はじまりのあの日   作:代打の代打

34 / 65
乗りたいの、一緒に

乗りたいの、その場所に

お仕事が入った

そんなに小さくありません


ふたたびわたしの指定席

又お人形屋さんのCMが流れてる。ああ、でも、メーカーが違う。それに、今度は五月人形だ。五月人形か。ああ、また思い出してきちゃった。私が14歳、五月人形を飾り終えた後の神威の家で。ゴールデンウイークまで一週間というあの日。飾り付けを終えて、みんなでお茶をしていた時だったな。もう、今日はしょうがないでしょう。はい、また伺いました、記憶の書庫さん。入らせていただきますよ。ちょっとごめんあそばせ―

 

「はい、はい。ん、わかりました、話し合っときます。ええ、全員揃ってますから」

 

メモを取り終わり、スマホを切るカイ兄。話しぶりでは、どうやらプロデューサーからのようだ

 

「ど~したの、カイト。プロさん達からでしょ~」

「うん、めーちゃん。殿組のプロさん『お前等仲良すぎ』だってさ。ちょ~どいいから、聞いて~みんな。お仕事依頼だよ~。古都以来の、フルメンバーで~」

 

彼お手製の柏餅、兄謹製のきな粉ちまきをつまむメンバー。仕事と聞いて、テンションが上がる。個々の仕事も増えて『メンバー勢揃いでお仕事』というのは、中々に難しくなっていたから、尚更嬉しい。そのフルメンバー、今日は、みんな午後のオフが重なった。五月人形飾っちゃおうと、神威の家に集合した

 

「仲良すぎ上等~。仲良くなきゃ勤まらないじゃない、俺達は。全員集合の仕事って半年ぶりじゃない、カイト。で、主からの内容は」

 

わたしの横に座る彼、お茶を啜りながら聞く。京の都から約半年、結局彼の膝には座れずにいる。と言って、彼の側から離れようとはしないのだけど

 

「あのね、柏餅やちまきのアピール。歌よりはそっちのが強いみたい。有名な歌い手さんに、商店街を盛り上げてほしいってさ。少し、売り上げが落ちてるみたいでね、無理を覚悟で依頼してきたらしいよ。予算が少ないから、講演料がって」

「あら、カイト兄様。それは、ワタシ達にうってつけのお仕事ですわ」

 

立ち上がって説明する兄に、嬉しそうに応えるルカ姉

 

「そうですよ~。誰かを癒やせたら、重荷を外せたらっていうPROJECTなんですから。無料でも良いくらいです~」

「拙者らの歌で、商店街ガ活気付けば、何よりでゴザルナ」

 

両手を、胸の前で組むピコ君。アホ毛が今日も♪マーク。勢いよく、力こぶを見せるアル兄

 

「だめだよピコきゅん、うちら一応プロの歌い手なんだから~。報酬は頂かないと」

 

ウィンクMikiちゃん

 

「お、Mikiって、そんなにガメツかったんか~」

 

イタズラっ子モードでリリ姉が返すと、Mikiちゃんは微笑んで

 

「ううん、リリね~さん、講演料は要らなくてもさ『ナニカ』で報酬。例えば一年間、月一で、豚まん送ってもらうとか」

「それ、いいかもね~。食費が浮くよ。まあ、冗談はさておいてっと」

 

可笑しそうに笑うカイ兄、仕事内容を告げようとする

 

「アピールは良いけどさぁ。歌わないの、カイ兄」

「「「「おうた、うたいた~い」」」」

 

今度はやや、不満げなレンが聞く。歌い手としての自尊心なのだろう。天使様は朗らかだ

 

「もちろん、歌うよ~。オレら歌い手なんだから。歌うなって言うなら、声かからないよ。その中でね、今から言うメンバーは特に重要なんだ」

 

メモ用紙を片手に、立ったままカイ兄。重要事項を伝えるのと、裏腹な微笑み

 

「これから呼ぶ人は、お稚児さんの衣装で行列して貰うからね~」

「呼ばれた方は、その場に立ってお返事しましょう」

 

カイ兄の言葉に、キヨテル先生が提案。お稚児さんと言うくらいだ。天使様で間違いないのだろう

 

「まず、リュウトく~ん」

「はいっ」

 

右手を元気に挙げて立ち上がる。予想通りの名前が呼ばれる

 

「次にユキちゃ~ん」

「は~い」

 

同じくユキちゃん。リュウト君の横、ゆっくり立ち上がる

 

「いろはちゃ~ん」

「は~い、やった~」

 

両手を挙げて、跳ね上がる

 

「オリバーく~ん」

「ハァイ」

 

いろはちゃんの隣、左手を挙げ、立ち上がる

 

「え~、それからね~」

 

まだいるのか、と疑問に思った。もう、自分たちは子供じゃ無い。わたしも、きっと片割れも、勝手に思っていた時分だったから。少なくともわたしは、もう『子供いないじゃないか』と思ってた

 

「え~、リンとレン~」

「えぇっ」「はぁっ」

 

身を乗り出す。片割れと、声が重なる。不満な声が

 

「最後に、IAちゃ~ん」

「は~い。やった~嬉し~な~」

 

IA姉、パーカーの余る袖、回しながら手を上げる。微笑みながら立ち上がる。小柄でかわいらしいIA姉。似合うだろうと選ばれた。後にプロデューサーから聞かされた。これだけ対応に差があるのも『大人と子供』の顕著な差だ。今だったら分かる

 

「ちょっと待ってよ、カイ兄。わたし達もお稚児さんするの~」

「おれら、もうそんなガキじゃね~し」

「いや、オレに言われてもさ。依頼主さんからの要望だし。それに、今のって、IAちゃんにも、天使様にも失礼だよね」

「「あ」」

 

わたし達を窘める(たしなめる)カイ兄。言われてみれば、全てが失礼な物言いだった。IA姉にも、天使様にも、依頼主さんにも

 

「ご、ごめんIA姉」

「おれ、そんなつもりで言ったんじゃ」

「ぅふふ~。な~んとも思ってないよ~ぅ」

「「みんなもごめん」」

 

わたしもレンも、慌てて頭を下げる。IA姉は、ほわほわしたその穏やかさで意に介さない。天使様は、何の事だかわからない

 

「ま、多感な時期だ。しょうがないじゃない」

「あ、それからね、殿にもお願いしたいって」

 

多少の理解を示してくれる紫様、も選ばれる。メンバー全員、意外そうな顔で彼を見る。彼自身、呆けた顔。彼の稚児衣装。想像するだけでかわいらしい、が

 

「ん、俺も稚児すんの。いいけど、さすがに変じゃない」

「ああ、殿にはね、あのカッコで先導して欲しいって。ユニフォームの侍姿。端午の節句だからさ。簡単にでも、出陣行列みたいなこと、したいんだって」

 

稚児を先導する、侍。なるほど納得がいく。同時に、彼と仕事が出来ると思い、単純なわたしは楽しくなる

 

「はっははぁ、分かった。粋なこと考えるじゃない、依頼主様。それ、やろう。商店街のために。で、場所は何処、カイト」

「うん、中華街とか港が有名なあの町『ゼロヨン』ってレースもしてるらしいよ」

 

彼との出陣行列を想像して、気持ちが高揚していくわたし。完全に子供だ。さっきの文句を言う資格などない。ただし、言葉には出さない。また、変な視線を受けても堪らないから

 

「じゃ~、そこまでは、又みんなで新幹線かな~」

「ううん、ミク。商店街の最寄り駅までは行けないんだ、新幹線だと。首都圏、オレ達が歩くと、今は迷惑かけちゃうからね」

 

そう。ありがたいことに、わたしたち。一団で出歩くと、それなりの注目を受ける。京の都は、周りの観光資源に目が行っていたおかげや、分散行動で助かったけれど。やはり移動は混雑を避けるため、チャーターしてもらったバスや、ジャンボタクシーだった。混雑させてしまっては、申し訳無い

 

「プロデューサーの話しでは、駐車場が近くにあるらしいから」

「なるほど。俺達で、車移動ってわけだなカイト。土産積めるし、むしろ良いじゃない。なら、今のうちに車割りしちゃおう」

「そうですね。いつも、当日に談義してしまうのも不毛です」

 

この時も、テト姉は運転手を外してもらえた

 

「じゃ~、いつも通り、一号車は俺が運転しようじゃない。一緒に乗るヤツ~」

「なら、ゎたし、神威のに~さん号で~。リンちゃ~ん、一緒に乗ろ~よ~ぅ」

 

IA姉にさそわれる。そう、いつもなら、いの一番にそう宣言しただろう。でもあの日は違った

 

「う~ん、どうしよっかなぁ。又、変な視線貰うのもやぁ(嫌)だしな~」

 

その眼差しが気になって、どうしようか示唆をする。もちろん、心の底では乗りたいのだ。彼の車に。そしてもう一つ『乗りたい』ものがあった

 

「リンちゃ―」

「リ~ン。悪かったと思ってるわ。だけどね―」

 

悲しげな声をあげる、めぐ姉。それを遮り、ため息交じり、告げるめー姉

 

「拗ねるのはやめて。アタシはね、別に神威君とリンが仲良くするの、ダメなんていってないでしょう」

「そ、そうだよリンちゃ~ん。わたしもね、羨ましいと思ってるくらいだよ。ぽ兄ちゃんと仲が良くって」

 

めぐ姉も、我が意を得たと加勢、身を乗り出す

 

「だよな~。おにぃに、存分に甘えりゃあ良いじゃん、リン」

 

リリ姉、大福を頬張り苦笑いをうかべながら

 

「リンちゃん、ユキもね。お家(シェアハウス)にいる時は、ひやま先生と、いっつも一緒にいるんだよ」

「マヂかっユキたん。いっつも一緒って」

 

きっと、変なことを想像しただろうテト姉。鼻息が上がる、が

 

「うん、テトちゃん。ねむるときとか、おふろとかいがいはね。お家のリビングにいるときは、いっつもいっしょ~」

「かむさんとリンさんの次によく見る光景ですよね~」

「特に、シェアハウス組のうちらはね~。先生と仲良しユキちゃん」

 

当然のことを告げるユキちゃん、嬉しそう。今日はピコ君を膝に乗せるMikiちゃん、楽しそう。面白くなさそうなテト姉

 

「ユキほんとはね、リリちゃんもいっしょがいいな。先生とリリちゃんが『ユキの』おにいちゃん、おねえちゃんなの。ぽ父さんがお父さんで、カイトさんは『お母さん』メイコちゃんが、一番上のおねえちゃん。ユキ、ひやま先生とリリちゃんだぁ~ぃ好き」

 

ユキちゃんの言葉に涙ぐむ、キヨテル先生とリリ姉。メンバーも心が温まる

 

「オレお母さんなんだっ、はっはは~」

 

嬉しそうに笑う、カイトお母さん

 

「良いわね~それ。VOCALOIDPROJECTで家族。ボカロファミリーって感じねぇ」

 

めー姉も上機嫌。みんなが同じ思いであったろう。その場のメンバー

、微笑みが連鎖する。と

 

「へへへへへ。ユキたん、それはもしや、先生たんとのきんだ―」

 

古都での出来事を、忘れたのか。懲りないテト姉、軽口を言い始める。さすがに、この軽口は心無い。多分、誰しも思った。すると

 

「重音さ~ん」

 

眼鏡を外す先生の、氷点下の声。目が、相当に鋭い。さすが『氷山』先生。周囲全員凍り付く

 

「―っ」

 

声を出さずに、満点の姿勢で土下座をするテト姉。ただ、耳を澄ますと、あばばば、テスト、あれ、などと言って錯乱。恐怖におののいている

 

「どうしたの、テトちゃん」

「何でもね~よユキ。気にすんな」

 

先生の膝の上、小首をかしげるユキちゃん。リリ姉が撫でまわして誤魔化す。眼鏡をかけ直し

 

「では、二号車は私が運転させていただきます」

「センセとウチ、天使様達(みんな)できっまり~」

「「「「きっまり~」」」」

 

天使様が駆け寄り、たちまち、先生、リリ姉の周りに花が咲く。エンジェルフラワー、百花繚乱

 

「じゃあ、がっくんの車に乗って良い」

「悪いわけナイじゃない」

 

言って、撫でてくれる。やっぱり、この手は温かい。ささくれ立った気持ちが、温和になってゆく。頑(かたくな)に張った意地の氷塊、溶けて消えていく。だったらついでに重要事項、これも聞いてしまった方がいい

 

「ん~と、ついでにね。膝に乗ってもいい」

「いいんじゃな~い」

「うふ、じゃあ失礼しま~す」

 

さっきまでの事など、無かったように乗りに行く。久々の膝に乗せてもらえるのが本当にうれしい。収まって思う。やっぱりここは、わたしだけの特等席だと

 

「はは、リン。何だか、オレ達もしっくりくるよ、その方が」

「何時も見ていたユエ、何かが抜け落ちたような感じでゴザッタ」

 

カイ兄を始め、メンバーまでもが『ほっ』とする。そんな表情だった

 

「やっぱりこ~でなくちゃ、神威のに~さんとリンちゃんは~」

「だよね~、IAちゃん。わたしも安心しちゃったぁ」

「何か自分もスッキリしたっす」

「リンに振り回されるカンジで、シャクだけどな~」

 

心から微笑んでくれる、IA姉。胸の前で、袖ぱたぱた。心底安堵の顔、めぐ姉と勇馬兄。言葉通りの顔をするのは片割れ。そして

 

「じゃ、おれもがく兄の車に乗る」

 

意外な申し出を口にする

 

「こんな風に、みんなが振り回される二人がさ~。いつもどんな風~にしてるか気になるじゃん。オレも乗らせてがく兄。そういや、長距離移動の車の時、がく兄と一緒のこと、あんまなかったし。IA姉も良いっしょ~」

「どんな風にっても、いつも通りじゃない、レン。ま、いいよ。断る理由、ないじゃない」

「うっふふ~、レンくんも一緒だね~」

 

完全に、弟を見る眼差しの彼、IA姉。もしかしたら弟は、少しでもわたしを困らせようとしたのかも知れない。振り回した張本人を。その目論見(もくろみ)は、残念ながら失敗する

 

「あ、じゃ~わたしも一緒に乗って良い~がくさ~ん」

「ワタシも同乗させていただきたいですわ、神威さん」

「問題ないじゃな~い。はい、一号車ケッテ~イ。可愛い子に囲まれちゃったじゃない。またハーレム車内、超俺得」

 

『可愛い子』の中に、弟も含まれている辺り彼らしい。が、決定を宣言する彼の声に

 

「えっが、がく兄」

 

慌てる弟。そう、最近二人の姉は、レンのペースをかき回す事が多い。弟は、きっとわたし以上に気を遣っていたのだろう。二人と接することに

 

「どした、レン。いいじゃない、仲良しおねぇ二人と一緒で」

 

レンの中の事情がどんなものか、今でも正確には分からない。ただ、困っている事には気付く。双子ナメルナ。紫様は気付かない。わたし、困らせようとした片割れに、助け船は出さない

 

「レンくん、嫌ですか。悲しいですわ、近頃、避けられている気がしますもの。少し前は、良く一緒にお休みしましたのに~。好きでしたわ、レンくんのだきまく―」

「わあ゛~、あ゛あああああ~」

 

ルカ姉の言葉を、必死に遮る片割れ

 

「ほ~んと、ルカ姉。なんだか寂しいな~。ついこの間まで、お風呂で洗いっ―」

「うぎゃ~あ゙~あ゙~―」

 

さらに大声を張り上げる弟。メンバー全員爆笑。墓穴を掘ってしまったようだった

 

「はははははっ、こっちはコッチで複雑そうだね。どう着地するんだろう」

 

苦笑いのカイ兄の言葉。どうやら、みんな同感なようで

 

「でもこっち、着地点あるんすか、カイサン。テレマーク入んねぇ」

「いっそ、着地点ぶっ壊した方が上手くいくんじゃね~の」

 

薄笑い、多少茶化す表情、勇馬兄。リリ姉は、滅茶苦茶に愉快そうな声

 

「あっはは、かもね。さて、3号車はオレ。誰乗り合わせ~」

「アタシは鉄板よね~カ・イ・ト」

「「「「新婚さ~ん」」」」

 

仲睦まじい、カイ兄、めー姉。はしゃぎ出す天使様

 

「あっはっ。新婚じゃないってば、みんな」

 

確かに新婚ではない。訂正するミク姉。まぁ、新婚と言って差し支えないと思うけど。楽しく、車割りが決まったその日の晩。帰ってきたプロデューサー三人と、簡単な打ち合わせ。珍しく食事を共にしながら話しを聞く

 

「まずね~、前日にね~。商店街に入って貰って、見学~。主催者様と打ち合わせ。衣装合わせも、その時にするよ~」

「んで、中央駅に移動してゲリラCMな。公(おおやけ)の許可は取ってあるぜ~ぇ、ハデ目にカマシテ来いよ。っはははははぁ」

「稚児行列してぇ、商店街でライブ~。お菓子やちまきの直販は、歌い手さんの握手付きでってぇ」

 

仕事が取れたことへの祝杯。お酒でご機嫌のプロデューサー三人。前日商店街を見学するのは、魅力を知るためだ。店々の良い点を、人々の魅力を、肌で感じなければ言葉になるはずがない

 

「お店に来て貰えなければ、意味ないものねぇ。重役だわ~」

「少しはアピールになれば良いね。オレ達メンバーでさ」

「客寄せの大役、しっかり勤めようじゃない」

 

座卓の上、料理を運ぶ、めー姉、カイ兄。あの日は、神威家に入り浸り。紫の彼を筆頭に、歌い手達の手によって、運ばれてくる料理様。賑やかになる円卓。を、観たプロデューサー

 

「ってゆうか、これみんな、カイちゃんとがくちゃん作ったの~。プロ級ね、うっわ~ゼ~タク~」

「おめえら、派手な食生活送りやがって。天狗になってねえだろうな」

 

驚きと喜びが混じる女プロさん。怪訝さと怒気を含む声の神威プロ

 

「「「「「「「「「「え」」」」」」」」」」

「「「え」」」

 

その贅沢という言葉に、驚くメンバー。同様に驚く、プロ三人。ただし、驚きの種類が違う。当然であった

 

「贅沢ったって、主らよ。俺たちが、普段食べてるものじゃない。材料費なんか殆どかかってない」

 

もちろん、季節で手に入る物、入らない物はあるけれど。常日頃食卓にあがり、食べているものだから

 

「だって、タケノコご飯だよ、高級品だよ」

 

の、女プロさんの声に

 

「いや、今朝、裏庭で採った物なんだけど」

 

応えるはめー姉。そう、季節になれば、全員総出で、タケノコを掘る。竹林があるこの丘で。そのタケノコを、近所の(と言っても一㎞先)農家様の物品と物々交換出来るほど実ってくれる。柔らかくて美味しいと、評判のタケノコが

 

「こ~いう自然の恵みで生きて行けるように、この土地を選んでくれたんじゃないんですか」

 

カイ兄の問い返しに

 

「う、ん。ま~あねぇ」

 

目が浮いている、わたし達のプロデューサー

 

「お~い先輩(ぱいせん)適当に人目につかねぇ、僻地選んだつってたじゃねぇか、あ~ん」

「ああ、それ言わないでよ~」

 

適当だったらしい。まあ、結果オーライだから良かったけれど。でももし、ここが痩せた土地だったら、わたし達の食糧事情は苦しい事になっていたかもしれない

 

「え~何それ~。テキトウなのかよ~、ひっでぇ。おれら、自分で野菜だって育ててるのに」

「後で入った身分っすけど、僻地扱いはひでえっす。痩せた土地だったら、飢えてたかも」

 

不満が溢れる、片割れと勇馬兄

 

「ホント良かった~。お野菜が育ってくれる土地で~。がくさんとがんばったカイがあるよねぇ」

 

ミク姉は安堵の言葉。紫様と姉の提案で、始められた家庭菜園。野菜が美味しく育つ土地で良かった。実はいま、椎茸も育てている

 

「今日、ごはんに使ってるお野菜、家庭菜園で作ったものですよ~」「農家さんと物々交換したものも入ってま~す。ぉ味噌もみん~なで作りましたぁ」

「神威さんとミクさんの指導で、育てているんです。メンバー全員で協力していますよ」

 

めぐ姉、IA姉、キヨテル先生の言葉に驚くプロデューサー三人

 

「え~、味噌造ってるの~」

「マジか。こんだけの野菜、作ってんのかよ。ならこの、ツマミに最高なイワナは」

 

『味噌造り』に驚く初代プロ、神威プロの問いに

 

「アルさんがさっき釣ってきた物で~す」

「お魚釣り、上手ですなんです~ぅ」

 

返すMikiちゃん。ピコ君も上機嫌で言う

 

「近くの川は水質が良い故、美味い川魚が釣れるでゴザル」

「カル達のお家、お味噌発酵に最適テキ」

 

プロデューサー曰くの僻地、わたし達には『最両宝の山』以外の何でもない

 

「本日の晩ご飯は、裏庭で採れたタケノコご飯。茶碗蒸し、お煮染めにも入ってますよ。使った卵やちくわは、そのタケノコで物々交換して頂いた品です」

 

銘々の前に、各々協力しておかずを並べながら、会話は続く

 

「汁物は家庭菜園で採れた、野菜たっぷりの味噌汁。俺とミク、だけじゃあない、みんなで耕した畑の収穫物。うれしいじゃない。油揚げや豆腐も、交換で頂いちゃった品物。竹の子寿司は、Mikiが握ってくれたじゃない」

 

カイ兄、紫の彼が説明をしてくれる。調理担当、三つ星シェフのお二方

 

「メインディッシュは、イワナの塩焼き。ツクシと三つ葉のおひたしは、家の前で収穫したの。自然に育ってくれるから。タケノコご飯、おみおつけはカイ兄。お煮染めと茶碗蒸しはがっくん。イワナの塩焼きとおひたしはわたしが作った~」

 

その二人の『専属アシスタント』と勝手に思っているわたし、得意になって説明に加わる。このイワナは良く洗って、塩で焼くだけ。魚はまだ捌けないが、丸焼きはワタもほろ苦くて美味しい。問題なし

 

「え、リンちゃんも料理したの」

 

女プロさんの驚きの声。そんなに驚かれると、ちょっと傷つくの。以外なのかもしれないけれど

 

「女プロさま、りんりんお料理上手。驚く、めっ」

「おにぃの直伝だぜ、食べて旨さに驚けよ~」

 

抗議をしてくれる、カル姉、リリ姉。神威の姉がしてくれる『妹扱い』わたし、それが凄く好き

 

「お米はさすがに栽培出来ないから、殿の故郷、越後のお米。これだけは贅沢品かな」

 

土鍋二つ、勢いよく湯気が立ち上る、タケノコご飯。放たれる、美味しい香り。飲まない組の分を盛りながらカイ兄

 

「いや、カイト。この米、オヤジの古い知り合いが、格安で流してくれるヤツ。米粒の大きさ揃ってないから、市場に出せないんだと。味や品質は問題ないじゃない、もったいない」

 

変な贅沢をするより、よっぽど美味しくて『楽しい』ごはん。わたし達は本当に恵まれている

 

「わり~わりィ。天狗になってるとか思ってよ。おめ~ら、自給自足のサバイバー。もしくは、料理人でも食ってけるわ。寿司まで握れんのかMiki」

 

神威組のプロデューサーはそんなことを言う。ただし、表情は嬉しそうなモノ

 

「ダメだよ~。みんなもう、れっきとした歌い手なんだから~」

 

わたし達のプロデューサーの言葉。わたし達が、世間様に認められた事を、最も喜ぶ三人。わたし達には、普段通りの、質素倹約ご飯。でも、大自然の恵みに満ちあふれた『贅沢な食卓』だという、三人の言葉は肯定。あの日の晩餐もまた、格別の空気があった




そんなに小さくなくっても

でもまだまだ、そんな歳

だって、まだまだ甘えんぼ

だって、まだまだ指定席

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。