艦ヒメ   作:ユウ0725

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第10話

何もない荒野の上に立っている。

 

いや、何もないはちょっとおかしいな。

 

この状況を表すのにふさわしい言葉は………。

 

 

屍山血河かな?

 

 

ここは俺が倒した深海棲艦の死体が転がっている。

 

そうか、ここは俺が暴れた時の戦場か。

 

あの時は殆どの第1部隊が壊滅状態にされたのと、俺の相棒でもあったソラヒメであるMe-262のミロクを失った日でもある。

 

あいつは俺が初めて開発した大切な1番機だった。

 

まだ、第1部隊ができる前の第零部隊のリーダーでもあった。

 

彼女はかなり優秀でもあり、そして厳しくもあった。

 

そして、味方の為なら自らすら投げうるほどの自己犠牲の塊でもあった。

 

この夢を見るということは腕の中にはミロクがあるはず。

 

俺は目線を下に下げることができた。

 

ということは明晰夢か。

 

案の定俺の腕の中には生き絶え、身体中を銃弾に撃たれたミロクの姿があった。

 

だが、顔は穏やかで後悔のない顔をしていた。

 

この時にはもう遅かったんだっけ?

 

ついた頃にはミロクは満身創痍で、唯一1人で食い止めている状態だった。

 

弾薬も燃料も尽き、それでも機関銃を打撃武器として使用していた。

 

あいつは俺の姿が見えると、怒りの表情を見せたが、俺が恐ろしいほどの殺気を振り撒き、禍々しい気配を放つ槍を見たら安心したようにその場に倒れた。

 

その時の言葉は今でも思い出せる。

 

 

 

『司令官………何故来たとは問わん。だが………生きてくれ。私の分まで………他の仲間にも………そう伝えてくれ………!!』

 

 

 

そう言ったら、ミロクは力尽きた。

 

俺は初めての部下を失い、心が空洞になった。

 

そこからは覚えていない。

 

気が付けば、周りは荒野みたいになり、その中にミロクを腕に抱いた俺が佇んでいるというものだった。

 

その後からかな?

 

夢の中に大きな馬に乗り、黒い鎧を纏い、アルビノのような白い肌に、怪しく光る黄金色の瞳、そして長く煌めく銀髪の女性が現れるようになったのは。

 

そう考えていると……ほら、現れた。

 

「よう、お前は毎回俺の夢の中に現れるよな? 何もんだよ?」

 

「ふん。ここが貴様の夢………いや、深層世界か。寂れたところだな。」

 

「うるせぇな。お前もロクな道歩んで来てねぇだろ?」

 

「………そこは同意する。」

 

「そうか。で、俺に何の用だよ?」

 

そう言うと女性は表情を緩める。

 

いわゆる微笑ってやつだ。

 

「ふ、そう邪険にするな。貴様が私の力を宿してるからな。何回かは会うことになる。そこでだ、貴様に力の使い方を教えてやろうと思ってな。」

 

「なるほどな。突然あの黒い槍が呼び出せるようになったてたから、不思議に思ってたところだ。」

 

「ふーん。」

 

「その槍は『最果てにて輝ける槍』(ロンゴミニアド)と言う。まあ、歪んでいるがな。」

 

「あ、やっぱり? 俺達の性格と同じだな。」

 

 

「「ははははははははは!!!」」

 

 

「貴様! 死に晒せ!!」

 

「んなもんが当たるかっての〜。」

 

それからしばらく追い回されていたが、相手は疲れたらしく諦めた。

 

「はぁ、はぁ、貴様………!!」

 

「お前みたいにやわな鍛え方してないんだよ。」

 

「ふ、私も衰えたということか。」

 

女性は座っていたその場から立ち上がり、俺に振り向いた。

 

「一度だけ見せる。よく見て覚えておけ。」

 

女性は俺に背を向け、槍を立てたまま上に掲げた。

 

「突き立て、喰らえ!」

 

女性の周りには黒い力の奔流が迸る。

 

「13の牙!!」

 

今度は槍を下ろし、水平に構えた。

 

力の奔流は更に勢いを増し、そこからスパークが迸る。

 

「『最果てにて輝ける槍』!!!!」

 

槍を前に突き出した。

 

それまで女性を渦巻いていた力の奔流がそれと同時に放たれた。

 

その奔流は直線上にある全てを飲み込み、全てを破壊し尽くした。

 

「おいおい………これはもうアカンやつやん。」

 

「いや、貴様の中にはまだやばい奴がいるからな?」

 

「は? お前だけじゃないのか?」

 

「私も詳しく把握してないが、最低でも私を含め、後4人位だな。」

 

「お前が把握してるだけって………もしかしたらまだいるのか?」

 

「かもしれん。」

 

おいおいおいおい…………。

 

こりゃあ、かなりの面倒ごとだな。

 

「まあ、いいや。これはもう見て覚えたから気にしなくていい。」

 

「む、そうか。なら、そろそろ朝だ。目覚めるといい。」

 

「言われなくても目覚めるっての。」

 

そう言ったが、どうやって目が醒めるといいんだ?

 

「言ってなかったな。こうすると早いぞ。」

 

いきなり腹に槍を刺された。

 

「テメッ………何のつもりだ?」

 

「すまないが、こうした方が早いのでな。」

 

「コフッ!」

 

いてぇな。

 

夢の中でも痛みはあるんだな。

 

「残りの奴らは見つけて話をつけておく。」

 

ミロクもこんな感じだったのだろうか?

 

てか、ミロクはどこだ?

 

あ、夢の中だから御都合主義か。

 

夢でもいい。

 

声を聞きたかったな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あのクソアマー!!!!!」

 

「「「ひゃあ!!!」」」

 

甲高い悲鳴が3つ聞こえた。

 

そんなな気にしてらんねぇ!

 

「あのやろ、いきなり腹に槍ぶっ刺しやがって!!」

 

「あの? 司令官?」

 

「あん? ああ、起こしに来てくれたのか?」

 

ラト、ゼロ、フウは怯えた表情でこちらを見ている。

 

「ああ、すまない。ちょっと夢の中でアルビノの女性に殺されたからさ。」

 

「「「うわぁ、不吉(じゃ)。」」」

 

いやいや、そう言ってる中でもゼロ、お前もだいぶ白いからな?

 

「まあいいさ。さて、今日も仕事をするかね。」

 

俺は立ち上がり、自室から執務室に向かった。

 

その背中を心配そうに3人は見つめていた。

 

 

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