はじまりのあの日   作:代打の代打

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流れゆく時間

紫の青年と黄色い『少女』が過ごす時間

少女は変わり始める

少しずつ『成り』始める


時の流れと歌と紫黄色

間を置いて、めー姉の部屋に集合。全員、第一印象の強烈さに爆笑する

 

「あ~おかしい。何それ~」

「ははははは~神威のに~さん」

「かむさんっ、何かかわい~です~」

 

現われた彼。頭の上にリボンとアホ毛。別れた後、わたし達の部屋に借りに来た彼。さっきまでわたしが付けていた、桃色のリボン。笑うめー姉はユキちゃんのような髪型、IA姉はサイドテールの三つ編み。ピコくんはさっきのヘアピン。でも、フリフリパジャマに着替えて『お姫様』状態

 

「メイコ、お前も可愛くなったじゃない。IAも良いぞ、それ。ピコは完全に男の娘~」

 

以前、PVの撮影で、わたしの代役を務めた女性。あの撮影が行なわれたのは、彼が来る以前の事。大人のわたしをイメージした女優さん。あの人がしていたような髪型で現われた彼

 

「ぽ、ぽ兄ちゃんかわいぃぃぃ」

「おにぃ、美人になってんじゃ~ん」

「あにさまがおひめさま」

 

めぐ姉はリボンを付けて、短い三つ編み。リリ姉は、紫の彼がしている、サムライポニーのコピー。カル姉は、頭上いってん縛り。三人の姉達の評判も上々

 

「そこまでじゃ~ないじゃない。どう、リン。いつものリンの髪型真似てみた」

「う~がっくんのばかぁっ」

 

一瞬、その場全員が凍り付いた。でも、怒ったわけではない。多少腹は立った。だって

 

「わたしより美人さんになるなんてずるい~ぃ」

 

言って、破顔して。彼に飛びついた。たちどころに、華やぐメンバー

 

「ビビらせんなよリン。がく兄とケンカ始まるかと思った~」

「うちも、焦った~。仲良し、こよしの二人がさぁ」

 

胸をなで下ろすレン、ミニポニテ。わたしはゴムを使って、彼の『アホ毛』を真似してみる。同様にため息一つ、Mikiちゃんは普段のミク姉ヘアーを真似た物。プラスアホ毛

 

「はは、ごめんな、リン。でも、美人はないじゃない」

「ううん、がっくん美人さん」

「殿、オレもそう思う」

「おれもす、がくサン」

 

わたしは、ただただ楽しかった。が、何か複雑な表情のカイ兄、前髪を縛る。さっきのカチューシャ勇馬兄。何を思っていたかは不明

 

「うん、リンがもとに戻って良かった。髪型だの癖毛だの、気にしなくていいじゃない。その笑顔のリンがいっちば~ん」

 

このイタズラは、彼がわたしを想ってくれていた何よりの証。ほんの僅かの落ち込みにまで、気付いてくれた。心を配ってくれた

 

「やあ、皆さんすでにお楽しみですね~。って神威さ~ん」

「オッジャマでゴザル~。Ohho~神威殿~」

「ふぁっははは~お前達もイイ感じじゃな~い」

「「「「「「「「「「あははっはははははっっははあははあ~」」」」」」」」」」

 

現われた、丸めがね、七三分けの先生。無理矢理、色んな所をゴムで結んだアル兄。爆笑の連鎖が止まらない。そんな華やかな雰囲気のまま、始まった二次会。スナック菓子の封が開けられ、おつまみに手を伸ばす大人組。未成年組はお茶会モード。開けられる、和洋のお菓子、弾む会話。まずは、公演の反省会

 

「ゎたし思うんだ~。神威のに~さんの前世(まえよ)歌~。あれ、相方は、リンちゃんがいいよ~ぅ。ミクちゃんがダメってわけじゃ~なくて」

「あ、確かに~。ぽ兄ちゃんとリンちゃんってアリだと思うな~」

 

お煎餅をつまむIA姉。お茶団子を食べるめぐ姉。反省会という名の、内輪語り。申し訳無いんだけれど楽しい。話しが『その方向』に向かわなかった『この日』は楽しかった

 

「でもさ~、ほんと最近増えたよね~。神威のアニキとリンちゃんのデュエット~。うちも結構好きなんだ~」

「確かにそう思いますわ。急激に増えましたもの。ふふっ、女性プロ様の作為を感じますわ。でも、多いですわね『悲恋』や『別れ』と言った曲も」

 

訝しむよりも、楽しげなMikiちゃん、生菓子のおまんじゅうを食べている。おでこ出しのルカ姉もスパークリング清酒でご機嫌な様子

 

「作為、ですか。善からぬ事を考えている。そうだとすれば、お話しが必要ですね」

 

いつも通りに戻った、キヨテル先生の目が半眼に。全員慌てて諫めにかかる。ただ、紫の彼だけは余裕顔。お茶で作られたという焼酎を飲みながら

 

「テ~ル、ありえないじゃない。俺とリンだ。女主(じょぬし)がどんな趣味か知らんが、ぶっちゃけた話し、ありえな~い」

「ありえないって、な~にがっくん。何がありえないの~」

 

彼の膝に収まるわたし。みたらし団子を食べながら

 

「ん、ああ、リン。ありえないじゃない。俺とリンがケンカするとか、アンドロイドと科学者みたいな別れ方すんの。あんなお別れはしない」

 

おそらくは、話しをはぐらかした彼

 

「あ~、あのPVすっごく悲しかった。何か、本当にお別れしちゃいそうな感じになるんだもん」

 

思い出しても、泣きそうになる。ただ、曲を録音した時とPVでは、設定や世界観が異なる

 

「ソウイエバあの歌は、レン殿、リン殿の持ち歌でゴザッタ。イカニシテ、神威殿とリン殿のPromotionvideo(プロモーションビデオ)が誕生したデゴザルか」

「あのね、アルにぃ、歌を歌ったのは、がくさんが来る前だったんだけどね~」

 

アル兄質問。玉ねぎチップスを手に、事情を話し始めたミク姉

 

「PV撮影になったらね、ど~してもイメージと合わないって。レン君とリンちゃんだと。大人レン君に見立てた、イケメンモデルも当たってみたんだけどね。ど~しても違うって。そりゃそうだよっ、レンくんのがイケメンなんだからっ。モデルさんなんかよりっ」

 

途中で曲がどうのでなく、モデルさんとレンを比べたことに憤慨するミク姉

 

「歌ったおれとしては複雑な気持ちなんだけど、何か分かるんだ」

 

そうなのだ。レン自身が話しを軌道修正。弟自身『歌』とPVのギャップに悩み、苦悩していた。一人きりとは何か。科学者だけが生きている世界なのか、で、あれば何故一人か。そもそも一人だけで生きていけるのか等々。突っ込まれる度に、プロデューサまで苦悩する。そこにやって来た彼。なぜカイ兄でも思い浮かばなかったかは謎だが

 

「設定変えて、がく兄で撮ろうって。プロさん、思いついたって」

 

レンが説明を続ける。設定を変えて収録された映像。だから、今もあのPVは、世間には『外伝』として。でも、ファンの方には『傑作』として。語り継がれている。娘を失った、一人きりの科学者が『娘』を生き返らせようと造ったアンドロイド『心』を持たない、娘の生き写し

 

「一人娘に『成って欲しい』って、科学者が研究をはじめる設定になったんだよね。そのまま『歌劇』にしてさ」

 

カイ兄が説明を受け継ぐ。そして科学者はある日、人形の娘から『奇跡』の言葉を受け取る

 

「お父さん、ありがとう。体をくれて、生み出してくれて『心』をくれて。わたしはおかげで、みんなに可愛がってもらってます。歌を紡ぐ『機械の娘』として。だからお父さん、今のわたしが幸せなように『その子』にも『心』をあげてって台詞。はは、思い出しても泣いちゃいそうじゃない」

「レンが『最後壊れちゃうなんて可哀想だよ』って言ったのがきっかけでね。歌詞通り『永遠に』歌うアンドロイドって事になってね」

 

紫様、やや声が湿っているのは気のせいではない。カイ兄も同様だ

 

「あれの時も大変だったわねぇ。撮影はじめたら、何度も泣いちゃって」

 

そう、世の中には出回っている。彼が科学者を、わたしがアンドロイドを演じ、レンの歌を使用したPVが

 

「役に入りすぎたんだよね。リンが大泣きしちゃってさ『がっくん、お別れやだ~』って。しまいには、殿も泣いちゃって」

 

しっかり覚えられていた、恥ずかしい過去。めー姉、カイ兄が暴露する

 

「も~。さっきから、恥ずかしい思い出ばっかり言わないでよ~」

「けれど、あれがきっかけで誕生した名曲もありますわ。神威さんが歌った、科学者の『想い』の歌」

 

ルカ姉が言ってくれる。そう。彼が歌ってくれた名曲。きっかけは、その恥ずかしい思い出

 

「わ~ぁ、あの歌~。そんなきっかけがあったんだ~。なんだか素敵~」

「あ、そっか。まだIAね~が来る前のことだもんな」

 

今度は、餡なし名物を食べるIA姉がつぶやく。ビスケットをつまむ、弟が言う。そう、彼とわたし。メンバーの中では古参組。みんなが知らないエピソードもそれなりにある

 

「メイコ達を率いてた主がさ、浮かんだって。科学者が、何を想ってたかって。リンのおかげで出来た歌じゃない。それで、研究を続ける決意をするって。笑顔で『生きて』ほしいからって」

 

紫の彼、どことなく嬉しそう

 

「色~んな出来事があって、歌が生まれるんですね~。素敵です~」

「そ~だよ、ピコ君。IAちゃんが来てから、わたしたちのプロデューサー張り切っちゃって『コ・イ・ツ・だ~』とか、狂喜して乱舞しちゃって。そこから、やたらと熟語の曲連発しちゃったもの~」

 

『乙女顔』のピコ君。めぐ姉は、やや困り顔

 

「あ~、ちょっとアヤシイ雰囲気のアノシリ~ズか。あの歌さ、大人組で歌うと、色気やばくね。男女でもすっげ~カンジ変わるし~。特に、おにぃとセンセの組み合わせとか。しょっぱなセンセがセンターとか、ウチ得以外の何でもないんだけど~」

「あ、確かに。歌う人でがらっと変わるよねリリィ姉。わたしは、アレが良かったなぁ。ピコ君とMikiちゃんのダンス。歌の名前も、ロボロボコンビにぴったり。アホ毛ペア~かわいいよ~」

「それ、かるも思う、みくみく。ピコピコとミキミキ、かあいい」

 

リリ姉はあの日、わたしと彼の事には触れなかった。ミク姉、カル姉は純粋に、コンビのお気に入りを言う

 

「ありがと~。確かに、同じ歌歌っても、メンツで雰囲気メチャクチャ変わるよね~。お客さんも喜んでくれるし」

「み~んな格好いいですよぉ。でも、く~る組、せくし~組、きゅ~と組で別れますね~。天使様の可愛さはまた別格です~」

 

褒められて、笑顔で褒め返してくれるMikiちゃん、ピコくん。二人仲良くたべるお麩のまんじゅう

 

「男衆だけのダンスも良いわね~。衣装のお揃い感がハンパないわ~。で~もアレやると、まだまだ小っちゃいわね~、レ~ン。セクシーの中に、一人かわいいのが入ってる感じ」

「うっせ~めー姉。おれだって気にしてるんだからっ」

「ふふふ。それがレン君の魅力の一つだよ~」

 

言われ、拗ねる片割れを、慰めるIA姉。でも、頭を撫でたのがお気に召さない様子。益々拗ねる

 

「お嬢方だけで踊ったヤツも反則的だったじゃない。あれやると、リリが一番タッパ(身長)あるよな。ヒールの効果もあって。カッコだけなら、一番女王様。妹ながら惚れそうじゃない」

「うん。リリ姉すっごく格好いい。やっぱり憧れるな~。わたしもリリ姉みたいに成りた~い」

「アハッ、サンキュ、おにぃ、リン。焦んなくても良くね、これからじゃん、リンは。大体、ちっさくてカワイイ方がいんじゃね、男は。あ~あ、無駄にデカクなっちゃったな~」

 

じゃがいもスティックを食べつつ、小悪魔スタイルのリリ姉。なぜだかちょっと気落ち顔

 

「いえいえ、リリィさん。個人的見解ですが、とてもお似合いでしたよ。まぁ、日常的にあのような格好であれば、好ましくはありませんが『公演』ですから。リリィさんの長身も相まって、力強い美しさを感じました」

「え、マジ、センセ」

 

少し照れながら褒めるキヨテル先生。突如跳ね起きて、先生に詰め寄る。気押されてやや後退する先生、上半身が下がって、リリ姉がかぶさる格好に

 

「え、ええ。本当です」

「やっべ、ちょ~嬉し~」

 

花が咲く。頬が染まるリリ姉。分かりやすいリアクション

 

「そっか~。初めて来た時は、まだ身長、わたしの方が高かったよね。リリちゃん」

「あ、マジだ。いつの間にか、おねぇ超えてるじゃん」

 

先生に乗っかったまま、リリ姉がめぐ姉の方を向く

 

「NYで、手を繋いでいたときは、まだ幼かったリリィさん。素敵に成長されました。時が経つのは早いものです。私が歳をとるのも、当然ですね」

 

少し寂しげな先生に褒められる。リリ姉、益々照れ始める、も、至福の顔。と、キヨテル先生、急に顔を引き締め

 

「ですが、日常のお化粧やマニキュアは、もう少し慎んで頂きたい所ですね。こういう軽率な行動も程々に、です。リリィさん、降りてください」

 

お小言を言う。たちまちにしかめっ面、リリ姉

 

「あ、何それっ、マジの先生みて~な説教じゃん。イイじゃんべっつに~。普通だっつ~の、ウチくらいの化粧なんて普通だっつ~のっ。化粧すんなって~の、センセッ」

「おいコラ、リリ、なんつ~」

 

リリ姉、降りようとしない。衝突と見なした彼、妹を『指導』にかかろうとした声。メンバーにも、緊張感が走る。が、キヨテル先生、完璧な微笑みを浮かべ

 

「まぁまぁ、神威さん。日頃のお化粧のリリィさん、素敵ですよ」

 

紫様『お』という、表情。何を言うのか興味深げ『素敵』の言葉に、リリ姉、途端に頬が朱色。メンバーも、事の流れが変化したことを認識する

 

「ですが時折なさる『小悪魔』メイクは、いただけません。公演時は別として、です。私の見解で申し訳ありません。Adem eptidin bilinur『人は外見で分かる』他国のことわざです」

 

先生微笑み、でも、目は真剣。リリ姉、先生と見つめあう格好

 

「日本には真逆のことわざもありますが。リリィさん『常日頃』の美しいリリィさんでいてください。心まで『悪魔』にならないでくださいね。それだけです、小言を言ってしまいました。申し訳ありません。ただ『担任の先生』からのお願いです」

「担任、センセ、ウチのタンニン」

 

完全に乙女顔のリリ姉、頭に湯気が発っている。気がする

 

「列車の中で仰いましたね『引率の先生』と。皆さんもですが、リリィさん、私のことを『先生』と仰います。私はリリィさんの担任ですよ。数年間、日々を共に過ごした『可愛い教え子』へのお願いです」

 

その言葉を聞き、リリ姉、目が潤む。召され顔で、先生にもたれかかる

 

「リリィさん、リリィさん。ダメですよ、悪戯が過ぎます」

 

苦笑しつつ先生がたしなめるが

 

「ウチしゃ~わせぇ~(幸せ)ウチのキヨテルセンセ~」

 

脱力したように先生にもたれ掛かったまま動かない

 

「お~ぃ、リリ、良かったじゃな~ぃ。これだけ想ってくれる『担任の先生』滅多にいな~い」

 

見上げて観た、紫様、あえてのドヤ顔をしている

 

「あ~ら、先生、やっぱりスミに置けないわねぇ」

 

頬に手を当て、ウィンク、めー姉。キヨテル先生、アタマの上に疑問符

 

「ぅ~わぁ、萌え萌え~」

「わかる~、IAちゃ~ん」

 

萌え上がるのは、IA姉、めぐ姉

 

「で、やっぱ撮ってるっす、ミクが」

「これはいつものことである」

 

目を光らせ、撮影中のミク姉、苦笑いの勇馬兄。あきれ顔のカル姉は珍しい

 

「氷山さん、Makeup(メイクアップ)は女性の嗜みですわ。礼儀作法の一環ですの。ふふっ、ワタシも留学先のMom(お母さん)に教わりましたわ」

 

ルカ姉、艶っぽく微笑みながら。そう、ルカ姉は帰って来た日、薄化粧を纏っていた、香水も。メイクの仕方やその意味は、留学先の英国で教わったらしい

 

「ええ、ルカさん。私も母からそう教わりました。度を超して欲しくない、という、ただの老婆心です。さあ、リリィさん、しっかりしてください」

「はぁ~ぃ、センセェ」

 

先生、眉を下げる。さすがに今度は降りるリリ姉。ただ、先生の横にもたれ掛かって座る。甘えるネコのようだ

 

「ルカ姉、お化粧ってしなきゃならないの。じゃあ、わたしもお化粧、した方がイイのかな」

 

わたし、疑問を口にする。舞台や撮影で化粧を施されることはあっても、日常、しかも自分の意思でメイクすることはなかった。その程度に子供だった

 

「そうですね、リンちゃんくらいのお歳なら、興味が湧くかもしれませんわ。今度教えて差し上げましょうか」

 

最もだ、という表情のルカ姉、に

 

「イヤ、まだ早いとおもうけどなぁ、オレっ」

「ま~だ早えんじゃね~『マセガキ』になんの、関の山ッス~」

 

何故か慌てるカイ兄、ヘラヘラ笑う勇馬兄、小馬鹿にしたっぽい。わたしの心、さすがに『カチン』と音が鳴る。以前も似たような展開があった

 

「カイ様、めっ。りんりんも大人準備、お化粧練習するする~」

「勇馬、ちょっと非道くな~い。リンちゃんだって女の子だよっ、なにその言い方ぁ」

 

カル姉に注意され、カイ兄萎んでゆく。Mikiちゃん怒りながら猛抗議。だけどこの時は、紫様、意外と穏やかで

 

「いいんじゃない、リン。Lady(レディ)の嗜みだ。そろそろ、そんな歳じゃない。ただテルの言うように、品の無いのはちょっとな。センスのイイ、ルカに教えて貰ったら。勇~馬、地元帰ったら『セッキョ~』な~あ」

 

笑いながら言って、頭を撫でてくれる彼『大人』や『化粧』など、今まであまりわたしの会話に上らなかったキーワード。あの日から登場しはじめた。と言って、突然、わたしが変わる訳では無い。彼の対応も同じく。縮み上がる勇馬兄

 

「ぽ兄ちゃん~っ、暴力はダメっ。でも勇馬君もめ~っ。ダメだよっ、あんなこと言っちゃあ。女の子だったら、傷つくよっ。今度言ったら、お姉ちゃん怒っちゃうよっ」

 

めぐ姉、強い口調はもの凄~く珍しい。つり上がる眉も。ただめぐ姉、怒った顔も可愛らしい。勇馬兄をお説教したのは、真摯な気持ちの表れ。わたしを『妹』と見なしてくれる

 

「デリカシーなさ過ぎ。ウチだったら、勇馬引っぱたいてるわ。てか『妹』馬鹿にされて、マジ切れそうなんだけど~ォ」

「リリィさんも、暴力はいけません。勇馬さんの『言葉の暴力』も、感心しませんが」

 

神威の『おねぇ』リリ姉も、目が据わる。引き留めながら、目が細まる先生。みんなから『注意』の集中砲火

 

「サ~セン。マジ、サ~センでした」

 

に、半泣きで頭を下げる勇馬兄。すると紫の彼

 

「ふぅっ、拳骨沙汰になんざしない、めぐ。それに勇馬、お前『良いこと』も言ってるぞ」

 

お師匠様の救け船(たすけぶね)勇馬兄、あ、泣いちゃった。めぐ姉、寄って行って、今度はいいこイイコ

 

「リンちょっと『おこ(怒る)』モードなったかも、だけどさ。ヘタな化粧すると『マセた娘(こ)だな~』なんて思われちゃうわけ、勇馬が言ったみたいに」

 

なでなでしてくれるので、わたしの気持ち、穏やかに

 

「これから『大人の世界』興味出るかもだけどさ、歳に合わない事ヤルと、危ない目に遭っちゃう。そうならないように、気を付けようじゃない」

 

撫で続けてくれる彼、ああ、気持ちいい。いいこイイコされる勇馬兄、めぐ姉に涙を拭いて貰う

 

「歳に『合う』範囲で、覚えていこうじゃない。大人の嗜みをさ。ねぇ、リン。レンも、さ。勇馬、泣くんじゃない。でも、リンには謝ろうじゃない」

 

優しいやさしい紫の彼。その言葉で、ささくれ立った場の空気が、穏やかなものへ戻っていく

 

「ごめん、リン」

「はい、よくできました、イイコ、勇馬君」

 

今度は『弟』を褒めてあげるめぐ姉。抱き寄せて、なでなで。勇馬兄、逆に役得

 

「そうそう、レンくんもオシャレしようよ、リンちゃんと同じ~。がくさんに教えて貰っちゃおうっ『神威道場』繋がりで~」

「素晴らしいアイディアですわ、ミクさん。レン君も大人びてきていますから。男性としての嗜みですわぁ」

 

ミク姉、ルカ姉、弟へのオシャレを提案。喜びに満ちあふれた笑顔

 

「え、あ、うん。ってか、嗜みって何、がく兄」

「レン殿も歳相応でに、でゴザルナ」

 

もちろん、それなりの洒落っ気はあったわたし達、だが『大人の嗜み』は知らない子供。アル兄も肯定してくれる

 

「ああ、整髪料つけたり、香水振ってみたり、な。まぁ、普段はしなくてもいいけどさ。人前に出るとき、そんな嗜みがいるわけ、レン。大人になると、さ。今はまだムリする必要無いけど、徐々に教えちゃおうじゃない。Mousseとか、Fragrance(ムース・フレグランス)買ってあげるから」

「わ、マジ、やった。教えてね、がく兄」

 

むむ、さっきから、弟ばかり、彼に何か貰っている。自分だって和菓子を買って貰ったくせに、あの日のわたしは面白くない

 

「え~っと、一番身近な『大人の男』はオレなんだけどな~」

 

カイ兄、やや魂が抜けた状態、悲しそうに聞いて来る

 

「え~っ、だって、さっきリンちゃんを子供扱いしたじゃな~い。カイ兄は~」

「それではお任せできませんわ。レン君が『大人の嗜み』を知る第一歩ですもの」

 

あの日のわたしでも、頷ける反論。カイ兄、ぐうの音も出ず。深海に沈んでゆく

 

「ゎたしの背、レンくんもリンちゃんも超えちゃったもんね~。大人っぽく成ってるよ~、二人とも~」

「IAたんは、小っちゃくてかわいいぜ」

 

テト姉、珍しくIA姉を撫でている。だんだんと酒宴めいてくる二次会。甘党のキヨテル先生、早々にお酒を離れ、和菓子に手を伸ばす。リリ姉はその横で、紙コップにお茶を注ぐ。めー姉は、しょげるカイ兄につきっきり。MikiちゃんとIA姉はガールズトーク。めぐ姉、勇馬兄の看護中。このあたりかな、わたしは思う。今にして思うと、この時からめぐ姉達が、上手くみんなの注意、逸らしてくれたのかも。わたし達から

 




確実に変わる、黄色い双子

変わり始める、黄色い少女

変わり始める、周りの空気

まだ変わらない、二人の距離
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