はじまりのあの日   作:代打の代打

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黄色い少女が告白して、紫の青年が告白して

一年後の物語。主人公はがっくん

彼の苦悩と葛藤、そして『恋心』

一夏の恋の物語。切ない二人の、物語

本章には、やや『おませ』なリンさんが登場します、苦手な方はお戻りください。また、恋愛要素も強めです(あくまでも、投稿者の割合で)


第二章 一夏の恋の物語
今日から始まる夏休み


午前三時半

 

目覚ましにかけてた、携帯のアラームで目を覚ます。アラーム1の電子音。俺、好きな曲はアラームに使わない。イヤじゃない、好きな曲に『叩き起こされる』って。さすがに若干眠気はある。いつもより一時間早く起床。大の字になって、しばらく呆ける。眠気が込み上げそうになったから

 

「~~~、今日も一日、気合い入れて生きますか」

 

勝手に呟いて、勢い付けて起床。さっさと身支度、しようじゃない。布団畳んで、自室を後に。歯磨き、フロスに、舌磨き。次に洗顔、済ませて着替え。髪を縛る、オールバック、全部頭てっぺん一縛り。これから料理するじゃない、髪は上げておく。簡単にシャツとジャージズボンで良いか。着替えて『実家』の合い鍵持って、タワーマンションに向かう。まだ灯りは、どの家にも確認できない

 

「みんなぐっすり、か。ふふ『俺の嫁』もオネムじゃない」

 

リンが、俺に告げてくれて。俺がリンに告告げて、一年と約一月か。アンドロメダ座、輝く、秋の夜の空。昨日より、一週間の夏休み。通学組も公欠扱い。夏の間はどこも、祭り、イベント盛りだくさん。俺達歌い手、引っ張りだこ。世間が盆休みの間でも、俺達はイベント出演する。花火大会、精霊流しに盆踊り。歌って踊って、手を合わす。ありがたいことだけど。さすがに、後半はバテるじゃない。世間の熱気も、気温も。下がり始めたこの時期に、少し遅めの、夏休み。ほんの少しの、夏休み。マンション『実家』の鍵を開ける。電気を点ける、ホール、レンが拵えた(こしらえた)伝説の艦(でんせつのふね)の脇を通る。そういえば、アンドロメダ星雲、さっき観たけど、在ったな。同じ名前の艦(ふね)このアニメの中に。レンやリンと一緒に観たじゃない

 

「思い出が沢山、じゃない。たった一年だったけど」

 

この家で過ごした。大事な仲間と過ごした。一族でもない俺を、暖かく迎えてくれた。はじめにすっ飛んできた、黄色いあの子が

 

「その子に心、奪われるか。まったく、俺って」

 

どうなってる。そう思っても、あの子に夢中。親父の作曲した歌にあったな『キミを抱いたまま、宇宙の遙か彼方へ』って。ふふ、おかげで、孤独の旅路じゃなくなった。リンが、女王陛下やマブダチが、俺の周りに居てくれるじゃない。みんなとこの船で、あの岬の星へ行ったら、許されるのかな、俺と

 

「リン。最近、益々綺麗になっていく」

 

だから、最近しんどい、自分保つの。だけど、命がけで保とうじゃない。後ろめたくはないから、疵付けたくないから。昔行った、縁結びの神社、古都だったじゃない。恋の神様、一体全体、何を思ってこんな事に。あの子と俺、何故この組み合わせ。神様は時々、人の事、モテ遊ぶ。仏様はそんなことしないじゃない。神様の手のひらの上で、踊らされてるか。あの子の事、考えて、胸の奥が、温まって、苦しくなって、切なくて。だけど一緒に居ることが楽しくて。みんなといることが嬉しくて。あっという間に日が暮れる。ふふ、そんな歌があったじゃない。暇潰し、か、神様の。思案しつつ、ただ一カ所、光漏れている場所の、敷居を跨ぐ。秋の虫、聞こえるキッチン。いつものように

 

「あ、殿、いらっしゃ~い」

「待たせたか、カイト」

 

俺&カイト。フリフリ、桃色エプロンカイト。この格好で『薄い本』も出品されてるらしい、俺達。ははは

 

「観て、このリク用紙~」

「いつも通りじゃない、百花繚乱」

 

キッチンテーブルの上、リク用紙が咲き乱れ

 

「しかしアレだね」

「ん」

「ほんと、バラエティーに富んだリクエストだよね」

「まぁ、個性の塊集団じゃない、俺達。いい意味で」

「確かにね、リク観てるだけで楽しくなるよ」

 

リクエストメモの大群が置かれた、キッチンのテーブルを見る

 

「カイト、天気予報は」

「今日から一週間、お日様マーク」

 

満遍の笑顔がまぶしいじゃない、マブダチよ。こっちも笑顔になるじゃな~い

 

「大自然からのご褒美か」

「ありがたいよね」

「で、皆様からのリクエストは」

 

大漁のリクエストメモを前に、俺とダチ。カイトが着ける、薄桃のフリルエプロン。最近贈られた二着目。俺は腰巻き、リンとお揃いの形エプロン

 

「じゃ、いつもみたいにクイズでいくよ」

「よし。間違ってたらツッこめ」

 

頭、覚醒させるのにも丁度良い

 

「まず、マグロのカマ焼き」

 

の、リク、わっかりやす(解りやす)

 

「ルカ」

「まぐろだもんね、オレでも解った。え~っと、え・び、ああ、エビフライ、と英文で」

「オリバー」

 

英文は確実に作って欲しいからじゃない。漢字なんかも覚え始めてるけど、誤字もおおいから。相当食べたいんだろうな、エビフライ。可愛いじゃない

 

「正解、次ね。鴨のローストとひらがなで」

「カルだな」

 

なぜかあの子ひらがな遣い『あにさま』にも理由はわからない

 

「ぽ兄ちゃんのフライドポテト」

「めぐ。ぽ兄で分かる。よし、トッピングソースもバリエーション、作ろうじゃない」

 

皆大好きFriedPotato(フライドポテト)メンバーへの気配りも感じるリク。さすが俺の妹様、ん、そうか、勇馬のコトも考えてのリクか。じゃがいも大好き勇馬

 

「枝豆を所望いたす」

「アル。侍コトバ」

 

THE・Japanese、アル。ビールと併せたいんじゃない

 

「焼きネギ甘味噌和えで」

「ネギ好きミク。あの子、玉ねぎはどうじゃない、カイト」

 

気になったので聞いてみる

 

「好きみたい。でも、長ネギのがもっと好きなんだって。次、フルーツサンド、バナナ必須」

「レン。トコロでカイト、フルーツサンドって、食事かデザートか迷わない」

 

これも気になったから訊いてみる

 

「どっちかなぁ、オレはご飯かな。ボリュームあるから」

「俺は三時のオヤツ感満載だけどな、トレーニングの後に丁度良いカンジ。さて次は」

 

尋ねたら、吹き出す親友。笑いをこらえる、何その反応

 

「~~、ふふっ。あのね『がっくんが好きなもの』だって」

 

一瞬呆ける。俺が好きな―

 

「っリン」

 

俺、リン好き。で、好きなものって、何言わせるリン

 

「はははははっそれ、答え。それとも『殿が好きなもの』」

 

からかうような笑顔のカイト。コレを言わせたかったじゃな~い、リン、恐るべし

 

「どっちも、言わせるんじゃない」

「殿、耳まで真っ赤」

「当然じゃない~い」

 

笑われる。リン、やるようになったじゃない

 

「こんなリクエストする、リンもなかなかだね。次は、醤油おこわ」

「同感だ、耳まであっつい。あの子最近積極的に『仕掛けて』来るじゃない。告白の日から一年、急激に『育って』もきてる」

「ん、ああ、そうだね。この前自分で言ってた『もう滑走路じゃないも~ん』って」

「っははっ、滑走路ってイイ例えじゃない」

 

自覚あったのか、そして『気になる』ようになったのか、リン。成長したもんじゃない。だから

 

「ぶっちゃけ正気保つのしんどくなっていく。最近思い知った、俺これからどんどん辛くなるんだなって」

 

マブダチだから、心情吐露

 

「そだね~、リン、高校生くらいになったら、どんな風になるかな。ははは、殿、ファ~イト」

 

実際考えたくナイじゃない。兎に角、俺が、いや『二人で』超えていくしかない。きっとリンはリンで、思い悩むトコがあるはずだから。困り顔のカイト。さて、話を戻そう、ん

 

「ああ、しんど。でもま、リンが一緒に居るだけでもイイじゃない。リンが居ないなんて、絶対イヤ。で、カイトリク何だっけ」

「ああ、醤油のおこわ」

 

そんなに笑うなカイト、ちょっと小憎たらしいぞ、この幸せ夫婦

 

「笑うな、よ。がんばる俺って、いい男じゃな~い。勝手に自惚れ~。さて、おこわは、ピコじゃない」

「正解。次は、ははっ。連名でハンバーグ、か~わいい字」

「ふふっ、リュウトとユキ」

 

ありがとうユキ、リュウト、気持ちが落ち着く。さすが天使様、お利口さん

 

「モカと、キリマンジャロのブレンドをお願いいたします」

「テル。それ、テル自身で煎れた方が美味しいじゃない」

 

お茶の煎れ方、メンバー随一

 

「確かに~豆だけ買っていこっか。あっちで煎れて貰おうよ。ちょっと良い豆買って行ってさ。で、センセのブレンドにあうヤツ」

「リリィ。よし、バナナサンドもあるんだ。SandwichVariation(サンドイッチバリエーション)でいこうじゃない」

「スイーツも買うだろうからね~。次は〆の酸辣湯(サーラータン)麺」

「いろは。素材だけ買って、乾麺、持っていこう。現地(あっち)で作ろうじゃない」

 

トッピングは、買い出しで閃いたものにしようじゃない。鍋を見ながら思う

 

「向こうで作った方が美味しいもんね。次、中華まん」

「Mikiホットケーキミックスと、缶詰で作る、簡単中華まん。あっちで蒸すか」

「正解。なんでわかったの」

 

不思議な顔、するんじゃない

 

「あいつ、饅頭系好きだから。中華の街ん時、豚まん送っていってたじゃない。次」

「肉」

 

ぎゃお~んって怪獣の鳴き声が聞こえるじゃない。HRバッターのあだ名怪獣

 

「重音」

「だよね~、ぶれないテト姉さん。ふっ、もう一人ぶれない。おつまみてきとう―」

「メイコ、次」

 

ほんっと(本当)解りやすいな、女王陛下。そりゃカイトも吹き出すじゃない

 

「神威のに~さんのもちもち芋餅」

「IA、に~さん呼び」

「カイサンのミート・ポテトパイ」

「ってかもう勇馬しか残ってないじゃない。じゃがいも大好きっ子」

 

そこで、声を立てて笑うダチ

 

「全問正解。やっぱ、メンバー大好きだね殿」

「だ~いすき。みんなが好き」

 

掛け替えのない仲間達。俺は大好き

 

「うわ、即答するね~、躊躇無く」

「で、お前は何食べたい」

「え」

「リクエスト『兄ちゃん』に言ってごら~ん」

 

お前の好きなもの入ってない。お前も好きだ、マブダチ

 

「ま、何でもおいしいからいいんだけど―」

「言ってみようじゃない」

「~、ポテトサラダかな」

「じゃそれから作ろうじゃない」

 

ジャガイモは常備菜みたいなものじゃない

 

「兄ちゃん」

「ん」

 

頬を染めるな、何だか可愛いじゃない

 

「ありがと」

「良いんじゃな~い」

 

三泊四日、旅行へ行こう。湖畔のコテージ、予約できそうだから。そんな楽しい提案をするのは、いつもメイコ女王陛下。メンバー全員が愛してやまない、メンバー全員を愛して止まない。始まりの歌姫にして、最高権力者の女王陛下様。なら、着いたらすぐに騒げるように、と。ある程度の惣菜は作ろうじゃない。三時起きして、今現在。隣家の台所へとやってくる。タワーマンションのこの家と、我が家、シェアハウス。三家共々、合い鍵は使い放題。メンバーの中に、悪党なんぞいないじゃない。好きなもの、作ってあげるから、リクエストを書いとけと。言っておいたらこのありさま。まぁ、作るのも、無茶振りも。このメンバーのためならば、むしろ歓迎するじゃない。女王陛下で、ふと思う

 

「ポテサラって、つまみにもなるじゃない」

「言われてみれば確かに」

 

じゃがいもの皮を剥きながら思う

 

「カイト、やっぱメイコ一筋だな。ポテサラ、メイコも含んでのリクじゃな~い」

 

聴いてみたら

 

「はずかしながら肯定するよ」

「のろけたな」

「うん」

 

カイトとメイコ。この二人の縁(えにし)語ることなど、不可能なほど深いものだ。他者が入り込むことなど、失礼の極みだろう

 

「ポテサラ、食材買ってないけど作れるかな」

「芋と、ハムと、マヨネーズ。玉子にフルーツ缶、スライスきゅうり。大人用には、玉ねぎ入れてってとこか。イコール」

 

思い至る顔、ダチ

 

「ああ、常備菜と冷蔵庫のレギュラーメンバー」

「何も心配することないじゃない。さていくぞ」

 

調理開始。じゃがいも五十個。芋山(いもざん)芋餅用、フライドポテト用のも含め、大量の芋の皮を剥いていく。取り分けて、茹でる。玉子も茹でる。串がすっと通るようになったら、芋潰し。玉子つぶし。マヨ和え。ハム和え。ってかもう全部あえ。子供用を取り分けて、大人用には胡椒と玉ねぎ。二種類作るじゃない

 

「一品完成~。ヒトシナだけど、結構労働だよね」

「数が数だからじゃない。さて次、カマ焼き、焼きネギ、枝豆、めだまやき。冷蔵庫にマグロのカマが鎮座してた」

「ん、殿、めだまやきリクにあったっけ」

 

頭に疑問符が浮かぶ親友

 

「いや、俺たちの朝食。作っちゃおうじゃない」

「ああ、納得。あ、ごはんとお味噌汁どうしよう」

 

こんな事もあろうかと、ってヤツじゃない

 

「お米は昨日の晩、神威家にセットしておいた、電子ジャーに。味噌汁は、頃合いみて作ろうじゃない。さて、二十個イッキに焼くぞ。ネギもカマも焼く」

「焼くのみ、茹でのみのしばりだね。さすが殿、ご飯ありがとう」

「朝ご飯、白飯必須じゃない、メンバー。さて、手間かかんないヤツから行くぞ」

 

鍋に水を張るカイト。俺、フライパンをコンロにセット

 

「じゃあ、オレ枝豆作っちゃうね。塩でもんでそのまま鍋。水から茹でて沸騰したら、五、六分」

 

大鍋に水を張る、カイト。この人数分の枝豆、大漁ゆで

 

「ネギは、一回軽く茹でる。それから焼くと、とろとろでうまい」

「カマ焼きは、蒸し焼きにしてっと」

「火、通るまでにタッパ、重箱洗っとこうじゃない」

「保温ジャーとクーラーボックス、用意しとくね」

 

ほかほかの、枝豆、ネギ、カマ。そして、目玉焼き。ついでに、朝食用のサラダも二品。野菜サラダとツナサラダ。割愛するケド、ここまでもけっこうな格闘じゃない。特に、二十一個のめだまやき。フライパン、二つ使って、計四回。半熟、全熟、その中間。好みで焼き分け計四回。皿にうつして、テーブル拭いてって辺りで

 

「おはよ~うがっくん」

 

うっわ、コノ声超嬉しい。目をこすりながら、リンが起きてきた。時計を見れば、時刻は五時

 

「おはよう、リン。はやいじゃない。お、お着替えも済ませたの」

「お手伝いのために、早起き、早起き~。うん、身支度整えた~」

 

といって、俺に抱きついてくる、簡単な部屋着のリン。ああ、なんつうかわいさ。抱きかえしたい、ヨコシマな衝動をおさえつつ

 

「ありがと、リン。じゃ~お手伝いお願いしようじゃない。まずリビングのテーブル拭いて、キャスターでこのめだまやき艦隊運んで~」

「こころえたっ」

 

破顔して、キャスターを取りに行くリン。あ~あ、かわいい

 

「も~、ちょっと傷ついちゃうな~。殿だけだもん、お手伝いの名前に呼ばれたの~」

「お前は十分幸せ者じゃない、カイト。愛する奥様がいてさ。このくらいの役得、いいじゃない」

 

眉を下げるダチ。言葉通り、幸せ者め、俺だって羨ましい

 

「がっくん、蠅帳、被せた方がイイよね。持って行く~」

「お利口さ~ん、さすがリン」

 

そう、まだ羽虫が飛ぶ季節。防虫重要。キャスターにめだまやきを載せ、蠅帳抱えて、運ぶ『嫁』

 

「まぁ、そだね~。このくらいの事で不満言ったら、バチが当たっちゃうか。オレはめ~ちゃんと結ばれて、許されてるワケだから。殿が来てからだもんね、リンが料理、し始めたの」

「ぅふ、だって、がっくんと一緒にしたいから。がっくんと一緒にお料理するから、楽しいの」

 

ちょっと頬を染めて言ってくれるリン。凄まじくかわいい

 

「あ~あっ、もうっ、オノロケちゃってさっ。殿っ、解んないでしょ、妹を取られちゃった、お兄ちゃんの無念~」

 

悔しがりながら、でも笑顔だな、カイト。そのお兄ちゃんに

 

「カ~イ兄~っ、いいじゃな~いっ、カイ兄にはめー姉が居るんだしっ。それに、がっくんだって取られちゃってるんだよ、めぐ姉。勇馬兄にさぁ。リリ姉だって、キヨテル先生に夢中じゃな~い」

 

はじめ笑顔で、もっともなことを言うリン。しかも、俺まで気遣って下さり、ありがとう。口調も真似てな~い。ただ後半

 

「わたしとがっくん、成れてないんだよ、恋人に。仲良しさんでいてくれるのは嬉しいけど。わたしとがっくん、恋人はダメなんだよ」

 

やや尻すぼみ、痛そうな笑顔。堪えてる顔。我慢させてるじゃない、俺。ごめんね、リン、年齢大人の

 

「俺のせいだ。こんなに離れた大年増、純粋少女をカドワカシテ。辛いなぁ、リ~ン。本当にすまない」

「謝っちゃ、ヤ。がっくん、わたしはがっくんが好き。どんながっくんでも」

 

俺が何時も言ってる台詞、返してくれる、やさしい子

 

「さ~、ご飯の準備しよ~お。ごめ~ん、変な流れ作っちゃって~。リ、リン、お醤油も持って行って~」

 

ワザと声高に謝ってくるカイト。醤油入れをキャスターに載せる

 

「ん、じゃあ、置いてくるね、がっくん、カイ兄」

「戻ったら、一緒にご飯、作ろうじゃない」

 

俺が出来る、この子を癒してあげられる方法の一つ。頭撫で撫で。笑顔になって、目玉焼きと行く、リン

 

「ごめんね、殿。余計な事言っちゃって」

「俺はいい。何処まで行っても、反則してるのは俺じゃない」

 

申し訳なさそうに、眉を下げるカイト。俺、リンが行った方を観る

 

「けどさ、あの子は気にしてるじゃない。早く大人に成りたい、そんな想いが伝わってくるわけ」

「でも成れない。事実、まだ子供っぽいトコロあるもんね、リン。精一杯、背伸びしてるけどね」

 

そ~う、さすがカイ兄、わかってるじゃない

 

「リンが思い描いてる『大人像』は、俺達『大人(笑)』の大人じゃあない。明確には解らないけど、きっとズレがあるじゃない。その差が埋まる日まで、リンがそこに近付く日まで。最低限、俺があの子を『大人』と思える日まで。俺とリンは今のまま」

「そっか、ホントにゴメンね、兄ちゃん。辛い、よね、その状態」

 

申し訳なさそうに上目遣い、するなよカイト。可愛いじゃない

 

「こんな馬鹿げた恋愛劇、大人と子供の恋物語。巻き込んじゃった俺に責任がある。断る事も出来たじゃない、あの日。でも、断れなかった、俺は」

 

そうだろう、だって気がついちゃったから

 

「純粋少女に恋してる、不埒な自分に気付いたから。俺は好きなんだよ、リンが。どうしても断れなかった、その『好き』の対象から告白されて。弱いじゃない、俺。もしかしたら、リンの将来、奪っちゃうかもしれないってのにさ」

「殿はさ。考えなかったの『断る事』でリンが傷つくって」

 

ん、そんな可能性もあったか。でも考えなかったじゃない

 

「あの場で断っても、きっと『間違えだった』って気付いてくれる。そんな風にも考えた、チラッと。それでも断る事が出きなかった。本当に、俺は」

「殿、リンのことだから、オレ、きっと間違ってないと思ってる。リンがね、殿を好きになったこと。本人以外はホントのことは解らない。でもさ」

 

カイト、まぐろカマが入ったタッパ、蓋閉めながら

 

「あの子が決めたことだから、きっと間違ってないと思う。殿が来るまでの三年間、俺達は一緒に過ごした。五歳の姉弟が、自分の意志でオーディション受けて。親元離れて、やって来て。弱音も吐かずに、一生懸命歌って、さ」

 

そうだ、それは、俺の知らない物語。考えてみれば凄いじゃない、五歳で、しっかり意志がある。へこたれない、打たれ強さを持っている

 

「ここまで、何一つ間違えてないと思うんだ、双子ちゃん。いや、失敗とかは、いくらでもあったケドね。オレやめ~ちゃんにお説教されて、泣いちゃうとかさ」

 

誕生日、忘れたりな、カイト

 

「でもね、間違ってないんだよ『人生の選択』は。今、リンレン、大好きな人達に囲まれて、大好きな歌を歌って。今、すごく幸せな人生だと思うんだ」

 

すごい説得力じゃない、さすが『カイ兄』解っていらっしゃる

 

「オレが15の時なんて、リンに全然及ばない」

 

俺も全く及んでない。そうな、あの子の領域に到達できた、そう感じたのは、少なくとも25を過ぎてから。このPROJECTに、参加出来てから

 

「そのリンが選んだ、殿を。14歳で『生涯の伴侶』を見つけた。普通じゃあ考えられない。でも、オレ思うの『リンが選んだ殿だから、きっと正しい事だろな』って」

 

そうで在って欲しい。そして俺が、そういう存在で有りたいと思う。誰よりも、俺自身が

 

「だから、俺もみんなも応援する。殿とリンを」

「有難い(ありがたい)話じゃない。普通『援護』さえされない、間柄だ」

「うん、でもね、殿」

 

ダチの声のオクターブが下がる。より一層マジバナ(真面目話)か。俺も、惣菜収納を止め、カイトを観る。微笑みと怒り、その中間の顔。一番のマジバナをするときの、真顔

 

「『絶対に間違ってない』って言えない。だって物事に『絶対』なんて無いんだから。で、ね、殿。殿が『しんどくなってきた』って言ったから、オレ言う。殿が『見境(みさかい)』無くしたら、それこそリンの将来、総て奪っちゃうからね。そうなったら、オレは許さない『14歳のお母さん』なんて物語があったくらいだから」

 

よく言ってくれた。さすがは俺のマブダチだ

 

「それだ、俺が一番恐れるのは。カイト、お前が恐いんじゃない。世間様の『制裁』が恐いわけでもない。まぁ、お前に嫌われるのは恐いか、親友、敵にはしたくない」

「オレも、殿と仲良しでいたいもん」

 

カイト、困った顔した。複雑な問題

 

「俺が恐れることは『リンを疵つける事』どの意味合いにおいても『最大限』疵つけること。俺は誰よりも、それを望まない。俺が一番、忌み嫌う行為『疵つけたくない』誰よりも愛しい、リンを。だから俺は耐える。やせ我慢も男の修行。地元、越後出身、偉大な元帥様のお言葉だ」

 

俺がどんな顔したか解らない。自分の顔、見えないじゃない

 

「殿」

 

でも、どんな顔してたか、カイトの顔で察することはできた。今度は誰より、相手を思いやる時の微笑みだった

 

「辛いんだね。リンと恋人に、成れないの」

「辛いな。でもいいじゃない。俺の傍には、みんながいる。大好きなリンが居る」

「~、辛いな~ぁ、観てるの」

 

そう思ってくれるだけで、まだ救われるじゃない、カイト。でも乗り越えるしかない。俺はリンと添い遂げる。何時か解らないけど、そう成れる日まで

 

「辛い(からい)辛い(つらい)同じ文字で読みが違う。俺は辛い(からい)の大好きだ」

 

話題のフリ方に、困惑するカイト。ちょっと聴いてくれない

 

「でも、辛い(つらい)のは好きじゃない。リンが好き、けど、好きな子が『少女』だから、恋人は許されない。俺は『大人』だから。正直辛い。大嫌いな辛さ(つらさ)を、耐えて、超えていくしかない。まだイイじゃない、みんなから『乗り越えて』なんて応援されるだけ。本当なら許されるわけがない」

 

カイトの顔が、優しくなる。それが結構、嬉しいじゃない

 

「同じ字じゃないけどさ、似てない『辛い(つらい)』と『幸せ』って」

「あ、言われてみれば確かに」

 

可愛い顔する、マブダチ

 

「『激辛(げきから)』って、食べられない人からすると『何が良くて食べてるんだ』って思うらしい」

「うん、そう思う。オレ、辛いのは苦手じゃあないケド、激辛はちょっと無理。殿が言う通り」

 

肯定に、やっぱりそうなのか、と納得、激辛好きの俺

 

「激辛好きの俺もさ『耐えて』食べてるトコロもあるじゃない。でも、それが何でか美味しいわけ。辛っっっいっ、舌痛い、汗止まらない。結構壮絶になってるの、だけど不思議に美味しい。一種の変人じゃない。激辛好き、全員がそうじゃない、かもしれないけど。結構辛い(つらい)のに、激辛食べてると幸せ感じる」

「はっははははっ、そうなんだ。ああ、でもそっか、オレもあるかも。甘い物大好きだけどさ、そこに、ちょっと苦みが欲しい時がある。濃厚アイスと、特濃エスプレッソとか、オレ大好き。その組み合わせ、オレ幸せ」

 

この辺りが『大人』なんじゃない。俺はそうでもなかったけど、子供って重ねるじゃない。甘い物に、甘い物。甘いケーキに、甘い飲み物、とか

 

「だから、俺は耐える。大好きな子が傍に居て『辛い(つらい)』けど、大好きな子が、俺を好きでいてくれるから『辛み(からみ)』に耐えるのと同じ。大好きな『辛み(からみ)』に耐える『辛さ(つらさ)』を超えていくのと同じ」

 

天井を見上げてみる。なぜ見上げるのか、俺自身解んないけど

 

「甘々少女が、苦みを楽しめるその日まで。俺は『辛さ(つらさ)』を楽しもうじゃない『辛さ(からさ)』を耐えて楽しむように。それを『幸せ』に変えながら」

「『辛さ(つらさ)』を耐えて『幸せ』に、か。殿ってすごいね。そんな風に考えられるんだ」

 

考えようじゃない、無理矢理にでも。惣菜納めを再開しながら

 

「全部楽しまなきゃ、損じゃない、人生。リンと、お前と、メンバーと。一度っきりの人生じゃない。大好きなおまえ達と。誰よりも愛おしいリンと。苦も楽も、全部楽しんでやろうじゃな~い」

 

楽しめれば勝ち、勝手に思ってやろうじゃない。楽しむが勝ち、苦も楽も。人生そのもの四苦八苦、そんな考えだってあるくらいだ。ならその四苦八苦、全部楽しもうじゃない

 

「がっく~ん、カイに~ぃ、何話してたの~、わたし抜きで~っ。何か盛り上がってたみたいの声っ。気になる~、聞かせてよ~ぉ」

 

幸せの声が聞こえる。辛さ(つらさ)の対象、幸せの代償。好きになった、俺が悪い、仕方ない。苦みも辛み(からみ)も知らない子。純粋少女、大好きなリンが、目玉焼き艦隊を置き終えてやって来る

 

「大げさな話じゃないよ~。ふふ、リンの事、殿に聞いてたの。ね、と~の」

「お前話をややこしくしようとしてな~い」

 

イタズラッコになるカイト。そのフリじゃ、どう話そうじゃない、リンの事、リンに。華咲く笑顔のリン。朝から俺、幸せじゃな~い




辛い(からい)から辛い(つらい)

辛い(つらい)のに辛い(からい)のが好き

辛くて(から)辛くて(つら)幸せ

ツライのも、しんどいのも、キミと一緒なら『幸せ』なの
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