のアニキは言ってた」

「なんすか~みなさんまで~」

 

やや強い調子のルカ姉、ちょっと目が恐くなる。Mikiちゃんは意見に同意。ふてくされそうな勇馬兄

 

「勇馬、分かってないなら、なおさらだ。先輩よ、リンとレン。俺達と共に。俺よりも先に。どんだけ茨目(いばらめ)踏んできたか。お前、ちっとは考えたのか。考えないなら、今考えてみろ」

 

彼の声に怒気が交じる。獰猛に笑うから、余計に恐い

 

「ッ。~サ~センがくサン」

「リンレン様にだ」

「ごめんなさい。リン、レン」

 

たしなめられる、勇馬兄。わたしとレンに、紫の彼に。九十度、腰をおって、頭を下げる。顔が赤い。若干涙目

 

「はいはい、そこまで、そこまで。も~、ぽ兄ちゃん。二人のことになるとムキになるんだから~」

「ふん、いいじゃな~い。マジなことなんだから。さあ勇馬、食べろ。食べて歌って鍛えとけ。お前も一緒に目指さな~い、超一流の歌い手を~」

 

指を掲げる彼、人差し指一本。言って、今度は勇馬兄を思いやる。優しい口調と言葉

 

「っがくサン、アザッス。一生ついてきまスッ。グミさんもあざっす。かばってくれて」

 

目が潤む勇馬兄

 

「お前ら、乾杯し直しだ。杯を掲げろっ」

「がくさんに大賛成~」

「飲み直しよ~」

 

今度は朗らかに告げる彼。ミク姉、めー姉も賛同する。たちまち、互いに飲み物を注ぎあうメンバー。杯が満たされる。発声は紫の彼

 

「リンレンの、健やかな成長と俺達の未来に~」

「「「「「「「「「「カンパイだあああああ」」」」」」」」」」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「がっくん」

「がく兄」

 

ぐい飲みを呷る彼、弟と寄って行く。さすがにもう、制服は着替えて。何事かと、目を丸くする

 

「「ありがとう」」

 

ぐい飲みを置く。座るわたし達に向き直ってくれる

 

「わたし、嬉しかった。勇馬兄のことも、靴(ローファー)も」

「おれも嬉しかった。あんな風に言ってくれて」

 

ふっと一息、目が優しくなる紫の彼

 

「気にしないでいいじゃない、本当のこと。俺の大事な黄色い双子。尊敬している先輩様。そして、大きくなったな可愛い双子」

 

乾杯の喧噪の後、わたしと片割れはお礼を言った。本当に嬉しかったから。彼はそんな風に返してくれた。頭を撫でてくれた

 

「がっくん、膝いい」

「いいじゃない、リン。いつまで乗せられるかな」

 

せがむわたし。応じた彼。座る。収まる。微笑むメンバー。わたしの指定席であることは、もはや全員知っていた

 

「幾つになっても、それだけは変わらないわねぇ、リ~ン」

「ふふふ、殿が来た日からだったもんね、め~ちゃん」

「お~そんなに歴史がありますか。神威のに~さん、リンちゃんの指定席。もえもえ~」

「そうな。歴史、感じるじゃな~い」

 

思えばそうだった。始まりの日からそうなった。わたしの指定席。彼の膝の上でふと思う

 

「そういえばがっくん。前にも靴、くれたよね」

 

見上げながら、聞いてみる

 

「ああ。少しでも良い靴、履いてほしくてさ。良い靴を履くと、良い人生へ導いてくれるって意味があるじゃない」

「そうだったんだ~」

「おれもハジメテ聞いた、がく兄」

 

そこで困ったように一度、眉が下がる彼

 

「ま『私のもとから去れ』なんて意味もあるらしいけどな。でも、良いように取ればイイじゃない。そんなの気にし始めたら、何もプレゼントできない」

「ワタシも聞いたことがありますわ、神威さん。でも『自由になる』という意味合いもありますの。いつまでも、自由に歩けるようにと考えれば素敵ですわ」

 

膝に乗るわたし、彼の隣に座るレン。語りかけてくれる、彼。ルカ姉が、わたし達の元に寄ってくる

 

「お、ルカ、良いこと言ってくれるじゃない。怪我なんかしないで、元気に歩けよ、かわいい双子。さて、リン、レンも何食べたい」

 

一度ルカ姉と、飲み物を合わせる

 

「おいなりさん」

「あ、おれは自分で取るよ」

 

図々しい。取ってくれる彼、辞退する弟

 

「はい、あ~ん」

「あ~ん」

 

食べさせてもらう。もぐもぐする

 

「おいし~」

 

飲み込んで、素直に感想

 

「よかった。みんなも食べろ。賑やかにイこうじゃない」

「「「「「「「「「「もう食べてま~す。色々おいし~です~」」」」」」」」」」

 

ルカ姉、ミク姉がレンを振り回すようになったあの辺りからか。同様に、みんなの視線が生暖かくなり始めた。わたしと彼を観る眼差しが『色々おいしい』も、どんな意味合いだったやら

 

「おまんじゅうってつくれるんだね、神威のアニキ。すっごくおいしいよ。今まで食べた中でサイキョ~」

「それは言い過ぎじゃない、Miki。お、ヒラメのマリネ、旨いよカイト。酒によく合う」

 

大きめのおまんじゅうを頬張るMikiちゃん。お酒を含む彼

 

「っカレイとポン酒。コレもJustice(ジャスティス)でゴザロウ」

「桜餅もち、白餡ぎっしり。おいし、神威のに~さん。膝上リンちゃん、観ててキュンキュン」

 

お酒を含み、堪らんっとの顔、アル兄。リスのような動作で、江戸版桜餅をついばむIA姉

 

「カイ兄、チキンナゲットすっげ~うま~い」

「ありがと、レン。殿、煮物もおいしいよ」

「みなさん、リンレン。さっきはホントサーセンでした。おわびに、踊るス。観てッください」

「「「「「「「「「「おお、イケッ勇馬っ」」」」」」」」」」

 

二人のお料理は、いつものように美味しくて。みんなで、歌を、披露して。リクエスト合戦も行って。勇馬兄が、ストリートダンスを乱舞して。新しいメンバーとの縁(えにし)が深まった初春(しょしゅん)の日。きっと今日も楽しくなる。今のわたしは、また、調理に集中する―

 




『豆粒みたいな黄色い双子』

いつの間にか、そんな歳

ユニフォームではない『制服』

でも変わらない、指定席
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