Re:CREATORS 〜白夜叉、創造主の世界へ〜 作:平山雑賀
「あじゃらかもくれん…」
弥勒寺と別れた後、銀時達はセレジアの創造主である松原の仕事場へおもむき、弥勒寺の言っていた設定の改変を試みていた。
「きゅうらいす!!」
仕事場のリビングにて剣をふりかざし、自身の『造物主』が新たに書いた炎の詠唱呪文を唱えるセレジアだったが、
「あじゃらかもくれん、きゅうらいす! きゅうらいす…っ! あー、もう!」
何も起こらない現状に苛立た始める。
「やっぱ何も起きないな」
「今気付いたんですけど、もし成功したらこの部屋燃えちゃいませんかね」
「すまない、そこは気付くべきだった」
「メラ! メラミ! メラゾーマ! はいだらー! はいだらー! らりるれ火事だー!!」
「おい、この女戦士、目的変えて家焼こうとしてっぞ。 お前のキャラクター、一つ目の異星人に洗脳されたりしてねぇよな? 頭の中に爆弾とか入ってねぇよな?」
「セレジア、一回止めて」
松原は、適当に呪文を唱えだすセレジアを静止させるメテオラ達を
「絵とか、用意した方がいいかね」
「絵、ですか?」
その言葉に颯太は反応する。
「ここに戻る前に、『フォーゲル・シュヴバリエ』の作画やってくれてる人に連絡しといたんだよ。 そろそろ来る頃だと思うけど」
「へぇ〜、この絵を描いた奴な」
銀時はテーブルに置かれてあったライトノベルの表紙を眺めて、
「俺も、一度くれぇはこんな感じの絵で描かれたかったわ」
「あんたの本の絵、結構見た目が芋臭いわよね」
「芋臭ぇとか言うなよ! こっちの創造主様はな、一週間に十数ページ描かなきゃいけねぇ苦行を十年間頑張ってんだぞっ! ぽっと出の小娘が調子ぶっこいてんじゃねぇぞ、てめぇ?!」
「なによ、ヤル気?」
「ちょっ、ちょっと喧嘩は止めて下さい?!」
口論し合う二人を颯太が間で抑える中、玄関のチャイムが鳴り出す。
○ ○ ○
「えっと、つまり、私は絵を描いたらいいんですよね?」
ラフな私服姿のメガネをかけた女性、『フォーゲル・シュバリエ』の作画担当「まりね」は、キャラクター達をチラ見しつつ問う。
「そうだ。 弥勒寺って奴が言ってた『改変』をやってみたい」
「現状を早期的に解決する手段を探るため、あなたの力が必要。 力を貸してほしい」
「いっ、いえ、大丈夫ですよ! それで何を描いたら……」
メテオラはコピーしておいた詠唱呪文が書かれた紙をまゆみに見せる。
「えっ…と、この文章に前後はないんですか?」
「あった方が創りやすいなら、今書く」
「あっ、ちょっと待った」
パソコンに向き合い、文章を作り出そうとする松原を銀時は呼び止め、
「どうせだったら回復呪文に変えねぇか? この先切ってはったりすんなら、そっちの方が良いし。 まだ怪我が痛むんだろ、セレジア」
「余計なお世話よ、遊び人」
「遊び人舐めんじゃねぇ?! レベル20越えたら賢者に転職できんだぞ! それ以前に銀さんは既に賢者だしっっ!」
「▼残念。 銀時殿には賢さが足りない」
「うっせぇ!」
松原が再び作業に戻った間にまりねは絵のイメージを深めるため、
「セレジアさん、あの、少し服とか見せて貰っていいですか?」
「ええ、良いわよ」
緊張しながら問うまりねに、セレジアは了承の返事をし立ち上がった。 まりねはその周囲を見て回りながら少し興奮気味に服を観察する。
「凄い、本物ってこうなってるんだ。 へぇ、ここはこうやって刺繍されてるんだ、凄くキレイ」
「なっ、なんか恥ずかしくなるわね」
「なるほど、白か」
「あんたはどさくさに紛れて何してんのよ?!」
まりねに混じって服を触る銀時を蹴るセレジア。
「いやぁ、俺も自分以外のキャラクターの服装とか興味あってよ」
「自分の体でもまさぐってなさいよ、この変態!」
「じゃあ、そうするわ。 ……どう思う、この銀さんの小○旬」
「ユニーク」
「本当になにしてんのよっ?!」
メテオラにズボンの中身を確認して貰う銀時にツッコむセレジア。 そんな光景を見て颯太は、メテオラがこっちの世界以上に別のなにかに毒されつつある事に戦慄しだす。
「よし出来た」
コピー機から出た新な用紙の文章を読んだまりねは、画用紙に絵の下書きを描いていく。
「凄い、私がどんどん描かれてく!」
「リアルバクマンってこんな感じなんだな、後で俺も描いて貰おう」
まりねの手で描かれていくキャラクターの絵に感銘を受ける銀時達の横で、
「僕も、あんなに綺麗に描けたら、いいな……」
颯太もまた憧れと羨望の目付きで見ていた。
「随分とよくみてんだな」
「僕も、絵を描いてますから、……下手ですけど」
下書きを完成させたまりねは、松原の席を代わりに座りPCで絵の色付けを始める。
これから長くなりそうだと気付いた銀時達は、邪魔にならないようその場から離れ、
「この世界でも、夕日が綺麗なのは変わらないのね」
セレジアはベランダに出て日の光を眺めた。 そして銀時も彼女の横に立ち、
「俺の世界でよく見っけど、肌で感じる暖かさとか違ぇな。 颯太も来いよ」
銀時に誘われて、二人の間に立つ颯太。
……思えば、夕日を眺めるのは久し振りだ。
「お前、いくつだっけ?」
「……と、十六歳、ですけど」
「神楽と同じくれえか。 まぁ、大丈夫だろ。 時間はたっぷりあっから、頑張れよ」
「えっ?」
「さっき、絵を描いてるって言ったでしょ」
セレジアの言葉に颯太は沈黙し、
「あの……」
静寂した空気に耐えられなかったのか思わず口を開く。
「二人は、……その、どうやっても追い付けなくて、届かなくて、そういうのありますか?」
その問いを先に答えたのは、腰に下げてある木刀に手を乗せた銀時だった。
「俺はよ、もの心付いた時から
……あの日も夕焼けだったっけな、とベランダの手すりに腕をかける銀時。
「俺はそいつと……先生と出会って憧れて、武士になろうって思ったよ。 そしたら先生はこう言った」
『武士道とは何も国や主君に忠節を尽くす事だけを指すのではなく、弱き己を律し、強き己に近づこうとする意志、自分なりの美意識に沿い精進するその志をさすのです』
「自分が心の底から成したいと思う道を進めって、な」
「私も、大切な人に教えられたから」
次いで、セレジアも口を開く。
「勝負しなきゃいけない時はある。 命をかけて優劣が生まれる瞬間は、確かにある。 でもね颯太君、勘違いしちゃいけないのは、一から十まで何でも勝敗を着ける理由なんて無いって事よ」
つまり、
「貴方が一生懸命やっている事を知ってるのは貴方だけ。 自分に嘘を吐いていないと自分自身に誓えるのなら、何を言われても気にしないでいい。 最善を尽くして駄目なら、そこから先は貴方一人じゃどうにもならなかったって事よ。 そんな事を悔やんでも意味ないでしょ? だから、貴方の歩幅で気にせずやればいいの」
「『犀の角の様に、只一人歩め』」
リビングの椅子にてライトノベルを手に呟いたメテオラの言葉にセレジアは頬を指で掻き、
「本やアニメなってるから、みんな知ってるわよね。 カロンもいつか同じ事を言ってたわ」
「できるさ、颯太。 お前が諦めねぇかぎり、お前だってここの神様なんだぜ」
銀時に軽く背中を叩かれた颯太は、心の中にあった重いものが少し軽くなった気持ちになり、
「……ありがとう、ございます」
『あの日』以来から久し振りに、少し笑えた気がした。
第十一話までの転回を見て、少し書き直しました。 次の投稿も遅れそうです。