初めての施し方
あの日、もらったリボン
あの日と違う、結び方
サラサラヘアーのMikiちゃんがアイロン取りに駆けていく。その道具を持っている理由『梅雨時、髪が捲くんだ~』っと言っていた
「じゃあじゃあ、リンちゃん。おリボンもね、さっきしてた可愛い大っきなのじゃなくてね、ちょっと大人なリボンが良いと思う。そうだ、大切に使ってるの、あったよね」
「あ、がくさんに買って貰ったリボンだよね、グミ姉。綺麗な金色の刺繍が付いてる~」
以前、買って貰ったリボン。彼に与えてもらったもの、大切を極めて使っている
「おりぼん、りぼんぼん。りんりんに、お似合いの刺繍りぼん」
常日頃から、わたしはリボンを結んでいる。ユニフォームからの繋がりで。ウサミミなどと呼ばれる、大きめに結ぶリボン。今思うと、殊更に子供っぽさを強調した結び方。リボン結び改造企画。笑顔のめぐ姉発案。楽しげミク姉、カル姉、リボンを結ぶ仕草でノリノリ
「おリボンね、何時もと違う結び方してあげる。マンションに戻った時に、持ってきて」
「あのリボン、結構前のヤツなのに、今も超綺麗だよな~」
そう、綺麗なのは『ここ一番』の時にしか結んでいないから。年に数回、結ぶだけ。それくらい大切に使うリボン
「は~い、ね~さん、アイロン持ってきたよ~。ね、ね、今リボンの話ししてたでしょ、リンちゃんの。ちょっと聞かせて、なんの話し~」
「おう、Mikiたん。ボクが戻って来たばっかりの時によぅ。温泉パーティー行くって話があったんぜ。ただ、リンたんが怪我しちまってよ~。かむいと留守番ってことになってよっ」
途中からテト姉ブラックに変身、非常に楽しそうに
「ぅんふぅ、そういやぁ、あん時もかむいのヤツ『事案』だったぜ『俺のせい』とか理由つけてよう。ずううううっとリンたん『だっこ』してるんだぜ『今日はリンの召使い』とかホザイテよぉ。あいつ、最強レヴェルのへ―」
「テトお姉様、リンちゃんは足を痛めていました。移動するときだけでした『だっこ』されたのは。あの行為は神威さんの、純粋な優しさです、わ」
ルカ姉、テト姉の方を向いたので、表情を読み取れない。が、押し黙るテト姉
「『俺のせい』って、どういう事~。神威のアニキ、なんかしちゃったの。なんでリンちゃん、怪我しちゃたの~ぉ」
不思議そうな顔をするMikiちゃん
「ああ、おにぃとPV撮ったときにさ、初めて高めのヒールはいたらし~んだ、リン。んのせ~でさ、ダンスでコケちまったんだと」
「右足首の靱帯損傷、全治一週間。お膝も擦り剥いちゃってね、ザザーっと。うう、口に出したら痛そ~う」
思い出話を引き継ぐのはリリ姉。ミク姉が、怪我を想像して縮み上がる
「ウチらは温泉で重音さんもてなしてさ、おにぃとリンが留守番ってことになったんだわ。出がけにしょぼくれてたリンが、帰ってきたら、ごっ機嫌でさ」
続けるリリ姉。姉達にまで、この話が浸透しているのは、わたしがあの日、過剰に繰り返し語ったため。でも、思い出を語るならば、自分の気持ちも込めなくては。語り出す、わたし自身
「がっくんとね、はじめて二人だけで遠出したの。そんなに遠くって程じゃないケド、昔のわたしには『遠出』だったな~。みんなでたまに行くよね、大型モール。あのモールに行ったんだっ」
「あ、ちょい遠出する時のモールだね。プチ贅沢するときの」
彼との思い出は、どれもが幸せに満ちている。Mikiちゃん、リリ姉にアイロンを渡す。リリ姉、わたしのセットを開始
「あのお店でね、買ってくれたのリボン。わたし、脚、怪我してたからね、車椅子まで押してくれて。おっきな絆創膏、膝にしてたから、ちょっと恥ずかしかったけど」
姉達の笑顔が優しくなる。わたし、思い出話が楽しくなる
「『頑張って仕事した勲章』って言ってくれて『その勲章へのご褒美』って」
「MikiちゃんMikiちゃん、リンちゃんが『オシャレ』する時、たま~に結ぶ綺麗なリボンがあるよねっ。あのリボンの事なの~」
ミク姉、撮影を続けながら。メモリーは『ギガ』級のSDチップ内蔵スマホ。あの日、居合わせたメンバー達によって、解説されるリボンの話し。思い出話に花を咲かす
「あ、あのリボン、そんな逸話があったんだぁ。うっわ~素敵ぃっ。だって、そんな優しくしてくれたんでしょ~、神威のアニキっ。抱っこして運んでくれるとかっ」
「ぉ話し聞くだけで萌え萌え~。ぅわ~、小っちゃいリンちゃん、車いすに乗せて、押すに~さん。何だかおとぎ話聞いてるみたぃ~」
Mikiちゃん、自分を抱く格好で、IA姉、両頬を挟んで。萌え上がる二人と会話しながら、わたしにかけられるストレートパーマ。カチューシャをルカ姉に返し、リリ姉、優しい手つきで施してくれる
「IAちゃ~ん、うちは『執事様』って思っちゃったよ~。神威のアニキがね、リンちゃんに傅いて(かしずいて)ね『お嬢さま』って~。ねぇねぇリンちゃん、他に神威のアニキとお話しない。うちが知らないお話し」
「ゎたしも聞きた~ぃな~、何かないかなぁ~リンちゃ~ん」
「んん~」
Mikiちゃん、IA姉が勢いづく。はじまりの日、歌合わせは秘密だ。京の都で、結構語られてしまった思い出もある。少し考えて、なんだ、本日にふさわしい出来事があったじゃないか
「あのね、がっくんのチョコ嫌い、治してあげたお話し」
「え、アニキ、チョコ嫌いだったの、うそ~」
驚くMikiちゃん。当然だろう、今その『元』チョコ嫌い、紫様の手によって作られている『チョコレートにちなんだスイーツ』
「マジマジ、Miki。おにぃチョコ大っ嫌いだったん。見向きもしなかった」
「あ、でも理由聞いたこと無かったね、リリちゃん」
リリ姉の声が頭上から。めぐ姉も知らない、紫様がチョコ嫌いだった理由
「ぁとで聞いてみましょ~か、に~さんチョコ嫌いだったわけ。リンちゃ~ん、続きゎ~」
「二人だけで、初めて留守番したことがあってね~」
幼かった頃のわたしが、彼と二人きりで過ごした、初めての日。バレンタインの翌日。あの日の思い出を語る。京の都で、神威の姉に話したように。今日のパーティーのきっかけの思い出話し。終わったとき、トキメキの笑顔で
「へえ~、神威のアニキとリンちゃんて、やっぱ運命がかってるね~。な~んか素敵~」
感想を言ってくれるMikiちゃん
「ゎたしも思う~。小っちゃいリンちゃん、神威のに~さんにチョコあ~ん。考えただけで萌~え萌え~」
「うあ~、それゼヒ撮影したかったな~」
まぶしい物を見るように微笑むIA姉、両手を頬に。ミク姉、頭を抱えいつものクセを出す
「ふぇへへへへ~。幼女リンたんのあ~んで、チョコ嫌いが治るぅ。化粧しなかった方が良いんじゃね~か。あいつやっぱり、真性ろ―」
イタズラ顔、軽口をはじめるテト姉。そこで鳴る、めー姉のスマートフォン
「はい。あ、先生、もうすぐ着く。はい、わかりました。ええ、用意、始めておきますね」
『先生』という言葉で何故かひれ伏すテト姉。その言葉の先、何を言おうとしていたか。あの日は分からなかった
「メー姉、電話センセ達から~」
「ええ、もう、会場の準備始めて良いそうよ。あら、リリィ、良いセットねぇ。リ~ン、可愛さが増しマシになったわよ」
通話を終えてわたしを観る、めー姉、笑顔で
「あざ~っす、メー姉。毛先だけ、無造作ストレート。他んとこは、リンのクセをいかしてみた~、っつ~カンジ。仕上げのヘアピンはこんな感じにっと。あ、今は地味ピンだけどさ、マンション行ったら、オシャレヘアピンに変えようぜっ。さ~どぉだっ、リン」
「りんりん、すご~くプリティ~。さすがりりねえさま、りんりんヘアピンもよそいきいき」
手鏡で見せられる自分。見慣れた髪型では無く、毛先がまっすぐ。ヘアピンで前髪も、いつもと違う分け方に整えてもらった。部分部分の跳ね髪がオシャレ、っぽい『ぽい』が付くのは、自分の『オシャレ』感性を信じて良いかが、分からないから
「あ、あのね、ゎ、解んない。似合ってるかな、わたし、え~っと」
今の自分の事を『かわいい』などと言っても良いのか。ミク姉の歌に、そんな気持ちを表した歌があったハズ
「何を言ってるんですか。今日の、いいえ、リンちゃんは『いつも』可愛らしいんですから。本日は『特別に』可愛いんです。自信を持って下さい」
ルカ姉、胸の下で腕組み。慈愛の微笑み
「ウチらが、いくら『カワイイ』っつって、もハナにかけね~のが良いとこだよな。でも、今日は自惚れちまえっ。今のリンは『超』カワイイんだっ」
後ろから、リリ姉に抱きしめられる。リリ姉と頬がっくっつく
「仕上げはおリボンだよ。リンちゃん、今日は今までで、いっっちばん可愛いよっ」
「ゎたし史上、最高にかわいいリンちゃん降臨だよ~ぅ」
めぐ姉、IA姉、にも抱きしめられる。わたしって、本当~に『得』なポジションだよね
「じゃ~、リンちゃん込みで『準備』しに行こう、みんな~。リボンとヘアピンでリンちゃん完成っ。マンション行かなきゃぁ」
「さ~準備しちゃいましょっ。スイーツパーティー、今日は甘い物祭りよ。リンがさらに甘~くしてくれるかしら~あ」
Mikiちゃん、マンションの会場準備と、わたしのリボン結びをかける。めー姉『何か』に期待を込める。シェアハウスの戸締まりを確認。一瞬の移動だけど外履きに履き替え、外に出る。すると、辺りに漂うのは、魅惑の香り。甘い、甘い良いにおい。マンション、神威家から放たれる芳香。甘味への欲望喚起、悪魔のささやき。いや、神威家では、天使様も何かお手伝いされている。ならば『天使様の誘惑』か
「ぅ~、このニオイだけで期待が倍増だよね~」
「わかる、かるかる、IAさま。かるも楽しみしみ~」
「香りだけで虜よね~。カイトも神威君も、たいしたものだわ」
賑やかに向かう女性陣。期待に、早足。寒いからというのも、あるのだけれど。各『家』に備え付け、専用スリッパに履き替え、玄関ホールを抜ける。やっぱり急ぎ足でリビングへ。大テーブルの上を偵察。まだ何も用意されていない。とりあえず、チョコの袋を置く
「リンちゃん、まずはおリボン結んであげる。持ってきて欲しいかな」
「ヘアピンもな、リンのセンスに任すから~」
「分かった、取ってくるね」
「それなら、コロンもつけちゃおうかしら。アタシも持ってくるわ~」
めぐ姉に促され、自室へ向かう。リリ姉、ヘアピン交換に念を押される。めー姉も部屋へ。一人、姉を離れて自室、チェアーの中『大事なもの』をしまう、洋服の一角。リボンケースの奥、手にする美しいリボン。彼との大切な思い出と共にしまってある『懐かしい』などと、思い出にひたる。束の間。思い出リボンに、見劣りしないヘアピンを選ばなければ、そう思い、手にしたのはバレッタ。完全よそ行き、白銀、羽根を象った(かたどった)バレッタヘアピン。取り敢えずみんなに見て貰い『合格』を貰ったらこの髪飾りを付けよう。そう考え、手に持ってリビングへ足を向ける
「がっくん、の部屋だったよね。この部屋」
かつて、彼が過ごした部屋の前、独り言。衝動的に、開ける扉
「どうした、リン入って来ようじゃない」
「がっくっ―」
微笑んで、手招きする彼の『まぼろし』を見る。そんな『幻聴』を聞く。ああ、彼はどう思ってくれるだろう、わたしを見て。胸が高鳴る、と同時に、同じ規模の不安感。気に入って貰えなかったら、という心配。リボンと共に持ち合わせ、階段を下る。廊下の鏡の前、何となく気になり、身なりを正す。最もこの行為、全くイミは無かったけど。この鏡の前、彼がリボンを結んでくれたことを思い出す。ああ、あの日結んでくれたから、わたしのリボンは『必然』になったのか。そんなふうに思う。リビングへ顔を出す。何事か、会話をしていためぐ姉に手招きされる
「はい、お願い、めぐ姉。ね、ヘアピンこれで良いかなぁ、リリ姉」
めぐ姉に、リボンを手渡す。傍らのリリ姉に、髪飾りの『合否』を聞いてみる
「お、良いの選んでくるじゃん、リン」
「ぉリボンとィメージぴったりだよ~」
のぞき込むリリ姉の合格通知、IA姉の保証も付き、万全
「さぁ今日は、いつもと違う結び方」
結び目を大人しく、結ばれるリボン。左耳の上に傾倒させ、いつもと違う結び方。ウサミミ結びでなく、蝶々結び。結び目は小さく『たれ』は長めに結ってくれる。前髪の分け方も変えて、ヘアピンを留めてくれる。心持ち、おでこの露出が控えめ
「はいっ、リンちゃん完成っ。絶対かわいいっ、文句なしっ。見てみて~みんな~ぁ」
めぐ姉に押し出される。歓声があがる辺り、どれだけわたし、幸せ者
「かわいい~っ。リンちゃん、にっこり笑って、こっち向いてぇ~」
またいつの間にかスマホ撮影、していたミク姉に促される
「かんぺきかんぺき。りんりん、かあい~い。これはよいよい」
「きぃ~ゃ~ぁっ、これでチョコ貰ったら、うちも、もうダメ~」
カル姉、Mikiちゃんに抱きまわされる。これでさっき整えた身なり、多少リセット
「ふふふ、あんまりかき回したらダメよ~。神威君に見せる前に。さ、リン、こっちへ来て」
めー姉、テンション沸騰の二人を注意。ただ、抱きまわされたおかげで、わたし、緊張がほぐれる。めー姉に寄って行くと、良い香りを振りかけられる。再び、服装を整えてくれる
「はい、完成よリ~ン。かわいいわぁ、ほら、自分で観てごらんなさぁい」
ドレッシングチェアーの前、鏡に映し出される自分。観たことのない自分。いつもと雰囲気の違うわたし
「ぅ、め、め~姉、ほ、ホントに変じゃない」
「自信を持ちなさい。過信はダメだけどね。可愛いわよ」
両肩を二度、軽く叩いてくれる。きっとこれは、めー姉の『応援』
「さ~、リン。手ぇ洗って手伝に行こうぜ~。可愛いって、心配すんなっ。楽しみだ~ぁ、まずはカイトをKOかもな~」
寄ってきたリリ姉に手を引かれ、気持ちが楽になる
「キッチンに行くのが楽しみだね、リリ姉。どんなケーキかなぁ」
大好きなリリ姉に抱きつかれる『楽しみ』の意味が違うわたし
「あらあら、ほんっとに姉妹に見えるわ~。髪の毛の色も相まって。仲良しさんね~」
めー姉に笑われながら、キッチンへ向かう。入った先、カイ兄、真剣な眼差しで、ケーキをデコレーション。オーブンでも、何やら焼かれている真っ最中
「カイトお疲れ様。もう、見たまんまおいしそうじゃないの」
「あ、め~ちゃん。あ、みんなも。ってことは、テルさん達が帰ってくるのかな」
気付いて、顔を上げる、エプロン姿のカイ兄。ただ、ケーキに気を取られ、わたしの変化に、この時点では気がつかない
「カイ兄、やっぱり似合ってる~」
「カイトのに~さん、萌え萌え~」
「ははは、何か、リアクションに困るね」
着けているのは、白いフリルエプロン。所々、過剰なほどフリルが付いたドレスデザインの。声を上げた、ミク姉とIA姉が最近贈った。調理の時、黒の腰巻き前掛けをする、紫の彼。キッチンでゼヒ並んで欲しいと。どんな意図か『多少』分かる。まあ、この日、そのツーショットは無かったけれど。それを身につけてくれる兄、冗談が通じすぎている
「うん、カイトアニさん。ついさっき連絡あったの、もうすぐ着く~って。うっわ~超おいしそう、コレ何~」
デコレーションされた、美しいケーキに興味津々なのはMikiちゃん。だって、本当に美味しそう
「いちごのレアチーズケーキ。殿が、越後の有名いちご用意してくれてさ。ハウス物だけど、すっごく甘いよ。味見しちゃった、いちご。もう少しで完成。あとは、食べるまで冷やしておくだけ」
「すご~い、これ絶対美味しいよ。ありがと~カイ兄」
衝動的に声が出るわたし。微笑んで、作業に戻る兄。作業に集中しているため、やっぱりわたしの変化に気付かない。するとタイミング良く、焼き上がりを告げる電子音
「このにおい~。もう一つは、焼いた方かな~カイトのに~さん」
目を閉じて、香りを堪能、IA姉。デコレーションを終えたカイ兄が首を回しながら
「よっし、かんせ~い。IAちゃん正解。ベイク・ド・チーズケーキ。今年はチーズしばり。こっちはもう、リビングに運んで良いよ~」
「ゎ~い、運びま~す」
「わたしも手伝う~IAさ~ん」
オーブンを開けると、放たれる、焼きたてのケーキの香り。食事で戟闘を繰り広げる漫画のごとき破壊力。ミク姉と、オーブンから二人がかりで取り出す。キャスターに乗せる。ある意味では拷問だ
「では、ワタシは、飲み物の容器を準備しますわ」
「ウチも。取り皿とか、ケーキナイフ出しとくかっな~」
「じゃ、ボクは酒だぜ。かむいが、漬けたウォッカは鉄板だな。抹茶とコーヒーのリキュールも出そうじゃねぇか」
みんな、徐々にテンションが上がっていく。最も、前日から、みんなの気持ちは高揚しているけれど。それに拍車がかかる。それぞれの品をキャスターに乗せる。わたしも、舌休めのソルトピーナッツ、クラッカーや漬け物を手に、リビングへ。向かっていくと、何やら楽しげな声が漏れている。つまり誰か帰ってきている。変化した自分への評価、どう下されるか不安。タジログわたし
「大丈夫ですわ、リンちゃん。さあ、行きましょう」
「ぜぇ~ったい大丈夫っ、さあ見せつけちゃおっ。可愛いリンちゃんを」
ルカ姉に手を引かれ、Mikiちゃんに押されて、入るリビングルーム
「あ、ただいま~。タイミングばっちりじゃんっ痛っ」
「今、帰りました~。わあ、おいしそうです~ぅ」
「戻ったス。うっわ、美味そうなのが来るっ」
大テーブルに、買ってきた飲み物を並べていたのは、弟とピコ君。室内用、耳当てとぽんぽんの着いたニットキャップ姿の勇馬兄。ケーキを見て、目が輝く。が、急に動いたレン、筋肉痛に襲われたようで呻く
「あ、みんなお帰りなさ~い。カイトのに~さんね、もぅ一つぉいしそうなの作ってくれてたよ~」
「おかえり、レンくん、ピコ君も~。勇馬兄、先生と、アル兄は」
キャスターを押すIA姉。まだ、二人の姿が見えない。聞く、ミク姉。その答えは、本人さんの声で返ってきた
「あ、今戻ったでゴザル。車をGarage(ガレージ)に入れていたでゴザルヨ」
「簡単なおつまみや、お菓子も買って参りました。アルさんだけにお持ちさせるのは、忍びないので」
袋やケースを手に、リビングに来る先生とアル兄。二人は袋を置き、手を洗いに向かう。袋から、スナックやおつまみを取り出す、レンとピコ君、勇馬兄。三人は、先に手を洗ったらしい。飲み組のため、海鮮オードブルや、スパイスポテトも買ってある。天使様を意識した、子供オードブルは、ナゲットやソーセージ。戻って来た先生、わたしを見て
「ああ、リンさん、大変に素敵ですね」
変身に、真っ先に気がついてくれる。破顔し、自分の目を指さして、アイラインを分かってくれる
「だろ~センセッ、さっすが解ってる~」
わたしの変化に気付いたこと、それがキヨテル先生であったこと。どちらにも喜ぶリリ姉。駆け寄って、先生の背を叩く
「あ、本当だ~、リンちゃん良いよ、わぁかわいい。良い色です~」
「オオ、リン殿、Berry ℃-uteでゴザル」
この声を呼び水に、気がついてくれる、ピコ君、アル兄。ただ、気付いてくれる人が居る一方
「ん、あ~リボン変わってんだ。何か洒落っ気出してるじゃん、リン」
その程度にしか、変化に気付かないレン。そう言う弟よ、整髪料で髪、整えたな。香水も付けただろう、紫様に頂いた
「あ~、ヘアピン変えたんだ、リン。へぇ~」
勇馬兄も、髪飾りの変化に気付くのみ
「ええ~勇馬そんだけ~」
「れんれん、めっ」
「「は」」
Mikiちゃん、カル姉、お叱りに、眉をひそめる両者。全く気付かない
「どんだけ~って感じだな。まいっか、これで後は、おにぃと天使様だけだな。主役を待つだけ~」
今度は呆れ顔のリリ姉。キヨテル先生、アル兄、手を洗いに行く
「テンションがあがって来るぜ。お、ツマミもあるじゃね~か。よっしゃ、飲みながら待とうぜ、メイコちゃん」
「良いわね、アネキ。ウィスキーも持ってきといたわ。甘い物に合うものね」
言うが早いか、あたりめやチーカマの袋を開ける。飲み始めてしまう姉二人。銘々皿や、スプーン、フォーク。それぞれ、並べられる。高まっていく、祭典への期待感。わたしは緊張感。彼がどう思うかへの。レン、勇馬兄のように、気付いてさえ貰えなかったら、という焦燥感。気に入って貰えなかったら、という不安感
「さすがピコきゅん、気付いたね。カラオケの電源、入れちゃお~」
「良いですね~、Mikiちゃん。マイクも準備しま~す」
何故、今まで無かったのか、不思議で仕方ない。カラオケセットは、京都から帰って、一週間後。めー姉の提案で購入した。今までのリク合戦は、簡単にギターやキーボードでメロディーを奏でていた。紫様、カイ兄やアル兄が。まあ、それも凄いのだけど。周辺に民家はない。騒音の心配なし。アホ毛ペア、Mikiちゃん、ピコ君が向かう。二人のアホ毛、♪マーク
「お、みんな帰ってきたね。これで後は殿達だけか」
「あ、カイトさん。今ね、ぽ兄ちゃんから連絡入ったの。取りに来てほしいものがあるって。わたし行ってくるね。カルちゃんもお願い」
「めぐねえさまに続きま~す」
カイ兄がリビングにやってくる。同時に入った連絡。めぐ姉とカル姉、自宅へと向かう。その前に
「リンちゃん、ぽ兄ちゃん来たらね、まずチョコ渡そうね」
「りんりん、ふぁいと。いのいちばんに、あにさまさま~」
姉二人、言われてわたし、さらに緊張
「楽しみだよね~。今年、殿がどんな物作ってくれるか、さ」
「あら、やっぱりカイトも楽しみなのね」
彼が作ったコーヒーウォッカ。飲みながらご機嫌、めー姉。隣に寄り添いに行く、カイ兄の肩に手を回し、抱き寄せる
「もちろんだよ、め~ちゃん。殿のスイーツ、絶品だからね」
「カイトさんのも絶品ですよ~。どっちも食べられて幸せです~」
「ありがとう、ピコ君」
徐々に、テーブルに集まるメンバー達。椅子は、別のスペースや、暖炉前のソファ。Mikiちゃんとお揃いのニーソックスを履くピコ君。めー姉の方に、頭を傾ける。お礼を言うカイ兄、本当に嬉しそう
「わ、メイコさんと、カイトのに~さんがいちゃいちゃするの。やっぱり良い~。眼福ガンプク~」
「ふふふ。さりげなく、お姉様に甘えますわね、カイト兄様」
IA姉は楽しそう。ルカ姉に指摘され、真っ赤になるカイ兄。慌てて離れようとするも、益々、抱き寄せるめー姉。頭を撫で回す。ほっぺにちゅう。爆発寸前のカイ兄。めー姉に甘えに行ったため、わたしのお化粧にまだ気付かない
「お待たせじゃな~い」
「「「「おまたせしました~」」」」
大きな箱を手に、包みを腕に下げて入ってくる、彼。お揃いのセーラー服を着る天使様は手ぶら。めぐ姉、カル姉は、おぼんを持っている。天使様を意識してか、慌てて離れる、兄と姉。わたし、その声に硬直
「お、オレ、ケーキ取ってくるよ。冷やしてあるやつっ」
「お、お願いカイト」
真っ赤な状態で、キッチンへ向かう兄。同じく真っ赤な姉、立ち上がって大テーブルへ
「お前達~、今年は天使様からのお恵みがあるじゃな~い」
「ぽ兄ちゃんの指導で、わたし達のために作ってくれたんだって。すっごく美味しそうだよ~」
「みんなが、初めて作ったお菓子。感謝の心でうまうまうま」
「え、マジっすか、なんかすっげ~嬉しい。サンキュ~な、みんな」
おぼんの中に入ったお菓子。それは、天使様が作ってくれたもの。とてつもないサプライズ。お手伝いではなかったのだ。珍しく、率先してお礼を言う勇馬兄。その腰にしがみつく、笑顔の天使様。勇馬兄メロメロ。メンバー全員も頬が緩む、わたし以外。わたし、硬直する身体がほぐれない
「にいさまにおそわって」
「ユキたち、つくってみたの」
「おいしくなかったら、ごめんなさい」
「ガ、ガンバッてミマフタ」
口々に告げる天使様。めぐカル姉の手によって並べられたそのお菓子は
「チョコムース。間違いないと思ってさ。お利口さんが、頑張ってくれたじゃない。人数分あるってさ~。あ、リリとテル、二人は特別製。天使様の感謝のお印~」
「「「「キヨテル先生~、リリちゃん、ありがと~」」」」
告げる彼。リリ姉と先生のチョコムースは生クリームが山盛り。クラッシュのチョコや、ウエハースも乗っている。軽いパフェ。天使様のお礼の言葉を聞き、召されそうな二人。紫様、持っていた箱をテーブルに載せる。ムースを置き、寄ってくるめぐ姉
「さぁ、リンちゃん。どうかなっ、ぽ兄ちゃん」
わたしの肩を抱き、紫様の前へ押す
気付かない人達
気付いてくれる人達
気付いてくれるかな
気に入ってくれるかな