可愛がられる、黄色い子
届けられた、箱二つ。一つは箱一杯のじゃがいも。もう一箱は、修道院のバターとクッキー。わたしの『生まれの実家』からの心遣い。同封の手紙、いつも観ているとのこと。帰省する機会もめっきり減った。それでも、思いやってくれるのはありがたい。そうだ、これでじゃがバターでも作ろうか。台所へともどってくる。家族のために料理を再開。他の家へもお裾分けをしよう。家族も好きなんだよね、このクッキー。あ、今自然に思ったな『家族』って。両親には、際限なく感謝をしている。ただ、申し訳ないけれど。わたしも、みんなも、もう同じ『メンバーが家族』『今、住んでいる家が実家』何時か、誰かが言った。じゃがいもの皮を剥きながら、はて、さっきまで何を想っていただろう。届け物の中『密封』の文字が目に入る。ああ『密』の字で思い出した。結構大切な思い出だ。京の都で贈り物を交わしたあの夜。記憶の図書館さん。今度は、わたしの方から入館、希望いたします―
「ただいま、お待たせじゃな~い」
「っす~、良いモンが買えたっす~」
「楽しかったぜ~」
最後に帰ってきたのは、紫様の一団。と言っても、わたしたちがホテルに入った時間と、そこまでの差は無い。発声は彼、ホクホクの勇馬兄。ヌンチャクを振り回し、ポーズを決めるテト姉
「あらあら、皆すっかり刀剣男子ね~」
「帰るまで、箱から出してはいけませんよ」
めー姉が笑う。彼とレン以外、男性陣の手には長い箱。おそらく、模造刀が入っていると思われる。すでに浴衣のキヨテル先生苦笑い。眼鏡を外した先生は、少し目が細められる。視力が悪いので、とのこと。一足先に戻った、先生、リリ姉、天使様。男の子を先生、女の子をリリ姉が引率して、入浴を済ませたとのこと。すでに、お部屋で夢の中
「お、レンまで買ったの、模造刀。でも、箱に入ってないね」
「違うんだ、カイ兄。これ、竹刀。がく兄が買ってくれてさ。剣道着は、帰ったらって」
「わたしも、何か楽しくなって買っちゃった~」
嬉しそうな弟。笑顔、声も弾んでいる。ミク姉、十手を見せてくれる。何に使うのだろう
「レンにさ、まずは剣道教えようって。一式揃えてあげようじゃな~い」
「ありがと~、がく兄」
図々しく思った。買って貰った、そして剣道談義で盛り上がって、頭を撫でられている片割れが。羨ましいと
「さ~、それじゃお風呂入って。二次会始めるわよ~」
「でも寒い中を歩いたからね。ゆっくり入ってこようよ」
「しっかり暖まって来て下さい」
「その間に、会場作っちゃお~ぜセンセ」
めー姉、カイ兄。促されて、浴場へ。二次会の準備は、リリ姉とキヨテル先生がしてくれる
「あら~、お風呂も良いわね~。身に余る贅沢だわ~」
「やっぱ日本人は温泉だよね~、メイコのアネさ~ん」
めー姉の言うとおり、広々、高い天井。暖色の照明と湯気が仄かに立ち上る浴場
「広々~、あ、かけ湯してあげる~リンちゃん」
「ありがと~めぐ姉~」
言ってくれる、めぐ姉を観る。この頃から気になり始める、特に、めぐ姉、ルカ姉との差。めー姉も含め、大いに恵まれた人達と、自分の体つきの差。くらべて何故か、すごく悲しくなった。残念ながら、今でもカナワナイ。何でかは、あの日は考えつかなかったけど。そのめぐ姉に、背中を流して貰う、洗いっこする。頭も洗って貰って、湯船につかったとき
「リンちゃん。さっきのループタイ。帰ってから渡す、今日渡す」
声を潜めて聞かれる
「今日渡したいなぁ」
その問いに出した答え。さっきのレンの楽しげな、嬉しそうな顔が浮かぶ。それに嫉妬しただろう、あの日のわたし
「なになに~、作戦会議~」
IA姉、声を潜めてやってくる
「うん、IAちゃん。じゃあさ、二次会出るよねリンちゃん」
「でる~、めぐ姉」
「その途中にね、抜け出すのがいいと思うよ。でね、二人っきりで渡すの、ぽ兄ちゃんに」
「誰か気付いたら、ゎたし達が誤魔化しておくよ~」
提案してくれためぐ姉。考えてみれば、あの頃から、わたし達を応援してくれていた、神威の姉。IA姉の気遣いも嬉しかった
「ありがとめぐ姉。そうする、IA姉」
「頑張ってね、リンちゃん」
めぐ姉、言って抱きしめてくれる。何となく、至福の感触だった。そういえば、だ。神威の一族は呼ぶ。姉のことを『めぐ』と。そこに、姉がつくかつかないかだけが違う。でも、他の人は違う。なぜか『グミ』と呼ぶ。わたしは、彼が呼んでいたから、自然とそうなった『めぐ姉』という呼称。姉の名は『めぐみ』だ。わざわざ、なぜ下の二文字を取るのか、今でも分からない
「まあまあ、リンちゃん。本当に、神威さんのお姉様が、実のお姉様のようですわね」
「うん、ごめんねルカちゃん。わたし、リンちゃんをホントの妹って思ってるんだ~」
微笑みながら、ルカ姉が言う。めぐ姉は、ますますわたしを抱きしめる。その言葉に、うれしさが倍増する
「ふふふ。りんりんは妹。かる達の妹」
わたし抱っこに加勢してくる、カル姉
「ゎ~リンちゃんが可愛がられてる~。ゎたしもリンちゃんかわいがろ~ぅ」
「あ~、この光景、ゼヒ撮影したかった~」
「ミク。本当にやったら、お姉ちゃん、オ・コ・ル・ワ・ヨ」
めー姉に、笑顔で睨み付けられ、縮み上がるミク姉。当然だろう。それをやったら、イタズラでは済まない。わたしは、IA姉にも抱きつかれる。完全に体が温まる。というか、ややノボセタくらいの状態で、浴場を後にする。脱衣所で、髪を乾かす
「ルカたん。手伝ってやるぜ」
「すみません、テト姉様」
「ミクちゃ~ん、手伝ってあげる~」
「わたしも~ミク姉~」
「グミ姉、リンちゃん、ありがと~」
髪の毛の量が多い面々が多い女性陣。必然的に、時間がかかる
「いあさま、かるが手伝う~」
「ごめんね~カルちゃん」
比較的短い側のみんな。乾かし終わった者から手伝って乾かす
「わたしはMiki~」
「ありがと~メイコアネさん」
楽しいお手伝い。はしゃぎながら、髪型セット。舞台に上がるわけでないので、簡素に。テト姉も、本来のサラサラヘア。ドリルツインテールなんて言われるけど。いつも、あの髪型を作るのに、三十分近くかかる
「男の子、待たせてるかな~」
「しょ~がないよIAね~さん。男の子の方が簡単で済むから」
「確かに。女性の方が身支度に、時間がかかりますわ」
心配そうなIA姉。朗らかにMikiちゃん。クールにルカ姉。髪を乾かし終えて、着替えを済ます。脱衣所から出て、部屋へ向かおう、と
「お、タイミング同じじゃない。やっぱ俺らも、ゆっくりしすぎ~」
男湯から出てきた、彼らと鉢合わせる
「はは、普通、女の子のが、時間かかるはずだけどね。アルがサウナで、腹筋始めちゃったりしたのもあるけどさ」
「髪おろしたがく兄とピコが、入ったとたん『女~』なんて言われてさ。湯船でも広がるし。がく兄の髪、なかなか乾かなくてさ~」
事情説明、さっきから楽しげな弟。むむむ
「自分やアルサンは、そこまで時間、掛かんないんで。がくサンに加勢して。最後は、全員でドライヤー大会っす」
浴場の前、浴衣姿。髪をおろした彼と片割れ。ただ、綺麗なストレートの彼と違い、レンは癖が強い髪。それは、わたしにも言えるのだけど。彼の頭の上、しっかりアホ毛。カイ兄だけがいつもと変わらない髪型
「失礼ツカマツッタ。拙者、ガタイの良さも売りユエ」
「あはは、ダメよアル。体にも悪いから。ま~たしかに神威君『美人』って言葉が似合うものねぇ、嫉妬しちゃう程。ピコ君も『美少女』じみてるし。ってか、うっと~しくないの神威君。この髪~」
艶やか、紫様の髪に指を絡めるめー姉『あら、ホントにさらさら』と声を上げる
「ぶっちゃけ、うっと~しい。何でここまで伸ばしたか。けどもう、変えられないじゃない。この髪型。俺イコール、サムライポニーになっちゃった」
「でも、かむさんの髪。サラサラで憧れます。乾かしてて楽しかった~。良い香りがします~」
苦笑いの、めー姉、紫の彼。乙女顔のピコ君は、花飾りのヘアピンで前髪を留めている。アホ毛は元気。勇馬兄は、カチューシャで髪を上げ、アル兄は髪がねている。整髪剤を付けていないため
「わ~、何か新鮮だね~。違う髪型大会だ」
IA姉はストレート。ただ『犬耳ヘアー』と世間様に言われる、わんちゃんの耳のような癖毛はそのまま。完全なストレートヘア、ミク姉はポニーテール
「毛髪の量なら、ワタシもミクさんも同じようなモノですわ。神威さん。心中お察しします。ワタシも手伝っていただきましたもの」
「うちもだよ、ルカね~さん。何気に、ロンゲ率高いよね~、このメンバー。でもホント。意識するとし~んせ~ん。あ、神威のアニキも治んないんだね、アホ毛~」
Mikiちゃん、彼のアホ毛を再確認
「Mikiピコと同じじゃな~い」
「あ、ほんと~ですね。ぼく、Mikiちゃん、かむさん。わ~い、アホ毛同盟だ~」
ルカ姉、カチューシャでおでこを出す。Mikiちゃん、低い位置でのツーテール。アホ毛は健在。なんだか二人とも、幼く見える。言われてみると、確かに新鮮。なんだか、色々な髪型に出来るのが羨ましくなる。アホ毛同盟のように、アホ毛もないし
「いいなぁ。わたしなんて、後ろハネのクセっ毛。ショートだし、髪型、自由にできるの羨まし~」
「あ、わかるよ~リンちゃん。わたしも同じ~。いっつも同じ髪型だもんね~」
「ほんと、めぐ姉。良かった~わかってくれる人がいて」
悩みの種なのに、めぐ姉と同じが嬉しくて。変に気分が良くなる
「アタシは、リンもレンの癖毛も好きだけどね~」
「自分も、グミサンの髪、い、良いと思うす」
「ありがとうね。あはっ、勇馬君のカチューシャかわいいね~」
部屋へ向かいながらの会話。めー姉の褒め言葉とは、何となく違うトーンの勇馬兄。めぐ姉からのカワイイの言葉。風呂上がりの赤さとは違う赤さが、頬に浮かぶ
「でも、やっぱりいいな~。ルカ姉とか、がっくんみたいなサラサラの髪~。ミク姉もクセないし~」
「結構、お手入れ大変なんだよ~リンちゃん」
「本当ですわ。枝毛に気をつけて、トリートメントは欠かせません」
ミク姉、ルカ姉の言葉。それでも、自分にないものは欲しくなる。羨ましく思えるものは。トリートメント、お手入れ、大人の単語に聞こえてしまう『大人』に憧れ始めたあの頃。その『理由』には気付かずに
「大人っぽいサラサラのロングヘアー。憧れるな~」
頬を膨らませて、下を向いた覚えがある。何故か、気落ちして
「これはこれで、苦労するじゃない、リン。ルカが言うようにな。シャンプー代もバカにならないし。よし、メイコ。これから二次会するじゃない」
「当然、神威君。アタシの部屋集合ね~」
紫様の肩を叩くめー姉
「なら、その時だ。お前達、今みたいに色んな髪型で集合しようじゃな~い。テルとリリも巻き込んで」
「さんせ~い、神威のアニキ~」
「もう、その流れですよね。Mikiちゃん。ぼくも賛成しま~す、かむさんっ」
楽しい彼の提案に、アホ毛が跳ねる、ピコ君、Mikiちゃん。メンバーも活気づく
「オレはできる髪型、少ないけどね。でもノッタ~」
「拙者モ同様でゴザル。が、参加させてイタダク」
カイ兄、アル兄、確かにあまり変化は出来ない。が、浮き浮きと参戦希望。そうして、それぞれの部屋に入って数分
可愛がられる、黄色い少女
可愛がる、紫の青年