はじまりのあの日   作:代打の代打

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とうとう気付いた、恋心

とうとう気付いた、紫の

生きたい人が居る

ずっと一緒に、生きたい人が




キミへの恋心

もうすでに視界はぐちゃぐちゃだった。化粧、落とした後で良かった。驚愕の表情で、静まりかえるメンバー

 

「そうだね、迷惑だよね、がっくんも。悪いことなんだね。ずっと、わたしが想ってたことは。これからわたしが言うことは」

「リンちゃん」

 

ごめんめぐ姉だまって。あの日、罰当たりにそう思った

 

「しょうがないじゃん、なにさっ、みんなして。みんなにまで言われて。みんなにまで言われたら『悪い事』にしか思えないじゃないかっ。あ~あ、わたしが悪いんだね」

「は、なに言ってんのリン。いきなりど―」

 

レン、未だににやつく顔が頭にくる。おそらく、場を静めようとの薄ら笑いに、益々込み上げる、怒りと悔しさ

 

「だまれっっ。ダメかっ人を好きなことが。しょうがないじゃないかっ。好きなんだ好きなんだ好きなんだっ」

 

その総てを叩きつける。押し殺していた声は、いつの間にか、号哭へ。引きつるレンの顔。もう止まらない。もう戻れない。きっとこの言葉、言った後。仲良しだった、やさしさで包んでくれた。彼との関係には戻れない

 

「わかっちゃったよっ。今、ついさっき解っちゃった。わたし、初めて会ったあの日から好きだったんだ。今まで気付かなかっただけで。ずっとずっと好きだったんだ。悪いか、何で悪いんだっ。悪くなんてないっ、絶対悪くなんてないっ。悪くても悪くないっ」

 

筋も理屈も何もない。もはや、訳が分からない。でもこれだけは言おう、決めていた。彼の方に向き直る

 

「がっくん、ごめんね、わたしのせいで。いままで、いっぱい優しくしてくれたのに、がっくん悪者だよ」

 

両手を握る、肩を怒らせる。精一杯、勇気を出す。でも、これは『蛮勇』というのかもしれない

 

「ごめんね。がっくんの前に現れて。わたしなんかいない方がよかったんだ。ごめんね、ごめんね、ずぅっと『護って』くれたのに。でも、でも、でもっ。だからなんだっ。すっごく優しくしてくれて、優しくわたしを護ってくて。だからどんどんドンドン好きになったんだ」

 

目を見開く彼

 

「お兄ちゃんとしてじゃない、メンバーだからでもない。わたしは好きなんだっ。結婚したいくらいに、一生支えたいくらいにっ、一生支えてほしいくらいにっ」

 

わたし、一息ついて、想いを込めて。自分の中の、精一杯の『好き』を込めて。思い切り言い放った

 

「わたしはがっくんが好きなのっっっっっ」

 

再び静か。誰一人、声をあげない。誰かの手によって、映写機も消されていた。無音、込み上げる後悔。最低だと思う。でも、あの日のわたしには、これしかできなかった。言うだけ言って、もうここに居たくない、部屋に帰ろう。身を翻そうとしたとき、腕をひかれた。抱き上げられ、わたしは収まった。わたしの『指定席』に。いつもとは違い、横抱きの状態で

 

「そう―だったのか」

 

混乱した。これから起きることが、予見できないから

 

「最低だな、俺。キミに言わせるなんて」

 

何がおきたか、分からなかった

 

「言われて気づくなんて」

 

頭の中はぐちゃぐちゃだった。そのわたしを

 

「リン『解っちゃった』って言ってたね。俺も解っちゃった」

 

これ以上無い真剣な、そして優しい眼差しで見つめてくれて

 

「俺、キミが好きだ」

 

彼は言った。わたしだけに、言ってくれた。目を合わせ、のぞき込むようにして、わたしだけに告白してくれた

 

「はじめてキミと出会った日」

 

ぐるぐるとまわる頭の中、空っぽの心の中。彼の言葉が響き渡る。彼の言葉で、わたしは彼の想いを知る。わたし自身の想いに気付く

 

「PROJECTに参加が決まった日、すごく嬉しかった。でもね、事務所が別と聞かされて。妹とも離れて。俺は一人で歌ってくんだと思ってた。あの日、この家に来たとたん、キミが飛び込んできた。キミがこの手を引いて、俺を一人じゃなくしてくれた。歓迎会で聞いたキミの歌が、声が、キミが。俺の中に流れ込んできた。俺、忘れられない。キミと俺だけなんだ、来たその日に声を重ねたの」

 

彼はそんなことを思っていたのか。わたし達が、ただひたすらに楽しみにしかしていなかったあの日。そんな孤独をかかえて。彼は、たった一人で。始まりのあの日を迎えたのか。そしてでも、わたし同様、わたしが彼にのみこまれたように。わたしも彼の中に入っていったのか。わたしの声が、わたしという存在が

 

「キミ達は親族だと、あの日聞かされた。俺は違う。過ごした年月(としつき)も、縁(えにし)の深さも血の結びつきも、全てが違う。ルカが帰って来た日、俺とキミたちとの、繋がりの違いを知った。俺は、あの時又『一人』だった」

 

ルカ姉が帰って来た日。彼はまた、一人に戻っていたのか。そうだ、彼は一人離れて佇んでいた。何も言わず、ただ一人

 

「あの日又、キミが俺の手をひいてくれた」

 

彼の片手がわたしの手をつつむ

 

「ルカの歓迎会、キミのワガママが、俺を一人じゃなくしてくれた。いつの間にか俺の傍らには、キミが居るのが当たり前になった。キミと生きてきたこと、覚えてる。はじめてボイトレの時キミと歌ったあの歌、覚えてる。料理をつくる傍らで手伝ってくれた、あの日、キミの好みを覚えた。好きになってくれた料理、沢山有ったね。俺の好みも覚えてくれたよね、すごく嬉しかった。初めてのバレンタイン、はじめて二人で留守番して。俺のチョコ嫌い、治してくれて。故郷で、線香花火、合わせてくれて。ループタイ、贈ってくれて。中華の町、秘密のお芝居して。覚えてる、全部覚えてる。リンとのことは全て」

 

わたしとの事すべて。わたしを想ってくれる、彼がわたしを受け入れてくれる。さっきからそれを伝えてくれる。ぼろぼろと涙があふれ出る、わたし『嬉しさ』『幸福』『安堵』混ぜ混ぜの思いが涙となって溢れていく

 

「始めはキミの歌声に惹かれた。そうやってキミと過ごすうち、気がついたら『キミ』に惹かれてた。仕草を、歌い方を、キミを。目で追うようになった。別々に仕事して、帰るとまず、キミに会いたくなった。何時の間にか毎日、キミと会いたくなった。キミと会えない日、俺結構凹んだ」

 

わたしも同じだ。毎日、彼に会いたかった『家』が別々になって、より一層会いたくなった

 

「いつの間にか、全部が愛おしくなってた。でも、恐かった。俺みたいないい歳のオヤジが、キミを好く。キミが、オレを好いてくれる。ありえないと思ってた。正直今でも信じられない。釣り合うはずがない、俺とキミじゃ。キミみたいに可愛い子と、俺みたいな年増がさ」

 

彼の言葉。そのままわたしの言葉だと感じた。きっと、どこかで思ってた。わたしなんかじゃ、彼に釣り合わないと

 

「自分の気持ちに、蓋をした。考えないようにした。きっと、自分の『妹』を観ているんだ。そう思ってた、思い込んだ。だから殊更、妹って言葉、強調した。バレンタイン、リップのお礼くれたあの日、覚えてる」

 

肯定する、わたし、頷く

 

「俺、本当に『クラッ』っときてた、かなり心拍上がってた。内心思ってた『妹にトキメクな』って。そうやって宥め賺して(なだめすかし)た」

 

皮肉な微笑みの彼

 

「必死だったよ『妹にトキメイてる、マトモか、俺』そんなこと思ってた」

 

言い終えて、微笑みが優しいものにかわる

 

「でもさっき『結婚したい』って言ってくれた。きっと茶化されてる、そう思おうとした。そしたらさ『違う』って。あの言葉、驚いた」

 

わたし、いつの間にか彼の腕を掴む。汗で、手のひらが湿る

 

「初めて言ってくれた。初めて『大好き』って。アレで気付いちゃった、俺、キミが好きだって。気付いたら、想いが溢れ出た。全部が表返った『ああ、やっぱり俺はリンが好き』って」

 

指で、涙を拭ってくれる。でも無駄だ。しばらく、わたしの涙、止まらないだろうから

 

「もう無理だと思った。これ以上隠し通せない。なら、いっそ振られようと思ってた。言って、振られて、イカレタ阿呆で、はい、お終い。メンバーからも抜けるつもりでさえいた。あのPV観ながら考えてた。きっとキミとした、最後の仕事の証だと思って、観てた。そしたら、先にキミが言ってくれた。これ以上無い、本気の『好き』を」

 

何時かのように、私は彼の膝の上

 

「俺は、キミが好きだ。迷惑になんか思うな」

 

彼の言葉は止まらない

 

「リンなんだ。キミだけなんだ。他の誰かじゃ、ダメなんだ」

 

わたしの涙も止まらない

 

「キミしかいない。こんな気持ちになるの」

 

彼の顔が、近づいて。何処までも真剣に

 

「キミと声を重ねた。NYで、京の都で。大人になってくキミが、輝いて見えた。キミの事になると、俺はムキになって腹たてた。それ、キミが一番大切だから。商店街のあの夜、キミを誰かに盗られたくなくて、だからきっと説教した」

 

囁くように

 

「キミが、この手を引いてくれた。俺と歌ってくれた。はじめて会ったあの日、エントランスで結んだリボン。きっと、俺とキミを結びつけてくれたんだ。キミと歌ったから、素敵な女性(ひと)が、頼れるダチが、妹が、弟が。可愛い子共達が。最高の仲間が。何より愛しいキミが今、俺の傍にいるじゃない」

 

じゃないの語尾がなによりも心地よい

 

「リン好きだ、大好きだ。キミが居てくれるから、きっと今の俺が有る。リン、最低四年。長ければ、何時になるか解らない。でも、時が来たら、そして『許されたたら』キミの気持ちが変らなければ」

 

一呼吸溜めて、弩真剣に目を合わせて

 

「俺と、結婚してほしい」

 

告げてくれた。もう、なにがどうなっても良かった。彼がわたしを受け入れてくれた。その事実が、今、目の前にある。もう、それだけで良かった

 

「は~い、そこまで~」

 

パンパンと乾いた音、めー姉が手を打ち鳴らす

 

「こんな大勢の前でラブコメ見せつけてくれちゃってさ。今まで、どんなに周りが焦れてたと思ってるの~」

「なんなら、もっと見せつけてやろうじゃな~い」

 

彼は、わたし姫だっこに変え、立ち上がる




生きていきたい人が居る

ずっと傍らに、いて欲しい人が居る

思い合っていた二人

キミじゃなければいけないの
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