歌姫と声風の想い
仏の顔も三度まで。三本締めに万歳三唱。日本は、どうやら『3』という数字に何かがあるようだ。ワイドショーの司会者が告げる。そういえば、伝説の三塁手も、背番号『3』だ。3の響きで思い出す、あの日の三次会。宴も進み、おねむになった天使様が、マンションの客間でお休みになった後のこと。残った『まだまだイコウ』組、リビングで始まった『三次会』さっきの記憶の本。栞を挟んだあのページ。わたしは手を掛け、降りていく―
「大切にしないとダメよね~。さ、大切に頂きましょうか、お酒もおつまみも。無駄にしたらダメよねぇ」
言うが早いか、焼酎の瓶に手を伸ばすめー姉。さっき彼が話していた話題を蒸し返す
「はっはは、め~ちゃんにかかっちゃ、全部お酒だね。お酒の神様、メイコ様」
「さてな、カイト。メイコは酒の神じゃ、ないんじゃな~い。お前にとっては」
膝の上に座るわたし。見上げると、不敵な笑みを浮かべる彼に聞いてみる。めー姉はお酒の神様ではないらしい
「どういうこと~がっくん」
「ん、殿」
「お酒の神様っぽいけどね~、めー姉」
「酒乱の神様じゃねえのかぁ」
頭の上、疑問符が浮かぶ、わたしとカイ兄。ミク姉は思案顔。そういうテト姉、杏のお酒で上機嫌。ピコ君、Mikiちゃんのアホ毛が、クエスチョンマークに。何を言うか、メンバーの興味は、彼の次の一言に
「『弁財天』だろカイト。メイコ様は、お前の『女神様』じゃな~い」
「ちょっ。と、殿」
「あらっ。嬉しいこと言ってくれるじゃない、神威君。それとも何かご不満、カイト」
紫様が告げたとたん、真っ赤に染まるカイ兄。その兄を、盛大に抱き寄せるめー姉。きつくキツク抱きしめる
「わ~、め~こさんと、カイトのに~さんも仲良しさ~ん。もえもえ~」
「新婚の夫婦(めおと)よろしくでゴザル」
瞳を輝かせ、足をパタパタする、IA姉。ご馳走様でござると、微笑むアル兄。ただ、二人のスキンシップって
「でも、ぼくには『弟大好きお姉ちゃん』のコミュニケーションに見えちゃいます~。あ、Mikiちゃん、あ~ん」
「あ、うちも~。で、いっつも『やめてよお姉ちゃ~ん』って照れちゃうの。わ、ありがと、ピコきゅん。お返しに、あ~ん」
わたしの気持ちを、完璧に代弁してくれる、ピコ君、Mikiちゃん。今度は、たがいのアイスクリームをシェア、食べさせあう。この二人も仲良しさん
「ベンザイテンって、神様っすか、テルサン」
「そうですよ、勇馬さん。美しい女神様です。財産をくださる女神様、七福神としても絵描かれますね。本来はインドの守護神様、守り神様です。財産の恵み、守護の女神。メイコさんにぴったりですね」
先生、ミルクティーを一口。嬉しそうに、ババロアを食べる。質問する、勇馬兄はこだわりシュークリーム。めぐ姉と一緒
「メイコ殿が、拙者達をPROJECTへ導いてクダスッタ。歌い手という、かけがえのない『財』を下さったでゴザルナ」
真摯な眼差し、お酒でやや顔が赤いアル兄。その目が赤いのは、感慨と感謝の想いからだろう。シャンパングラスを翳し、シャンデリアの光を見る
「そして、メイコ姉様ご自身が、人々に『歌』という『財』を振りまくのですね。素敵ですわ、お姉様」
「護りの女神様も頷けるよね~。メイコね~さんが、PROJECTの櫓(やぐら)を支えてたんだもん」
こちらは目が潤んでいるルカ姉。同様に感謝の言葉。Mikiちゃんは微笑みの中に、感謝の想いが滲み出ている
「あらウレシイ。ありがとうテル先生。みんなもありがとう。かけがえのないあなた達の言葉、とっても嬉しいわぁ。今、宝船に乗っている気分ね」
言葉には『笑っているよ』という感情が籠もる。ただ、その顔は、すでに泣き笑いのめー姉。人一倍、苦労をしてきた姉と兄
「まさに七福神の弁才天じゃない、メイコ様。その意味では、俺らにとっても女神様か」
「ほんと~だよね。メイコさんが初めてくれた、プロさんと一緒に。だから今、わたし達も歌えるんだもん」
カラカラ笑い、ホタルイカの沖漬けを食べる紫様。めぐ姉も感謝の微笑みだ
「七福神といえば、福神漬けもアテにいいわねぇ。カイト、あったよね、福神漬け」
「結局は、酒じゃね~か。メイコちゃんは『酒乱の弁才天』だぜ」
今だ赤面中のカイ兄に頬をくっつけるめー姉。お酒に話題を移したのは、泣き顔を見られたくないから。楽しげなテト姉の皮肉はスルー。手酌で、ふたたび杯を満たそうとして
「あっ、お、お酌させてよ、ね~ちゃん」
驚くめー姉。メンバーも目を剥く。カイ兄は言った『ね~ちゃん』と。言った本人、自覚して、ユデダコ色に
「ふふふふふっ、カイトォ、久々に聞いたわぁ。懐かしい、可愛かったわね、あの頃。今でも可愛いけど~」
アッケに取られるわたし達。泣き顔を誤魔化すため、これみよがしにイタズラお姉の微笑みで、話し始めるめー姉。カイ兄の首に腕を回し、頬をつついている
「まだ、二人っとも年齢一桁の時ね、そう呼んでくれてたの。懐かし~い。夏休みとかにね、泊まりに来る度、一日中遊んで。ず~と一緒に居て。休みが終わって、帰る日には電車の乗り口で泣いちゃってね」
懐かしさを滲ませながら、今度こそ、破顔するめー姉
「はいはい、ソウデシタ。はぁ~、恥ずかしい。でもね、オレは想ってたんだよ。め~ちゃんは、オレだけのね~さんだって。あの頃から今まで、ずぅ~っと変わらない」
ユデダコ状態から、やや復活しつつカイ兄。ため息をつき、目に涙が浮かんでいる。ただ、開き直ったか、公然と惚気始める。抱き寄せられていた腕を抜け、めー姉の太ももに頭を乗せる。そのまま、寝そべってしまう
「きゃああああ~、オノロケだぁ~。メイコね~さんの膝枕ぁぁぁ。カイトのアニさん、ごちそうさま~」
「天使様が居ないからって甘えちゃってさ~。ったくケシカラネぇ、もっとやれ、ヒュ~」
Mikiちゃんとリリ姉、学年違ってタイプは違えど女子高生。姉兄の関係に敏感な反応を示す
「おお、なんと素晴らしい構図かっ。ぐっじょぶ、メイカイ」
「モハヤ、これもお決まりでゴザル」
激写するミク姉。呆れているアル兄
「も~結婚したら良いんじゃね、めー姉とカイ兄。おれ、お似合いだって思うけどな~」
「あら、レン、おマセな事言うようになったわねぇ。ま、時間とタイミングの問題よ。ねぇ、カ・イ・ト」
片目を瞑り、左手を、甲の側を見せてくる。カイ兄の手を上げさせる姉。よく見ると、その小指に光る、お揃いデザイン、色違いのリング
「あっもしかして~、それ婚約指輪ぁ~」
「わっ、めー姉、カイ兄、結婚するの~」
とてつもなく嬉しげなミク姉。撮影を続けつつ、身をのりだして聞く。わたし自身も前のめりになる
「はは、違うよミク。これはペアリング。ま~、意味合い的には似たようなものかな、リン。一応、そんな意図で贈らせていただきました。オレからめ~ちゃんに」
「うふふ、嬉しかったわ~。まさか、子供の頃から好きだったカイトにね~。追いかけてきてくれるなんて思ってなかったもの」
膝の上、照れっ照れで、眉を下げながらいうカイ兄。夢見心地のめー姉
「あ、もしかしてカイ兄ってさ。めー姉追いかけて参加したの、このPROJECT。グミ姉達みたいにさ」
思いついたように聞く、片割れ
「半分当たり。もう半分は、オレも歌うことがスキだから。めーちゃんはね、子供の頃から目指していたんだよ。一流の歌い手に成ることを。夏休みは、二人で歌ったよね」
わたし達が、参加する前の話を聞くのは、初めてではない。でも、ここまで過去の話しを聞いたことはなかった。二人の関係に踏み込んだお話も
「本当に懐かしいわ。そしたらね、カイト言ってくれたの『ならボクも歌い手に成る。ね~ちゃんと同じ、一流の歌い手に』ってね。そしてね、一流の歌い手に成ったその時はって、くれたわね、あの日も」
「あはは、玩具の指輪ね。ごめんね、あんなので。しかもさ、勝手に告白しちゃって『お嫁さんになって』なんて。でも、嬉しかった。しっかり頷いてくれたとき」
さっき、わたしと片割れの記憶を運んで来てくれた『伝説の宇宙戦艦』は、二人の思い出も運んできてくれたようだ『宝船』に『宇宙戦艦』響きは違えど『船』あの日のキーワードは『船』だった。心地よいお惚気話しに、自然とわき起こる、祝福の歓声
「オイオイ、やるじゃないカイト。な~るほどなぁ。俺が来た日に言ってたじゃない『アタシの、オレの』ってさ。そんな子供の頃からなのか。そのペアリングで完璧じゃな~い」
「へっ、チクショウ、幸せ者共め」
「まぁお熱い。コチラまでのぼせてしまいそうですわ~」
豪快な物言いの彼、心の底から賛辞を贈る。声のトーンも弾んでいる。テト姉は、ヤヤつまらなさそうだ。頬を染めるルカ姉の声には、憧れの想いが滲んでいる
「っしゃ、センセッ。二人の婚約祝いにしちゃお~ぜ、この三次会~」
「リリィさんに賛同いたします。お二人を祝福いたしましょう。皆さん、飲み物を」
素敵な提案だとメンバー、今だ膝枕状態の二人の周りに集まる。めー姉にシャンパンを満たしたグラスをわたすルカ姉。カイ兄のテーブルの前、リキュールを置く紫の彼。牛乳瓶のような形。彼の地元限定の、ヨーグルトリキュールだ。スイーツや簡単なお菓子、おつまみを手に大集合
「じゃ~、メイコアネさん」
「カイトさんもですよ~」
「「お幸せに~」」
「「「「「「「「「「お幸せに~」」」」」」」」」」
アホ毛♡のMikiちゃん、ピコ君が発声。全員笑顔。そうだろう、こんなおめでたいこと、やたらにはない
「ありがとう、大好きなみんな。これからも宜しくね。愛してるわ、カイト」
「本当にありがとう、みんな。何だか、突然の流れになっちゃったね。め~ちゃん、オレも同じ気持ち」
わたしが生まれる前から、想いあっていた二人。婚約発表、いや、もう結婚式と言っても良かったカモだ
「こんなケーキで済まないが、もうヤっちゃおうじゃない。二人の共同作業~」
「ガクサンに同意。メイサン、カイサンがヤでなきゃっすけど。これ、ナイフっす」
みんなノリノリ。紫様、ホールサイズの半分ほど残っているケーキを用意。紫の彼とカイ兄、二人の『弟』を公言する勇馬兄も嬉しそう
「わ~観たいな~ぁ。二人の婚約ケーキ」
「ふたりで手を重ねて、きょうどうさぎょう」
「IA姉、婚約ケーキなんてあったっけ~」
萌えていることが、丸わかりのIA姉、カル姉。朗らかにツッコム片割れ
「い~じゃな~い、レン。行事なんて、人が勝手に『つくっちゃう』ものだもん。お目出たい事は、何度お祝いしたって良いもの~」
またも、彼の口調を真似て言う。紫の彼が言っていたことを告げるわたし
「そ~いうことじゃな~い。リン、覚えてたんだ。レン、こだわるものと、こだわらなくて良いモンがあるじゃない」
「あはは~、リンちゃん、アニキの真似だ~。たしかにそ~だよね『ハロウィン』とか『春土用』とか、最近になってやたら行事増えたよね」
豪快に笑って、応えてくれる紫様。めー姉、カイ兄のラブオーラで、アホ気がずっとハートマーク。Mikiちゃんも同意見
「あ~確かに~。読み方とか日付にコジツケて、やたら作るよね、おにぃ『なんとかの日』ってさ」
「ま、半分は大手企業の売り上げ向上が目的だ、リリ。土用丑だって、うなぎ屋が困ったから生み出された日じゃない。さて、それはいいからカイト、メイコ、どうする」
ケーキへ、ナイフを入れるかを問う、紫様
「ありがとう、神威君。喜んでさせて頂くわ。ふふふ、カイト。ここまで来たら、もう逃がさないわよ~」
「するよ、殿。みんながお祝いしてくれてる。凄く嬉しい。大丈夫、め~ちゃん。逃げる気なんかない、オレこそ逃がさない」
言って起き上がるカイ兄。めー姉に、恭しくナイフを渡す、勇馬兄。紫の彼は、ケーキを二人の前に置く。正々堂々、動画撮影を始めるミク姉は
「い~よ~ぉ、二人とも。ケーキ終わったら、目線頂戴ね~」
どこかの『ナニカ』なカメラマン的台詞。一度見つめあう、姉と兄。その顔は幸せに満ちている
「さ~、お二人による、ケーキ入刀です~」
「初めてじゃないケド、共同作業だよ~」
今度はアホ気が祝福サンバ、ピコ君、Mikiちゃん。皆の前、手を重ね、ケーキナイフを持つ、めー姉、カイ兄。ショートケーキに、ナイフを入れる。拍手喝采、誰かが鳴らす口笛。クリスマスの残り物だろうか。いつの間にか持ち出したクラッカー、二人の頭上に、舞う紙吹雪。わたし達に向かって、片手を振る姉と兄
「幸せにな~カイトっ。珍しくキザな台詞ハイタな『オレの方こそ逃がさない』だって~。歯が浮く~」
「お二人の行く末に、幸多きことを祈念いたします」
皮肉っぽい物言いのリリ姉。でも満遍笑顔には、祝福の想いが溢れている。キヨテル先生は心からの言葉
「♫~」
ルカ姉の歌声。結婚式と聞いて、思い出さない人はイナイのではないか。その有名曲を口ずさむ。メンバー全員、思い思いに声を重ね始める。歌う、というよりはスキャット。このメンバーならではの祝福の仕方。次第、体中でリズムを刻む者、指を打ち鳴らす者、パーカッションを口ずさむ者。主役である姉と兄まで、スキャット大会に参加し、祝宴が大いに盛り上がる
「いえ~い、めいさま、かいさま~」
「Wonderfuooo Berryオメデト~サンでゴザル~」
「幸せに生きようじゃな~い、女王様とマブダチよ」
飛び跳ねて喜ぶ、カル姉。新たに、スパークリングワインのコルクを飛ばすアル兄。紫の彼、背後から二人を抱きしめる
「ん~、にいさま、ねえさまぁ~」
「みんなにぎやか~」
「ど~したのぉ、何かあったの」
「メガ、サメチャイマヒタ」
リュウト君、ユキちゃんと手を繋ぎ、いろはちゃん、オリバー君と身を寄せ合う。どんちゃん騒ぎで、天使様を起こしてしまったようだ、罪深い
「ああ、皆さん、申し訳ありません。ですが、とてもお目出たい事があったのですよ」
眉を下げ、お詫びを言うキヨテル先生。天使様達に、今あった祝い事を説明する。おねむだった目の中に、天の川銀河が瞬く天使様
「おめでとうございます、かいとさん」
「メイコさん、カイトさんのおよめさ~ん」
丁寧に頭を下げるリュウト君。憧れの表情、ユキちゃん
「わ~新婚さんだ~。カイトさ~ん」
「オメデタイデフ~メイコサ~ン」
身を寄せ合って飛び跳ねる、いろはちゃん、オリバー君。二人も凄く嬉しそう
「うふふ、ありがとうね、天使様」
「とっても嬉しいよ。ありがとう、みんな」
「よ~し、子供達も目が覚めたみたいじゃない。たまには夜更かしして良いぞ~。フルメンバーで、メイカイ様を祝福しようじゃない」
「「「「やった~」」」」
眠気が飛んで、完全に覚醒した天使様。紫様の提案で、祝宴に参加する
「何のみたいかな、りゅ~ちゃん」
「みんな揃って乾杯だよ~」
「良いことは、何回会ってもイイよ~ぅ」
カル姉、弟を気遣う。めぐ姉は勢揃いでの乾杯を促し、IA姉はテンション全開。あの日は夜通しお祝いをして。翌日は眠たい中、宴の後片付けをしたな。あ、油のボトルが一つ、切れた。買い置きを取るため、移動。することで、わたしの意識は今へと帰還。そういえば、あの『宇宙戦艦』リメイク二作目も出るんだっけ。レン、作るんだろうか、八隻目―
語られた『姉』と『兄』の想い
結ばれた縁(えにし)
結ばれる二人