何もない荒野の上に立っている。
いや、何もないはちょっとおかしいな。
この状況を表すのにふさわしい言葉は………。
屍山血河かな?
ここは俺が倒した深海棲艦の死体が転がっている。
そうか、ここは俺が暴れた時の戦場か。
あの時は殆どの第1部隊が壊滅状態にされたのと、俺の相棒でもあったソラヒメであるMe-262のミロクを失った日でもある。
あいつは俺が初めて開発した大切な1番機だった。
まだ、第1部隊ができる前の第零部隊のリーダーでもあった。
彼女はかなり優秀でもあり、そして厳しくもあった。
そして、味方の為なら自らすら投げうるほどの自己犠牲の塊でもあった。
この夢を見るということは腕の中にはミロクがあるはず。
俺は目線を下に下げることができた。
ということは明晰夢か。
案の定俺の腕の中には生き絶え、身体中を銃弾に撃たれたミロクの姿があった。
だが、顔は穏やかで後悔のない顔をしていた。
この時にはもう遅かったんだっけ?
ついた頃にはミロクは満身創痍で、唯一1人で食い止めている状態だった。
弾薬も燃料も尽き、それでも機関銃を打撃武器として使用していた。
あいつは俺の姿が見えると、怒りの表情を見せたが、俺が恐ろしいほどの殺気を振り撒き、禍々しい気配を放つ槍を見たら安心したようにその場に倒れた。
その時の言葉は今でも思い出せる。
『司令官………何故来たとは問わん。だが………生きてくれ。私の分まで………他の仲間にも………そう伝えてくれ………!!』
そう言ったら、ミロクは力尽きた。
俺は初めての部下を失い、心が空洞になった。
そこからは覚えていない。
気が付けば、周りは荒野みたいになり、その中にミロクを腕に抱いた俺が佇んでいるというものだった。
その後からかな?
夢の中に大きな馬に乗り、黒い鎧を纏い、アルビノのような白い肌に、怪しく光る黄金色の瞳、そして長く煌めく銀髪の女性が現れるようになったのは。
そう考えていると……ほら、現れた。
「よう、お前は毎回俺の夢の中に現れるよな? 何もんだよ?」
「ふん。ここが貴様の夢………いや、深層世界か。寂れたところだな。」
「うるせぇな。お前もロクな道歩んで来てねぇだろ?」
「………そこは同意する。」
「そうか。で、俺に何の用だよ?」
そう言うと女性は表情を緩める。
いわゆる微笑ってやつだ。
「ふ、そう邪険にするな。貴様が私の力を宿してるからな。何回かは会うことになる。そこでだ、貴様に力の使い方を教えてやろうと思ってな。」
「なるほどな。突然あの黒い槍が呼び出せるようになったてたから、不思議に思ってたところだ。」
「ふーん。」
「その槍は『最果てにて輝ける槍』(ロンゴミニアド)と言う。まあ、歪んでいるがな。」
「あ、やっぱり? 俺達の性格と同じだな。」
「「ははははははははは!!!」」
「貴様! 死に晒せ!!」
「んなもんが当たるかっての〜。」
それからしばらく追い回されていたが、相手は疲れたらしく諦めた。
「はぁ、はぁ、貴様………!!」
「お前みたいにやわな鍛え方してないんだよ。」
「ふ、私も衰えたということか。」
女性は座っていたその場から立ち上がり、俺に振り向いた。
「一度だけ見せる。よく見て覚えておけ。」
女性は俺に背を向け、槍を立てたまま上に掲げた。
「突き立て、喰らえ!」
女性の周りには黒い力の奔流が迸る。
「13の牙!!」
今度は槍を下ろし、水平に構えた。
力の奔流は更に勢いを増し、そこからスパークが迸る。
「『最果てにて輝ける槍』!!!!」
槍を前に突き出した。
それまで女性を渦巻いていた力の奔流がそれと同時に放たれた。
その奔流は直線上にある全てを飲み込み、全てを破壊し尽くした。
「おいおい………これはもうアカンやつやん。」
「いや、貴様の中にはまだやばい奴がいるからな?」
「は? お前だけじゃないのか?」
「私も詳しく把握してないが、最低でも私を含め、後4人位だな。」
「お前が把握してるだけって………もしかしたらまだいるのか?」
「かもしれん。」
おいおいおいおい…………。
こりゃあ、かなりの面倒ごとだな。
「まあ、いいや。これはもう見て覚えたから気にしなくていい。」
「む、そうか。なら、そろそろ朝だ。目覚めるといい。」
「言われなくても目覚めるっての。」
そう言ったが、どうやって目が醒めるといいんだ?
「言ってなかったな。こうすると早いぞ。」
いきなり腹に槍を刺された。
「テメッ………何のつもりだ?」
「すまないが、こうした方が早いのでな。」
「コフッ!」
いてぇな。
夢の中でも痛みはあるんだな。
「残りの奴らは見つけて話をつけておく。」
ミロクもこんな感じだったのだろうか?
てか、ミロクはどこだ?
あ、夢の中だから御都合主義か。
夢でもいい。
声を聞きたかったな。
「あのクソアマー!!!!!」
「「「ひゃあ!!!」」」
甲高い悲鳴が3つ聞こえた。
そんなな気にしてらんねぇ!
「あのやろ、いきなり腹に槍ぶっ刺しやがって!!」
「あの? 司令官?」
「あん? ああ、起こしに来てくれたのか?」
ラト、ゼロ、フウは怯えた表情でこちらを見ている。
「ああ、すまない。ちょっと夢の中でアルビノの女性に殺されたからさ。」
「「「うわぁ、不吉(じゃ)。」」」
いやいや、そう言ってる中でもゼロ、お前もだいぶ白いからな?
「まあいいさ。さて、今日も仕事をするかね。」
俺は立ち上がり、自室から執務室に向かった。
その背中を心配そうに3人は見つめていた。