初めての勢揃い
一大観光都市、京の都。昨今では、ホテルが予約できないと、問題になっているそうだ。そうか、考えもしなかったな、あの日は。わたし達は『歌う』事によって泊まることが出来た。老舗と呼ばれる素晴らしい宿に。京の都。わたしとレンが、14歳を迎える一週間前の出来事。歌い手総勢21名。西の古都で公演をすることになった冬の日。わたしは又、記憶の扉に手をかける―
「忘れ物はありませんね、みなさん」
「「「「「「「「「「は~い、先生」」」」」」」」」」
修学旅行の学生のように手を挙げ、微笑みあう一同。実際、メンバーでの修学旅行のようなものだった
「戸締まりも確認してきたよ、殿」
「よし、出かけようじゃない」
新幹線に乗るため、最寄り駅まで車で移動
「大人数になってからの全員公演、楽しみだよね~」
「子供達が緊張してなきゃいいけどな」
当然のように、彼が運転する車。その助手席で約三十分。駅の駐車場で預かって貰う
「お、来たね、おはようみんな~」
「時間に正確じゃねえか、感心感心」
「電車も遅れは無いみたいよ~」
プロデューサー、スタッフと合流、構内を歩く。たかれるフラッシュ、あがる歓声。PROJECTが、世の中に浸透した証。だけど、奢ってはいけない。慢心してはならない『人の心を癒やせるよう』願いが籠もったPROJECT。鼻に掛ければ、その願いが台無しになる。新幹線を待つ間、記念写真やサインに応じる。一人一人に頭を下げる。握手を交わす。喜んで貰える事が、本当にありがたい事だと感じた
「車両、二区画借り切ったから~」
「好きに座ってくれ。他の乗客に迷惑はかけんなよ」
「あたし達は、スタッフと別の車両にいるから」
特急列車の車両二区画。先頭車と二号車を借り切る。歌い手に、一般の方が殺到しないようにとの配慮。プロデューサー、スタッフが二号車。わたし達は一号車に乗り込む。私物を網棚に乗せ、思い思いに腰掛ける
「がっくん、隣座ってイイ~」
「良いんじゃな~い。よし、カイト配っちゃおう」
図々しく陣取るわたし。そして、包みを開ける彼、兄。出てくる、使い捨てケースに入れられたお弁当
「お弁当、作っておいたから。中身は、皆一緒だよ。あ、大人組と子供組は違うけどね」
「飲み物、お茶と牛乳。好きな方選ぼうじゃない。回してさっさと食べちゃおう。ヨーグルトはデザートな」
「お、気が利くじゃね~かカイト、かむいも」
紫の彼と兄の優しい心配り。自分たちだって、これから歌いに行くというのに。三時起きして、お弁当を作ってくれていた
「アザッス。がくサン、カイサン」
「ぽ兄ちゃん、カイトさん、本当にお疲れ様です」
「やった~朝からごちそうだ~。ありがと~、に~さん達~」
「ヤハリ、朝餉(あさげ)はワショクが良いでゴザルナ」
メンバー各々取りに来る。受け取って座る、勇馬兄とめぐ姉。向かいの席にはIA姉とアル兄が座って、ご馳走朝ご飯に盛り上がる
「さあみなさん、お礼を言って頂きましょうね」
「力つけておかないとなっ。良く噛んで食べよ~ぜ」
天使様にお配りするキヨテル先生。リリ姉、飲み物を手渡す
「わ~おいしそう。すごいね、リュウトくん」
「だいこうぶつばかりです、ゆきちゃん」
「ゴホカ(豪華)ナアサゴハンデフ、イロハチャン」
「ね~、オリバーくん。がくおにさん、カイトさん、ありがとう~」
椅子を向かい合わせて腰掛ける天使様。みんな揃っての公演は初めて。緊張していた様子だったけど。お弁当の蓋を開け、宝石箱でも見るように目が輝く。気持ちをほぐす効果もあったようだ
「がっくん、カイ兄、ありがと~」
「よし、頂こうじゃない」
いただきますの大合唱。向かいの席にはカイ兄、めー姉。対面で座る。お弁当の蓋を開ける。からすガレイの照り焼き、卵焼き、ほうれん草のおひたし。甘くて大きなうめぼしに、かまぼこ一切れ。肉団子、揚げない唐揚げから成る、お手製弁当。子供達には、野菜と豆腐で作ったハンバーグ、揚げないフライドポテト、ナポリタン。エビフライ。卵焼き、別ケースの野菜サラダは共通のおかず。二人のご飯を口にしてしまうと、下手な駅弁では、とうてい満足できない。あちこちで美味しいの声が上がる
「しかし、アタシら幸せ者よね~」
「ん、どしたのめーちゃん」
「だって『歌う』って自分たちが一番好きなことをしてさ。人から喜んで貰って。そうして、食べていけるって幸せでしょ。しかも、タダで作ってくれる専属シェフが二人もいるのよ~」
お弁当、ノンアルコールビールと一緒に食べるめー姉。ご機嫌の様子で、カイ兄の背中をたたく。確かに、幸せなことだと思う。好きなことで食べていけることは。その分、しんどい時もあるけれど
「はは、メイコ、そいつはさ。お前達が必死で築き上げたからじゃない。このPROJECTの土台を。俺なんか、その上に乗っかってるだけ。食事くらい世話させていただこうじゃない」
軽い口調で言った彼。するとめー姉、カイ兄、真剣な顔つきになって
「神威君、あなたもよ。貴男も、その土台を一緒に固めてくれた。カイトと一緒に、ね。アタシはそう思ってるんだから。乗っかってるだけ、なんて言わないで」
「そうだよ殿。何時かも言ったけどさ。オレも頼りにしてるんだから、殿のこと。苦しい事だって、このメンバーだから乗り越えていけるんだしさ」
真面目にかえす。紫の彼、ありがとうと返答し、お茶の缶をノンアル缶と合わす
「そういやさ、来年の秋だったかな。修学旅行で都に行くの。おれとリン、フライングで京の都じゃね」
真後ろに座るレン。膝立ちで身をのり出してくる。思い出したように、言う。確かにそうだ
「はは、レン。別に、いつ行ったって良いじゃない。それに、友達と行くのも楽しいだろうけど、俺らメンバーで乗り込むのも、格別じゃない。恭悦至極~」
「そっか~。そだね、がく兄」
そのレンを見上げ、撫でながら返した彼
「そうですわ、レン君。このメンバーで古都。公演も観光も、おおいに楽しまないと損ですわぁ」
「わたしも京の古都初めて~。楽しみだね、ルカ姉、レンくん」
レンの隣、座っているルカ姉。その正面ミク姉。公欠や、早引けが多い学生組。正直、友達は少なかった。仲良しの子はいたけど
「みんなでミヤコ~。もう、すでに楽しいで~す」
「カルも、ふらいんぐ古都でびゅ~」
「盛り上がっちゃお~ね、ピコきゅん、カルちゃ~ん」
ピコくんと座るMikiちゃん、正面カル姉。今日も三人、お揃いのフリルドレス。相変わらずドレスが似合うピコくん、末恐ろしい
「修学旅行か~来たなぁ。あん時は、ウチも中坊だったな~。やっぱ全然気分がちっがうな、みんなで来ると~。じゃ、センセは引率のセンセ~だな」
「ですか。でも私、学校の教員ではなかったので」
天使組の後ろに座るリリ姉。嬉しそうに、隣のキヨテル先生に話しかける
「あはっ。細け~ことは良いじゃん。ウチはセンセに先導して貰いたいだけダカラ。はい、センセあ~ん」
「あ、す、すみません」
リリ姉が素早く差し出す卵焼き。有無を言わさない気配に押され、食べるキヨテル先生。リリ姉は、先生の反応に上機嫌
「頂くだけでは、申し訳ありませんので。お返しの卵焼きです。リリィさん、どうぞ」
手を添えて、差し出される卵焼き。不意打ちだったのか、リリ姉顔が深紅になる。でも、次の瞬間、思い切り嬉しそうに口をあける。夢見心地の顔で食べている、と
「いや~これまた、い~い画(え)が撮れた。ナイス、先生、リリ姉」
「何してるんですか、ミクさん」
「撮ってんじゃね~よミクっ」
この場面も、ミク姉によってすっぱ抜かれ、ディスクに保存されている。ミク姉、どんな趣味なんだろう。まあ、総じて賑やかに朝食を終える
「「「「「「「「「「「ごちそ~さまでした~。おいしかったよ、おに~ちゃ~ん」」」」」」」」」」
「「おそまつさま~」」
使い捨てのケースを回収してくれる、アル兄。買っておいた、食後のお茶でくつろぐ。と、さすがに朝早かった兄と彼。疲れからか、船を漕ぎ出す
「ふふふっ」
もたれかかる兄を笑みながら撫でるめー姉。わたしに微笑みかける、姉。人差し指一本、口の前。静かにというサイン。なんとなく羨ましかった。チビのわたしと彼では、それができない。体格に差がありすぎて。あの日のわたしは、なぜ姉達のようにしたかったのか。考えも及ばなかった。それでもせめて、と。コートを彼に掛けてあげたっけ。そうするわたしを見て、生暖かく微笑む姉。なぜ、そんな顔で見つめられるのか。当時のわたしは分からない。声にせず『なに』と咎める。めー姉『なんでもない』と口だけ動かし、手を振る。益々生暖かくなる視線。胸に芽生える、おかしな感情。恥ずかしさ、情けなさ、悔しさ。怒りに嫉妬。どれも当てはまるようで、全てズレているような。混ざった感情。めー姉に、悪気など無かっただろうに。子供だったんだよね
「みなさん、お兄さん達はお疲れです。起こしてしまわないよう、後ろの座席に移動しましょう」
「静かにな。後ろでトランプでもやろ~ぜ」
「「「「は~い」」」」
声を潜め、先生、リリ姉、天使様。微笑ましいやりとりに、わたしもめー姉も頬が緩む。わたしは芽生えた感情も、穏やかに引っ込む。彼の綺麗な寝顔を見る余裕も生まれる『まつげ長いな』と、何故だか鼓動が速くなった覚えがある。彼を観ながらしばらく列車に揺られている、と
「ほ~ら、二人も起きなさ~い」
めー姉に起こされる。どうやら眠ってしまったようだ。わたし、逆に彼に寄りかかっていた。やや照れながら起きるわたし。彼は自分に掛かっている、わたしのコートをみて
「優しい気遣い、ありがとうリン。おかげで暖かかったじゃない」
そう言って撫でてくれた。その言葉が、とてつもなく嬉しかった
「忘れ物はダメですよ~」
「確認して降りなきゃね~」
ピコ君、Mikiちゃんが注意喚起、揃って電車を降りる。降り立つ駅は目的地ではない。乗り継ぎの特急列車を待つためだ。駅の構内、駅ビルの中で数分を過ごしていると、ここでも気付いてくれる人がいる。握手や記念撮影に応じているうち、乗り換えの特急が到着。特別車両である、一号車に乗り込む
「お、すっげ、豪華~。修学旅行と全然ちゃう(違う)わ、やっぱ」
「グリーン車ですからね、恐縮しますよ」
リリ姉、乗車して感想。先生は眉を下げる
「りゅうとくん、いっしょにすわろっ」
「おとなりです、ゆきちゃん」
手を繋ぎ合うユキちゃん、リュウト君
「イロハチャン、フワリ(すわり)マショウ」
「オッケ~、オリバーくんっ」
腕を組む、オリバー君、いろはちゃん。お隣さんが決まって、腰掛ける天使様
「お隣さんが決まったら、お向かいさんですよ」
キヨテル先生が、オリバー君、いろはちゃんが腰掛ける席を回し、向かい合わせてあげる。天使様、大喜び
「じゃ~、隣に座ろ~ぜセンセ。天使様の横にっ、座席も回転~」
「はは、リリィさん、少し落ち着きましょう」
花が咲くリリ姉を、宥め(なだめ)ながらキヨテル先生。通路を挟み、天使様の横、向かい合って腰掛ける
「アラ、その手がありましたわ」
ミク姉に、レンの隣を譲ったルカ姉、目が輝き席を回転させる。ふたり掛けのイスと一人掛けのイス。わたしはさっさと彼の横に、と
「リン、俺と一緒ばっかりで飽きない」
気遣ってくれたのだろう、別席を聞かれるが
「ん~、わたしはがっくんの隣が良いな」
躊躇無く、隣席を申し出る
「なら、窓側、通路側、どっちがイイ」
「窓側~」
遠慮というものを知らない
「ならゎたし、二人の前~。眺めて萌えてよ~ぅ。お話しもできるし」
「あ、IAちゃん、わたしも~。席迎え合わせて座ろうね」
IA姉、めぐ姉が正面に座る。席も決まって、電車に揺られる
「先程の駅で煎餅買いモウシタ、好きな方はどうぞデゴザル」
「あ、コーヒー買っといたよ~」
アル兄、カイ兄のお気遣い。楽しく彼と会話を交わし、IA姉めぐ姉に生温かかく眺められる。その目線は気になったが、小雪舞う、京の都に着いたのは十時半を少し回った頃。ホームから、改札を抜け広い駅の構内へ。一斉に集まる視線と、上がる歓声。注目されるのはありがたいこと。旅行に来ていた、外国の方にまで声援を頂く。天まで届くのでは無いかという階段の前
「は~い、皆さん笑って~」
修学旅行の学生さん。引率の先生からのお願いで、一同、記念写真に収まる。カメラマンを務めた、わたし達のプロデューサーが促す笑顔。手を振ってくれるみなさんに別れを告げ、待機していたバスに乗り、公演の会場へ入る。簡単な打ち合わせ、荷解の後で昼食を済ます。仕出し屋さんのお弁当、大きなエビ天が美味しかった。小休止の後
「さ~、リハ~サル始めるよ~」
「チビ四人、お前等揃っては初陣だぜぇ」
「緊張しすぎちゃ、ダメよ~」
一時から三時半までは、内容の濃いリハーサル。公演は五時から。この日、口火を切るのは、天使組四人の歌とダンス。言葉遊びの歌。ミク姉が歌ったのをカバー。リハーサルを終え、シャワーで汗を流す。衣装、メイクをあわせる。徐々に緊張を高めてゆく。適度な緊張は、上演に良い効果をもたらす。ただ、子供達四人の緊張は、どう見ても違う。初めての大舞台に、硬直する
「リュ~、みんなも、ダイジョ~ブだって。楽しくやればい~んだぜ。心配すんな」
公演開始、三分前。ステージの脇、緊張で、半泣きの天使様。リリ姉がワザと強く頭を撫で
「大丈夫です。皆さんは誰よりも練習していました。その通りに歌って踊れば良いんですよ」
父親のように。キヨテル先生も、一人一人の手を取る
「お前達、全力でやって来い。何かあったらすぐに呼べ。俺が必ず救けに行ってあげようじゃない」
優しい彼、天使様の面前で言う。頬を、両手で包む。公演の幕が上がる
「「「「はじめましてみなさま。よにんでうたうの、はじめてです。おうたも、おどりもがんばりま~す」」」」
自己紹介の後、天使組が歌い踊る。わたしたちは、その間、舞台袖で祈っていた。失敗しないように。実力を出し切って貰えるように。お客さんに、気に入って貰えるように。歌が始まる。踊り始める。歌詞一つ、ポーズ一つ。決まる度、頷くわたしたち。握る手に、汗が滲む。祈るように見るルカ姉。手を合わせ、何か称えるアル兄。テト姉も、普段決して見せない、半泣き顔。わたしも、彼の腕にしがみつく。彼の顔『弩』真剣
「「「「ありがと~ございました~」」」」
歌が終わって、お礼の言葉を述べる天使組。鳴り止まない、拍手と歓声は、大成功の証。舞台裏へと駆けてくる四人。安心したのだろう。張っていた気も抜けたんだろうな。泣き笑いの子供達。メンバー全員、我先にと抱きしめた。天使様が、口火を切ってくれたおかげ。その日の公演は、どこか新鮮な盛り上がり方だった。何というか、皆さんの声が、いつも以上に暖かかった。そういえば、あの日が初めてだった。わたしと彼、二人で歌ったときに上がったあの声。お客さんの
『がくリン来たぁぁぁ~』の声
あの時は無性に嬉しかった。大喜びして、ハイテンションで、彼を引っ張るように乱舞したことを憶えている。緊張が解けた天使組も、わたし達と共に歌い踊る。大盛況の公演が終わる。アンコールに、二曲で応える。後に、フルメンバー初の伝説公演と評価を頂いた、京の都での舞台だった
「りゅ~、よっく頑張ったぞ~。格好良かったぜぇ~」
「ありがとうございます、りりねえさま」
楽屋に入る。真っ先にリリ姉、リュウト君を撫でながら
「ユキさんもお疲れ様です。大変素晴らしかったですよ」
「あ、ありがとう、ひやま先生」
ユキちゃんは照れ笑い、お水を手渡す先生
「ねこちゃんもおりこうさん」
「ぼく、感動しちゃった~」
「ちょ~かわいかったよ~」
「カルちゃん、ピコさん、ありがとう。Mikiちゃんも~」
お揃いコスチュームの、カル姉とピコ君達。撫で回されるいろはちゃん。Mikiちゃんは汗を拭いてあげる
「オリバーもよく頑張った。四人の中では、お兄さん。皆を纏めていたじゃない」
「アリガトホ、ガクサン」
紫の彼、オリバー君を抱き上げながら。皆が思い思い、天使様を褒め称える
「さあ、ジュースで乾杯しましょ。その後身支度して、旅館で大宴会。打ち上げよ~」
「張り切ってるじゃんメイコちゃん。ま、この後は飲んべえタイムだ。思いっきり楽しむぜ」
「ふふふ。ワタシも頂けるようになってから、すっかりお酒の虜ですわ」
乾杯を促すめー姉、自分もお酒顔のテト姉。ルカ姉もお酒は大好きだ。ジュースで乾杯、渇いた喉に染み渡る
「っしゃ~お・ま・え・達~。これからも一緒に歌って生きていこうじゃな~い」
「「「「ありがとう、みなさ~ん」」」」
満遍の笑顔、天使様。打ち抜かれ、萌えあがるわたし達
「さ、さあ、身支度しちゃいましょう」
ダメージコントロールをした、めー姉が言う。急ぎ足で、身支度に入る。旅館に移動する前、プロデューサーに告げられる
「五部屋取ってあるから、部屋割りは好きにしてね~」
「タク(タクシー)が迎えに来るからよ」
「打ち上げも楽しんじゃってね」
スタッフ、プロデューサーは別のホテルに宿泊。21人の歌い手に、専属スタッフを含めると約50名。さすがに宿一つでは収まらない。それなりに、知名度も上がったため、混雑回避の目的もある。わたし達はスタッフと別れ、公演主催者サイドが用意してくれた老舗旅館へ。宿が取れないという現象が起こる中で、老舗を貸し切る贅沢さ。ありがたさと同時に、申し訳なさも込み上げる。圧倒的な趣の門をくぐる。なんだか、バチがあたりそうだった。さてその旅館、部屋割りはNYのホテルと、別の意味でモメた
「ま、ヤロウとお嬢わけで良いじゃない」
「そうですね。NY(以前)とは、場合が違いますから」
言う彼と先生
「え~、ウチ、センセと一緒の部屋がいいなぁ。子供達四人とウチとセンセで一部屋~。リューもユキも一緒がいいだろ~」
「ゆき、リュウトくんといっしょがいいな」
それぞれあがる声に
「ま、子供達は一緒がいいな。保護者は、ルカ、頼もうじゃない。風呂の時は声かけてくれ」
「男の子は、私達で引率いたしますので」
振り分けを進める、キヨテル先生と神威『先生』ルカ姉は、天使様の頭を撫でながら
「承りますわ、神威さん、氷山さん。みなさん、お姉さんと休みましょうね」
「「「「は~い」」」」
手を上げる、お利口さん四人。お利口さんでなかったのは、わたし達の方だ
「え~、おにぃ、ウチとセンセでいいじゃ~ん」
「いや、そうもいかないでしょう」
困る先生。そのリリ姉の不満を皮切りに、色々な所で抗議の声
「カルもピコピコ、ミキミキと一緒がいい」
「わたしも、レン君と一緒がいいな~」
もちろん、わたしもそれに参加する
「わたしも~。がっくんと同じ部屋がいい~」
「リンちゃんと神威のに~さんが同室。なら、ゎたしもその部屋がい~なぁ」
「おいおい、我が儘言うんじゃ~ない。キリが無くなるじゃない」
困惑する彼、キヨテル先生も困り顔。それは、わたしの、わたし達の『成長』を、考えてくれていた証。そんな気遣いを考えないわたし達。さすがに見かねためー姉、最高位の権力を発動させる
「はいはい、文句言わない。そういう不満出さないための男女割りでしょうが。これ以上文句言うと、打ち上げ参加禁止にするわよ~」
たちまち押し黙る。何も言えなくなって、すんなりと部屋割りが済む
「あ~あ。まいっか。こ~なったら打ち上げ楽しみまくろっ。リンと眠るのも初めてだしなっ」
言って、豪快に撫でてくれる。わたしは、神威の姉三人と同室を申し出た。姉達と寝るのも初めてだったから。彼と同室になる、その次に、心躍る選択をした。四人が入っても、余裕たっぷりの広い部屋。リリ姉荷物を置きながら、残念そうに言う。心の中、控えめに賛同し、打ち上げ会場へ向かう。提供された食事は、都名物の湯葉や生麩田楽、湯豆腐などのフルコース
「おと~ふだ~。おいしそ~う」
「熱々ですからね。火傷しないように」
「気をつけて食べろよっユキっ」
勢いよく、湯気が立ちこめる打ち上げ会場。ユキちゃんを、挟んで座る、先生とリリ姉
「生湯葉に生麩の田楽。豆腐も消化にも良いからな。たくさん食べて良いじゃない」
「取ってあげるから言ってね、リュウト君。はい、まずお醤油で~」
「ありがとうございま~す。りんちゃん」
お兄ちゃんモードの彼。お姉ちゃんぶるわたしは、湯豆腐を取ってあげる。その上に、ショウガとネギをかけている。リュウト君、やっぱり好みが渋い
「あんたたち、一番頑張ったんだから。沢山食べなさいね、いろは」
「わ~おいしそう。ありがとう、メイコさん」
「しっかり食べて、大きくなってね、みんな」
「アリガトフ、カイトサン」
天使様の頭を撫でる、兄と姉。何だか、子連れの若夫婦的光景。和食に豆腐、あの日のわたしを含めて。子供だと、文句を言いそうなメニューかもしれない。でも、めー姉曰くの、専属シェフ二人。カイ兄と紫様の作る日本料理。特に、紫に彼が作る和食は美味しい。その食事のおかげ。メンバー全員、和食の虜。美味しい湯葉や豆腐に舌鼓。肉料理として、和牛のしゃぶしゃぶまで付く。肉食派のリリ姉やテト姉も大満足。大人組は、日本酒との相性最高と大いに盛り上がっていた
勢揃い、初めての全員公演
頑張った子供達