いつもと違って
ナイショ、内緒の
お風呂の前に、土産物通りに移動。夜七時、昼間さながらの活気
「へ~これって堅いヤツがあんだね、カイトアニさん」
「そだよ、Mikiちゃん。生菓子の『生』タイプ。焼き菓子のタイプ」
駅では買わなかったという、都の名物。心なしか、アホ毛クエスチョンマークのMikiちゃん。カイ兄の提案で。まずは、京の都と聞いて、思い出さない人はいないのでは、というレベルの『名物』を買い込む
「他にも、餡が入ってないのとかね~。薄いお餅版の」
「めいぶつも、おくがふかいですね」
めー姉の言葉に、リュウトくん腕組み、うなずきながら
「わ~、リュウトくん、おとなみた~い。ユキもはじめてしった~」
「拙者モ初めて知ったでゴザルよ姫」
「変わり種も増えましたよね~」
感心する、ユキちゃん。アル兄とピコ君も、物珍しそうに。ピコ君、アホ毛が♪っぽい形に
「お、センセ、チョコなんてのもあるじゃん。買ってこ~ぜ」
「へぇ、チョコレートですか、リリィさん。興味深いですが、合うんでしょうか」
「へ~。そんなにあるなら、バナナとかないのかなぁ」
ご機嫌のキヨリリ、先生とおねぇ。チョコの物を手にするリリ姉。キヨテル先生に見せながら。その後ろ、頭の後ろで、手を組む片割れが
言う
「あるじゃない、レン。チョコバナナの生」
「って、あるの、がく兄」
レンにバナナ生を見せる彼。箱ではなく、袋詰め、小分けにされているタイプのもの
「みかんもあるけど、買う、リン。果物の中で、一番好きだったじゃない」
私の好物を覚えてくれた、優しい彼
「わ~、みかん好き~。じゃ、一つだけお小遣いで買っちゃ―」
「あ、すみません。このチョコバナナと、みかん。一つずつ」
片割れの物も含め、即座に買ってくれる
「え、良かったのにがっくん。お小遣い持ってきたから」
「わっ、マジ、がくにい。ぅあ~なんかごめんね」
「あらあら。二人ともお礼言わなきゃだめよ。全く神威君、甘々なんだから~ぁ」
すぐ近くで見ていためー姉。そういうめー姉も、天使様達のリクエスト名物を買ってあげていた
「人の事は言えなくな~いメイコ、ありがとな。リュウト、ちゃ~んと『ありがとう』言ったかな」
しゃがみ込み、リュウト君を撫で回しながら、聞く紫様
「はい、にいさま」
「大丈夫よ神威君。みんなお利口さんなんだから」
買って貰った、名物生菓子をリュックサックにしまうリュウト君。実の弟と、彼の微笑ましいやりとり。よく見ると、リュウト君、リュックの中には、複数の小分け名物が入っている。天使組の生菓子を、背負ってあげるお利口さん
「わ~ほんとにありがとね、がっくん」
「ありがと、がくにい。チョコバナナ大好き」
「こんな事くらい、子供は大人に甘えていいんじゃな~い」
微笑みながら、手渡してくれる彼。わたしとレンの頭を撫でる。彼の言葉で初めて思う『子供のままではイケナイ』と。そうだ、昼間だって、タクシー、昼食、和菓子屋さん。お代はすべて、大人組が払っていた。甘える子供のままではダメだ。何故か思う。ただしその思いは、結局『子供』の範疇を出ない考えだったけれど。箱で買った生菓子は、此所でも指定日配送。結局大人組が支払いをする。お店を出て、お土産通りを進む。色々なものが目に入る
「っす、がくサン、ちょっと寄んないすかこの店。模造刀も、結構置いてあっす」
ある店の前、通り過ぎようとしたとき、勇馬兄が目を輝かせた
「おいおい、お前は居合い刀、持ってるじゃない。しっかもアレ結構な名刀」
勇馬兄の刀は、紫様も認める代物らしい。けれども
「でも、やっぱ刀はテンション上がるっす」
「おお、拙者も一振り、欲しいものでゴザルナ」
人の欲求にキリは無し、勇馬兄、子供のようにはしゃぐ。アル兄も入店希望。刀好き二人、完全にテンション沸騰。これは当然の流れだった、が
「がくにい、おれも入ってみたい」
怖ず怖ずと申し出た片割れ。意外な申し出、こちらは全員驚く
「お、以外じゃない、レン。刀に興味あったっけ」
「い、いや、刀ってゆ~かさ。がく兄も勇馬兄も、鍛えてるじゃん。テト姉だって。さっきの先生も強かったし。おれ、学校とかで、部活もやってないから。お、おれもさ、体鍛えたくて。鍛えて、いつか護れるように成りたい」
メンバーの視線が、レンに集中する。確かに、スポーツ競技はやっていないわたし達。ただし、歌って踊るには体力が要る。重量級の衣装を着て、歌劇を演じる必要だってある。歌い手として、普段から、そういう意味では、かなり鍛えていた。軽い走り込みやストレッチ。軽度の筋肉トレーニング、ダンスの確認なんかは毎日だ。大人組は、仕事の合間に、プロスポーツ選手並のトレーニング。その甲斐あってか、学校の体育テストなどでは、いつも五指の内に入ってた。でも、片割れがあの日言ったのは、それとはちがう意味の『鍛錬』
「がく兄が言うみたいに。護りたいじゃん、大切な人。そんな、危ない目に遭うこと無いけどさ。みんなとか、大切なひ―、あ、い、今の無し。わ~わ~」
独白をしていたと気がつくレン。真っ赤になって話しを打ち切る。もう遅い
「何言ってんの、レン。見上げた心がけじゃない。鍛えて護るってその心音。さすが、尊敬する双子様。俺、自慢の弟『筆頭』惚れる男気じゃな~い」
「まぁ、将来、レンくんに護っていただく可能性がある。なんだかワタシ、幸せですわ~」
「ね~ルカ姉。わ~レンくん、何かかっこいいよ~」
うわべのお世辞ではない。心からの賛辞を贈る彼。レンの頭を撫で回す。何故だか、幸福感に浸る、ルカ姉、ミク姉
「デハ、勇馬殿同様。レン殿も、神威殿に弟子入りされると良いでゴザル」
「あ、う、うん。がく兄、弟子にして。一緒に鍛えてよ」
「わ、神威道場の開幕ですね~、かむさんっ」
「殿が師匠の、一流派ができたね~」
片割れの真摯な願い。ピコ君と兄の言葉に、頬が緩む彼
「弟子って程のもんじゃない。俺は師範でも無いわけだから」
「かむぅい、お前師範代の位(くらい)持ってたじゃね~か、居合い。武道も併せて何十段だったかにゃ~、元格闘家様よ」
「うっす、レンがおれの弟弟子(おとうとでし)っすね」
可笑しそうにテト姉が突っ込む。勇馬兄は、子分が出来たかのような物言い。笑みを、獰猛なものに変える、紫様
「重音、イヤミで言ってんのか。お前も似たようなもんじゃな~い。勇馬、歌い手としては、レンのが先輩だから、な」
彼とにらみ合うテト姉。でも、二人とも楽しそう。ビビっているのは勇馬兄。御師様には太刀打ちできない
「はは、そんなに段位持ってるんだ。殿ほんとにハイスペックだね」
カイ兄、カナワナイという顔。紫の彼、今度は微笑んで
「何言ってんのカイト。お前のが高性能の超アニキじゃない。俺らは、武術馬鹿ってだけ。まぁ、レンも見たいなら仕方がないな、入ろうか。でも、別の店行きたいんじゃない、オンナノコは特に」
と、女性筆頭、めー姉に向かって片目を瞑る
「そうね~、アタシは別の店が良いわ。気遣いありがと神威君」
「私もです、神威さん。子供達と他を。模造刀とはいえ、刀はちょっと物騒ですので」
彼の心遣いに、上がる声。別行動を申し出る、めー姉、先生
「なら、ウチもセンセと別の店~」
「ごめん、殿、オレも別の店行くよ」
「がっくん、わたしも別のお店行きた~い」
メンバー全員、またも驚きの表情が浮かぶ。そうだろう、あれだけ彼にくっついていたわたし。別行動を申し出たからだ
「あら、珍しい。いいの、リン、神威君と一緒じゃなくて」
「うん。別のお店が良い」
「メイコ、刀なんか興味なくて当たり前じゃない」
ただ、ひっつかれていた彼だけは、納得の顔をする。実は、別行動をしたかったわけではない。模造刀とはいえ、刀を構える彼。想像しただけでかっこいい。片割れの意外な姿も見てみたかった。でも、わたしの意思は、もう一つの目的に動かされる。さっきから考え、思いついた。彼に、何かお返しを贈りたい。さっきもお土産を買ってくれた彼に。もう、すぐそこの誕生日。きっと誕生日プレゼントをくれる彼に。このお土産の聖地で『お返しの品』を選ぼうと
「そういう事じゃないんだけどな~、神威君。まあ、分かれてお店みましょ。アタシはバッグとか小物を見に行くわ。プロさん達から、軍資金渡されてるの。カイト~付いてきて、男物は任せるわ。ルカ、一緒に選んでよ」
複雑そうな苦笑い、めー姉、カイ兄に従者を命ずる
「喜んで同行しますわ、メイコ姉様」
「うちも~メイコアネさん」
「ははは。オレは完全に従者だね。おおせのままに、お嬢様方」
腰を折り頭を下げて、カイ兄、めー姉の一歩後ろに続く
「かるも、めいさまにつづきます」
「あ、カイトさん。ぼくも、従者に加わりま~す」
その後ろ、ルカ姉、カル姉、Mikiちゃんが続く。ピコ君も、従者というよりお嬢様。わたしは、状況を見ていた。どの集団に付いていけば、目的のものに出会えるだろう、と。ただ、何を贈るか、それは思いついていなかった。めー姉が行く装飾品のお店ということは、ここ一番の時身につける一張羅。プロデューサー、直々の調達命令なら尚更。きっと高い店、わたしには手が出せない品ばかりだろう。この一団に付いていくのはムリだ
「すみません、私はホテルに戻らせていただきます。みなさん、そろそろお疲れのようですから」
「なら、ウチも戻ろっかな。センセ、一人じゃ大変じゃん。戻ったら、二次会の追加とか買っとこ~ぜ、センセっ」
「すみません、リリィさん。では、タクシーを拾いますか」
ユキちゃん、リュウト君と手を繋ぐ、キヨテル先生の心遣い。さすがに少しお疲れの天使様。大人達の議論の間に、眠くなったのだろう。目をこすり始めている、オリバー君、いろはちゃん。手を繋ぐリリ姉。通りの出口へ向かう。ホテルに戻るという選択肢は、さすがにない
「わったし、このお店入ってみよ~。なんか面白そ~」
「ボクもここ入るぜ。お、ヌンチャク発見」
興味が湧いたらしい。彼らと残る選択をする、ミク姉。初めから、入る気満々の顔だったテト姉も続く『付き合って』入った風情、彼の顔。この店にも目的のものは無い。それにわたし、刀や武器の知識は皆無『架空』の武器なら多少はあるけれど。ビームの刀とか、勇者の剣とか
「ゎたしは、すこしだけぶらついて、気に行ったお店に入ってみるよ~ぅ」
「IAちゃん、わたしも一緒にいく~。良いところで帰ろ~ね」
「あ、めぐ姉、わたしも一緒に行く~」
IA姉の申し出に賛同する。この二人に付いていくのがいいと判断。おみやげ通りのぶらり旅を希望
「じゃ、みんな、ホテルで落ち合おうじゃない」
「また後でね~がっくん」
別れ、歩き出す。あ、ほんの一瞬のお別れなのに、なに、この寂しさ。あの日思った。紛らわすため、めぐ姉と手を繋ぐ。誤解の無いよう申し上げたいが、めぐ姉と手を繋ぐのだって、大変に心地イイ。紫様の手繋ぎが『唯一無二の至高』というだけで。わたしが勝手にしている思い出訪問で、一体誰に言い訳しているのだろう。すると、思い出のめぐ姉が質問してくる。あの日へ戻るわたし
「でもリンちゃん、本当に珍しいね、ぽ兄ちゃんと別れて行動」
そんなにわたし、彼にくっついていただろうか、などと思った。が、どう考えたって確実に、引っ付いている時間が多かった。今にして思う
「う~ん、そんなにわたし、がっくんと居るかなぁ。がっくん、もしかして迷惑かな、めぐ姉」
「わわ、大丈夫だよ、リンちゃん。ぽ兄ちゃん、いつもリンちゃん可愛がってるものっ」
わたしの反応に慌てるめぐ姉。もの凄く必死の弁解
「えとえとね、突然お別れ行動だったから、どうしたのかな~って」
「ゎ~たしもちょっと気になるな~。ど~して~、リンちゃん」
今だ慌てている、めぐ姉。IA姉、興味深げにのぞき込んでくる
「ん、あのね、ん~、みんなにナイショ、して貰って良い」
何となく気恥ずかしい、ちょっと照れる。いつも図々しく甘えるから、そのお返しを贈りたい。そんなことを口にするのが。みんなに知られるのが。と言って、今行動する姉二人、秘密にするのは難しい。ならいっそ、味方にした方が上手くいく。浅知恵ながら、よく瞬時に頭が回ったものだ
「がっくんに贈り物、したくって」
めぐ姉、IA姉、束の間顔を見合わせた後
「ど、ど~してかな、リンちゃん。ど~いう贈り物かなっ」
「そ~れは、どういうことを伝えたいの~リンちゃ~ん」
目を燦々輝かせて聞いてくる。めぐ姉の手に力がこもる
「えっ、あ、う、うん。あのね、いつも優しくしてくれるでしょ、がっくん。さっきもお菓子買ってくれたし、プレゼントだってくれると思う。帰ったら誕生日来るから」
背の高いめぐ姉に、上からのぞき込まれ、低いIA姉には、やや下からのぞき込まれる
「わたし、去年までがっくんの誕生日に、きちんとした贈り物もしなかった。でも、がっくん、わたしの誕生日には絶対、プレゼントくれてさ。さっきお菓子買って貰った時、思っちゃった『このままじゃダメだ~』って」
お土産通りの一角、黄色いの一人が、二人の美少女に囲まれる。なかなかに無い構図だったであろう
「何時までも子供じゃないんだからって。ちゃんと言わなきゃ」
その台詞を言った瞬間、めぐ姉、IA姉、瞳の星。少女漫画の十倍は輝いた
「きちんとお礼したいの。がっくんにお礼のプレゼント、選びたくって」
何故だか歓喜しながら二人の姉は
「ん~リンちゃん、わかった、応援するよ~」
「ょ~うやく進展するかな~ぐみちゃ~ん」
わたしを抱きしめてくれた。ただ、この時は『勘違い』に終わったんだけどね、二人の。わたし自身の『勘違い』も含まれる『このままじゃダメだ、子供じゃない』思ったくせに気付かない。もう、この時には抱いていただろう自分の『想い』
「何を贈るの~リンちゃん」
「ん~、何にしよっかな、決めてないんだ~」
「でゎ~、イ~ロイロめ~ぐり~ましょ~」
目が輝いたままの二人に連れられ、店巡り。雑貨、衣類など、多種多様お店旅。巡り巡ってあるお店に入ったときのこと。わたしが目にしたのは、一本のループタイ。銀色の刀の鍔がデザインされた、彼に似合うであろう品。二人の姉から離れ、手に取る。彼がこのタイを絞めた姿、想像する。うん、完璧。購入を決意する。値段は、あの時持って行ったお小遣いぎりぎりだった。この後、買い物は出来なくなる。それでも構わなかった
「リンちゃん、それ買うの」
「カッコイイデザインだね」
いつの間にか近くに居ためぐ姉、IA姉
「あ、う、うん、めぐ姉。みんなにはナイショ、IA姉」
「ふふっ、わかったよ、リンちゃん」
「ぅふふ~、頑張ってね~リンちゃん」
そう言って、励まされる。確かに、少し緊張する、内密に渡せるか。頑張らねばと、あの日は勘違いした。レジで会計。少し良い紙で包装をして貰う
「リンちゃ~ん、ホテルに戻るよ~」
「戻ろ~リンちゃん」
IA姉、めぐ姉の声
「あ、わかった~待ってぇ~」
店を後にする。タクシーのなか、わたしは考えていた。どう渡すか、いつ渡すかを。彼は、喜んでくれるか、を。結構、心拍が上がったっけ。玄関の呼び鈴が鳴る音で、意識が記憶図書館から強制退館。モニターに映る荷物屋さん。受け取るため、料理の火を止めて。急ぎ足で向かう―
子供のままでは
思い至る
子供の想いは
思い至らぬ