はじまりのあの日   作:代打の代打

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大歓声に迎えられて

秘密のお芝居をして

彼と行列して


彼とわたしと出陣行列

レンだけさりげなく、ステージ袖へ隠れる。さて、公演の始まりだ。来賓様のご挨拶を、用意された和なイスに腰掛け聴く。最後に主催者代表様のご挨拶。企画したというお兄さん、アイサツの〆が『と言うワケなのでございます。御館様~、どうぞ商店街に救いのお手を~』ノリノリ、跪いて両手を組む。沸き起こるお客さんの笑い。わたし達も吹き出してしまう。すると後方、ステージ袖から

 

「御館様~~っっっっっ」

 

飛び出してくるレン。やや焦りが見えるのは、代表様にレンの役目が奪われてれてしまっている感があるからだろう

 

「御館様にご報告申し上げます」

 

猛然と駆け寄ってきたレン、紫の御館様の前に、跪いて言う。多少スライディング気味なの面白い

 

「厳しき時代故、商店街が苦境に立たされ、我らの軍勢に、助けを求めております」

 

何度も言うけど、ハジメ、あれだけ文句言ったのはどの双子か。弟ノリノリ

 

「ぉ屋形様~、いかにすれば~」

 

立ち上がったIA姉は、精一杯、ウロタエテみせる。胸の前で、手を組んで内股

 

「「「「きゅうちにございます~」」」」

 

天使様も弱気の声。ただ、その仕草があまりに可愛らしすぎて、見ている人悶絶。紫の御館様、おもむろに立ち上がり

 

「よく存じ上げた、主殿。レン兵卒、あい解った」

 

お芝居をする彼。はっきり言う、カッコイイ。と、お客様に向けていた視線をわたし達に移して

 

「『妹』姫様、幼き者達よ、うろたえるでないっ。堪え忍び、まず戦の潮目を見極めるのじゃ」

 

そして昨日の夜、打ち合わせた、秘密の小芝居を始めるわたし

 

「『姉』姫様、刀をこれへ」

「オオセノままに、御館様」

 

持っていた刀『楽刀』を差し出すわたし。可能な限り、恭しく。うふふ、今わたしは、メンバーみんなも知らなかったお芝居を演じている。彼とわたしだけの、なんて思って、心蕩けたな、あの日。紫様、これまた恭しく刀をつかみ取り、一歩前へ出る。そして今度は、師範代仕込みの居合いよろしく、楽刀を抜く紫様。引き抜くと同時に、楽器の刀、爽やかな音を奏でる。その効果もあいまって、大変に格好イイ

 

「戦場(いくさば)には、流れが変わるその刹那がある。堪え忍び、知恵を巡らせ、潮目が変わるその『時』見逃すでない。そして時が来たら打って出る。死中に活を見いだすのじゃ」

 

『御館様』の大歓声が上がる。バックヤードから見つめるメンバーからも、だ。その歓声が静まると

 

「如何した、その程度の気迫では、苦境に立ち向かえんぞっ。まずは各々方、気を張らずして道が開けようかあっ。そなた達の御声(おんこえ)を、今一度張り上げてみせよっっっ~」

 

再び上がる『御館様~』の歓声。全員が大盛りあがりする。御館様、今度は楽刀を掲げ、その場全員『エイエイお~』と拳をあげる。八回目で切り上げて

 

「神威がくぽ、軍勢を率い、商店街の景気づけにまかりこしたぁっ」

「「「「いざ、しゅつじんじゃ~」」」」

 

集まって下さったお客さんの大声援。紫様に連れられ、ヒヨコの行進が始まる。軍勢と呼ぶには『可愛らしすぎた』というのは、後で聞いた感想。ステージを駆け下り、跪くレン。わたし達もできる限り素早く降りて、人力車へ乗り込む。天使様は、引き手さんが抱っこで乗せてくれる。わたしとIA姉は、ここでサプライズ

 

「姫様方っ」

 

人力車の前で跪き、自分の膝を踏み台にして、乗り込みを手伝ってくれる彼。ああ、もうかっこいいの

 

「ぁりがとう~に~さ~ん」

「がっくん、ありがとう」

 

IA姉とわたし、小声でお礼。イタズラっぽく笑う紫の彼、こちらも小声で

 

「御館様の膝は『姉』姫様の指定席じゃない」

 

今日は『姫様専用昇降台』などと笑わせてくる。全員整ったところで、もう一度勝ち鬨。レンを先頭に、紫の御館様。人力車はIA姉わたしが先頭車、オリバーくん、いろはちゃん二号車。最後、ユキちゃん、リュウト君の三号車、歳の順。広い商店街を練り歩く。もっともわたし達は乗って引かれているだけなので楽だったけど。彼と弟は、それなりの運動だっただろう。歓声に応え、手を振る、お礼を述べる。出陣行列メンバー全員で。眩いばかりに、焚かれるフラッシュ『ほらほら、昨日の歌い手さん』という、前日出会ったであろう人の声。前夜に買い物をし、心配りまで頂いた海鮮屋さんの前。大将さん、店員さん、総出で大歓声。ここで紫様足を止め、報恩のサービス

 

「昨日(さくじつ)は、御馳走になったのぅ、主殿(あるじどの)大層美味じゃった。観覧においでの皆様方においても、海の幸はこの御店(おんみせ)にて求められるのが良いであろう」

 

大将さん、感激、大衆喝采。彼のアピールで、このお店は昼までに完売御礼の札が下げられたそうだ。これ以降、IA姉や天使様も、それぞれ心配りを頂いたお店の前でアピールをする。そして、一時間近くかけて、商店街を巡った。最後、ステージ前へ戻ってくると

 

「さ~、慌ただしくなるわよ、あんた達」

「でも、四十分は歌MC、ダンスで稼ぐス」

「準備整える、えるえる、えるさいず」

 

先に着替え、ステージ袖に待機していためー姉達に出迎えられる。勇馬兄、今日は小さな鈴付きヘアピンで、前髪分け。カル姉は、扇でアオイデくれる

 

「おっしゃ、急ご~ぜみんな」

「早き替えじゃない、さ、リン、IAも」

 

駆ける弟。姫抱っこで、わたしとIA姉を降ろしてくれる彼。一目散に、舞台袖仕切られたテントの中、着替え、化粧直しをして貰う。もちろん、男子とは別テントで。そのお色直しの間、公演も頭から大好評だったようだ。見えてなくても、歓声でも解った。スタッフが撮影しててくれた映像で、後に確認もしたし。皮切りは、わたし達を除く全員で大合唱。次は中華な曲五連発。冒頭、ルカ姉、めー姉、ピコ君三人の踊りに大歓声。二曲目は、メンバー男女に分かれて交互に、真ん中は、テト姉、キヨテル先生のコンビダンス。最後は全員で踊る。三曲目はMikiちゃん、カル姉、リリ姉、ミク姉、めぐ姉のアレンジダンス。五曲目、カイ兄、アル兄、勇馬兄のダンスもキッレキレ(キレキレ)そのままのノリで勇馬兄、MCでも切れの良いダンスを交えつつ、軽快トーク。この辺りから、ステージ袖の影から観てた。そしてやっぱり嬉しかったのは

 

「ふふふ、俺だけエラく年増じゃない。大トリだぞ、おまえ達」

「わぁ~、すごく楽しみ~。このメンバーで踊るのは初めてだねっ」

「リンとおれとか、がく兄とおれはあったけどね」

 

そう、彼と、そして新鮮メンバーで踊れたことだ

 

「にいさまとうたえるひがきて、ほんとうに、ほんとうにうれしいですっ」

「ぽ父さん、ユキがんばるよっ」

「ぽ~兄さん達と、ハジメテの歌だ~」

「ボクモタノシミデフッ」

 

天使様達も目を輝かせていたな。紫様、軽く手足をほぐす。そこへわたし、多分かなり浮ついてたと思う。レンは二三度跳躍し、ウォームアップ。リュウト君、憧れ続けた『にいさま』と踊れることへの感激で、目が潤んでいる

 

「大トリカモーンっ、The my greatbrother my littlebrother my Sister end teamange~~lッ(自分の偉大なアニキ、弟、妹、天使様) 」

 

勇馬兄、MCを高らかに締めくくり、わたし達の登場を促す。後は任せたとばかりに、サムズアップ。拍手しながら反対のステージ袖へ

 

「いっこうじゃな~い(行こうじゃない)」

「「「「「「わ~~~~~」」」」」」

 

飛び出す、出陣行列組。衣装の違いで、すっかり皇帝の息子然とした紫様を先頭に、それぞれの位置に着く。盛り上がってくださる皆さんに

 

「最後の曲ですね~。盛り上がっていこうっ、お・ま・え・達~」

 

煽りが上手い彼。わたし達を含め、会場全体がもりあがる。その喝采を皮切りに、イントロが流れ出すわたし、レンが彼の前、顔を近づけて両脇に。今思えば、この曲を彼以外のメンツに踊らせるってどうなのか、と思うが、当時は全く気にしなかった。彼とわたし達姉弟を中心に、天使様は歌わない。一応配慮してたのかな、プロデューサー、天使様に歌わせなかったって事は。う~ん、どうだろう。周りで別バージョンのダンスを踊る。ありがたいことに、大トリ成功、大成功。アンコールには全メンバー、入れ替わり立ち替わり、歌って踊る。イベント『会場』規模はそれ程まででないにしろ大成功。敷地面積など関係ない。その興奮冷めやらぬうちに、商店街販売特設ブースへ移動。そう、本番はこれからなのだ

 

「お総菜、歌い手さんの握手付きで販売中で~す」

「ここでしか無いモンもありますゼぇ。文具、家具」

「サイン、グッヅなんかも、合わせて販売してます~」

 

プロデューサー三人の呼びかけで、殺到するお客様。コンテナが幾つも空になるが、商品は現地調達。商店街の物を補填すれば良い。メンバー、ステージ衣装のまま、かなりの握手をこなす。基本的に握手会やサイン会をしないわたし達。手が擦りきれるほど、握手をした覚えがある。時には、ちまきやお団子を手渡したり、レプリカ色紙を渡すことも。商店街主催者様が、想定した売り上げを大きく超えて、販売会も終了。来園者様の全員撤収後、今度はPROJECTトレーラーに戻って着替え。着替えが済めば衣装運用車となる、女性専用車の扉が閉まる。と、開口一番

 

「リ~ン、おっつ~。今日はいつもにマシマシで、メチャクチャ良かったじゃ~んっ」

「あ、ホントホント~っ。行列も踊りも生き生きしてた~」

「うふふっ初めに文句言ったとは思えないわ~」

 

リリ姉、わたしの首に腕を回してくる。汗をシャワータオルで拭きながら、めぐ姉が楽しそうに。めー姉は、一通り着替え、身支度を済ませ、イスで水分補給

 

「にゃっ、あたしもね、一緒に行進して思った~」

 

いろはちゃん、この話題に参加は珍しいと感じた

 

「リンちゃんね、ぽ~に~さんに護られてるな~って思った~。もちろん、今日はIAちゃんもなんだけどさっ。にゃ~んか普段から、トクベツ感があるの」

 

多分みんなもそう感じたんだろうな。いろはちゃんに、みんなの眼差しが向く

 

「なんかねぇっ、リンちゃん、ぽ~に~さんと一緒の時、すっっご~く『いい顔』するの。リンちゃんとぽ~に~さんって『トクベツ』なんだ~って」

 

『護る』『特別』と言う言葉に、昨日の記憶が反芻される。そう『わたしの王子様』は、本当にわたしを護ってくれる

 

「あ~れ~、リンちゃぁん、どしたのその顔~」

「にやにや2828、うふふ顔~」

「トキメキ乙女テイストかな~」

 

とうとう、Mikiちゃん、カル姉に突っ込まれる。ミク姉は目が輝く

 

「ん~、何でも無い。褒められて嬉しいな~って」

 

誤魔化そうとするわたし

 

「ひぇひぇひぇ、何だかかえってアヤシイぜぇぇぇ」

「テト姉様、何をお考えですか。ですが、興味は湧きますわリンちゃん」

 

ルカ姉、イスでくつろぐテト姉に目線を合わせる。と、押し黙って、飲み物を一気するテト姉。今度はわたしに微笑みかけてくるルカ姉

 

「な~んでもないってば~ぁ。護ってもらえるなら、嬉しいなって想っただけ~」

 

と、天使組以外の女性陣、思い思いに変な笑み。あ、またコレ、とか思いかけると

 

「にゃ~、いいな~リンちゃん。『トクベツ』なぽ~に~さんがいて~」

 

いろはちゃんが、ささくれ立ちそうな心をなだめてくれる。と、言うかヘタをすると、年下のいろはちゃんさえ、わたしと彼の『何か』に気付いたかもしれない瞬間だったのに。どこまで、ああ、もう、形容しがたい

 

「はあああ~い、そ・こ・ま・でっ。男性陣と商店街の皆さん、お待たせしてるみたいよ~。簡単でも打ち上げ会開いてくれるって~」

 

話題を強引に変えた風情のめー姉。最も

 

「あ、マジ~、メー姉」

「ええ、リリ。今スマホに連絡来たわ」

 

タイミング良く連絡が来たのは事実だ。話題が変わった多少の落胆と、仄かな打ち上げへの期待。そんな声のリリ姉、皮切りに急ぎ足で、と言っても十分の時間をかけて、身支度。トーレラーを降りると、男性陣を筆頭に、プロデューサー、スタッフ。そして、主催者様一同、宴の準備を始めて、いや、すでに整えてくれていた。見やる簡易テーブルの上、商店街、皆様からの心尽くし。お総菜屋さんの和洋中、国際色豊か、穏やかなご馳走が並んでいる。これぞまさに、国境を越えた『ソウルフード』これこそ『ご馳走』と呼ぶにふさわしい

 

「はいは~い、VIPがやって来ましたよ~」

「オヒメサマノ、ゴトウチャフデフ~(ご到着です)」

 

手をたたき出すカイ兄、多少の茶化しが混じっている。微笑むオリバー君は無垢純真

 

「おっせぇよ、リン。会場手分けして作ったんだぞっ」

「ハイハイレ~ン、俺達も手伝ったの途中から。文句言わな~い」

 

不満を、イタズラ顔で言おうとする、コシャクな弟をタシナメル、紫様。くしゃくしゃに撫でられ、何も言えなくなるレン

 

「リュウトく~ん、おまたせ~」

「オッリバ~くんお待たせっ」

「では、全員揃いましたので―」

 

わたし達初代プロから、お礼の言葉。主催者様から、返礼の言葉が返ってくる。乾杯して、打ち上げ。基本プライベートの話しは無しだけれど、楽しく交流。お店ご飯の味や、みんなでの記念撮影、即席サイン会。組合のシンボルフラッグへの寄せ書きなど、この打ち上げも素晴らしかった。けれど、やっぱり、その後の内々会の方がより、印象に残っている。すごく『特別な事』があったから。とてもお目出たい出来事があったのだから、当然かもしれない。いや、商店街様の前祝いがあったから尚更だと思わなければ。ロケバスで、PROJECTサイドが用意したホテルへやって来る。シャワーを済ませ、身支度して宴会場。貸し切れるのが、本当にありがたい。そんな大層な身分でもないのに

 

「は~い、ここで連絡事項がありま~す。みんな注目~」

 

全員、立食テーブルへ着いて、飲み物が行き渡った頃。いつも通りの声色で、手を叩くカイ兄。おそらく明日以降のこと。あの日は思った




連絡事項、兄からの

連絡事項、いつものこと

連絡事項のその中身
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