語られる、黄色の『思い出』
話される、紫の『昔話し』
「いや~やっぱ今日も格好良かったな~センセ」
二次会の買い出し組や、ホテル残留組。それぞれ別れ温泉につかり、部屋に戻る。すでに四人分の布団が、敷かれていた。寝そべるわたし達。リリ姉が唐突に始めるガールズトーク
「おにぃやメー姉もカッケエけどさ。やっぱセンセが一番だな。普段のやさし~時と、ロックモードのギャップがたまんね~」
すごく嬉しそうに枕を抱き、脚をぱたつかせるリリ姉
「カルは、ピコピコとみきみきが良い。二人、かあいい。観てるだけで、ほっこりこり」
カル姉、温泉饅頭を頬張りながら会話に参加
「み~んな格好良かったよ~。でもやっぱり、ぽ兄ちゃんが一番かなぁ。あ、でも確かに。ピコ君や勇馬君は『かわいい』色の方が強いかも~。リンちゃんはだれ~」
わたしの右脇、寝そべるめぐ姉が聞いてくる。あの日のわたし。迷うことなく
「がっくん。がっくんが格好良かった~」
繰り広げられた女子トーク
「リン、ホントにおにぃがオキニ(お気に入り)だな~。なんで、確かにおにぃも超格好良くてやっさしくて~」
基本、彼の妹、私の姉達はブラコンだ。惜しみない賛辞を述べる
「歌も料理も上手いけどさぁ。リンの気に入り方パネエじゃん。なんで~、一回聞いてみて~んだ」
「あ、わたしもちょっと気になるかも~。リンちゃん、わたしたちが来る前の、ぽ兄ちゃんとのお話聞かせて~」
わたしのふとんに集まる姉達。寝そべるわたしの頭の上、カル姉もやって来て、ほっぺたを挟まれる
「聞かせてリンリン」
「ほら、はけ~、はいちまえ~」
「教えて~リ~ンちゃ~ん」
めぐ姉、リリ姉にくすぐられる。そんな風に可愛がってくれる、姉達が大好きだ。あの日も今も変わらない
「あはははは。や、やめて、話す話す~」
言う私、解放してくれる姉
「は~。ん~とね。初めてだったんだ。他の事務所のプロデューサーが歌い手さん、連れてくるの。わたし達、一族以外の歌い手さんが来るの。楽しみだったな~」
あの日の気持ちを話す。何一つ包み隠さず
「で、待ってたらね、超きれ~なお侍さんが来たの。それが、がっくん。それでね、初めてなのに、わたしとレンの見分けができたの」
「そんなに似てたの、小さいときのリンちゃんとレンくん。まあ、今も髪型そろえると、凄く似てるけど」
聞いてくるめぐ姉
「うん。めー姉とか、プロデューサーも間違えるくらいにね。でも、がっくんすごいんだよ。一回も間違えたことないの。それにね、レンを王子、わたしを姫みたいって言ってくれたの。嬉しかった。お姫様なんて言われたことなかったし」
嬉しかった思い出が溢れる
「誕生日、忘れられちゃったことがあってね。でも、がっくんだけは憶えててくれて。靴、プレゼントしてくれたんだ。嬉しくてしょうがなかったなぁ。冬休み、楽しくしてくれたのもがっくんだったし」
「あ~、冬休みに騒ぐの始めたのっておにぃだったんだ。メー姉が提案したんだと思ってた」
リリ姉に顔を向ける。背をそらし、片肘をつき、手の甲に顔をのせたリリ姉。小悪魔なポーズで
「うんっ。宿題してたわたし達にね、甘酒持ってきてくれて。勉強『頑張らな~い』って。おせちとかご馳走もつくってくれたんだ~」
「そういえば、ぽ兄ちゃん。前にチョコ嫌い克服できたの、リンちゃんのおかげって言ってたけど。何したの~、リンちゃん。わたし、ビックリしちゃった。久しぶりに会ったら、ぽ兄ちゃん、チョコ食べられるようになってるんだもん」
今度はめぐ姉を見る。うつぶせになって微笑んでいる
「んとね、一緒に住んでたときね。わたし、がっくんの部屋に行ってみたくてね。頼んで、連れて行って貰ったことがあったの。刀とか見せてくれた」
「あ~、居合いか。何がおもしれ~のかなぁ。たまに、勇馬とチャンバラしてっけどさ~。重音さんとも手合わせしてっけど。痛くねえかあれ」
今度は寝そべって、横向きにわたしをみるリリ姉
「『大切なモノ護れるように鍛えとけ』ってがっくん言ってた~。リリ姉達、護るためじゃないかなぁ、鍛えてたの」
何気ないわたしの一言、頬が緩む姉達
「かる達も、りんりん達も。あにさまが護ってくれる」
夢みる乙女顔のカル姉。でも、本当のこと。カイ兄、めー姉、そして、彼。何処へ行っても、どんなときでも護ってくれた。わたし達を育ててくれた
「ったく、護ってくれんなら置いてくなっつ~の」
頬を染めて言うリリ姉
「でもさ、嬉しかったよねリリちゃん。ぽ兄ちゃんが格闘家やめるって言ったとき。このPROJECTに加えて貰えるって聞いたとき」
今度は、わたしの知らない彼の話をするめぐ姉
「めぐ姉、がっくんは何で格闘家やってたの。そういえば、リリ姉とカル姉って『親族』さんだよね。なんで一緒に暮らしてたの」
気になったことを素直に聞く
「あ、んとね。リリちゃんのお父さんは、わたしのお父さんの弟さんなの。ヨーロッパで、演出家さんやってる人でね」
「ウチが生まれる前、日本来てさ。活動おわって、また本来の拠点、ヨーロッパに戻らなきゃならね~って。ウチ、外国行きたくね~し、転校とかもイヤだってったら~」
「あにさまのお家で暮らすことになった。近所に住んでたし、カルもリリ姉様も、あにさま好きだし、お得ぷらん」
共同生活のワケを語ってくれる、姉三人。そうか、わたし達メンバー、家族と距離が離れてしまう。だからこそ、より縁(えにし)の深い『家族』になるんだな、メンバー同士。チラリと考える
「格闘技はね元々、お父さんに、子供の頃から鍛えられてたらしいの。総合格闘技って言ってたな。お父さん居なくても、道場には通えって厳命されてたらしくって」
プロレスやボクシングなど、格闘技を観るのが苦手なめぐ姉、困り顔。ただし『お相撲』は好んで観る、相撲女子
「オジキが音楽関係の人間だからさ。おにぃも音楽の高校、大学いってたんだけどぉ。歌い手になりたいなら、自分の実力で成れって」
「はたちまでに芽が出なければ、辞めて別の道へ進め。おじさんの言いつけ」
説明してくれる姉達。彼が来た時、25歳だと言っていた。じゃあ
「がっくん、どこからもスカウトとかなかったの。あんなに歌上手なのに」
「うん、リンちゃん。上手いだけじゃだめなんだって。いろいろあるらしいよ。きっと、お父さんの名前出せば、一発合格だろうけど」
「コネとか絶対使うなってオジキが言ったらしい。でも、このPROJECTはそんなの関係ね~じゃん」
「かくとうかしながらも、あにさま歌ってた。歌うことが好きだから。ある日、らいぶはうすに現われた人に誘われたって」
そうか、そこで神威組のプロデューサーに出会ったのか
「スカウトしたらし~ぜ。プロ(プロデューサー)が。この声しかねぇって。おにぃ嬉しそうだった」
そんな苦労をして、彼はやってきたのか。あの日の京都、姉達の部屋。初めて知ったこと
「そっか、がっくんそんなに大変だったんだ」
「わたしも嬉しかった。安心した。試合が終わった後ね、ぽ兄ちゃん、傷だらけで帰ってくる事ばっかりだった。恐かった。ぽ兄ちゃん、壊れちゃわないかって」
やや涙ぐむめぐ姉、本当に心配だったのだろう
「でも、あにさますごく強かった」
「バカ正直に、正々堂々闘いすぎなんだよおにぃ」
拳を握るカル姉、ファイティングポーズ。しかめっ面のリリ姉。傷ついてほしくなくて。でも、強い彼が誇りの姉達の言葉
「寂しさもあったけどね。ぽ兄ちゃん『これからはそうそう会えなくなる。仕送りはしようじゃない』って。その辺りでね『お母さん』家に帰ってきたんだけど」
表情がさらに曇るめぐ姉。今は、一緒に住んでいるのに。本当にブラコンさん。でも、表情が曇った理由はそれだけではなかった
「おにぃ、付き合ってた彼女とも別れてさ。オバサン、昼間は家に居ないで仕事。だからウチらは、おにぃみたいに成りたいって。必死に追いかけた」
「そうすれば、あにさまにあえるから。かる達も歌が好きだから」
「がっくん、恋人さんいたんだ」
リリ姉の方に向き直る。かなりの勢いで。リリ姉たちが、歌い手に成るために重ねただろう。その苦心など考えもせず反応した『彼女』という単語。わたしの反応にリリ姉、完全無欠の小悪魔スマイルで。わたしを小突いて
「なんだ~気になるのか~リン」
「あ、う、うん。だって、ほら、わたし知らない話しだから」
「あにさま、もてもて。バレンタインは、ようかんの山」
「え、カル姉、何でようかん」
バレンタインようかん。とてもシュール
「あのね、リンちゃん。ぽ兄ちゃんが、チョコ苦手って情報、いつもすぐに拡散するから。和菓子は好きって言うのも。ほら、前にみんなで、越後に行ったときに買った、あのようかん。ぽ兄ちゃんの好物なんだ~」
「あのツラで長身、細マッチョ。ハイスペックの超おにぃ。優しいし、気配りうめぇし、モテね~方がおかしいっつの」
質問に答えてくれるめぐ姉。リリ姉の言葉。確かに、それは納得がいく。なぜか溢れる、焦りに似た感情
「どんな人だったの、彼女さん」
「ん~、あ、あのね。何となく『今』のルカちゃんに、似た感じの美人さんだったよ、リンちゃん。ぽ兄ちゃんが、音大の時からのおつきあいだったな」
「あ、確かに。初めて会った頃のルカは、もっと子供な感じだったけどさ。最近やたらキレ~だよな。今のルカには似てるかも」
めぐ姉の言葉。脳裏に浮かぶ、ルカ姉の姿。何一つカナワナイ。そんな劣等感
「って~、話変わってるじゃん。リン、おにぃのチョコ嫌い直した話し、続きツヅキ~」
リリ姉に頬を、指でつつかれれて。話しがすり替わっていたことに気付く
「あ、ごめんリリ姉。でも、わたしの知らない、がっくんのお話聞きたかったんだもん」
チョコ克服の話しに戻るわたし。本当はあの日、もっと聞きたかった。彼のことを
「がっくんの部屋に行った後ね、今度はわたしの部屋に来て貰ってね、お茶したの。遊びに行かせて貰ったお礼~」
「わ~ぉ、ダイタ~ン。リンが、おにぃを連れ込んだのか~」
「こらこら、リリちゃん。そんなこと言ったらダメ。ぽ兄ちゃんがいたら怒られちゃうよ~」
苦笑し、たしなめるめぐ姉。その言葉の意味を知らないあの日の私
「その時ね、お招きのお返しににって。チョコレート食べさせてくれたの。いつもより、高級なチョコレート。すっごくおいしかった。でも、がっくん、チョコ苦手って。食べられないの、もったいないな~って思って~」
話すのが楽しくて、思い出が嬉しくて。気持ちが高揚。そのわたしを、微笑みながら見ていた姉達。どんな事を考えて見ていたかは、今も分からない。わたしのおしゃべりは続く
「ホワイトチョコも知らなかったんだよがっくん。食べさせてあげたの。そしたら『甘っ』って言ってたな。でも、おいしいって。その時からね、チョコも食べられるようになったんだぁ」
「だからばれんたいんぱ~てぃ~、することに」
「そうなの、カル姉。それがきっかけ~」
わたしの頭の上。座布団に座っているカル姉がのぞき込む
「あとね、歌披露のお話。この話、するのはめぐ姉達だから。他のメンバーには、ごめんだけどナイショ。わたしとめー姉。カイ兄にミク姉。あと、レンしか知らない。実は、ルカ姉も知らないお話」
「お、メズラシイ。隠し事無しのリンがねぇ」
少し、モードが真剣になるわたし。そう、これはきっと、わたしの中で、生涯誇りに想うこと。自己紹介、歌披露。その席で始めから、わたしと彼のように声を重ねた者。そんな歌い手は誰一人現れなかったから
「うん、リリ姉。これは、これだけは。わたしの中で、一番大切なお話。がっくんとわたしだけのお話だから」
「そんなに大切なお話、聞いていいの、リンちゃん」
心配そうに聞いてくれるめぐ姉。わたしの真横に転がってきて、頭を撫でてくれる
「お姉達だから。めぐ姉達には、知ってて欲しい。がっくんの事も教えてくれたし。でも、ほんとナイショだよ」
「ないしょ。かるは言わない。約束」
言って、わたしとおでこを合わせてくれるカル姉
「ん、ウチも。リンが、ウチらを『お姉』って思って話してくれんだ。約束だ。秘密にする」
彼の部屋で、泣いたあの日のように。リリ姉とゆびきり。親族といっても、やっぱり兄妹だと感じる
「じゃあ、お話しするね。新しいメンバー来ると、その日にするよね。歌披露。歓迎会はベッコ(別)になったけどさ。歌だけは、皆の前で歌うよね。がっくんが来た日は、歓迎会も一緒だった。めぐ姉達の時と同じように。でね、その時歌ったんだ、一緒に」
「え、その日に合わせたの。リンちゃんとぽ兄ちゃん。出会ったばっかりだったんだよね」
驚くめぐ姉。そう、声を重ねるには、普通しっかりと打ち合わせをする。何度も歌い込む。それでも、声がうまく重ならない時もあるというのに。あの日のわたしと彼。奇跡のように重なった声。紡ぎ出された歌。その旋律の美しさは、姉と兄と弟もお墨付き
「うん。わたしがね、一番初めに歌ったの。最初に聞いてほしくて。そしたら、がっくん『君に会えて良かった。俺の歌、変わるかもしれない』って。歌ってくれてね。その日、歌を合わせたのはわたしだけ。みんな、歌披露はしたけど。合わせたのは、わたしだけだった」
天井を見る。カル姉から、視線を外して
「ん~なコトがあったんだ、おにぃとリン」
わたしを見たまま、仰向けになるリリ姉
「途中からは、我慢できなくて。わたしも一緒に歌い始めた。すっごく楽しくて。もう一曲、初めから一緒に歌った。めー姉もカイ兄も、すっごく褒めてくれた『こんなにも重なるんだ』って。レンは『負けない』って言ってたけどね最後は褒めてくれた」
あの日を思い出す。長身の彼、八歳だったチビ。椅子にのって、彼は、少しかがんでくれて。声を重ねたあの日
「あの日、言ってくれたな~。レンと一緒に、がっくんの膝にのってて、眠くなったの。そしたら、二人とも部屋まで運んでくれて。最初にわたしを寝かせてくれて『おやすみリン良い夢を』って。がっくんはレンを王子って言ったけど、がっくんのほ~が、よっぽど王子様って感じ」
天使組、キヨテル先生だけに見せる、優しい笑顔。あの時は、わたしにも見せてくれた。慈愛の笑顔のリリ姉。でも、その双眸を、すぐに小悪魔天国よろしく変えて
「あ~あ、おにぃもツミなヤツだな~。無意識天然ツミツクリ。リンをど~するつもりやら」
「ちょ、リリちゃん」
慌てて言葉を遮るめぐ姉。あの日の私は意味が分かっていなかった
「だいじょうぶ。あにさまは護ってくれる。りんりんを、かる達を」
また、わたしの両頬を、優しく包んでくれるカル姉。そこで、ケタタマシク、鳴り響くチャイム。何事かと、急ぎ開けに向かう。何かあると嫌なので、四人全員で。そこにいたのは
「あんたたち~二次会始めるわよ~」
「は~い、め~ちゃん、騒ぎすぎないで~」
お風呂上がり、浴衣姿。ご機嫌のめー姉と、おもりのカイ兄だった。四人、顔を見合わせ、吹き出す。ふいに、めー姉の顔が優しくなる
「あ~ら、リン。なんだかもう神威の姉が、実のお姉ちゃんみたいね~」
「え、や、めー姉そんな―」
「ふふふ。そんな日が来るかもしれないわね~」
「はは、そうなったらオレは、泣いちゃうかもね」
お酒のニオイを纏うめー姉、意味深に言う。わたしの頬を撫でてくる
「へへへ、ごめ~ん、メー姉。ウチもう、リンはマジの妹って思ってんだ~。取っちまって、ご・め・ん~」
リリ姉腕が、わたしの肩に回される。神威の姉達も笑う。兄は少し、寂しげに。とことん子供の私には思い至らなかった。何を言っているのかを
「さ、アタシの部屋に集合。二次会するわよ~」
早々とお酒モードに切り替わるめー姉。半ば強制的。でも、嫌なら顔だけ出して、すぐに帰ればいい。それが、めー姉の方針。でも、なんだかんだ結局は、最後までみんな二次会を楽しんでしまう。紫の彼風に言うなら『ステキな女王様』の魅力の一つ
「メイコ姉様~おつまみとお酒。ソフトドリンクも買ってきましたわ~」
「飲めない組にお菓子もな。天使様は起こすなよ。寝かせといてあげようじゃない」
バッグを手にルカ姉。酒瓶と、おつまみの袋を手に、やってくる紫の彼。コンビニに行っていたことが、袋の印でわかる。二人が私服だという点からも。白を基調にしたドレスタイプの私服、ファーのマフラー、ピンクのボレロ。ハイヒールのルカ姉。白のマフラー。黒、スヴェードのライダースジャケット。ライトグレーのパンツ、黒い革靴の彼。一次会のお酒の酔いのせいか、少し、足下がおぼつかないルカ姉。紫の彼に寄りかかり、腕を組んでいる。傍目には、大人の超美形カップル。非の打ち所がない
「がっく~ん。これから二次会するんだよね~」
さっきの話『ルカ姉似の恋人』思い出して。それが、すごく気になって。一目散に彼のもとへ飛び込む
「おっと、元気なのが来た」
「買い出しありがと~。ルカ姉も。早く初めよ~」
そこはわたしの場所だと言わんばかりに腕をとる。始まりのあの日、聞いた台詞が嬉しかった
「リ~ン、スリッパも履いてないじゃない」
「あ」
彼に言われ、とたんに恥ずかしくなる
「俺も風呂入ちゃうからさ。先に、メイコの部屋行ってて。めぐ達も、リンをお願いしようじゃない。カイトこれたのむ」
「あ、うん」
袋を兄に手渡す彼
「さ、リン」
「ん、がっくん」
と差し出される手。素直に従う。抱き上げてくれる。横抱き、姫だっこ
「はは、何時かよりは大きくなったな。ほい。足、ちゃんと洗っておいで」
部屋の入り口に降ろしてくれる
「ありがと~がっくん」
「ん、なんだリリ、めぐ、カルまで。気になる眼差しじゃない」
生暖かく、わたしたちを見ていた姉三人
「っくくく、な~んでも、おにぃ」
「ははは、リンちゃんも自覚ないんだ~」
「うふふ、天然カルが認める天然コンビ」
吹き出すリリ姉。皮切りに、気付けば、周りに居た全員含み笑い
「っふふふ、はは。ホント、神威君は過保護ね~」
「うふふ、レンくん、リンちゃん、天使様。でも、神威さんは特に―」
「リンに過保護だよねっ、殿は~、ははは」
「そうか。そんなことないじゃない」
「自覚ないのね、神威君らしいわ~はははっ」
何度も、彼の背中を叩くめー姉。交わされる、大人組四人の会話
「お~い二次会すんだろ~。って何、何か有ったの」
「おつっす~。てか、ホントどしたんすか、皆さん」
「含み笑いが連鎖しているでゴザル」
別の部屋から出てきた、レン、勇馬兄。アル兄も含み笑い大会に、疑問符を浮かべてたっけ。あの後の二次会で、結局わたしは膝の上。彼にせがんで膝の上。周りのみんなに言われたな。天然無自覚ペアと。本当に気付いていなかったのか、気付かないフリだったのか。さてどうなのだろう。時報の音で、意識が今へと戻ってくる。わたしは『フリ』だったのかもしれない。けれどもう、どちらでもいい。今のわたしにとっては―
神威の姉達
黄色を可愛がる『姉』達