『音』の兄妹お泊まりする
神威の家『家族』の話し
午後は装飾のツメを確認、明日の食べ物やデザートの確認をして後
「しっかしこの部屋、リンの私物ばっかじゃね」
「ほぼリンちゃんのお部屋かな~」
神威家茶の間、一区画、於、わたしの場所。レンの感想、ミク姉の一言。晩ご飯の用意を終え、丸テーブルを囲む神威の一族。そしてめー姉、カイ兄を除く、わたし達『音』の一族。本日は神威家に一泊。シェアハウス組はそちらへ移動。テト姉は気楽に温泉一泊。明日朝には帰るという
「うふふ、そうかもね。リンちゃん遊びに来るときは、ここかぽ兄ちゃんのお部屋だものね~」
「確かに増えたじゃない、リンの物。はい、整った。じゃあ、今晩頂く『命様』に感謝して~」
めぐ姉、あたたかな微笑み。家長、紫様の御発声。綺麗に合掌、紫様。かつて、それを真似てたわたし。今では自然に手を合わす。隣のめぐ姉、祈りのポーズ。正面のルカ姉は本場仕込み、祈りの仕草で目を瞑る。レンの合掌は肘が張る、カル姉は指が開き、目は閉じる。リリ姉はお相撲さんが勝った時の様に手を動かし、リュウト君、紫様を真似る
「「「「「「「「「いただきます」」」」」」」」」」
神威の家で晩ご飯。前祝いと、本日はまぐろのステーキ。ちゃっかり自分たちだけ贅沢。メニューを聞いたときの、ルカ姉の喜び方が半端じゃなかった。今、紫様の前に鎮座する、トロの塊。直火でじっくり焼き上げた物
「はいよ~、リン」
「ありがと~がっくん」
まず始めにわたしに切り分けてくれる。神威家は、家長の彼が取り分ける。もちろん日頃は個々に主菜付けるけど、塊肉や大きな魚は、彼が取り分ける。そんな習慣、自然体で覚えるほど、入り浸ったわたし。泊まった事は多くないけど、午後十時くらいまで遊びに来ていた。晩ご飯、マンションと神威家とどっちで食べるか、なんてめー姉からの電話があったほど。午前中から押しかけて、彼とボイトレして。お昼ごはん食べて、TVゲームやカードゲームで遊んで、カラオケしたりして。おやつも食べて、晩ご飯もしっかり食べて。彼に送って貰って、徒歩三十秒の自宅へ帰る。わたしの休日、図々しい過ごし方
「はい、リュウト。沢山食べて大きくなって」
「ありがとうございます、にいさま」
お皿を、手渡しでリュウト君にまわしていく。大きめに切っているが、食べきれなければ、紫様が食べる
「はいレン、以下同語~。明後日も稽古じゃない」
「サンキュッ、がく兄っ。宜しく、師匠」
大きく成れ~、というコトだろう。弟は筋肉痛をおこさないレベルまでは到達した
「はい、ルカ、厚手に切っといた~」
「まぁ、ありがたいですわぁ、神威さん」
ルカ姉、さらに目が輝く。全員に行き渡った所で
「さぁて、本格的に始めよう」
「っしゃ、イッタダキ~」
「ますます、いただきますます」
晩酌に入る彼。リリ姉豪快に切って、ステーキにかぶりつく。再び手を合わせ、煮物から食べ始めるカル姉
「うっまっ、ごはん進む~」
「っ~素晴らしいまぐろですわ~」
ごはんをかっ込む弟、ワインと併せて、悦に入るルカ姉
「ほんじつはいつもよりだいにんずうでたのしいです」
「家族が増えるって、楽しいじゃない」
リュウト君、やって来たときより表情豊か。多分、兄妹、そしてわたし達と一緒に居ることで笑顔が増えた。紫様もお酒を飲んで笑う
「うふふ、本当に家族増えても良いけどね~」
「するとあっちは減っちまうけどな~」
「妹いもうと、かるの義妹(いもうと)」
微笑み合うめぐリリカル姉、何を言っているのか解っていないわたし
「ふふっ、少し寂しくなってしまいますわね。今回の結婚では『まだ』家族は増えませんもの」
訳知り顔のルカ姉もあたたかな笑み
「結婚すると、家族増えるの~」
「ん、ああ、かもしれない。例えば誰か、PROJECT以外の人と結婚するとかさ。そう言う意味では、家族ふえるじゃない」
漬け物をつつきながら、わたしの疑問に答える彼。リリ姉の顔が『解ってね~』って顔になった理由は解らない
「あ、そうか~。カイ兄、めー姉パターンだけが結婚じゃないもんね」
納得、する弟に、納得いかない顔、ミクルカ姉
「そっか~、がっくん。ん~でも、結婚って何なのかな~」
トロステーキを切り分けながら再び生じた疑問に
「さてな、俺も結婚してないから解んない。それはさ、リン、明日聞いてみたら。結婚する二人に」
今度は、答えを出せない彼。それでも答えに納得、わたし
「そっか、そうする~」
「これも大人準備のひとつじゃない」
お姉様方が、なぜかもどかしい風情を漂わせたけれど。総じてその晩も、美味しく食べて、楽しく笑って。紫様とレンが洗い物を引き受けてくれている間、楽しくお風呂に入って、めぐ姉に洗って貰って。茶の間、ルカ姉、ミク姉、わたしで、川の字で寝て。レンは一緒寝がイヤだと彼の部屋に逃げて。目が覚めたら、朝ご飯の良い香りが漂ってきて。イソイソ身支度済ませたら、丸テーブルにごはんが並んで。ご機嫌で朝食を平らげて
「はいっリンちゃん可愛くできあがり~。簪もぴったりだね」
「ありがとおっ、めぐ姉~」
神威の家で着飾って。わたしは、めぐ姉のお下がり晴れ着。ドレスや洋装を着る機会は、他にある。だから、結婚式の日は姉と同じにしたかった。前々から考えて、めぐ姉に伝えると
「じゃあ、わたしのお下がりで良ければプレゼントしちゃうよ、リンちゃん」
と、思いがけない贈り物を言い渡されて。さすがに申し訳無いと辞退を申し出たところ
「ううん、受け取って~。取っておいても着られないもの。リンちゃんに着てもらった方が、晴れ着も喜ぶよ~」
素敵なめぐ姉スマイルに押されてしまい、図々しく頂くことにした晴れ着。今、その姉に着させて貰って
「りんりん、お似合いあ~い」
「マジ良いじゃん、お下がりにみえね~ぞ」
同じく着替えていた、カル姉、リリ姉は大正時代のハイカラ娘さんのような和装。大学の卒業式で着る女性もいるという、アレ。撫で回してくれる、二人の姉
「着替え終わったら行こうじゃない、準備もしないと。お客様も来るじゃな~い」
「ねえさま、おきがえすみましたか」
着替え終わった、男子に呼ばれ、部屋を出ると
「お、リンぴったり。晴れ着も嬉しそうじゃない。簪もソレ付けてくれたんだ」
「りんちゃん、おにあいです」
上等な着流しの紫様、カッコイイ。ただ『晴れ着喜ぶ』『晴れ着嬉しい』の発言に、兄妹の縁を感じて
「めぐ姉、やっぱりがっくんの妹だね。晴れ着が喜ぶって、めぐ姉も言ってたよ~」
羨ましいと思ったあの日のわたし、言ってみる。すると紫様
「リ~ン、何言ってんの。リンは俺の妹って言ったじゃない
「あ、そっか~。わたし、がっくんの妹だね~」
そう、中華の町で言ってくれた『俺の妹』と。思い出して嬉しくなった
「まあまあ、リンちゃん、お似合いですわ。ふふ、本当に『神威の妹』ですわね」
「う~ん、『末』じゃなく『家』にならないかなぁ。同じ女偏付くなら~」
よそ行きドレスに着替えていた、別室のルカ姉、褒めてくれる。ミク姉の言葉の意味は解ってなかった
「何かわかんね~けど、着替えたら行こうよ。時間ないんだろ~」
彼らとよそ行きに着替えていたレン、急かす。みんながよそ行きの格好で、マンションに集まって
「お、センセ似合う~。ウチとオソロ(お揃い)感あるし~」
「Mikiさん、ピコさんから、ご指摘いただきまして」
大正時代の『書生』風キヨテル先生。お揃い感で、リリ姉ご機嫌『サンキュ』とMikiピコちゃんにお礼。新郎新婦は、別室にて、着付けの真っ最中で。他のみんなは、お客さんの対応や、ケータリングの食事、届くお酒や、プロデューサーさん達の差し入れを並べて
「うい~帰ったぜ~」
帰ってきたテト姉、土産物の大盤振る舞いして。慌ただしくしているうち、お客様、兼、料理人様、特注のウエディングケーキ達も到着して。また、お茶を出したりお菓子を盛ったり、ケーキを飾ったりてんやわんや。この日紹介されたのがPROJECTに憧れているという
「は、初めまして、心響です」
心響ちゃんだった。緊張しまくりのこの時まだ10歳。少しだけ、と、わたし達のプロさんが歌わせたところ
「もっとしゃくりを入れると、深みが出るよ」
紫様のご指摘。もう一度おなじメロディーを歌うと、これが本当に上手くなって
「教え甲斐があるじゃない。良いな、こういうのも」
と、紫様、別の道にも興味を示す。そのうちスタッフさんが入って来て、新郎新婦、整ったと告げられる。先導役の天使様が迎えに行って、残る全員は、リビングの扉前へ移動。クラッカーや紙吹雪を用意
「これより、新郎新婦、入場です」
女性プロデューサーが告げる。農家のおばあちゃん、店の女将さんによって開けられた扉
「これよりけっこんしきです」
「ごにゅうじょうで~す」
リュウト君、ユキちゃんを先導に、入って来る二人
「まぁまぁまぁ~、お姉様ぁ~可愛らしいですわ~」
「重音が言う、まさに『メイコちゃん』って感じじゃない」
まずは祝砲一番、クラッカーを爆ぜさせるルカ姉。紙吹雪を捲く紫様。オデコを出して、リボンの多いベール、フリルのウエディングドレス姿のめー姉
「ありがとう、みんな。うふふふふふ、幸せね~」
手を振って、破顔、顔中笑顔。腕を組むカイ兄も上質な生地のタキシード。衣装と別次元の格好良さ
「Cool(カッコイイ)でゴザル。ヨッ、カイト殿~」
「へへへ、幸せなツラだな、カイトタン」
アル兄、紙吹雪、同じくテト姉。ただしテト姉マイペース。もう片手にはシャンパングラス
「ありがとうね、アル。うん、テト姉さん、オレ今すごく幸せ」
微笑みが輝くカイ兄。めー姉の後ろには
「メイコさん、ホントにキレ~」
「WeddingDressステキデス~」
ヴェールをもつ、いろはちゃん、オリバー君。みんな二人と共に、移動しながら祝福。紙吹雪を捲く、おじいちゃん。おばあちゃん、ふたりの肩を叩いて祝福。両者が着席すると
「これからの式は素晴らしいものに成ることでしょうね」
「マ~ジ美人だな~メー姉。カイト幸せにしてやれよっ」
「リ~リ、大丈夫よっ。アタシ今もう、十分幸せだから」
テーブルの前、みんなで拍手。祝福の言葉に、手を振るめー姉
「すごいね、ピコきゅんっ。PROJECT内結婚式だよ」
「参加前、観てた時には考えられない事です~」
色違いドレスのピコ君とMikiちゃん、微笑み合う
「コレ程エニシの深き間柄トハ、考えも及ばぬ所でゴザッタ」
「み~んなで支え合いだよね~。困ったら救けぁ~ぃ(たすけあい)」
アル兄は紋付き袴、IA姉、ワンピースのふわふわドレス。支え合い、そう、お互いに支え合う。だから、役割を演じて、歌って生きていける
「カイトさん、メイコさん、おめでとうございます」
「めでたい、たいタイ、おめでた~い」
めぐ姉の微笑みと、カル姉の破顔。生まれも家柄も、血筋も違う。でも、神威の兄妹、新たにやって来た歌い手のみんな、心の底から祝福。いつだか、紫様が言っていた。全部違うわたし達が、助け合って今、ここで結婚式まで挙げている。支え合い、救け合い
「さぁ、まずお二人に夫婦となっていただきましょ~」
「メインを忘れんじゃね~ぞ~」
「結婚式なんだからね~」
プロデューサー三人の声で、立ち上がる二人わたし達の中から、一人の人物が二人に歩み寄る。商店街から少し離れた場所にある神社の神官さん。夏祭りの公演に呼ばれたこともある『顔なじみ』のおじさん。一度神聖な雰囲気に
「アタシ、メイコはカイトを支えます」
「オレ、カイトはメイコを支えます」
誓いの言葉、三三九度。で、流儀を変えて、指輪の交換。この辺り、融通の利くお方
「はい、二人とも目線ちょうだ~い」
互いの指にはめた所で、目くばせを要求するミク姉。砕けた空気に一遍。大将さん、女将さん、料理の準備にかかる。ケーキ入刀も観たがってたけれど、プロ魂、調理開始
「おっきなケ~キ~」
「ナイフ入れだ~」
ユキちゃん、いろはちゃん、ケーキでテンションが上がっている
「今回はモノホン(本物)ッス~」
「前回はしょぼくて悪かったじゃない」
「でも、二人とも嬉しそうだったよ、がっくん。あ、今日はもっと嬉しそうだけどさ」
勇馬兄、前の半分ケーキのナイフ入れを思っての言葉。隣の彼、少し申し訳なさそうだけど、わたしは素直に感想を言う
「それではケーキ、にゅ~と~」
「ご多幸を祈念いたします」
「新婚さ~ん、イエ~イ」
入刀の声で、剣道の構えをとる弟。拍手をおくるキヨテル先生。撮影を続け、喜ぶミク姉。みんなの拍手に
「ありがとう、ふふ、幸せで溶けちゃいそうね~」
「オレも。何だかバチでもあたっちゃいそう」
心から微笑む、メイカイ夫妻。その姿は、本当に眩しいほどで、だから憧れた、めー姉の姿に。心の何処か、いつか『成りたい』と思った。あの日、式の中盤、昨日の疑問を投げかけた
「めー姉、結婚って何なのかな~」
姉のワイングラス、お酌しながら尋ねてみる
「ふふ、注ぎ方も上手になったわね、リン。ん~、何かしらね『支え合い』『救け合い』かしら」
ここでも出てくるこの言葉
「一生ね、救け合って、支え合って、過ごしたい人と一緒になる。それが結婚かしら。自分が救けて欲しい時、救けてくれる。その人が救けを求めたら、救けたい。一緒に居るだけで救われる、そんな人と一緒に成ること。アタシは結婚ってそんな感じ」
「オレ、同意」
会話が聞こえていたのか、隣のカイ兄、話しに加わる
「オレはめ~ちゃんを支えたい、生涯掛けて。オレが支えて欲しいとき、め~ちゃんが隣に居るだけで、心の支え。オレもおんなじ。だから今日、一緒に成ったのかも。あ、ありがとうございます」
言い終えて、大将さんのお酌を受ける、カイ兄。と、女将さん、大将さんも
『カミさんが居なきゃ、店が回らねえや。オ~レも同じかもなぁ』
『アンタも苦労かけるねぇ』
支え合いを肯定する
「リン、考えてみたら。一生支えたい人。生涯、支えて欲しい人。救け合いたい人の事。ゆっくりと、ね」
「前にも言ったよね、リンの想うままに、だよ」
若干、励まされた感があった。だからわたし、その日の夜、後片付けを終えて。結構な塩梅に疲れて。床についたその時、微睡む寸前、考えた。支え合いたい人、救け合いたい人。側に居るだけで救われる人。このPROJECTの中にしか居ないと思った。そして眠った。夢を観た。紫の彼と歌う夢。わたしは8歳のあの日に戻って、今も変らない彼と歌う、夢を観た。だから、朝起きて自然に『勘違い』した
「そっか、がっくんと歌って生きたいんだ」
そう『結婚』したいと想わずに。どれだけ鈍いのだろう。わたしはあの日の自分に呆れることで、今へ帰ってきたらしい。あ、お湯は多めに沸かしておこう
夢を観た
彼と歌う、夢を観た
思った、勘違いした
でも『彼』と生きたいの