恒例となったスイーツパーティー
経験がなかった初体験
わたし達が、暮らす土地のお菓子屋さん。明日から三日の間、ケーキの特売を行なうという。TVから、聞こえるコマーシャル。ケーキと言えば、誕生日やクリスマス。でも、わたし達、メンバーの中ではあの日のイメージも強いんだよね。画面に写し出される、ブッシュ・ド・ノエル。また丁度良く、招かれてしまう。記憶の図書館に。あの日、彼が作ってきてくれた、チョコレートの大木。メンバーのチョコレート交換日。14歳、正式なバレンタインデーの五日日後。スケジュールを合わせ、メンバーだけのバレンタインをするあの日。図書館の扉を軋ませ、わたしはあの日へ降りてゆく―
「楽しみだよな~、今日。おにぃど~んなスイーツ作ってくれんだろ~」
メンバー全員。一週間、糖質とカロリーを制限。走り込みの量も増やす。特に、神威道場もハードメニューになるので、始めたばかりのレンは、重度の筋肉痛に苦しんでいた。全員3㎏は減量して迎えるバレンタイン。シェアハウスへ集合した女性陣
「少しは、男衆にサプライズしたいじゃないの」
と、めー姉の発案で。前日、彼曰くの『お嬢組』一同で買いに行ったチョコレート。それぞれ、送る相手を確認する。女性陣だけで交わされた会話。全員同じってわけにはいかない。やっぱり、贈る人の事を想うと、好みや見た目、味を気にかける。レン、ピコ君、勇馬兄、キヨテル先生は、アル兄の運転でショッピングモールへ。朝早くから、チョコやお総菜の買い出し。交換用のチョコの調達。天使様は、朝から神威の家。紫の彼を『手伝っている』のだと思っていた、この時点では。マンションではカイ兄がこれまた、早朝から、腕を振るっていた
「だけど、情けないよね~うちら。アニキ様二人のスイーツに腰、ひけてさ。チョコ作れないってど~なのかね~」
「だって、カナワナイもんね~。でも、何だかんだで幸せだよ~。タダで、美味しいスイーツ食べほ~だい」
苦笑いでMikiちゃん、こめかみを掻く。ミク姉は楽しげに身体をゆらす。そうなのだ。紫の彼が、ケーキを作ってくれたあの日以来。カイ兄も、スイーツを作ってくれるようになった。そして、完全に甘味の祭典と化した、メンバーのバレンタイン。二人の三つ星パティシエールが作ってくれるスイーツ。それに腰が退けて、作ることが出来ないのだ。ちなみに、お菓子作りに専念してほしいので、二人はチョコ免除。作ってくれるスイーツで充分なので。贈り合うメンバーも増えた。作るお菓子に集中させてあげたい。ただし、半分は『自分たちの都合』でもある。だって、美味しいお菓子が食べたいもの
「ま、贈る心よ。アタシは料理系、そこまで得意じゃないし。だからカイト、料理上手になってくれたのよ。感謝と愛では誰にも負けないわよ。アタシのカイトにはと・く・に」
左手を腰に当て、右手は人差し指を立てる。小首をかしげ、ウインクのめー姉
「ゎゎゎ~あ、おのろけですね~、め~様~。なんだか萌え萌え~」
「あ、そっか、カイトは、メー姉のために料理スキル磨いたんだ~。ラブラブじゃん。ま、家族のためっつ~のもあんだろ~けどさ」
お惚気にときめくIA姉とリリ姉、めー姉
「嬉しかったわぁ、はじめの頃~。仕事少なかったけどね、遅くなった日とかね、帰ってくると『用意してあげる』って。作ってくれたわ、夜食」
「わたしも~。カイ兄、いっつもご飯作ってくれた~」
思い出を膨らませる、姉二人。わたしも同様、兄のご飯に育ててもらった一人だ
「美味しいご飯、カイ兄にありがとうだねっ。がっくんもっ、いつもご飯、作ってくれて。今日スイーツパーティーできるのも、二人のおかげ~」
「へっ。ボクは、初めてコレをやった日、忘れられていたぜ」
不満げなのはテト姉、ヤンキー座りになる。そう、あの日、気まぐれに帰省していたため。メンバー全員、綺麗さっぱり忘れていた
「ごめんてば、アネキ。だって、メモ一枚で帰っちゃうんだもの。それに、神威君。アネキにチョコ作ってくれてたじゃない」
帰ってきて、皮肉を言うテト姉に、チョコラスクを渡していた彼。ちなみにテト姉、ちゃっかり自分にもご褒美チョコを買っている。あの日も今日も。やや高級な物を
「いきなり帰る。テト様、めっ」
「ぐおお~、カルたんにも怒られた~。完全にボクが悪いじゃね~か、うお~」
頭を抱えるテト姉
「奔放すぎるのもいけませんわ。その報いです」
ルカ姉がトドメを差す。小石を蹴る動作でいじけるテト姉。今度は慰めるめー姉。シェアハウスに来るのは、完成後の見学会以来。マンション、その次に神威家。集まることが多い順。全員集合で騒げる、広い空間があるから。と言って、けして狭くないリビングスペースは木目調。そこに、決まり事や、掃除当番表などが貼られている。見学会の時には無かった、生活感。なんだかそれが、とても良い。オモシロイのは『家長より今月の一言』という掲示板
「アルのだんながね~、考えたんだ~。キヨテル先生から一言って~」
さっき、IA姉が説明してくれた。今月の一言は『甘い物の取り過ぎに注意しましょう』その前で、大量のチョコを見せ広げ。尚のこと可笑しい
「チョコ贈りあう人も増えたよね。でも『特別』チョコ贈っちゃう人もいるのかな。わたしは、ぽ兄ちゃんには『特別』かな~」
「おねぇ、ブラコン極めてるな~。ダイジョブかこれ~」
乙女モードのめぐ姉を、苦笑いで見つめるリリ姉。でも、紫の彼とめぐ姉『いろいろな意味』で『こじれた』ことはない。はずである
「あら、リリちゃんは卒業したの、ブラコン」
チョコを、一纏めにして、袋に詰める。イタズラっぽく聞く、めー姉
「うんにゃ~全然。ウチもきっと一生ブラコンだわ。ぶっちゃけ、兄妹弟(きょうだい)全員好きだし。こんな最高のおにねえ(おにぃ、おねぇ)居ねえわ。でも、それとは違う格好良さとかあんじゃん。素敵な人~とか~」
「かるも、きっとずっとぶらこん。合わせ技でしすこん。あにさま、あねさま、りゅ~ちゃんイエイ」
豪快に笑うリリ姉。その頬が僅かに赤い。サムズアップ、珍しいリアクションのカル姉
「あら、リリィさんにも居ますのね、そんな方が」
「へへっ、ま~ね、ルカ。秘密だ・け・ど~」
「わ~、ちょっと気になっちゃうな~」
『も』を強めに言う、ルカ姉。リリ姉共々、頬を染める。無邪気にミク姉、女子トーク。本日、わたし達はお揃いのワイシャツに前開きセーター、ラッフルスカート。首元には、色違いのリボン。何となく『中高生』に見えてしまうルック。女学生が集まった感。男性陣は、お揃いのワイシャツに前開きセーター、スラックスだった。やっぱり中高生的。こういう『お揃い』をたまにやる、仲良しメンバー。前日に話し合って。ただ、ピコ君は女性陣とお揃い。まあ、わたしと弟は、リアル中学生だったけど
「リンちゃんは、誰かにあげるのかな~あっ『特別』チョコ」
やや、イタズラッ子モードのMikiちゃん。その眼差しは、ちょっとだけ引っかかったけど、問いかけに
「ん~がっくん。いっつも優しくしてくれる感謝もこめて」
即答するわたし。場にいた全員『やっぱり』という微笑み。僅かに漏れる、桃色の吐息と冷やかしの声。何故そんな扱いをされたか、あの日のわたしは不思議に思う
「あ、リンちゃん、それならお化粧、してみないカナぁ」
めぐ姉『妙案』との顔つき。京の都から帰って、結局忙しさで有耶無耶になっていたメイク術
「ちょっとおめかししてね、ぽ兄ちゃんに渡すの、チョコレート」
「ゎ、グミちゃんナイスアイディア~。リンちゃん、お化粧しようよ~ぅ」
「まぁ、素敵な提案ですわぁ、グミさん。お化粧してみませんか、リンちゃん」
素晴らしい提案を受けるわたし。IA姉、ルカ姉、楽しげに聞いてくる。ただ
「ん、ぅん~、ちょっと恐いカモ。がっくん、どう思うかなぁ」
急な変化に気が引ける。化粧をした自分を、どう観てくれるかが、やや恐い。と言うか、彼の名前が自然に出てくる辺りで、何故気付かない
「大丈夫、凄いお化粧はしないからっ。今日みんなお化粧してるけど、そんなに濃いメイクしてないでしょ」
「あ、そうなんだ、気付かなかったぁ」
めぐ姉、子供のように楽しそう。きっとこれも『応援』の一つだったんだろうけど、あの日は全く気付いていない。女性陣、確かに常日頃お化粧するけれど、普段のそれは極薄いもの。化粧するようになって、メイクの有無に気付いたっけ
「良いと思うわよ、リン。この機会にしてみたらぁ。バレンタインデーに、大人への・だ・い・いっ・ぽっ(第一歩)ぅふふふ、素敵な展開ねぇ」
ルカ姉よろしく、妖艶に微笑むめー姉。頬に手を当て、わたしを見つめ、変化を後押し
「ん~、じゃあしてみようかなぁ、お化粧。あ、でも、イキナリはできないかな、難しそ~う」
その、めー姉の言葉、わたし勇気を出す。大人への変化、第一歩。めぐ姉の歓声と、ルカ姉の笑み。みんなが、楽しそうにわたしの周りに寄ってくる
「大丈夫ですわ、今日はワタシが施して差し上げます。これから、少しずつ教えて差し上げますわ。どの様なMakeにいたしましょう、グミさん」
形の良い顎に人差し指をあて、思案顔のルカ姉。微笑みは絶やさない。めぐ姉も笑顔のまま
「今日するメイクが、重要だねっ、ルカちゃん。リンちゃんの初メイク、ど~しよっかなあ。似合うメイクで、お化粧道具も揃えてあげるね、リンちゃん」
後日、言葉通り、日常メイクの道具、姉達によって揃えて貰うわたし。本当の姉妹以上に優しくして貰う『妹』のわたし
「かる、ていあん」
カル姉、手を上げ一歩前へ出る
「素朴めいくがいい。りんりん、お肌すっべすべ。生かさないともったいない、ない、もったいな~い」
言って、フィギュアスケート選手のように一回転するカル姉
「ゎたしも同じ意見~。リンちゃんのほっぺ、お餅みたい。すべすべぷにぷに、おもち、もちもち~」
わたしの頬を両手で包むIA姉。もちもちと挟まれて、すりすりされる。ああ気持ちいい
「アイラインとリップでいいんじゃね。ファンデ、シャドウは要らね~と思う。ウチは、してるけどさ、アイシャドウ。ユニ(ユニフォーム)から習慣みたくなちまったから」
リリ姉にものぞき込まれる。わたし、姉達にされるがまま。それが非常に心地良い
「リリね~さんに、うち賛成。どっちもバッチリしなくて良いと思う~。リップの色は、ルカね~さんの髪の色くらいのがいいかなぁ」
言って、ルカ姉の綺麗な髪に、指を絡めるMikiちゃん
「それは、Mikiさんも同じくらいの色ですわ。髪の毛の色。うふふ、綺麗な髪ですね」
「る、ルカね~さんのが綺麗だよぉぅ」
振り向いて、やっぱりMikiちゃんの髪を撫でるルカ姉。妖艶なルカ姉に、照れるMikiちゃん。ちょっとだけ『百合』な構図。ルカ姉、Mikiちゃん、同じく綺麗な薄桃の髪。Mikiちゃんの方が、やや濃いめの色味
「マスカラも要らないわね、普段はアタシもつかわない。あ、でも、ビューラーでまつげは整えようかしら。さてリン、始めるわよ~」
「リンちゃんのお化粧デビュー、動画残しておかなきゃっ」
「お化粧道具、ゎたしので良いかな~、リンちゃ~ん」
めー姉に、ヘアピン、リボンを外される。ルカ姉、自分が着けていたカチューシャを外し、わたしの髪を上げてくれる。オデコまるだし。スマホで撮影をはじめる、いつものミク姉
「うん、IA姉、ありがと~」
「まつげやるなら、眉も整えてあげようぜ、すこ~しだけよう」
テト姉も楽しそう、やっぱり女子だ。まず化粧水を顔に塗ることを促される。これくらいは普段からやっていた
「はい、次は乳液も塗っておこうね。リンちゃん、お目々瞑って~」
めぐ姉、乳白色の液体を両手に付け、わたしの顔に塗ってくれる
「さ~、ルカちゃん、バトンタッチ~。後はお願~い」
「は~ぃルカちゃ~ん、お化粧どぅぐ~」
はじめに、少しだけ、眉が整えられる。IA姉が持ってきてくれたお化粧セット、ルカ姉が曲を口ずさみ手にする
「さぁ、リンちゃん、座ってお顔を上げてください」
破顔しながら、わたしを見るルカ姉。わたし、ぺたんこ座りにすわる
「ルカ姉、すっごく楽しそう~」
「ふふっ、楽しいですわぁ。リンちゃんにお化粧してあげられる日が来たんですもの。すこ~し、目を瞑ってください。まずはアイラインからからですわ」
「ん~」
ブラシを使い、アイラインをひいてくれる。スタッフの『メイク』さんが施してくれる感触とは違う。プロかそうでないか、という違いでは無い。今、大人の『おめかし』をしている気分
「はい、一度目を開けてください」
目を開ける。細かいところを修正してくれる
「ど~お、リンちゃん」
手鏡で、わたしを映してくれるめぐ姉。薄くひかれたアイライン、何となくお目々ぱっちり。な気がする
「ルカ姉すごい。わ~、変わった気がする~、めぐ姉。でも、何でかなぁ、撮影とか舞台でもお化粧するのにさ。なんだかそれより、ずぅっと変わった気がする」
素直な感想。バッチリに『過剰』が付くほど施されるのに、ステージメイク。その化粧よりも『良い感じ』に思える
「あのね~、舞台とか、撮影ってさ、その状況に『映える』化粧をされるんだぁ。ファンデーションも、やたら色合い極端だよね」
「おにぃ達も、V系(ヴィジュアル系)みたいに白かったりするだろ。逆に日焼けメイクで黒く塗るとかさ~」
Mikiちゃん、リリ姉が、メイクの違いを説明してくれる
「今日のお化粧はね、リンちゃんの魅力を引き出すためのメイクなんだよ。だから、舞台のメイクとは全然ちがうの」
「かわいいりんりんを、さらにかわいくするめいく。ルカさまなら、間違いなしなし、ななふっし~」
過剰なまでに、褒めてくれる『姉』達。わたしって、どれだけ幸せ者なんだろう
「カルさん、ありがとうございます。責任重大ですわね。リンちゃんの魅力を引き出して差し上げませんと。うふっ、神威さん、覚悟してくださいな」
「ケケケケケ、年貢の納め時だぜ、かむ~い。そろそろ『ソレ』だと自覚させてやろうじゃね~か」
紫様の名を出す二人。何故彼なのか、あの日は思い至らない。ただ、艶めかしい表情のルカ姉と、魔のオーラ笑みのテト姉。その『差』は多少、気になった
「さ、今度は、そうですね『伏し目』に。少しだけお顔を下げてくださいな」
「うん、こんな感じかなぁ」
「上手だよ~、リンちゃん」
ルカ姉の指示に従う。それだけで褒めてくれるめぐ姉。ビューラーを使って、眉毛も整えてくれるルカ姉。最もあの時、器具の名前は知らなかった。メイクさんがお化粧してくれるときは、ひたすら退屈だった。お化粧自体に感心なかったから。器具だの化粧品だのの名前など『右から左』だった
「痛くはありませんか、リンちゃん」
「大丈夫~ルカ姉」
眉毛、少しだけ引っ張られるような感覚。やっぱり違う『初めて』の感覚。興味を持つだけでこれだけ感覚が変わる。人間って都合の良い生き物だ
「さぁ、目を開けてください、お顔をあげて。まぁまぁ、自身で施していますのに~。リンちゃん、なんて愛らしい」
「わ~あ、お目々だけでも、すっごく可愛いよっ、リンちゃん」
黄色い声をあげる姉達、再びめぐ姉、手鏡を翳してくれる
「わ、こんなに変わるんだぁ、まつげ」
普段の自分が少年漫画主人公の『目』なら、今の自分は少女漫画のヒロイン『まつげ』
「どんどん可愛さ上げちゃお~、次はリップ~。IAちゃん、こんな感じの色ってある~」
自分の髪を指さすMikiちゃん。取り出される、数種の口紅
「ピンク系ゎ、この四種類~」
の中から、さらに厳選、IA姉
「本当に薄めが良いよね、自然な色合い。あ、でも、少~しだけグロスは欲しいかも。そういうのあるかな、IAちゃん」
「じゃぁ、これが良いかな~。どぉう~、グミちゃ~ん」
手の甲に、口紅を付けて、色合いを見せるIA姉
「あら、良い色ですわね、リンちゃんに似合うと思いますわ」
「あ、わたしも賛成~。きっと可愛くなるよ~」
ルカ姉達が華やかに合う色を選んでくれる。ミク姉、撮影をしつつ、口紅選びに参加
「さ、リンちゃん、リップをひきますわぁ」
「ん~おねが~ぃ」
顎の下に手を添えて、リップブラシで口紅を施してくれる
「マニキュアも付けちゃおっ、薄~いやつ。リップと同じくらい、淡いのが良いね、リリね~さん」
「あ、いいじゃんMiki。ユニフォームん時はリンの髪と同じ色だからな。今日はもっと違う感出そうぜ~」
「ゎたしも賛成~。マニキュア、これで全種類~。選ぼ~」
Mikiちゃんリリ姉の案で、マニキュアも施されることに。IA姉が見せ広げ色選びを始める。わたしはルカ姉に何度かブラシをあててもらい
「はい、リンちゃん、最後にこうして下さい」
「ん」
ルカ姉、唇をあわせ、リップの定着を促す仕草
「ま~あ、堪りません~ん。如何ですか、皆さん、ワタシとしては文句なしの仕上がりですわぁ」
「あ、かわいい~っ、さすがルカちゃんっ。わわわぁっ、リンちゃんがかわいいい~」
周りの姉達に感想を求めるルカ姉。両手を握りしめ、萌え上がるめぐ姉
「ぅ~ゎ~あ、かゎいいよ~う、リンちゃ~ん」
「あら~、いいわねえ。自然なメイクだけど、印象変わったわぁ」
絶賛してくれるIA姉、うっとりとめー姉。ミク姉は撮影を続けながら
「かわいいよ~リンちゃん。こっち向いて、はぁい、笑って~。そこで手を振って~。そ~ぅ良いよ~」
「ミク、オマエ『何とかカメラマン』の才能あるんじゃね。リ~ン、良いじゃ~ん。きっとおにぃも喜ぶぜ~」
出される指示に従ってしまうわたし、やや困る。リリ姉、ミク姉に呆れ、わたしには悪戯っ子の微笑み
「これはよいものを見た見た、家政婦が見た。うふ、りんりんかわいい」
「さ~リンちゃん、ご自分の感想は~」
「これで甘えられたら、暴走しちまうぜ」
頬を染めて、カル姉。Mikiちゃんが手鏡を手にわたしを映し出してくれる。テト姉の表情は見えない、声は楽しそうだ。表情をうかがい知れないのは、鏡の自分を見ていたから
「ぅゎぁ」
ため息。変わるのね、お化粧って。僅かに眉の形が整えられ、形良くなっている。いつもより、大きく見える、目。うすいアイラインで、目元がくっきりしたおかげ、整ったまつげは上を向く。ツヤを増した唇、ぷるぷると輝いて見える。そのどれもが上品なのは、ルカ姉の手腕。IA姉はじめ、姉達の趣味の良さ
「な、なんか自分じゃないみたい。へ、変じゃ―」
「「「「「「「「「ないっ」」」」」」」」」
変じゃないと、即座に返してくれる姉達
「大丈夫~、可愛くなってる、リンちゃんっ」
「うふふ、自信を持って下さいな、リンちゃん」
「そうそ~う、ルカ姉がしてくれたメイクなんだから~」
後ろからはめぐ姉に肩を抱かれ、前からはルカ姉、わたしの肩に両手を置く。それを撮影しながらミク姉
「さぁ、もう一段階、かわいさ上げちゃおうっ。マニキュア塗っちゃえっ。おねが~い、ルカね~さ~ん」
「任せて下さい、あら、良い色ですわぁ。リンちゃん、お手々を出して下さいな」
公演の時も施されるマニキュア。ただ、いつもの黄色では無く、撮影に合わせたキツイ色合いでも無く
「あ、ほ~んと。IAちゃん、良い色持ってるね~」
「りんりんにもお似合いあい。IAさま、はいせんす」
めぐ姉、カル姉に褒められて、嬉しい笑顔のIA姉
「はいっ、後は乾燥させるだけですわ」
薄桃色、控えめにパールが入ったマニキュア
「じゃあ、乾かしてる間に、ちょっとだけ髪の毛いじろうぜ~。Miki、アイロン持ってね」
「あ、あるある、リリね~さん、取ってくるね~」
「アイロン~」
首をかしげるわたし。ハウスの個室へ駆けゆくMikiちゃん。リリ姉が
「ストレートパーマ、かけるアレだよリン。たまにかけるだろっ、撮影とかでさ」
教えてくれる。姉達が進めてゆく、わたし改造計画
バレンタインの初化粧
姉達が進めてくれる
大人への第一歩