好きの理由はなあに
おしえておしえて
紫様
紫の彼、わたしを抱いたまま、高らかに、宣言した
「お・ま・え・達~、リンは今から『俺の嫁』だ。ダレも手を出すんじゃな~いっ」
勝ち誇った仕草と物言いで。しばしの静寂の後
「「「「「「「「「※※※※※※※※※※※※※※※※※※」」」」」」」」」」
嘘だろって驚嘆(きょうたん)よく言ったって感嘆(かんたん)祝福の賛嘆(さんたん)入り交じる中
「よく言った、二人ともっ。も~、焦れったい(じれったい)ったらありゃしなかったわ~」
大層愉快そうに破顔するめー姉、わしたちを抱きしめる
「あれ、メイコ、肯定派なの、俺とリン。よりにもよって、俺とリンじゃない」
「むしろ応援してたわよ、神威君。っていうか、ここにいるメンバー、途中からず~っと応援していたはずよ~。ね~え、みんな~」
めー姉、メンバーに呼びかける。わたし、意識が急速に引き戻される。恥ずかしさが込み上げる。そうだ、みんなの前。公然告白だったのだ。観る。顔が真っ赤なの、泣いてるの、目を輝かしてるの、混乱してるの。その中心にわたしたちが居る。長身の彼に姫抱っこされ、目線がやや高くなる
「ソレデコソ、拙者が憧れたサムライッ。好きなオナゴ一人、幸せニ出来ヌハ漢デハナイッ。さすが神威殿ッ。己が信ずる道をツキススムデゴザル」
皆の顔が良くみえる。納得顔で涙をながし、ゆっくり手をたたきながら、アル兄が言う
「かんっ、感動しちゃった。ぽ兄ちゃん、リンちゃんっ。わたしだってずぅっと応援してたんだよ。絶対、絶対幸せにならなきゃダメっ。二人は幸せに成らなきゃだめなの~」
「ぅ~うっ、全、かるが泣いている、感動した~。あにさま、りんりん、しあわせに。ようやくようやく、たどりついた」
そう、ずっと応援してくれためぐ姉、大泣きしている。こんなに泣くカル姉、初めて観た
「は、何コレ。がく兄と、リン。は、ねぇだろ。え、そういう『好き』だったん、はぇぁ」
一人呆然のレン、さっぱり気付いていなかったようである
「っしゃ~あ、明日結婚『約束』式挙げような、おにい、義姉(おねえ)ったく、よ~やくひっついた。あ~スッキリしたぁ~」
笑いながら、抱きついてくるリリ姉
「あ~あ、や~っぱり。リンの想い人は、殿だったね~。まあ、許せるの殿ぐらいしか居ないや」
少し気落ちして。でも、微笑みながらカイ兄、乾杯ポーズ
「ですよね~、カイトのアニキ。バレバレだよね~、ピコきゅん。お似合いだよ、神威のアニキ」
「かむさんしか、リンちゃんのお相手はいませんよ~、Mikiちゃん。や~っと、お二人が結ばれました~」
楽しそうにMikiちゃん、ピコ君、アホ毛が♪三人とも気付いてたのね
「いや~いい画が撮れたっ。ぐっじょぶ、ふたり。ようやくこの画(え)が撮影で~きたっ」
「しっかり撮っとけよ~ミク。俺達の告白の義を」
「これ良い記念になるねっ、がっくん」
マイペースミク姉。ちなみにこの公然告白、残念ながらハードディスクに残っていない。余裕が出来て、勝ち誇る彼。わたし、姫だっこで上機嫌
「うふふ、Best of couple(ベストオブカップル)ですわぁ。神威さん、リンちゃん。ちょっと妬けちゃいますの」
頬を染め、笑顔のルカ姉
「もぅ~萌え萌え。神威のに~さん、リンちゃんをお嫁さんにしてあげなきゃだめだよ~」
めぐ姉と共に『応援』し続けてくれていたIA姉。笑顔でいつもの優しい物言い。でも、目の端に、浮かぶ涙の玉
「かむい~、お前ろりこ―」
「重音、それってさ、リンに失礼だよな」
「ん、がっくん、なんで~」
その単語さえ知らない世間知らずのわたしに
「あのね、少しずつ大人びてきてるの、リン。なのにさ、ユキみたいにまだ、ず~っとお子様~言ってるの、重音。ある意味バカにしてるわけ。で、俺はそのお子様好きの弩変○。昔、主二人が言った、ハンザ―」
言われた途端に、カッチンと来た。やっぱり子供に観られたくなかった。そう思う時期だった。それに、彼の言葉の続きを聞きたくなくて
「な゙っ神威、そんなことは言って―」
「ひっど~い(非道い)テト姉。わたし、今度それ聞いたら、テト姉『埋葬』しちゃうかも」
「言ってるようなもんだろ。昔っからしつこいですよ~、重音さま~」
わたしが、そんなリアクションを返すと思っていなかったのだろう。さすがに青ざめるテト姉。紫様、語気が優しいのが、かえって空恐ろしい。その軽口に、悪意がない事くらい知っている。でも、あの時、あの場面で『その言葉』だけは聞きたくなかった。それに、もし、彼が『ろ、が付く人』なら。わたしを含め、ユキちゃん、ミク姉、MikiちゃんIA姉あたりも危険だ、彼曰く。実際、彼に『その気』があったら、わたしは何度も危険な目に遭っていただろう
「お二人のすすむ生涯に祝福多きことを。清らかに、ですよ」
涙ながらに微笑んで、キヨテル先生が手をたたく
「がくサン―カッケエ。マジでカッケエ―じ、自分、腹据えました」
勇馬兄が、立ち上がる。顔が赤い。拳を握る手が震えている。そしてめぐ姉の面前に歩み寄る
「わわ、勇馬くん、どした―」
「グミさん、自分、年下すけど。まだ頼りないかもっすけど」
状況を飲み込めず、慌てるめぐ姉。勇馬兄、その手を取って
「とっ友達からでいいんで、じ、自分と、つひあってくださいっ」
告白した。セリフうわずってたけど。さらにその後
「っしゃ、ウチも決~めた。リンとおにぃに負けてらんね~」
リリ姉はしたり顔で、わたしを一回撫でた後。立っていたキヨテル先生ににじり寄る
「リリィさん、あの、まさか」
「まさかも何もさ~ぁ、気づかね~ねな~ぁ」
上目遣い、手を後ろで組んで。完全無欠の小悪魔モード。笑顔が引きつり、あからさまにたじろぎ、後退する先生。壁際まで追い詰められて
「センセッ、ウチ、センセが好き。世界でいっちばん王子様っ。ウチだけのナイト様っ。ウチだけのキヨテル先生ッ」
頭半分、背の高いキヨテル先生に壁ドン。宣誓、もとい先生両腕ではさみ、超至近距離で告げる。ナイト様というより、困り果てた『執事様』的構図
「うふふ、では、ワタシも決めました」
告白ラッシュは止まらない。突如妖艶にルカ姉は、隣に座っていたレンの顎を、片手であげる
「うっ、るるる、ルカ姉、どうしたの、ちょっ」
有無を言わさず、顔を近づけて
「レン君、あなたが好きです。もちろん、I LOVE YOUの好きですよ、ぁぁ可愛らしいワタシのレン君」
今まで、撮影に没頭していたミク姉、突如あわてて、スマホをぶん投げる。叩きつけると言った方がいいか。間伐入れずにレンをがばっと抱きしめて
「え、ちょ、だめ、レ、レンくんはわたしのなのっ」
と返す。これで大破したスマホ。データー引き上げも無理だった。以上、告白ラッシュが残っていない理由。嵐はまだまだ終わらない。はにかみながら
「Mikiちゃん。何時みたいに、ぼくのプラグを繋ぐ相手でいてくれませんか~」
ピコ君、伏し目がち、上目遣いでMikiちゃんに告げる
「良いよ~、ピコ君。うちず~っとピコ君の充電器で居てあげる。だ~い好き」
両思いだったロボコンビ。抱きしめて頬ずりをはじめるMikiちゃん
「「「「「「「「「☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆」」」」」」」」」」
またまた、いろんなところで、色々な色の悲鳴が上る。それに、完全勢いづくめー姉
「さ~、盛り上がってきたわぁ。これから四次会するわよ~」
「もう、今夜はオールでよくね、メー姉~」
「はは、お手柔らかにお願いしますよ」
はしゃぎだすリリ姉を膝に乗せる先生。あの日、告白への応えは言わなかった。ただ、その顔は『観念しました』という表情だった。実際、膝の上で甘えるリリ姉をタシナメなかったし
「ダメだよ~リ~ン、いくら何でもさ、グラス投げたりしたら」
「ん、ごめんねカイ兄」
「明後日、危険物の日です~ぅ。あ、ミクさんのスマホも、大破してま~す」
「あ゙あ゙あ゙しまったスマホ~~~」
テーブルを拭いてくれる兄、お詫び、わたし。ピコ君も、破片をゴミバケツへ。ミク姉、悲鳴をあげる
「さぁ、レン君、お口を開けてくださいな~」
レンに、アイスを差し出すルカ姉。頭の中身がオーバーヒート、魂消て魂消た(たまげて、たまげた)レンを挟んだその横
「う~。ルカ姉でも、レン君は渡さないモン」
眉がハの字のミク姉の抵抗。されるがまま、抜け殻状態のレン。その二人に、返った答え
「あら、ミクさん。ワタシ、レン君と同じく、ミクさんのことも好きですのよ」
「い」「え」「「「「「「「「「「は」」」」」」」」」」
さらに魂消て魂が帰ってくるレン。驚きのミク姉。そして一同
「ぅふふふふ、神威さんもお気に入りでしたわ。未だ氷山さんも、魅力的ですもの~」
「なんとぉ」
「ふえええ」
ロボットアニメ、主人公のような台詞で驚く紫様。相当に意外だったのだろう。こんな台詞回し、後にも先にもない。キヨテル先生の慌て方も、最初で最後
「でもあげないよ、ルカ姉。がっくんはわたしの。わたしはがっくんのだもん」
「あぶね~、アブネ~、先にウチのセンセにして良かった~。ルカ美人だから~」
ちょっと牽制、彼にしがみつくわたし。先生の腕にすがりつくリリ姉
「もちろん、神威さんはリンちゃんに、氷山さんはリリさんにお譲りします。だ・か・ら・こそ、ですわぁ~。ふふふ~、ミクちゃん、レン君、お二人まとめて愛してさしあげますわよ~」
言って、これ以上無い妖艶な笑みを浮かべる。気の多い大美人、ルカ姉。見やれば、めぐ姉は、勇馬兄と話している。明らかに今までと違う雰囲気で。上目遣いで、照れ合う両者。カル姉はピコ君とMikiちゃんに、祝杯を挙げている。二人は変わらない雰囲気で。でも、あからさまに、距離が近くなっている
「ちっ。幸せ者ばっかだぜ。あ~もう。さっきのPVもっかい流してやる、かむい。このフトドキモノ共が」
「おお、是々非々で観たいでゴザルヨ、重音殿」
「あ、わたしもっ、あのPVすっごっく良かったよ~」
やや、つまらなさそうにテト姉。逆にアル兄、めぐ姉は楽しそう。わたしと彼のPVが始まる。すると、盛り上がり方がさっきとは違う一同。囃し立てるメンバー。もちろん、観ているわたしも楽しい。おそらくは彼も。もう『何も気にすることはない』あの日のわたしは、一人思う
「あっは、やっぱヤバイよ~神威のアニキィ。この絵面~(えずら)さっき、ミクちゃんが言ったみたいになっちゃうんじゃない。リンちゃんの切なげな顔も、いみし~ん(意味深)」
「ふふふふふ。もう、楽しくてしょうがな~い。なら、そんなの、シリーズで撮っちゃおうじゃない」
「意外といけそうだよね、殿。多分、女プロさん、驚喜しながら作るんじゃないかな」
ソファに腰掛け、焼酎を手にご機嫌の彼、カイ兄と乾杯を交わす。もはやMikiちゃんの言葉に動じない。紫様とカイ兄の発案で、実は名作も生まれた。女プロさん、それはそれは嬉しそうに作ってくれた
「ほらほら~、抱きしめられたリンちゃんの幸せな顔~。神威のに~さんの切ない顔。夜空の下でぇ~、これもう、萌え萌え。身長差にキュ~ってなっちゃう~ぅ」
「神威君の乱舞は、リンの想いに応えようって必死さかしら。応えてあげられないもどかしさ、つらさの足掻きにも見えるわねぇ。実際超えていかなきゃならない山は多わよ」
萌え悶えるのはIA姉。認め合う、彼へ目配せ、やや気遣った感がある、めー姉。紫様、杯を掲げる
「すっごくお似合いじゃないですか。かむさんとリンちゃん。わあ、かわいい、紫のお花に囲まれてます~ぅ」
「みきみきとぴこぴこもお似合いだぞ。どっちもかあいい」
「「ありがとで~す、カルた~ん」」
盛り上がるメンバー
「じゃあ、ウチとセンセでアレ撮っちゃおうぜ~っ。ミクとルカで歌った『磁石』の、ア・レ~。教師と生徒設定でさ~」
「うっわ、そっちも反則感満載~っ。リリね~さんに、うちさんせ~い。超ヤバヤバ設定、萌えちゃう~」
Mikiちゃん、さっきからとても楽しそう。いや、事実楽しかっただろうな。わたし同様、想い人と結ばれたんだもの
「Solo(ソロ)の舞が多いのは、マダ二方が結ばれてオラヌというコトの表われでゴザル、カ。心は合っても、通じ合ってはイカン所も。試練でゴザル」
アル兄の小声は何故かと思った。きっと気を使ってくれたんだろう
「ですが、最後劇的なまでに歩み寄る。必ず結ばれると言う事でしょう。私は信じていますよ」
「ウチも、センセイイ事いう~。おにぃ、リン、応援すっぜ~」
「リリイさん、私達も同様に、ですよ」
真摯な声で、キヨテル先生。リリ姉、先生の胸に頭を埋めながら。一瞬、悲しげなリリ姉。あまり見せない顔だった。みんなに囃し立てられているうち、曲が終わる
「でゎ~、目出度く結ばれたぉ二人に、インタビュ~。喉の滑りを良くしましょ~。はい、に~さ~ん、お祝いのお酒~」
「お、ありがたいじゃない、ありがとう、IA」
IA姉、にこやかに質問、祝福のお酒を注がれる彼
「ぽ兄ちゃん、どしてリンちゃんがそんなに好きなの~。はいっリンちゃんも飲み物どうぞ~」
「ありがと~めぐ姉」
「あ~スマホがあれば撮ったのにい゙い゙い゙~」
「ミク殿、拙者のTablet(タブレット)で撮影を。コレハ残しておきたい動画でゴザル」
めぐ姉の言葉で、思案に入る紫様。ミク姉、アル兄にタブレットを拝借し、嬉々として撮影開始
「はいっ、REC開始っ、イイよ~がくさ~ん」
わたしを好いた理由『話してイイ』と言うこと。ミク姉の声、上を向く彼、言葉が出ない。しばし無言に『アレ』っと誰か声を上げる
「~、ワッカンナイ(解んない)気がついたら好き。声に惚れてるのは確かだけど。もしかしたら、出会ったその日に惚れちゃったんじゃない。危ないアブナイ、25歳が8歳。出会ったあの日は~」
あがる歓声と悲鳴『アウト~』『ダメだ~』『リンちゃん逃げて~』とか。ドヤ顔の紫様。と、テト姉
「お前やっぱ真性のろ―」
テト姉ブラック、わたし、先生に睨まれ、退治される。懲りない人。後ろを向いて、押し黙ってしまう。紫様、今度は照れ笑いに変わって
「まあ、笑顔がかわいい子だなって思ったのは確か。レンの笑顔もかわいいけどさ、違うじゃない、笑い方。レンは『笑顔になっていく』感じだけど、リンは『瞬間笑顔』って感じ。七分咲きすっ飛ばして、いきなり満開の笑顔がリン」
「あ、ぽ兄ちゃん間違えたことないんだもんね、リンちゃんとレン君。京の都で聞いちゃった、リンちゃんから~。ぽ兄ちゃんにとって、特別なんだね、リンちゃん」
「あの後写真見せて貰ったら、マジでそっくりだったもんなっ、ちびリンレン。おにぃが一回も間違えねぇって、すっげぇ」
席に戻って、微笑むめぐ姉。リリ姉もキヨテル先生の上でゴキゲンさん
「はじめてリンが飛び込んできた時にさ、何かを感じた。縁(えにし)みたいなのを。俺が来た初日、リンと声を重ねたその時に、俺、想った『ああ、この子と歌って生きていくんだな』って。それがこんな形に成るとは、思わないじゃない」
「ええ~っ、初日に歌ったの、アニキ~。ぶっつけ本番でしょ~」
「会ったばかりで歌ったんですか~、驚きです~ぅ」
仰天の表情、Mikiピコちゃん。この日、メンバー周知となったこの事実。ただ
「ええ、本当よ、ふふ、思い出すわ。二人、デュエット増えたけどね、あの日以上のハーモニーは無いわ、今のところ」
「凄かったよね、め~ちゃん。ああ、ある意味運命的出会いだったのかな。リンと殿だけだった、声を合わせたの。その証の歌合わせだったのかも」
その歌声を知ってるのは、始まりの六人だけ。始まりのあの日、このリビングにいた者達だけ。ああ、もう『お一方』このリビングの『神様』も声を聴いてるかな。いつかの話題、八百万(やおよろず)
「まぁまぁ、そんな事があったのですねっ。お聴き出来なかったのが口惜しい気持ちですわぁ。ワタシ、まだその日、戻ってませんもの~」
「これから先も聞けないかもな~。悔しいケド、おれも認める。あの日、リンとがく兄すごかった」
ルカ姉『口惜しい』の言葉と裏腹。右手の平を頬に当て、うっとりしてる。レン、悔し笑い、こっちは感情のまま
「な~んかね、アレ聴いちゃったら、わたし達も歌合わせ出来なくって。尻込みしちゃった感満載~」
「それで、って感じかな。今までオレ達も、だ~れにも言わなかった思い出、いま解禁かな。や、違うか『言えなかった』のかも。本当に衝撃的でさ、神々しいって程の歌声だった」
そう言えばそうか。わたし、勝手に『自分と彼だけ』の思い出と思ってた。それは、あの日、わたしと彼の歌声を聞いた、家族達も語らなかったから。あの日の思い出を
「やっぱり特別なんだね~、に~さんとリンちゃん。ゎ~ステキ~」
目が輝くIA姉、応援し続けてくれる姉
「細かい事は解んない。けど、リンが好き。一緒に過ごしていくうちに、どんどん惹かれていったじゃない。さっきの聞こえたか、おまえ達。毎日会いたくなった時点で、きっともう好きだった、たぶん。いつの間にか、何時の間にか、俺の心は、リンの色に染まってた。それが何時からかは、思い出せないけど」
果物のタネ、形状を模したという、紫様故郷が元祖のおかき。摘まんで焼酎を一口。彼の手のひらから、わたしも種のおかきを一口。みんなも手を伸ばす
「ケガした時、買ったリボン、大切に使ってくれて嬉しい。天気の良い日は、贈ったローファー、履いてアイサツに来てくれて、さ。可愛い笑顔、満開で。あの姿見る度、俺胸キュン。家違うのに、必ず来てくれるじゃない、学校『行ってくるね~』って。そんな健気さも惹かれた所」
「そ~いや、リンさ。雨の日、靴変えてるよな、安いスニーカーにさ。アレ何で」
彼が言ってくれる『かわいい』『胸キュン』に、わたしの胸も高揚する。レンの質問にゴキゲンで
「だって、汚したくないもん、がっくんがくれた靴。大事に履いて、少しでも長く履きたいも~ん」
そう、大切に履きたいから。だから、わたしと同じ日に貰った通学靴、結果レンの方が先にくたびれた
「リンが靴を変える理由。うふふ、アタシはな~んとなく、気付いてたわぁ。神威君からのプレゼントだもの」
「一張羅にしてるリボン、ネックレス、ローファー。全部殿の贈り物だもんね、大事にするワケだよ」
さすがメイカイ夫婦。単純なわたしの思考、お見通し
「ではでは、おうちに来てくれる理由は、りんりん」
「訊くまでもね~かもな~、カ~ル。へへっ、おにぃが早出とか泊まりで居ねえと、悲しい顔するじゃん、リン」
「ふふふ、ぽ兄ちゃんはぽ兄ちゃんで、そわそわし始めるもんね。六時半が近くなると」
離れた所からイタズラモード、神威の姉。通学に時間がかかる学生組。起床は五時。朝が弱い、レンは結構苦痛のようだった。私や神威家は総じて朝型。身支度を整えて、彼の家、玄関に顔を出すのが六時半
「来てくれる理由、知りたいじゃな~い、リン~。ま、俺の落ち着き無くなる理由は、アサイチリンが待ち遠しいから。言うまでもな~い」
やっぱり兄妹、イタズラ顔がそっくり、リリカルめぐぽ。ん『めぐぽ』って何だ。ああ、めぐ姉と、ぽ兄様の事か。彼ものぞき込んでくる。わたし、イタズラっぽく顔をあげ
「だって、がっくんに会いたいから。朝一番には無理でも、やっぱりアイサツしたいもん」
メンバー歓声『おのろけ~』なんて声も聞こえる。そこでめー姉
「イタズラ笑顔、そっくりねぇ、神威家み~んな」
「ね~、めー姉、わたしも思うよ~」
わたし、感想を言ったつもりだった、返ってきた応えは
「あら、リンも含めてよ~、そっくり笑顔。ふふ、神威の妹から、神威の『義姉(あね)』に成るわねぇ。神威のお家、神威君に嫁ぐんでしょう、リ~ン」
「ふふふ、りんりん、かるの義姉(おねえ)ちゃ~ん」
「あは~、リンちゃん、アニキの奥さんケッテ~イ(決定)」
『神威の妹』から『神威の嫁』に昇格するわたし。カル姉のお姉発言が嬉しい。Mikiちゃんの『嫁決定』に、わたしの心歓喜
「まだちょっと気が早くない。俺がリンに捨てられる可能性もあるワケじゃない。ローファー談義から、えっらい所にWarpOut(ワープアウト)したな、話の矛先」
少し困り顔の紫様。それは、わたしの事を考えての言葉。わたしの将来を束縛しないようにと。後から聞いたこと、本当に優しい人。ただ、罰当たりのわたし、そんな思慮さえ読み取らず
「もう、がっくん、わたし、がっくん捨てたりしないもんっ」
言って、首にすがりつく
「はは、ごめんごめん。まぁ、将来はゆっくり考えて。それこそルカが言った。中華の街で、俺も言った。靴の言葉みたいに、素敵な道を歩けるように」
撫でてくれながら、彼は応えてくれた。それが嬉しくて
「うん、がっくん。でも、素敵な道は『がっくんと一緒』に歩くんだよ。あ、ローファーって言えばね、がっくん、とってあるよ、あの靴も~っ、けほっけほっ」
「リン、大丈夫、ほ~ら落ち着いて~。深呼吸~」
背中をさすってくれる彼。わたしの事、とことん気遣ってくれて上機嫌。わたし、首から手を離し、再び横抱き状態
「~っはぁ、ありがとうがっくん。なんか喉渇いちゃった」
「大泣きしたからじゃない、はい、コレ飲んで水分補給~」
りんごジュースを手渡してくれる。蛮勇告白の緊張と、その後の大泣き。やや脱水気味らしい、喉が渇いてた
「で、で、リ~ンちゃん、とってある靴ってな~に~」
「やぼ(野暮)さんでも気になります~ぅ」
Mikiちゃん、ピコ君、アホ毛を揺らして楽しそう。紫の彼『靴』の単語で、思い至って
「靴、ああ、昔贈ったアレのことじゃない。はは、もう履くことできないだろうに」
「だって、捨てられないよ。がっくんがハジメテ贈ってくれた、思い出の靴だもん」
「ぁ~、また知らないぉ話しだ~、するいよ~ぅ」
IA姉、ほっぺがリスみたい。不満げ全開、始まりの六人、いや、ルカ姉は知っている。誕生会の時、思い出話で話したから。それ以降、話すことはなかったけれど。神威の姉には古都でわたし自身が話した。だから知っている
「あのね、IA姉、9歳の誕生日。がっくんが来て、初めての鏡音の誕生日。みんなね、忙しくて、忘れられちゃった事があったの」
「子供だったよな~、リンとぶんムクレちゃってさ~。したら、がく兄だけは覚えててくれて」
片割れが眉を下げつつ、反省の弁。でも、誕生日、覚えてくれている方が嬉しいのは確か
「大事な双子の誕生日、忘れたらダメじゃない。で、靴と簡単な料理買って帰ったら、ふてくされてたじゃない、リンレン。ローファー贈ったら、うれし泣きまでしてくれて、さ」
思い出話で、一度話しがそれかかる
「あの日も、救けられたわね、神威君に。でも、話しがそれてるわよ~。ふふ、大事な双子、リンがどうして好きなのかしら、神威く~ん」
「レンも可愛がってたけどね、殿は。でも、リンには輪を掛けて過保護な理由が知りたくないかな、み~んな~」
メイカイ夫婦が軌道修正
「わ~たしも気になる~、がくさん、ど~して~」
「ワタシも気にかかりますわ~、神威さん」
ミクルカ姉の、レンサンドイッチ、この日爆誕『おまえ達二人の理由も気にかかるじゃない』そうつぶやき、一呼吸。わたし、多少、身構える。と、わたしの頭に手を置いて
「さっきまで話してたのがほとんど理由じゃない。細かい事は解らない。きっとこれから、少しずつ解っていくんだと思う。でも、これだけは確かじゃな~い」
さらに焼酎を含んで一呼吸、あえて、勿体を付ける彼。したり顔で微笑んで
「世界で誰よりリンが好き、この気持ちは俺が世界一。イヤ、平行世界だの何処世界だの、三千世界だの含めても、か。誰にも負けない、俺が一番、リンを好き。さっきリンが言ってくれたから、今はこう思ってる『一生、一緒に生きていきたい』って。側にリンがいないとか、考えられない。俺、重音が言うような『少女趣味』じゃないけど『リンコン』は確かじゃな~い」
もの凄い歓声、口笛、指笛、悲鳴とため息
誰よりもキミが好き
でも彼は言った
これまでもそうだった
『少女趣味』ではない
それと『好き』とは話が違う